大奥 第十二巻  よしながふみ | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

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人目を避けながら黒木良順を訪ね、赤面疱瘡撲滅のため協力を請い、頭を下げる徳川十一代将軍:家斉(いえなり)。しかし、治済(はるさだ)の妨害を恐れる良順は、首を縦に振らない。息子:惇之助を毒殺された御台所:茂姫は、日に日に常軌を逸していく。同じように娘:総姫を亡くした側室:お滋賀は、治済により大奥総取締に抜擢され滝沢と名乗る。誰も信用しない治済は、滝沢を毒見役にし、大奥を見張らせる。




この巻は、最高に面白かったです。


優しいけれど気弱な家斉が、一念発起して、グー大活躍。

新たに、天文方に付属局として翻訳局を作り、翻訳官筆頭として局長に黒木を据えます。
表向きには、天体観測に必要な西洋の自然科学書の翻訳を仕事とし、真の任務は、赤面疱瘡の予防接種の実現を目指します。

ようやく志半ばで倒れた吉宗の、青沼の、源内の、その他様々な人々の悲願が、遂に実を結ぶことに。。。
長かったなぁ。



しかし、大奥では、いまだ治済がヤリタイ放題。

お膳に毒を盛り、イケメンを集めてのロシアンルーレット。叫び
毒を食らっても生き残れば、大金を与えるという破廉恥ぶり。
バカじゃない?

その毒好きドクロ治済が、遂に自らも毒に倒れる時が。。。


よっしゃ!!p(^-^)q


と言いたいところですが、これがとっても切ないのです。

毒見役を務めた滝沢も共に倒れます。

御台所が佯狂だったなんて。。。ドクロ汗
滝沢は覚悟の上で、御台所と謀り、自ら毒見役となっていたのです。


この前巻からの伏線の回収が素晴らしい。

発覚を恐れ、少しづつ少しづつ独裁者:治済に毒を盛り続けた御台所と滝沢連合軍。
母のその強さと、恐ろしさに慄きます。

しかし、治済の息子である家斉は、母子ゆえに、そこまで鬼にはなれず、その後、御台所とは距離が置かれることに。。。



しかし、母の支配から解き放たれた家斉は、心置きなく赤面疱瘡の熊痘(ゆうとう)接種政策を進めます。
その見違えるような行動力は、老中たちが舌を巻くほど。

とは言うものの、その方法は、あまりにも強引で。。。

治済を彷彿とさせ、やっぱり母子だったんだ汗と思わせられます。


しかし、そこまでしないことには、赤面疱瘡の完全な封じ込めは望めなかったでしょう。
黒木も渋々ながら認めているし、さじ加減が難しいところです。



死の床で、家斉の本音が御台所に伝えられるのですが、そこで、本物の将軍だったんだなぁと感慨深く思いました。


佯狂とは知らず、御台所に限りなく優しく接する家斉。

迫りくる異国船に、欧米列強に弱みを握らせないため、自らを<女色に溺れ幕府の財を使い果たした無能な将軍>として歴史に名を遺すことを潔しとした家斉。

御台にとっては、どちらも愛しい上様だったのでしょう。


黒木夫妻とはまた違う、そんな二人の愛ドキドキの在り方に、不幸せだけではなかった時間を見たように思います。




大した事しなかった経歴を逆手に取って、なんだか、すごく良い人になっている家斉。
作者の創作力に完敗乾杯カクテルグラスです。




本
女であっても
男であっても
真の王者とは
孤独なものなのです