パーク・ライフ  吉田修一 | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

吉田 修一
パーク・ライフ


「パーク・ライフ」
日比谷公園で出会った彼女は、既にぼくのことを知っていた。だから、その前に地下鉄で先輩の近藤さんと間違えて話し掛けたときも、平然と答えを返してくれた。僕たちはたびたび公園で会い、つかず離れずの浮遊したような不思議な関係が続く。特別な出来事も起こらず淡々と過ぎていく毎日の公園生活?

妙にリアルなんだけど、生活感がない日常。
それは、現代社会自体に生活感が薄いからなのかもしれません。
「臓器移植の広告」と同じように。
年に数回、買い物目当てに地方から出てきてぼくの部屋に泊まっていく母。
別居中の先輩夫婦の豪華マンションに買われたペット猿・ラガーフェルド。
ひとりでお茶する「スタバ女」たち。
インターネットで本人に代わって分身が旅行してくれるバーチャル旅行。
オレンジジュースの匂いのする入浴剤。
公園で気球を上げる男。
どれをとっても、別に変じゃない。
実際、すぐそこのにある現実です。
変じゃないけど、なんだか稀薄でペラペラとした生活。
都市で生活するという、特別大きな不満もないけど、驚くような幸せもない平和な日々。
生活のなかにある公園と言う場所で、”出来事”ともいえないくらい平凡な出来事。
大多数の人の現代に生きるっていうは、実際こんなものなのかも知れません。

それでも、人は生きていて‥‥。
人体になぞられた日比谷公園のほうが、よほど生き物っぽい感じがしました。


◆◆◆ LIFE ⇒ 生存。生命。生物。生活。人生。世間。中心。 ◆◆◆


「flowers」
女優志望の妻の鞠子の薦めもあり二人は、東京へ出てきた。九州の田舎で親戚の会社で墓石を運んでいたぼくは、飲料水の配達会社へ就職する。そこで元旦という男の助手となり‥‥。

「パーク・ライフ」は隅から隅まで都会なのですが、こちらはちょっと田舎を引きずっているぼくの東京生活。
ここでもやはり、東京の生活にくらべて九州の思い出の方が生活らしいです。
小さな会社ではよくあるだろう人間関係も、田舎の家で花を活ける祖母との生活をより際立たせ、都会ってなんて悲しい場所だろうという思いが深まるばかりです。




 ――この世にある花の数だけ、人には感情がある。




あしか > 実は芥川賞受賞のときのこれ、私は「??」だったんですが、その後どんどんはまって行き今では惚れきってしまった吉田修一です。『文学賞めった斬り』では、「純文学とエンターテインメントを行ったりきたりしてる」と評されてる吉田さん。エンターテインメント性の最たるのが「パークライフ」そして続くのが「東京湾景」。純文学ばりばりは、最近では「長崎乱楽坂」。短編では「熱帯魚」や「最後の息子」あたりもそうかなと。青子さんはどちらがお好みでしょうか。 (2005/01/20 10:41)
あしか > すみませんエンターテインメント筆頭は「パークライフ」じゃなくて「パレード」の間違いです。「パ」しかあってない・・・。 (2005/01/20 10:42)
青子 > あしかさん、すみません。吉田修一は、初めて読んだので残念ながらどちらがっていう質問にはお答えできません。
図書館の予約本がこなくて、棚にあったのでとりあえず読んどこうくらいの気持ちで手に取ったのですが、帯びの芥川賞選評がベタ褒めだったので、もう少しピリピリしたものを期待していたのですが、なんか物足りなかったような気がします。 (2005/01/20 19:58)
あしか > どなたかの日記のレスで読んでたので、青子さんが初めてというのは知っていましたよ~。で、もし読まれたら、どっちがお好きかな~ってことでした。すみません、判りづらくてm(_ _;m)
で、あわせて言えば、これでおしまいにしないで是非続いて欲しいなあっていう希望も含まれています。お薦めは。。。。惚れてて冷静な判断はできないのですが、青子さんなら、そうですね~最近のでは「ランドマーク」。是非、青子さんの「ランドマーク評」聞いてみたいです。 (2005/01/20 21:26)
青子 > あしかさん、こちらこそすみませんでした。ボケてしまいました。^^;
「ランドマーク」ですね。近所の図書館には1冊しか入庫してなくて現在貸し出し中みたいです。いつ読めるか解りませんが、明日にでも予約してみます。 (2005/01/21 17:47)
ケイ > こんばんは。私はこの本好きでした。作風が変わっていく作家のようで、その後読んでいないのですが。妙に乾いた雰囲気が、あの頃気に入っていました。青子さん、読書快調ですね。この頃私は停滞気味なので、快調な方の書評を楽しみにしております。またね♪ (2005/01/21 22:41)
青子 > ケイさん、レスありがとうございます。今日、さっそくあしかさんお薦めの「ランドマーク」予約してきました。あんまり快調でもないんですよ。サクサク読める本ばかり読んでるんで、きっとサクサク忘れていきそうです。^^; (2005/01/22 16:29)
たばぞう > 「パークライフ」、私も「?」でした。青子さんの読書傾向なら、案外「長崎乱楽坂」あたりもいけちゃうと思います。戦後日本のやくざ一家の盛衰を描いた物語なのですが、やくざには全然興味の無い私なんですが、火と共に昇華されていったラストには呑まれてしまいました・・・。 (2005/01/31 21:35)
青子 > たばぞうさん、いっぱいレス頂いてありがとうございます。あしかさんからも「長崎乱楽坂」、お薦めいただいてます。次の吉田修一はこれかな。 (2005/02/01 13:05)