シンガポール首相府(http://www.pmo.gov.sg/content/pmosite/aboutpmo.html)
)傘下で、人口問題に携わる人口・人材局(NPTD=National Population and Talent Division)は先月、
「シンガポール国民人口の先行き見通しに関する調査報告書」(Occasional Paper: Citizen Population Scenarios)を公表しました。
(https://www.nptd.gov.sg/content/NPTD/home.html
)
今後この情報を基礎に広く国民に人口(移民)政策に関する議論に参加してもらい、年内に白書にまとめられる予定になっています。
調査報告書の要点は以下の通り。
(1)他の東アジアの先進国同様に、シンガポール人の合計特殊出生率(TFR=Total Fertility Rates)は低下し続けている。
と同時に国民寿命は伸び続けており、現在シンガポールは世界の中でも長寿国の一つになっている。
*人口動態を均衡させるために必要なTFRは約2.1人とされていますが、シンガポールにおきましては1976年以降(既に35年以上!)この数字を下回り続けています。
*世間では何故かTFRという「率」が話題になりがちなのですが、問題は「母数」にあります。長期にわたり2.1を下回っているということはお母さんになり得る対象層人口の絶対数自体が人口ピラミッド階層上の少数派になっているということですので、今後TFRを多少上げたところで効果は限定的(随分先の話)です。
*1980年には72歳であったシンガポール国民の平均寿命は2010年には82歳と、この30年で10歳伸びています。こうして見てみますと、なにも日本だけが突出した長寿国家というわけではなく、現在の先進国の国民寿命は大体どこでも80歳前後というところで似たようなものですね。
言い換えますと長生きに伴う個人のリスク(?)と社会問題(?)というのは、なにも日本に限った話ではなく、遅かれ早かれ多くの国が直面する問題です。
そういった意味では高齢化社会のトップランナーである日本国に今後の世界の有様を切り開いていくモデルづくりにおいて一日の長がある(?)とポジティブに捉えているのは私だけでしょうか?
さて、人口動態の決定要因は、①TFRと②寿命、そして③移民によるわけですが、今回公表された調査報告書では、寿命は現状とした上で、
(2)AからEまでの5つのシナリオを未来図として示しています。
(TFRが人口維持に必要な2.1人で移民ゼロのAシナリオ、およびTFRを今と同じ1.2人とした上で、年間帰化移民数を変化させたBからEのシナリオ)
*因みに年間帰化移民数は過去5年間平均で毎年約19千人ですのでシナリオDが現状肯定型の姿となります。
最も極端なケース、即ち現在の出生率のままで且、帰化移民を受け入れないというシナリオBの場合、シンガポール国民人口は2025年から減少に転じます。
これを避けるには早い話が、帰化移民を毎年受け入れていくしか無いわけでして、そのProjectionが以下のグラフとなります。
どうも、結論としては年間帰化移民数を今後も(現状よりも増加させた)毎年20千人~25千人受け入れていくしか、「国民人口の減少」を防ぐには手がないと言っているように思われます。
さて、日本においては既に2005年頃から国民人口は減少に転じているようですが、人口減少問題もさることながら、社会構成員の高齢化問題が深刻です。
シンガポール国も御多分にもれず今年2012年は、1947年から1965年の間に生まれたベビーブーム世代(注)のうち、最初のグループが定年を迎える年にあたり、国民人口動態上の転換点です。
(注:シンガポールでは、第2次世界大戦終結後の1947年からシンガポールが独立した1965年頃までに生まれた世代がベビーブーム世代と呼ばれており、さらに前期(1947年?~1954年)と後期(1955年~1965年)に分けることもあるようです。)
調査報告書は、
(3)2020年までにシンガポール国民の生産年齢人口(20歳~64歳)は減少に転じる。と共に、
(4)2030年までに老齢人口(65歳以上)は現在の約3倍の900千人になり、国民年齢中央値は2011年の39歳から2030年には47歳になる。
とまとめています。
リー首相が年頭スピーチで、「複雑で重大な課題」として取り上げたのが人口問題でした。
国家というのは一般に①領土②国民③主権の3つの要素が必要とされるのですが、(領土問題はともかく)確かに「国民」の人口動態というのは極めて重要な問題です。
ただ、シンガポール国の場合に問題を更に複雑にするのが「外国人」の扱いにあります。
2000年から2010年まで過去10年間の「シンガポール国民」人口は3百万人強程度で変わらない中、居住人口は4百万人から5百万人と1百万人(25%)増えています。
要は「外国人」が1百万人増えたわけです。
つまり、現在のシンガポール国居住人口のうち、5人に2人(40%)は「外国人」ということです。
まあ、国家の歳出入構造上は、歳入対象5に対して、(国家として最終的に責を負う)歳出対象は3ということですから、国家経営上のレバ(1.7)がきいていてスマートだなあと時々思うのですが、と同時に、当地に長く住んでおりますと一体「国家・国民とは何か」とつくづく考えさせられます。
又、このように多くの「国籍」の人間が居住しているシンガポール社会ですので、容易に想像がつくのがカップリングの多様性です。
「シンガポール国民」の結婚相手が「外国人」という所謂「国際結婚」の比率は2000年の23%から2010年には30%に上昇しています。
この比率の今後の変化もさることながら、将来生まれてくる子供が両親いずれの国籍を選びたがるようになるのか興味深いところであります。




