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シンガポール通信

Uniquely Singapore
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シンガポール首相府(http://www.pmo.gov.sg/content/pmosite/aboutpmo.html) )傘下で、人口問題に携わる人口・人材局(NPTD=National Population and Talent Division)は先月、
「シンガポール国民人口の先行き見通しに関する調査報告書」(Occasional Paper: Citizen Population Scenarios)を公表しました。
https://www.nptd.gov.sg/content/NPTD/home.html


今後この情報を基礎に広く国民に人口(移民)政策に関する議論に参加してもらい、年内に白書にまとめられる予定になっています。


調査報告書の要点は以下の通り。

(1)他の東アジアの先進国同様に、シンガポール人の合計特殊出生率(TFR=Total Fertility Rates)は低下し続けている。
と同時に国民寿命は伸び続けており、現在シンガポールは世界の中でも長寿国の一つになっている。


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*人口動態を均衡させるために必要なTFRは約2.1人とされていますが、シンガポールにおきましては1976年以降(既に35年以上!)この数字を下回り続けています。
*世間では何故かTFRという「率」が話題になりがちなのですが、問題は「母数」にあります。長期にわたり2.1を下回っているということはお母さんになり得る対象層人口の絶対数自体が人口ピラミッド階層上の少数派になっているということですので、今後TFRを多少上げたところで効果は限定的(随分先の話)です。



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*1980年には72歳であったシンガポール国民の平均寿命は2010年には82歳と、この30年で10歳伸びています。こうして見てみますと、なにも日本だけが突出した長寿国家というわけではなく、現在の先進国の国民寿命は大体どこでも80歳前後というところで似たようなものですね。
言い換えますと長生きに伴う個人のリスク(?)と社会問題(?)というのは、なにも日本に限った話ではなく、遅かれ早かれ多くの国が直面する問題です。
そういった意味では高齢化社会のトップランナーである日本国に今後の世界の有様を切り開いていくモデルづくりにおいて一日の長がある(?)とポジティブに捉えているのは私だけでしょうか?


さて、人口動態の決定要因は、①TFRと②寿命、そして③移民によるわけですが、今回公表された調査報告書では、寿命は現状とした上で、


(2)AからEまでの5つのシナリオを未来図として示しています。
(TFRが人口維持に必要な2.1人で移民ゼロのAシナリオ、およびTFRを今と同じ1.2人とした上で、年間帰化移民数を変化させたBからEのシナリオ)



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*因みに年間帰化移民数は過去5年間平均で毎年約19千人ですのでシナリオDが現状肯定型の姿となります。

最も極端なケース、即ち現在の出生率のままで且、帰化移民を受け入れないというシナリオBの場合、シンガポール国民人口は2025年から減少に転じます。


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これを避けるには早い話が、帰化移民を毎年受け入れていくしか無いわけでして、そのProjectionが以下のグラフとなります。



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どうも、結論としては年間帰化移民数を今後も(現状よりも増加させた)毎年20千人~25千人受け入れていくしか、「国民人口の減少」を防ぐには手がないと言っているように思われます。


さて、日本においては既に2005年頃から国民人口は減少に転じているようですが、人口減少問題もさることながら、社会構成員の高齢化問題が深刻です。
シンガポール国も御多分にもれず今年2012年は、1947年から1965年の間に生まれたベビーブーム世代(注)のうち、最初のグループが定年を迎える年にあたり、国民人口動態上の転換点です。

(注:シンガポールでは、第2次世界大戦終結後の1947年からシンガポールが独立した1965年頃までに生まれた世代がベビーブーム世代と呼ばれており、さらに前期(1947年?~1954年)と後期(1955年~1965年)に分けることもあるようです。)

調査報告書は、

(3)2020年までにシンガポール国民の生産年齢人口(20歳~64歳)は減少に転じる。と共に、

(4)2030年までに老齢人口(65歳以上)は現在の約3倍の900千人になり、国民年齢中央値は2011年の39歳から2030年には47歳になる。


とまとめています。


リー首相が年頭スピーチで、「複雑で重大な課題」として取り上げたのが人口問題でした。
国家というのは一般に①領土②国民③主権の3つの要素が必要とされるのですが、(領土問題はともかく)確かに「国民」の人口動態というのは極めて重要な問題です。

ただ、シンガポール国の場合に問題を更に複雑にするのが「外国人」の扱いにあります。
2000年から2010年まで過去10年間の「シンガポール国民」人口は3百万人強程度で変わらない中、居住人口は4百万人から5百万人と1百万人(25%)増えています。
要は「外国人」が1百万人増えたわけです。
つまり、現在のシンガポール国居住人口のうち、5人に2人(40%)は「外国人」ということです。
まあ、国家の歳出入構造上は、歳入対象5に対して、(国家として最終的に責を負う)歳出対象は3ということですから、国家経営上のレバ(1.7)がきいていてスマートだなあと時々思うのですが、と同時に、当地に長く住んでおりますと一体「国家・国民とは何か」とつくづく考えさせられます。
又、このように多くの「国籍」の人間が居住しているシンガポール社会ですので、容易に想像がつくのがカップリングの多様性です。
「シンガポール国民」の結婚相手が「外国人」という所謂「国際結婚」の比率は2000年の23%から2010年には30%に上昇しています。
この比率の今後の変化もさることながら、将来生まれてくる子供が両親いずれの国籍を選びたがるようになるのか興味深いところであります。

Social Security(社会保障)


前回のシンガポール通信にてお伝えしました「2012年度シンガポール政府予算案」におきましては、「Inclusive Society(包括的社会)」がそのテーマとなっていました。

ターマン財務相兼副首相は新年度予算案説明において「より公正な社会を構築するため、中・低所得層に対し雇用、老後の生活支援をこの先5年間にわたり行う。貧困家庭には、子どもの学業、技能習得を支援する。 こうした措置を講じるため社会保障支出は増加する。しかし、財政力以上に社会保障、医療、失業対策支出を拡大し続け、財政危機、さらには社会危機に直面している多くの先進国の轍を踏まないよう、支出は収入以下に抑える」としています。


これだけ読んでも、一体何を言いたいのやらよくわからないかと思いますが、要はシンガポールの社会保障制度の根幹となっているCPF制度(後述)だけでは社会全体はカバーできないので、社会保障の政府支出(所得移転)をある程度増やしていくということです。


さて、Social Security(社会保障)というのは、その言葉(SocietyのSecurity)からして極めて広範囲な観点から議論すべきものでありますが、いずれにせよ社会(制度的には国家)そのものの存立・存続の基盤に関わるものです。


今、日本に限らず他の多くの国も同様にSocial Securityが揺らいでいる、つまり言い換えますと、社会の存立基盤自体が揺らいでおり、いろんな議論があちこちでなされているのですが、ややもすると社会保障制度の技術論議論に陥りがちです。

どんな社会制度も、まずはその「理念」についての社会合意なくしては、(対処療法はできても)持続的ではありません。

とはいえ「理念」について考えるにしても、具体的に如何なる制度が(その「理念」達成の)選択肢としてあるのか示されないと判断できないのも又現実かとは思います。


そこで、今回はシンガポールの社会保障制度の根幹を担っているCPF制度についてお伝えいたします。


尤も、社会が違えば社会制度も違うように、シンガポール国のCPF制度がそのままどこか他の社会に適用可能なはずはなく、ましてやシンガポール国のCPF制度自体の是非について問うものでもありません。


社会保障制度を考えるにあたっての一つの参考事例としてお伝えいたします。




CPF


1955年より導入されましたシンガポールのCPF制度を日本語として翻訳する場合は、「個人別強制積立貯蓄制度」とでも訳すとといいのでしょうか。国家機関であるCentral Provident Fund Boardでの使途制限がかかった非課税の個人別の強制貯蓄制度です。各人の口座残高には付利され、現在Ordinary Account(後述)が 2.5%pa、 Special&Medisave Accounts(後述)が 4%paとなっています。


シンガポール国民(2011年現在約3.2百万人)及び永住権保有外国人(同約0.5百万人)を加入対象とする制度でシンガポール国社会保障のベースとなっているものです。




CPFをキーワードにネット検索していきますと結構いろんな記事に行き着くのですが、「シンガポール日本人会」のHPで丁度いい分かりやすい説明記事がありましたので、以下引用させて頂きます。


執筆時点が2009年10月とやや古く数値情報が現在とは若干違ったりしていますが、制度自体のイメージを捉えるには丁度いいかと思います。やや長いのですが御一読頂ければと思います。


又、より詳しくお知りになりたい方はCPF BoardのHP http://mycpf.cpf.gov.sg/Members/Gen-Info/mbr-Gen-info.htmを一度ご覧になるとよろしいかと思います。CPF加入者は自分の勘定残高をID、PWD入力でオンライン確認することができ、E政府化が進んでいるシンガポール国の一端を垣間見ることもできると同時に、行政電子化における日本国の後進性に愕然といたします。

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October 2009

CPF シンガポール福祉制度の礎

杉野 一夫

 シンガポールの福祉は自分の身は自分で守るという自立の考えに基づかれています。この考えを具現化したのがCPF(Central Provident Fund=中央積立基金)制度です。この制度は次世代に負担をかけることはなく、それぞれの世代が自分のために将来に備えて貯蓄するというある意味、筋の通った、公平な仕組みです。シンガポールの福祉はCPF制度が礎になっています。

CPFは強制積立制度です。労働者は一人ひとりCPF局に自身の口座を持っています。この積立金は全額自分に所属するもので、他人と共有するものではありません。家族の者が病気で入院をした時、或いは子供の教育に資金が必要とされる時を除いて本人以外の者がCPFの貯蓄を使用することはできません。

ーエピソード1ー

「英国とスウェーデンの福祉コストを見て、我々は、政府を弱体化するシステムを避けなければならないと思った。福祉は自助の精神をひそかに害する」リー・クアンユー顧問相は回顧録の中でこのように述べています。福祉国家の手本とされている両国を顧問相はこのように捉え、矮小な天然資源の皆無なシンガポールは大きな税収が必要とされる福祉国家になり得る環境にはないと結論付けました。当国の経済発展は海外からの投資、技術、人材に頼らなければならず、そのためには所得税、法人税を低率に抑え、投資環境を整える必要があります。国による手厚い福祉はシンガポール経済を破綻させてしまうと考え、政府は警戒をしています。




拠出額は給与の20%が従業員本人の負担、14.5%(筆者注:現在は16%)が会社の負担になります。55歳以上になりますと、雇用主、従業員共に年齢に応じて拠出金の割合は軽減します。

CPFは3つの口座があり、使用目的が定められています。

1) Ordinary Account -住宅の購入、投資、子供の教育など

2) Special Account -老後の年金、緊急事態など

3) Medisave Account -入院費、医療保険など


Ordinary Accountの使い方

Ordinary Accountの資金はHDB住宅の購入に使用することが可能です。頭金としても使用することが出来ますし、また月々の支払いにも使用することもできます。HDB住宅は低所得者、中間所得者を対象にしたアパートです。月額の家族収入が8000ドルを超える家族は対象にはなりません。また配偶者の他に稼ぎのある婚姻者が同居する場合には住居者全員の月額総収入が1万2千ドル以下でなければなりません。民間住宅を既に持っている者も対象から外れます。HDB住宅を申請するには21歳以上のシンガポール市民権保有者で結婚していることを条件とします。独身者は35歳になるまで待たなければなりません。

ーエピソード2ー

シンガポールでは国民の85%がHDB住宅に住んでいます。その約90%は持ち家です。シンガポールの持ち家率は世界一だといわれています。シンガポールの優れた住宅政策は国民に近代的で、快適な生活環境を提供するために作られたものです。一方で別の理由もありました。1965年マレーシアから分離独立した後、有権者が政府に反対投票する傾向があるのを見て、リー・クアンユー元首相は世帯主をマイホーム所有者にしなければならないと思ったと述べています。さもなければ政治の安定は保障されない。更にもうひとつの動機は、徴兵される息子を持ったすべての親に「子どもが守るべきシンガポール」に投資させることでした。もし兵士の家族が自分の家を所有していなければ、彼は裕福な人々を守るために戦っていると思い込むことになります。資産を持つと、人は愛国心、帰属意識が生まれます。




HDB住宅購入のほかにもOrdinary Accountを利用して、政府が認定する政府関連企業(電話会社、バス会社、港湾会社、電力会社など)に投資することも可能です。また子供の高等教育の授業料にも使用が可能です。


Special Accountの使い方

CPFは元来退職後の生活を保障するためのものです。55歳になるとSpecial Accountの最低必要額(Minimum Sum)とMedisave Accountを残して全額引き出すことが出来ます。最低必要額は現在11万7,000ドルと決められており、2013年までにはこの額が12万ドルに引き上げられることになっています。Special Accountの最低必要額は62歳になると月々決まった額を引き出すことが出来ます。しかし最低必要額は退職後20年間の生活費保証を想定しているもので、CPF局に預けているだけですと、その金額が枯渇してしまえば月々の収入はなくなります。そこでCPF局は最低必要額を利用して、認められた保険会社から生涯年金保険を買うことを国民に奨励しています。この保険に加入すると、一生涯生活費をもらうことが可能になり、最低必要な生活費が保証されるからです。

また2009年9月にはCPF LIFEという新しいプランが導入されました。このプランは存命中ずっと年金が貰えるというものです。65歳から年金が受けられ、受給金額はどのプランを選ぶかによりますが、$530から$700までです。シンガポール人の平均寿命が80歳になり、今後更に寿命の延びがが予想されます。社会の高齢化も急速に進んでいます。老後の生活を如何守るのか、Special Accountの使い方は今後も検討が進められていくと思われます。


Medisave Accountの使い方

メディセーブは入院費用を賄うために作られた制度で、CPFの一部に組み込まれています。シンガポールの労働者には毎月給料の6%から8%まで、年令によって率が変りますが、メディセーブ積立が義務付けられています。

もともとは政府系病院での入院費を対象としていましたが、後に上限価格を設けたうえで、メディセーブを民間病院の支払いにも適用することができるようになりました。これによって民間病院との競争原理が生じ、政府系病院にプレッシャーを与え、サービスの質の向上につながりました。しかし外来専門クリニックや一般開業医にかかる際、メディセーブ使用は認められていません。

ーエピソード3ー

1980年代初頭、日本から健康保険組合の理事がやって来られました。理事は保健省に出向き、アンドリュー・チュー(当時の)次官と面談しました。私は同席し、不慣れながらチュー次官と理事との通訳を務めました。次官は熱心に日本の健康保険制度について質問しました。理事はシンガポールの医療事情を調べるために訪問したのですが、面談は専ら日本の健康保険制度の説明に時間が費やされました。一通り質問が終わった後、日本の保険制度はシンガポールには適用できないとチュー次官はつぶやきました。この時の情報がシンガポールの医療制度を作り上げる上でどれだけ参考になったかは不明ですが、数年してシンガポール政府はメディセーブ(Medisave)制度導入を発表しました。




労働者が全員、入院費用全額を賄うのに十分なメディセーブ積立金を持っているわけではありません。低所得者は積立額が小さく、大病をして入院したら、積立金は忽ちの内に枯渇してしまいます。そこで政府は90年、大病や難病の治療費を賄うために任意保険のメディシールド(Medi Shield)を導入しました。この保険料はメディセーブ積立口座から支払うことが出来ます。さらに93年には、メディセーブやメディシールドを使い果たしてしまった人々や頼れる近親の家族がいない人々を対象として政府出資によるメディファンド(Medifund)が発足しました。そのような人々は治療費が払えない旨の申請をすればメディファンドが入院費を代行します。こうして国民一人ひとりが必要な医療を享受し、同時に国の医療関係投資の無駄を省ける仕組みを作り上げました。個人個人で出来ることは全て行ない、政府の援助は最後のリソースというわけです。」

去る2月17日にターマン・シャンムガラトナム財務相(兼副首相)より2012年度(12年4月~13年3月)シンガポール政府予算案が国会に上程されました。
http://app.singaporebudget.gov.sg/budget_2012/default.aspx


シンガポール政府の会計年度(注1)は(英国統治の名残でしょうか?)日本とかと同様で、4月に始まり3月に終わります。
大体毎年2月のこの時期に翌年度予算案が発表されるのですが、この財務相の予算スピーチは8月9日ナショナルデーの首相演説と並び(当然ではありますが)シンガポール国民の注目をあびます。


(注1):因みにASEAN諸国内で4月―3月という財政年度をとっているのはシンガポールとブルネイのみでして、インドネシア、マレーシア、カンボジアは1月―12月の暦年。タイ、ベトナム、ラオス、ミャンマーは10月―9月。フイリピンは7月-6月とバラバラです。
尤も、多国間共同体として先行しております注目のEUにしても、ドイツ、フランス、イタリア等は1月-12月の暦年ですが、英国は3月ですし、話題のギリシャはスウエーデン等と同様の7月-6月となっており財政年度自体統一されていませんねぇ。



○2012年度シンガポール予算案


さて、2012年度予算案におきましては、経常歳入が前年度比+5.1%の531億Sドル(約3.3兆円)、一方歳出は同+5.8%の503億Sドル(約3.1兆円)が見込まれており、基礎的財政収支は28億Sドル(約2千億円)の黒字となっています。
これに企業や個人への援助を差し引き、国家準備金の運用による投資収入を加えた総合収支は13億Sドル(約8百億円)の黒字となっています。


日本の財政状態に慣れっこになっていますと収支尻が「黒字」ということだけで驚いてしまいますが、シンガポールは決算結果を見てみましても(どこかの国のように予算と決算結果とが全く違うということはなく)過去、大体黒字で推移しています。
最近では、リーマン・ショック後の2009年度のみが赤字でした。

(単位:十億Sドル)        2006年   2007年   2008年   2009年   2010年   2011年

基礎的財政収支          +1.4    +7.4    +3.0   -2.3    +0.7    +3.0
総合収支                 0     +7.7    +0.2   -0.8    +1.0    +2.3


経常歳入531億Sドルの内訳は、法人税が134億Sドル(前年度比+9.6%)個人所得税が78億Sドル(同+14.4%)でこの2つで全体の4割となります。
これに消費税(GST)の92億Sドル(同+5.5%)を加えると合計304億Sドルとなり、この3つで全体の約6割を占めます。
残り4割の歳入項目としては、資産税37億Sドル、印紙税24億Sドル等がありますが、シンガポールならではの変わったものとして新車購入権(COE*)売却収入の20億Sドルとか、2010年より開業されたカジノからの賭博税24億Sドルといったものがあります。

*COE(Certificate of Entitlement):シンガポールで自動車を購入するにはまずはCOEという「自動車を購入する権利」を買う必要があります。狭い国土における自動車数を制限する目的で1990年より導入されているものですが、元々はベルギーの制度に倣ったもののようです。


一方、歳出503億Sドルの内訳は、教育、医療等のSocial Developmentが219億Sドル(全体の44%)、防衛関連等のSecurity & External Relationsが161億Sドル(全体の32%)、交通輸送等のEconomic Developmentが100億Sドル(全体の20%)、公務員給与等Goverment Administrationが22億Sドル(全体の4%)となっています。
歳出個別項目毎の1位は防衛費の122億Sドル(約8千億円)、2位は教育費の106億Sドル(約7千億円)となっており、防衛、教育の2つで歳出の半分近くを占めるという構図は従来通りです


因みに日本の平成24年度政府予算案http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/yosan001.pdf#search='
をみてみますと、一般会計歳出90兆円の内、社会保障26兆円、国債費22兆円となっており、この2つで53%と半分以上を占めています。
尤も日本の国家予算といった場合は一般会計よりも巨額な特別会計を含める必要があります。財務省によりますと、この一般会計と特別会計を合計した国全体の歳出額は213兆円で内、国債費が88兆円、社会保障関係費が67兆円とされるようでして(?どういう計算なのかよくわかりませんが)、そうするとこの2つで全体の72%を占める計算になります。
http://www.mof.go.jp/budget/topics/special_account/faq/tokkai_qa2006b.htm#02


国民人口が1億3千万人近い大国日本と、居住人口5百万人強(内シンガポール国民人口は3百万人強)程度の都市国家シンガポールとの財政を比較しても余り意味はありません。
又、特に(何処の国にしても結局は究極の問題となる)社会保障の枠組みにおいて、「修正賦課方式」とか呼ばれる社会保険制度にのっかっている日本と、CPF(Central Provident Fund)という個人別強制積立貯蓄制度を基本としているシンガポールとでは財政構造が根本的に違いますので比較しようがないとも言えるのですが、それにしてもまあ・・・とただため息が出てきますねえ。



○2011年度Review


昨年2011年度のシンガポール国GDP成長率は+4.9%と、一昨年2010年度の+14.8%(という驚異の成長)からは大きく鈍化しましたが、当初予想+4%~+6%のほぼ中間値となった模様です。
製造業セクターが+7.6%、サービス業セクターが+4.4%、建設業セクターが+2.6%となっています。
労働市場は2010年に引き続き堅調で121千人の新規雇用が生まれ、失業率は2.9%(2010年度は3.1%)。
消費者物価上昇率は主にHousing,Transport,Foodの上昇により+5.2%(2010年度は+2.8%)となっています。


○2012年度見通し


世界経済の減速見通し(世銀見通しは+2.5%)より、2012年度のシンガポールのGDP成長率政府見通しは+1%~+3%となっています。



○2012年度予算案の特徴


さて、シンガポール政府の予算案には、政府の意向を簡潔なメッセージとして国民に伝えるキャッチコピーがつきものになっています。

2012年度予算案のキャッチコピーは、

AN INCLUSIVE SOCIETY, A STRONGER SINGAPORE

となっています。


直訳しますと「包括的社会、強いシンガポール」ということなのですが、予算編成の中身を見ますと、2009年度の「何が何でも雇用確保」という大胆な経済対策予算、2010年度の「向こう10年間での生産性向上を国家目標」に据えた予算や昨年度(=選挙年)の「成長果実を皆で分かち合おう」的な国民への直接的所得移転に配慮した予算に比べますと、それほどインパクトのある予算にはなってないようです。

尤も、昨年の選挙結果からの反省なのでしょうか、予算テーマに「包括的社会」とありますように、国全体としての経済成長に乗りきれない低所得者層や高齢者にはそれなりに配慮したものにはなっていますが、「強いシンガポール」の方向性としては、「労働力の拡大に依存せず、生産性の向上を通じた成長を推進する」という方向性が再確認され、施策として、


外国人労働者(注2)依存をさらに減らす


という方針が明確にされました。

具体的にはシンガポール人正社員の数に対し雇用できる外国人労働者の割合(Dependancy Ratio Ceiling=DRC))を引き下げる事や、低技能外人労働者を雇用する際に雇用主に課せられる雇用税を更に引き上げるというものです。
製造業でのDRCは従来の65%から60%へ、サービス業では50%から45%へ、それぞれ引き下げられます。


まあ、早い話、国民の雇用を優先させようということでして、その結果生じるコスト増加は生産性向上で補うと共に、最も影響を受ける中小企業には支援措置を講じるとしています。


昨年2011年のシンガポール国の居住人口は5.2百万人で、内シンガポール国民は3.2百万人(加えPRという永住権保有外国人が0.5百万人)です。

2000年が、居住人口4百万人に対しシンガポール国民は3百万人(PRは0.3百万人)でしたので、この10年余りで外国籍人の数が1百万人から2百万人に倍増(外国人比率は25%から38%へ)したわけで、この外国人の受け入れが経済成長を支えてきたのは明らかです。

確かに、淡路島程度の大きさのシンガポール国が、今後も過去と同様に、人口拡大を維持していく事で経済成長を図るには、どこかで物理的な制約がかかり無理がありそうです。
実際既に人口増加に伴う社会生活への弊害は増えてきています。又外国人と職を奪い合い、賃金競争にさらされる事に不満を持つシンガポール国民も増えているのは事実かと思います。


リー首相が年頭スピーチで、「複雑で重大な課題」として取り上げたのが人口問題でした。
「経済活動の維持には十分な数の労働者が必要だが、国民の出生率は低下している一方で外国人労働者の急増を国民が望んでいないことの板ばさみにある」と指摘していました。


今回の施策は(選挙民対策かどうかはともかく)、まあ気持ちはわかるものの本当にこの方向でいいのでしょうか?と悩んでしまうところです。


2月17日の予算発表後の週明け20日の当地ビジネス誌 The Business Timesの一面見出しは


“Budget measures carry inflation, risks”
-Higher wages may drive up prices; companies may not be able to find local staff-


となっており、建設、飲食、製造といった当地産業界からは早速不満がよせられています。


シンガポール居住の外国人一般庶民である筆者としましては、フードコートで食べるランチの値段が上がる事に備えて節約に励む今日この頃です。



(注2):外国人労働者は、主に建設現場、工場や飲食店等で働くWork Permit(及びSパス)と呼ばれるビザで居住する外国人と、所謂ExpatsのEパスで居住する外国人とに大別され、上記の規制の対象とされているのは(今のところ)前者ではあるのですが、現在シンガポールの全労働人口の1/3を占める外国人労働人口の多くはこの層でなっています。