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シンガポール通信

Uniquely Singapore
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「今年1月よりASEAN6(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)内における域内関税が撤廃され、ASEAN自由貿易圏が誕生しました。(残るカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム((CLMV))については2015年までに段階的に関税撤廃予定となっています)。

又、今回の動き自体は単なる自由貿易圏(FTA)創出というだけの単発的なものではなく、2015年目標の「ASEAN共同体」設立という大きなグランドデザインの中のロードマップの一つです。」

という事を前回お伝えしました。


ASEAN共同体というのは、

 ASEAN「政治・安全保障(Political-Security)」共同体

 ASEAN「経済 (Economic)」共同体

 ASEAN「社会・文化 Socio-Cultural」」共同体

3つの柱から成るものですが、今回の動きはASEAN「経済共同体」のグランドデザインの中の一つのステップです。


ASEAN経済共同体達成の為の設計図・工程表でもある「ブループリント」http://www.aseansec.org/5187-10.pdf を見てみますと、これも前回お伝えしましたように結構盛りだくさんの内容になっておりまして、

「本当にこんなことが2015年までに達成可能なのか?」

と疑いたくなるものもあるのですが、まあそれはさておき、今回は「資本移動の自由化」の一環と位置づけられている「ASEAN取引所リンケージ」につきお伝えします。


 ASEAN取引所リンケージ


「ASEAN経済共同体」ブループリントにおきましては、経済共同体を特徴付ける骨子の一つである「単一の市場・生産基地」を目指すにあたって、物品移動の自由化、サービス移動の自由化、投資の自由化に続き、「資本移動の自由化」が示されています。


その中で、ASEANの資本市場の発展と統合を強化するに当たってのアクションプランの一つとして、クロスボーダーでの資本調達を含む資本・負債取引所市場のリンケージを市場主導で進めることを促進する旨が謳われています。


そういった中、未だあまり詳細は伝えられていないのですが、「ASEAN取引所リンケージ」というのが今年2010中に稼動される予定になっています。


背景としましては、2005年のASEAN財務相会議でASEAN域内の金融・資本市場統合のロードマップが話し合われたあたりからその案自体はあったようですが、具体的にはタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンの5取引所CEO会議で20093月に電子取引システムのリンケージ導入に向けての覚書が締結された(ベトナム・ホーチミン取引所は9月より)あたりから動き出したようです。


加盟各国の取引所を取引所間で電子的にリンクさせることで、各取引所上場企業の取引注文にあたっては、夫々の取引所加盟証券会社系由で注文する必要が無く、どこか一つの取引所で注文すれば、取引所間データリンクにて加盟全取引所上場銘柄につき取引ができるという、まあいわばワンストップ取引が可能となるというようなものです。

その目的としましては、

ASEAN 資本市場のプレゼンスの向上・取引所間競争への対応

ASEAN域内のクロスボーダー取引の促進

・域外からの投資の誘致

等があるようでして、

・共通のゲートウェイ構築によるシステム投資・運用コストの低減

・各取引所市場参加者の利便性の向上

・上場会社の資金調達機会の向上

を目指しているようです。

ただ、昨年11月にはインドネシア証取が「2010年稼動スケジュールには対応できないので延期する」旨公表しており足並みは早くも乱れています。

加え、実務的な観点からしますと、現在報道されている内容(取引所間注文回送ネットワークのリンケージ)だけですと特に魅力が向上するとも思えません。


資本市場統合に当たっては現在各国毎に違う各種ルール、制度の統一・簡素化・透明化がなされることに本来的な意義があるかと思います。

取引システムという技術面につきましては、そもそも「取引所」の本来的な性格(英語で言うと単にBourse Operator、日本語で極端な言い方すると「寺銭業」)からしますと何も政治的に主導して行われるものではなく、最終的にはビジネス的に進められる気がしてなりません。


その意味でも以前お伝えしました昨年12月よりCEOに就任したMagnus Bocker(北欧の諸取引所をOMXの下、水平統合を果たし、更にはOMXとNasadaqとの統合も成し遂げた人物)を擁するSGXの動きには注目しています。

201011日より、ASEAN6(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)においては域内関税がほぼ撤廃されました。

正確に言いますと、11日に7881品目の関税撤廃品目が追加された事で全体の99.11%にあたる54457品目で関税がゼロとなり、平均関税率が0.05%まで低下したということです。


カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(頭文字をとり“CLMV”とよばれています)といったASEANの新興加盟国においても今後段階的に域内関税が撤廃され2015年までの完全撤廃が予定されています。


今年2010年というのは、上記のようにASEAN内における関税撤廃の動きが本格化してきた事に加え、ASEAN6対インド及びオーストラリア、ニュージーランドとの間の自由貿易協定(FTA)の発効、更には対中国、対韓国との締結済みFTAに基づく夫々約9割及び約8割の品目の関税撤廃の実行が開始されたという事で、ある意味エポックメークな年といえるかもしれません。


年初の日本の新聞各紙はこうした動きを捉え、例えば日本経済新聞等では

アジア自由貿易圏へ弾み、32億人市場一体化進む

とか題した威勢のいい記事を組んでいたようですが、例えばASEANにおける対中国輸入関税撤廃の実行にあたってはインドネシアやマレーシアの産業界からは早速不満の声が上がっておりまして、その実行延期や見直し等もありそうですので、まあ世の中そううまく事がすんなりと運ぶものではない、という位で見ていればいいのではないでしょうか。


勿論、ASEANという法人格を持った多国間共同体が対外的に締結する「お約束事」は法的には有効ではありますが、問題はASEAN内のその加盟国に対するASEANとしての強制力如何にあるかと思います。

ASEANとしての対外共同歩調の実効性というのは今後益々いろいろな局面で試されてくるでしょうから、ASEANの今後を占うに当たりいい検討材料になろうかと思います。





 ASEAN経済共同体(AEC)



さて、冒頭お伝えしました今年からのASEAN6での物品課税撤廃の話しですが、実はこれは、以前お伝えしました2015年創設目標の「ASEAN共同体」という大きなグランドデザインの中で示されている数多くの各種スケジュールの一部にすぎません。


「ASEAN共同体」は、「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」の3つの柱からなるものですが、自由貿易市場については「経済共同体」達成の為のブループリント(0711月のASEAN首脳会議で採択された「ASEAN経済共同体」達成の為の設計図・工程表の事です)内に明記されています。


このブループリントは、ASEANを

 単一の市場と生産基地

 競争力のある地域

 公平な経済発展

 グローバルな経済への統合

にもっていく事を基本骨子にしています。


で、このブループリントが実行されるとどうなるのかと言いますと、

物品の貿易では関税や非関税障壁が撤廃され、サービス貿易でも実質的に全ての制限が除去される。資格などの相互承認が行われサービス供給者の移動の自由が確保される。資本の移動に当たっても自由化され、資格も相互承認される。資本市場の基準の調和や統合が行われる。人の移動についても熟練労働者については移動の自由が確保される。更に共通政策として単一航空市場、単一海運市場、域内製品・サービスの互換性、あるいはASEAN共通のインフラ政策を実行する等々、実に多彩なものが示されています。


ASEAN6での関税撤廃はとりあえず実行され自由貿易地域(FTA)にはなったのですが、今後2015年に向けて、物品、サービス、投資、資本、労働者のより自由な移動が行われる地域に統合を深化させていく過程では、未だ紆余曲折はあるでしょう。

今後が見ものです。











 SGX


「SGX」というのは、「Singapore Exchange」の略称で、1999121日に「Stock Exchange of Singapore(SES:シンガポール証券取引所) Singapore International Monetary Exchange (SIMEX:シンガポール国際金融取引所)が合併して出来た「取引所」です。

www.sgx.com



200011月にSGXは同社株式をSGXに上場し、アジア太平洋圏の取引所としては最初の公開会社になりました。

同社株は現在MSCI Singapore Free Index及びStraits Times Index.の構成銘柄の1つになっています。


シンガポールの「取引所」というと、例えば旧SIMEXの時からの日経平均先物(*)に代表されるように、どうしても「デリバティブ」トレーディングの取引所というイメージが強いかもしれません。

確かに、近年でも20069月にシカゴ商品取引所と折半出資(**)で、

商品取引ではアジア初となる電子先物市場「共同アジア・デリバティブ取引所(JADE)」を創設したりと「デリバティブ」あるいは「システム」に強い取引所という感があります。


ただ、裏返して云うと本来的には証券取引所の本命であるところの「現物株式市場」の層が余りに薄いが為に、対抗策として他の領域を発展させてきたと云えなくもありません。


例えば、シンガポールが常に対抗意識を燃やす香港とSGXを較べてみますと、

0911月末の株式市場時価総額、及び0911月まで11ヶ月間の現物株式取引額は、夫々

香港の22,600億米ドル、13,700億米ドルに対し

SGXは4,600億米ドル、2,300億米ドルと、

時価総額で20%、出来高で17%にすぎません。(World Federation of Exchanges


ASEAN10か国の内、現在6カ国(***)に証券取引所があります。

SGXはASEAN内の株式市場では最大規模を誇るのですが、裏返して云うと「それ程ASEAN諸国の株式市場規模が未だに小さい」という事になります。

尤も、今後のASEANの成長を勘案すると、「従って将来のASEAN諸国の株式市場規模は大幅な拡大が見込める」とも云えるかもしれません。


 SIMEXでの日経平均先物取引は、日本(大証)で取引が開始された19889月に先行する事2年前の19869月から取引されています。

**0711月にCBTのCMEによる買収に伴いSGXがCMEの持分を買取り,合弁

解消。

 **ASEAN内取引所は設立の古い順にフィリピン(1927年)、タイ(1963年)、

マレーシア・シンガポール(1973年)、インドネシア(1977年)、ベトナム(2000年)の6カ国にあります。

尚、現在カンボジア、ラオスで2010年中の取引所設立が計画されています。



 SGX新CEO


今年7月にSGXはその新CEOとして、現職の「NASDAQ OMX」(****)Presidentであった Magnus Bocker(47)の指名を発表し、同氏は去る121日よりSGXのCEOに就任しています。(初期任期3年)


***「NASDAQ OMX」というのは20082NASDAQが、北欧ベースの取引所運営会社であり(且、世界の多くの取引所にシステムを開発供給する)テクノロジー会社でもあるOMXを買収・合併した結果、「NASDAQ OMX Group ,Inc.」という名称になっているものです。


Magnus Bocker氏は元々OMXの出身で、1996年~2003年までOMX Technology President,2003年~2006年まで OMX本体のCEOを務めていた人物で、CEO在任期間中にスウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの7取引所をOMXの下に、取引システム、清算・決済機関共に水平統合を成し遂げた人物です。


08年にOMXのNASDAQとの合併をも成し遂げ「NASDAQ OMX」のPresidentを務めてきたMagnus Bocker氏ですが、今回のSGXのCEO指名は、果たして突然の指名だったのか、それともSGXが次の一手に出るに当り用意周到に計画された指名だったのか(というより、この手の人事って一体誰が決めているのでしょうかねえ?)興味深いものがあります。