8月9日はシンガポール共和国のNational Dayです。
National Dayというのは、まさに文字通り「国(家)の日」のことであって、ある国が、その国にとって最も記念すべき日として定めた記念日と定義されます。
多くの国では、「独立記念日」、「建国記念日」というものであったり、(君主制の国では、)国王などの君主の誕生日であったりします。
ま、いずれにしても、その「国」の「国(家)」としての「まとまり」の象徴日と言えるかと思います。
(余談ですが、ところで、日本のNational Dayってどうなってるのかと、Wikipediaで「National Day」http://en.wikipedia.org/wiki/National_Day
を調べますと日本のNationalDayは2月11日(日本語リンク版の脚注では「日本国との平和条約が締結され占領が解かれた4月28日とする意見もある」ともあります)となっているのですが、日本語で「国家の日」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E3%81%AE%E6%97%A5
を調べますと12月23日となっています。
で、この「国家の日」の英語リンクを辿ると、最初の「National Day」に戻ってしまい2月11日ということになってしまいます。
つまり、日本語が読めない人にとっては、日本のNational Dayは2月11日という理解になり、日本語が読める人には一体どっちなのだかわからないということになってしまいます。不思議ですね。)
さて、このシンガポールのNational Dayですが、日本のメディアは、「独立記念日」とか「建国記念日」とかの日本語訳をあてるのですが、
「独立記念日」には、なにがしか(独立を)「勝ち取った」というニュアンスが感じられますので、シンガポールの場合、歴史的経緯*からしてこの翻訳は不適当です。
「建国記念日」といわれると、まあ、そうかもしれないのですが、当然日本における「建国記念日」とは全く異なりますし、やはり「National Day」という概念自体が社会通念として確立していない日本語でのしっくりくる翻訳はなさそうです。
とはいえ、まあ平たく言いますと8月9日は現在のシンガポール共和国という国家のいわば「誕生日」です。
あ、この翻訳が最もしっくりきますねえ!
=ナショナルデーパレード(NDP)=
http://www.ndp.org.sg/#/landing/
で、その誕生日のお祝いに「ナショナルデーパレード(NDP)」と呼ばれる盛大な祭典(現在の会場はマリーナ・ベイ・フローティング・スタジアム)が8月9日に行われるのですが、このNDPに向けては、まさに国を挙げての大準備が進められ只今その真っ盛りです。
主要な道路沿いには1カ月以上前からNDPのテーマやロゴが入った旗や幕、ボードなどが設置され、8月9日が近付くにつれて住宅やHDB(公団集合住宅)の窓にずらりと国旗が掲げられ、ビルの玄関や門などにも国旗や国章がはためき、NDPのリハーサルやNDP関連の数々のイベントが行われます。
NDP自体は「パレード」という言葉から想像される以上の大規模なイベントで、毎年5月頃に受け付けられる入場チケット予約は抽選(応募はシンガポール国民または永住権保有者のみ)ですがまず手に入りません。
地元シンガポールのシンガーやダンサーによるコンサートのほか、シンガポール陸海空軍、警察、民間防衛隊などによるパレード、軍用ヘリコプターによる巨大シンガポール国旗の飛行ショー、空軍のF-16C戦闘機による編隊飛行、落下傘部隊によるデモンストレーション、照明・音楽・水・パイロなどで演出されるショーなどがあり、フィナーレには花火が打ち上げられます。
この日はまた、シンガポールという国家の現在の姿や将来のビジョンを国民に示し、国民の結束力を高める日でもあります。
ナショナルデーの前後に開催されるナショナルデーラリー(集会)での首相演説は、毎年2月頃に行われる財務相による予算演説と並んで国民の注目を浴びます。
因みに各年のNDPには年毎のテーマがあるのですが、今年のNDP11のテーマは「MAJULAH! THE SINGAPORE SPIRIT」(「それ行けー、シンガポール魂!」とでも訳しましょうか?)となっています。
ナショナルデーは、外人にとってはシンガポールの数少ない祝日の一つにすぎないのでしょうが、シンガポール国民にとっては本当に特別な日です。
8月9日までに御来星の機会がございましたらマリーナ・ベイに足を運ばれますとNDPのリハーサルが見られるかと思います。
又、当日はフローティング・スタジアムの中には入れなくても会場であるマリーナ・ベイの近辺を通り過ぎるパレードは眺められます。
TV中継以外にもNDP公式サイト上からウェブキャストでも中継されますので、機会がございましたら一度ご覧下さい。驚き?や新たな発見があるかもしれません。
又、たまたまではありますがNational Museumでは、
「Transforming Landscapes, Improving Lives: 50 Years of Economic Development」という特別展が6月15日から9月30日までの期間EDB(Economic Development Board)によって行われています。http://www.nationalmuseum.sg/ExhibitionDetail.aspx?id=58&cat=2
シンガポールの今日は、このEDBの存在抜きにしては語れません。一人当たりGDPがS$500だった60年代からS$50,000にまで増えた今日までのこの50年間の歴史を見る事が出来ます。
夏休みのご旅行にシンガポールに来られることがございましたら、一度覗いて見られる事をお勧めします。
*歴史的経緯
シンガポールは大戦中の日本軍政(1942年~45年)から解放された後、再び19世紀初頭からの英国植民地下に戻されたわけですが、自治権の回復という意味では1959年6月にリー・クワンユー氏(当時35歳)が英連邦自治州シンガポールの初代首相に選出された時からです(現在の国歌Majulah Singapuraもこの年にできています。結構いい曲です。)。
英国からの完全独立という意味では1963年9月にマレーシア連邦の一部に自ら選んでなった時ですので、英国からの独立はこの時に達成されています。
問題はマレーシア連邦内での人種対立に起因するパワーバランスの崩れでしょうか、結果的にマレー人優遇策をとるマレーシア中央政府と華人が多数を占めるシンガポールとの融和は果たせず、シンガポールはマレーシア連邦参画後たった2年で連邦から追放される形で「独立」を余儀なくされた(スピンオフしたのではなくスピンオフされた)といわれています。
1965年8月9日の連邦離脱を表明するリー・クアンユー首相のTV会見はリー氏が途中感極まって会見を20分間中断したのはあまりにも有名なエピソードです。
感極まったというのは嬉しさからではなく、逆に悔しさ、途方に暮れる気持ち、将来への不安の気持ちからだと同氏は「回顧録」の中で述べています。
「There are books to teach you how to build a house, how to repair engines, how to write a book. But I have not seen a book on how to build a nation…。」(「回想録」より)