2010年度シンガポール政府予算③ | シンガポール通信

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シンガポールの2010年度予算におきましては、向こう10年間の経済改革に必要な国全体としての「能力」を築き上げる事に焦点が当てられており、経済戦略委員会(ESC*注1)より提出された戦略計画にもとづき、
「技能(Skills)、革新性(Innovation)、生産性(Productivity)に根ざした新しい経済成長の方向性に舵を切る。」
という事が明確に謳われています。


*注1:経済戦略委員会(ESC:Economic Strategies Committee)
http://www.esc.gov.sg/index.htm
2009年5月に発足した委員会でシンガポールの国家成長戦略を担う委員会です。
今回の政府予算はこのESCの提言を受けた形で編成されており、今後のシンガポールを見ていく上でESCの動向がまさに鍵になりそうです。
(ESCの提言内容・戦略計画はhttp://www.esc.gov.sg/attactments/ESC%20Report.pdf
シャンムガラトナム財務相を委員長に政府、労働団体、民間企業等からの25人の委員で構成されており、特に民間企業からは製造業、サービス業、外国企業、国内企業、大企業、中小企業と幅広く14名の委員が選ばれています。
8つのサブ・コミッティーから構成されており、全てのサブ・コミッティーがPUBLIC SECTOR 、PRIVATE SECTOR 双方のCO-CHAIRで構成されています。
http://www.esc.gov.sg/about_subcommittees.html
外国企業としてシーメンスとかプロクター・ギャンブルとかいった有名企業と並び、聞いた事も無い企業も名を連ねており面白いです。
(一体、こういう人事って誰が決めるのでしょうねえ?)


さて、具体的な予算配分としては、企業と労働者の生産性向上に5年間で55億Sドル(ばくっと約4000億円*注2)が計上されています。

(*注2:シンガポールの人口は日本の約30分の一ですから、日本円換算で考える場合は12兆円と考えるといいのでしょうか?尤も、予算執行における日本とシンガポールの効率性の違い(政官業中抜き問題)を考慮すると実質効果は数字以上に大きいと考えられます。)


研究開発(R&D)の商業化、海外進出・海外業務強化を図る企業を後押しすると共に経済全般を再構築し、高付加価値産業への移行、効率の低い産業からの脱却を図る、と方向付けられています。

「生産性・革新クレジット」計画を設け、業務内容の向上、価値創造につながる活動(R&D、知的財産の取得・登録、自動化など)に投資する企業に税控除が適用されます。
(控除額は費用の250%(現行は100%)。適用期間は2011~15課税年度。)

他にも、


○労働者の技能向上支援

労働者の能力向上では、継続学習・訓練(CET)計画を推進。予算は5年間で25億Sドル。高齢、または低賃金の労働者を特に配慮したもので、勤労福祉所得補助(WIS)計画を補うものとして3年の時限措置で、勤労福祉訓練計画(WTS)を導入。
受給資格は35歳以上。
 
WTSでは従業員が訓練を受けている期間の賃金と訓練費用の90~95%を雇用主に助成。
訓練を受ける労働者にも修了時に給付金を支給。WISの給付額も増額。


○合併・買収の後押し

企業買収は費用がかかることを考慮し、5年間の時限措置で買収費の一部について税控除を認める。
割合は5%で、買収代金が5,000万Sドルであれば、買収側の企業は250万Sドルを課税所得から控除できる。
未上場株の移転に対する印紙税も免除。


○ハイレベル委員会の設置

生産性向上努力を調整し、継続学習のための包括的制度の策定に当たる組織として、政労使で構成する全国生産性・継続学習協議会を設置。
委員長はテオ副首相(昨年副首相に抜擢された1954年生まれの注目政治家です)。
 
税制措置を補うため国家生産性基金(当初基金は10億ドル)を設け、企業、産業ごとの生産性改善を資金面から支援。特に生産性改善の余地がある建設業を視野に、土木、建設面の能力向上、新技術投資などを後押し。


○土地利用効率の引き上げ

工業用地の利用効率を高めるため土地高度化控除(LIA)を導入し、現行の工業ビル控除(IBA)を廃止。規定の容積率を達成、または上回った企業に、建設費に対し税控除を認める。


等々色々あるのですが、そういった中で目を引く、というか意見が分かれデリケートな問題として議論されるものとして


外国人労働者雇用税の引き上げ


があります。

現在、全労働力の3分の1近くを「外国人労働者」が占めているわけですが、この肉体労働中心の外国人労働者の雇用に当り雇用企業に対して、3年かけ雇用税を段階的に引き上げる、としています。
但し一方で、(ここが微妙なさじ加減なのですが)絶対数を制限するクオータ制は導入しない、としています。
 
ワークパミットの労働者雇用税は7月1日付で10~30Sドルの引き上げ。11年と12年にも引き上げ3年間の合計で平均100Sドル引き上げられます。
 
Sパス所持者の雇用税は同日付で50Sドルから2種に分け、100、120Sドルとなり、12年にはそれぞれ150、250Sドルまで引き上げるとしています。


この措置は明らかに、単純労働低賃金外国人労働者の流入の制限効果になるわけですが、
シンガポールの過去10年の年率5%の経済成長は、その多くが外国人を含む労働力の拡大によってもたらされており、その事実を鑑みると今回のこの措置は意外に負の波及効果(波紋)がではしないかと気になるところです。