前回、「100近くある日本の空港の9割以上が赤字経営」という事をお伝えしたのですが、空港を空港「業」というビジネスの観点で改めて捉え直してみますと、実は空港というのは本来「儲かるビジネス」のようです。
例えば、テーマパークとか遊園地といった典型的「集客ビジネス」では、要は「集客力」が事業の鍵なわけですが、空港の場合、航空機の利用客は否応なしに空港を利用せざるを得ないのですから、航空機利用者数が成長する限り、ほっといても全体としての空港利用者数は成長するという図式になります。
世界景気の低迷あるいは新型インフルエンザの影響で一時的には航空機利用者数が減少しているように見えるかもしれませんが、世界的には人口は拡大(爆発?)しており、新興国を中心とした航空機利用可能所得世帯の成長を考えると、数字は増えこそすれ減らないようです。
まあ理屈の上ではそうなのですが、日本においては空港なんていうものは未だに利権の対象でしかなく、ビジネスとしての対象からは程遠い状況です。
例えば空港の構成要素は、滑走路、誘導路及びエプロンといった「基本施設」と、空港ターミナルビルや駐車場といった「周辺施設」から成っているわけですが、日本においては株式会社空港は別にして、国管理空港や地方自治体管理空港では、会計主体自体が基本施設、ターミナルビル、駐車場で違っており、国の特別会計(及び自治体会計)、第3セクター、財団法人等で夫々バラバラに行われているという実態のようです。
これだと、空港全体としての収益、費用の把握すら出来ず、要は(空港)「経営」にあたってのイロハのイが無いわけですから、そもそも(空港)「経営」という概念自体が育たず、誰も責任を取らないし、取れないし、取る必要がない空港が乱立するということになってしまいます。毎度毎度 役所が絡む話には頭が痛くなってきます。
さて、世界で最初に民営化され株式上場を果たしたのは1987年の英国空港会社(BAA)です。ターミナル事業を商業化することで着陸料等の空港使用料以外からの収入(非航空収入)を増やし、空港使用料を抑制しながら株主価値を上昇させました。
BAAは07年にスペインの不動産会社フェロビアルとPEファンドのコンソーシアムに買収され上場廃止になったものの、その経営戦略は民営化空港の代表事例になっています。
一般的な空港では、「非航空収入」の割合は総収入の5割が一つのハードルらしいのですが、BAAの非航空収入の割合は一時7割を超えたそうです。
株式市場は高くBAAを評価し、ピーク時には株式発行時の5倍以上の株価をつけました。
BAA民営化の成功以来、「空港は儲かるビジネス」として脚光を浴び、特にターミナル事業の収益性が注目されました。90年代にはドイツ、スウェーデン、ベルギー等の欧州諸国で、空港株式の一部を特定企業に売却する方式で民営化が進み、又オーストラリアでは、連邦空港公社が管理運営していた主要空港を長期リースによる営業権の売却というかたちで民営化。メルボルン、ブリスベーン、アデレード、キャンベラ、シドニーの各空港等が、地元企業と海外の空港会社や建設不動産会社、ファンドとの企業連合に売却されています。
官民パートナーシップ(PPP)やPFIといった手法で民間が資金を提供し、空港の整備、運営を受託するケースも増えています。
又、空港会社の買収も盛んで、未上場ケースでは、ブリュッセル、ブダペスト、ムンバイ、デリー等、上場会社ではローマ、コペンハーゲン、BAA等が買収されています。
コペンハーゲンや「日本空港ビルディング」(羽田空港ターミナルビルを所有する東証一部上場会社)に出資するオーストラリアのマッコーリーや、先に述べたフェロビアルは、「インフラ事業は経営の無駄さえ省ければリターンの向上は容易」と述べています。
世界には株式市場に上場されている空港が多くあるのですが、意外なのは中国の主要空港の多くが公開上場されているということでしょうか。
中でも上海、北京は共に時価総額ベースで空港会社世界5位以内にはいっています。(トップはフランスのド・ゴール空港、オルリー空港を擁するADP)
以前ご紹介しましたように当地シンガポール・チャンギ空港の運営は、この6月までは交通省の外局のCAAS(シンガポール民間航空庁)が行っておりましたが、7月1日より空港運営を行う空港新会社(Changi Airport Group)と、航空交渉や航空管制、ライセンス発行機能をもつ新CAASに分かれました。
シンガポールで空港関連上場会社というとSingapore Airport Terminal Services Ltd というチャンギ空港での地上サービスや機内食などの事業を手がけているシンガポール航空の子会社があるのですが、多分将来はChangi Airport Groupからいくつかの上場会社が生まれてくるのではないかと楽しみにしています。
そういった中、成田国際空港株式会社は平成22年度に上場を目指しているらしいのですが、はてさて如何なる株価形成がなされるのか見ものです。