景気の低迷や新型インフルエンザの影響もあり、世界の航空需要は低迷しているようです。
もっとも、航空需要の波なんてものは別に今に始まったわけではなく、ここ20年ほどの間でも結構ありました。
例えば1991年の湾岸戦争勃発の際も航空需要は激減しました。
海外旅行の代名詞でもありました、あのパンアメリカン航空(「兼高かおる、世界の旅」!懐かしいですねえ)が倒産したのもこの年です。
(もっとも、伏線は1978年のカーター政権時に制定された「航空規制緩和法」により、米国で路線や運賃などの自由化が進められたことにあるようです。
旧体質(規制による既得権益を前提にした非効率体質)を改善できず競争に落伍していった結果のようです。
なんとなく、どっかの国のナショナルフラッグ航空の現在の姿のようですねえ。)
面白いのはこの航空不況時に保護政策がとられることなく、逆に1992年に米国とオランダとの間で初めてのオープンスカイ協定(航空路線開設の自由化)が締結され、以後、締結国が拡大していく布石になったということでしょうか。
さて、航空産業に劇的なインパクトを与えた事件といえば、なんといっても2001年の米国同時多発テロでしょう。事件発生後、セキュリティーコストは増加する一方で、航空需要は激減するというまさに踏んだりけったりの事態になりました。
01年以降経営破綻した主なエアラインは、
01年にTWA(米)、ミッドウェイ(米)やスイス航空、02年にはユナイテッド(米)にUSエア(米)、03年にはハワイアン(米)やエアカナダ(加)、05年にはデルタ(米)やノースウェスト(米)等が有ります。
一方、生き残りの為の再編も盛んでTWAはアメリカン航空が買収。USエアはアメリカウェストと合併。ノースウェストはデルタが買収、等々。
日本でも、日本エアシステム(JAS)が日本航空(JAL)に経営統合されたのは2002年の事です。
04年にはエールフランスとKLMが統合。06年にはルフトハンザとスイスインターナショナルが統合しています。
このような大手航空会社の合従連衡の動きは、経営規模の拡大によって効率化を図る(早い話、要はコストを下げる)のが狙いなのですが、各地でのLCC(低コスト航空)の台頭もあり、一筋縄ではいかないようです。再編淘汰は今後も続きそうです。
さて、トップエアラインの代名詞的存在の当地シンガポール航空も現下の航空「不況」の例外ではありません。
このエアライン株式時価総額で世界2位のシンガポール航空(SIA)が先月発表した第1四半期(4~6月)決算は、3億700万Sドル(約202億円)の赤字でした。
SIAが四半期ベースで赤字になったのは、アジアが新型肺炎SARSに見舞われた2003年4~6月期以来の事です。
要因は世界同時不況、新型インフルエンザの発生による航空需要の低迷とのことですが、赤字の内訳は、SIA単体が2億7,100万Sドル(約178億円)、地域航空のシルクエアーが300万Sドル(約2億円)、貨物部門のSIAカーゴが1億400万Sドル(約68億円)となっているものの、燃料ヘッジ取引の失敗による損失が2億8,700万Sドル(約189億円)となっており、要はヘッジ取引の「失敗?」が赤字の大半のようです。
一方、エアライン株式時価総額世界1位の中国国際航空(エア・チャイナ)が先般発表した今年上期(1-6月)の利益は29億元(約450億円)の黒字で前年同期比倍増以上の結果になっています。
燃料コストの低下と旺盛な旅客需要の増加を主因としていますが、燃料ヘッジ取引でSIAとは逆に15億元の利益が計上されており(一体どういう「ヘッジ」取引なのでしょうか?)、通常収入の増加に加え特殊要因が働いているようです。
■ 一口メモ
世界の航空会社の株式時価総額ランクは、上述のように1位が中国国際航空で、2位がシンガポール航空というのは最近の不動の順位のようで、時価総額が1兆円を超えているのは現在この二社のみです。ただ中国の航空会社についていうと中国国際航空の他にも、中国東方航空、中国南方航空、海南航空の合計4社が航空会社時価総額世界20位以内に入っているのですが、中国企業は他の産業でもそうですが、政府保有株式比率が大きすぎるので単純な時価総額で計るには無理があります。因みに中国国際航空の政府保有比率は8割を超えています。一方シンガポール航空の政府(テマセック)保有比率は5割強です。
さて、現在世界で唯一の景気牽引地域(というか牽引期待地域)ともいえるアジアにおいてもナショナルフラッグ航空会社の業績はまちまちです。国際航空運送協会(IATA)によると6月の国際線旅客数はアジア太平洋地域の航空会社でも前年同月比14.5%減少したそうです。
そういった中、唯一気を吐いているのはアジアの格安航空会社(LCC)群でしょうか。
アジアでの低価格化の加速に加え、航空機利用可能所得世帯の増加を追い風に台頭してきています。