2023年2月23日
(その一)からの続きです
遥か高みに見える
ザンゲ岩に目標を据えて
長くて急な斜面の尾根を登って来た
11:30
そのザンゲ岩に辿り着く
目標とは言ったがここは単なる通過点
頂きはもう少し先になる
ただ、ここまで来れば
稜線まではひと登りの筈
さあ、もうひと頑張りだ
大きく深呼吸をして
疲れた身体に喝を入れ
残り僅かとなった急斜面に取付いた
長い登行の終盤
重たくなった脚を振り上げて
斜面に刻まれたステップを登る
目前に小さな雪庇が迫り
そこを切り崩してトレースが続く
その最後の小さな雪庇を乗り越えると
頂稜部の緩やか斜面に躍り出る
遂に厳しい尾根を登り切ったのだ
振り返れば
白い優美な尾根線が何とも美しい
さあ、ここからは谷川岳の頂稜部
正面には俎嵓山稜と川棚ノ頭
小出俣山も見えている
そしてその手前には天神尾根
蟻んこのような登山者たちが
列をなして登っている
その頂稜部を緩やかに登ると
山頂が見えてくる
その山頂にも登山者の姿が点々と見えて
今日も相変わらずトマノ耳は盛況のよう
そこから稜線に出るには
10m程の雪壁を登らねばならないが
毎度の事、その手前で休憩をとる
その雪壁の向こう側は風のエリア
少しでも過ごしやすい場所で休むなら
ここはベストな条件の場所なのだ
エナジー補給は
何時ものコンビニパンと蜂蜜紅茶
風の無い暖かい日差しの中
確りと英気を養う事が出来た
その10m程の雪壁を乗り越えると
想定通り西風が吹いてきた
ただ、その風は谷川岳にしては
何時になく優しい風
冷たさはあるが風速は5~6m程だった
そして辺りの雰囲気もガラリと変わる
山頂へ向かう登山者が列をなして
静かだった西黒尾根とは趣が違う
賑やかな場所は苦手なのだけれど
自身もその列に加わって山頂へ向かう
12:30
谷川岳山頂(トマノ耳)へ到着
頂標前は相変わらずの盛況ぶり
入れ替わり立ち代わり写真を撮っている
そんな中、僅かなタイミングを狙って
頂標写真を一枚撮り
後はお決まりの展望写真の撮影
北方から時計回りに
↓
雲はスッキリ取れないけれど
これほどの展望が得られれば
十分に満足というものでした
最高点のオキノ耳は今回もパス
静寂が保たれている西黒尾根へ
引き返すと致しましょう
肩ノ広場から10m程の雪壁を下ると
再び静かな世界が戻ってくる
まるで雪壁が結界となって
俗世界と神域とを分けているかのよう
緩やか斜面を下って
再び西黒尾根の頭に立てば
優美な尾根が足元に現れる
フフフ、やっぱりいい眺めだ
そして目線を奥にやれば
午後の光を正面に受けて
尾瀬や武尊の山々も
映える姿になってきた
では、西黒尾根の下りに取り掛かります
小さな雪庇の切欠き部分を下りれば
長い尾根下りの始まり
段々のステップが刻まれた
深いトレースを下って行く
左手に対峙する美しい東尾根を眺めながら
高度はドンドン落ちて行く
振り返れば山頂も
見上げる位置に戻っている
北方を見れば
清水峠の向こうに巻機山
彼方も雲は薄くなりだして
クッキリと見えだしている
更に高度を落としてヤセ尾根部分
雪庇とヒドゥンクレバスはセット
慎重にトレースを辿る
そして右手には天神尾根
感覚的に目線の高さに天神平が見えて
同レベルまで下りてきたか?
さあ、ここから下りの核心部
ラクダのコルへの急斜面
気温の高さから
雪質の悪化を危惧していたが
日が西に傾いて日差しの影響は僅か
幸いな事にそれは杞憂として終わった
だが、ここはこの尾根一番の急斜面
見下ろす先は
マチガ沢まで一枚の雪壁となっていて
一つのミスも許されない
その急斜面を3分の2ほど下りてくれば
幾分、傾斜も緩んで
ちょっと気持ちも楽になる
ラクダの背も目線の高さになって
その向こうの武尊山を
眺める余裕も生まれる
ラクダのコルからラクダの背へ登り返す
往きでクラックを避けて刻んだトレースは
確りと踏み固められていた
皆、そちらを歩いてくれたもようで
何故かちょっと嬉しい気分
13:54
ラクダの背へ登り上げる
山頂を振り返れば
山肌に陰影が付いて
より映える姿になっている
やはり谷川岳を眺めるには
ここが一番だなと独り悦に浸る
ラクダの背よりヤセ尾根部分を下って
クサリ場を下れば樹林帯
ブナの樹の美しい広尾根で
エナジー補給がてら少休憩をとる
ピッケルからストックへ持ち替えて
再び樹林帯の中を下って行けば
その樹林の隙間から白毛門が見えた
今朝の冴えない姿が噓のように
青空を背に美しい姿を晒している
やっぱり雪山は青空が似合う
そして北方稜線にも美しい姿が
あんな尖った山あったかな?
頭の中の地図を開いて模索すれば
武能岳に辿り着く
そういえばヤセ尾根の頂きだったな
見る角度によっては
あんなにピラミダルなのかと
ここでも独り納得する
15:04
1140m地点まで下りて来た
谷川岳東面はすっかり陰となって
シルエットを見せるのみ
更に高度を落として
太いブナの立ち並ぶエリアまで下りた来た
暖かかった日差しは山の端に隠れて
気温がグッと下がって来た
考えてみれば辺り一面雪の中
寒いのは当たり前なのだけれど
今日の暖かさは
それを忘れさせてくれていた
アウターを羽織り
残りの尾根を下って行く
目印ポイントの鉄塔を過ぎて
急斜面を下れば
程なくして登山指導センター
後は車道を下って
16:06
ベースプラザ駐車場へと到着です
常々自身に課した課題の中の一つに
ひと冬に一度は西黒尾根を登る事
というのがありますが
今年も無事にノルマ達成です