「やばかったね」
「ああ、危なかった」
2人は早足で森の中を進み、誰もいないことを確かめてから話をはじめた。
「ネズミの話を聞いてどう思う?」
「話を聞いて、確信したよ。うちにいるのが、ネズミちゃんと一緒に来た男だと思う」
それを聞いたカズナは、黙って腕を組み宙の一点を見つめている。それからしばらく経って、両手で顔を洗うような仕草をしてから、マーサに言った。
「会わせてくれ」
第1話はこちら↑
こんにちは。
昨日は、更新の順序を間違えてしまって、大変申し訳ありませんでした🙇♀️
今日は大丈夫だと思うんですが、お気づきの点がありましたら、コメントからお知らせください。
いつも読んでくださりありがとうございます♪
無理しないで、とお気遣いいただくのですが、ライブ更新で小説を書くのは、皆さんと一緒に走っているみたいで、とても楽しいのです。
だから大丈夫、元気もりもりマンです!
いただくコメントは、並走してもらいながら声をかけてもらっているみたいで、とっても嬉しいです。
もちろん大変な時はちゃんとお休みしますので、読んでくださる方々は、何も考えず、昔みたいに楽しんでくれたら嬉しいです。
感謝感謝💕
ともえ
…………
私がここにきた経緯を話し始めると、2人は特に驚く素振りを見せず、静かに聞いていた。
「それでね、私はトキメクになって、でね、このゲームにはルールがあって、1つ目は…」
「やめろ!もういい!」
頷きながら静かに聞いていたカズナが、ルールの話に差し掛かった途端、強い口調で私を止めた。カズナの鋭く尖った声は、鉄砲の弾みたいに飛んできて私の声を撃ち抜き消し去った。
唖然としている私を見て、いつも冷静なカズナが慌てて話し始めた。
「あ、いや、そ、そろそろマーサが帰る時間だから、な」
「あ、ああ、そう、帰んなきゃ、ネズミちゃん。今日はもう時間ないし、ルールはゲームに参加してない俺たちに言ってもわかんないから」
2人は慌ただしく立ち上がり、扉へ向かって歩き出す。
「送ってくるから、お前は寝てろ」
カズナは向こうを向いたまま、私に言った。
「またね、ネズミちゃん」
マーサは私に手を振ると、2人揃って小屋を出ていった。
つづく
「それで、ネズミが探してる男のことだけど」
急にサトシの話題になって、思わず座り直してしまう。
「うん、それで」
私が前のめりでたずねると、2人は顔を見合わせ首を振る。
「探したが見つからない」
「そんな男は見なかったなあ」
「そっか…ありがとう」
それでも諦めきれずに、私も探しに行くというと、2人は口を揃えて私を止めた。
「ネズミちゃん、やめといた方がいい」
「また、ヒルに噛まれるぞ」
ううっ、たしかに2人の言う通りだ。森の中は、何があるかわからない。私は携帯を見た。右下の数字は動いている。ということは、サトシはこの森のどこかで生きていると言うことだ。
「そいつとはどういう関係?」
「弟みたいな幼なじみ」
弟みたいな幼なじみと返事をして、ちょっと複雑な心境になる。この森での私たちは、なんていうか、こう、幼なじみ以外の繋がりがあったような気がする。まあ、結局はゲームクリアのために、私の気持ちを弄ぶようなことをしたから、許せないけど。でも、ここで死んだときの家族への連絡方法とか、家庭教師代の返金とか、それはやっぱり会って話しておかないと。
つづく
背が高く、髪も瞳も栗色のマーサ。笑顔は、真夏の抜けるような青空みたいに透き通っている。私を見つめる大きな瞳があまりにキラキラしているので、ちょっと緊張した。
「あ、はい、よ、よろしくお願いします」
「あはは、たしかに面白いね、ネズミちゃん」
「いや、私はネズミじゃなくて…」
「お前ら、メシにするぞ!」
「はあーーい!」
マーサは勢いよく返事して、私の前から離れた。まあいいか、名前なんか後でいくらでも言う機会があるだろうし。
私も小さく返事して、カズナのいる囲炉裏に向かった。
ご飯はとてもおいしい。私は食事をしながら、カズナにたくさん質問した。カズナはマーサがいるとよく話すし、よく笑う。2人は息の合った漫才師のように、会話を楽しんでいた。
「マーサは、この森で合宿所をやってて…」
「いや、ちょっと待て、合宿所じゃなくて、宿泊所。れっきとした宿屋だから」
「でも、金とってないし、あいつらと一緒に生活してるだけだろ?」
ふむふむ。この森には、私たちの他にも人が住んでいる。
「それはさ、それぞれ事情があるからさ、金の代わりに、こうして弁当作ってくれたり、勉強を教えてくれたりさ…」
「それじゃ、生活できないだろ?」
「カズナだって、俺たちのケガや病気を、金をとらずに治してくれただろ」
ふむふむ。ということはつまり、カズナは医者で、ここは病院ってことか。だから私を助けてくれたってわけね。
「だって、お前、金ないじゃん」
「カズナもだろ?」
「俺はあるさ。無謀なお前とは違うんで」
「そうだけどさ。だから、こうしてメシを持ってきたり、掃除したりしてるじゃん」
「はいはい」
まるで、学校の休み時間みたい。私は、終始ニコニコしながら話を聞いていた。
つづく
★★★★★
おはようございます
昨日は午後から頭痛が酷くて、午後はあまり更新できませんでした。
今朝もまだ痛くてお薬飲んで寝ています。
早くおさまれ、頭痛。
さて、新しい登場人物マーサです。
優しくて明るい声で、脳内再生してください。
よろしくお願いします。
ともえ
「俺のことは、カズナと呼べ。お前のことは、ネズミと呼ぶ」
ね、ネズミ ?
「ちょ、待ってよ、私の名前は…」
私が名前を言おうとしたそのとき、扉が乱暴に開いて、背の高い男が元気よく飛び込んできた。
「カズナ、持ってきたぞ、メシ!」
本当に出前が来た。驚く私の前に、ズカズカやってくる出前の男。
「オメェ、誰だ」
「わ、私は…」
見下ろされて怯む私と出前の男の間に、カズナが割って入って言った。
「話したろ?こいつがネズミだ」
「こいつがネズミ?ネズミって言うから、てっきり男だと思ってた」
出前の男は黙ってアゴに手を添えて、私の頭から爪先まで視線を走らせる。
「女ってことは…それじゃあ…」
「ああ、そのつもりだ」
話が終わって私を見る、物言いたげな出前の男。
「な、なによ」
私は、後退りしながら男を睨んだ。男はニカっと口を開け、懐に手を突っ込んで何かを取り出すと、ずいっと私の前にきて拳をパッと開いた。
「ほれ」
「ぎゃあ!」
でっかいクモ!
「ネズミで遊ぶな、こいつは病み上がりだ」
カズナに言われて、出前の男は、私にペコリと頭を下げる。
ごめんごめん、俺はマーサ。よろしくね」
つづく
それにしても、私を助けてくれたこの男は、なんなんだろう。銀の髪に白い肌、細いけど筋肉質の体は、まるで朝霧の中を疾走する白馬のようだ。
この男に背中から抱かれながら一晩⁈
意識してしまって、なんだか目のやり場に困ってしまう。
「ふ、服、着ないの?」
「服?今、お前が着てる」
褐色のこの着物のこと?
これは最初に起きた時、私の体に掛かっていた着物だ。あの時、下着の上から羽織ったまま、今に至る。
「い、1枚しか持ってないってわけじゃないでしょう?」
「1枚しか持ってない」
「い、1枚しかないの?汚れたり破れたりしたら」
「そうなったら考える」
「そうなったらって…」
ああ、この人は服に無頓着なんだ。いつも同じ服ばかり着ていたサトシに似ている。思い出したら、可笑しくて吹き出してしまった。
「お前だって、あのネズミだらけの変な服しか持ってないじゃないか」
男は、部屋の隅に置かれた私の部屋着を指差して言った。
「ネズミかわいいじゃない。というか私、服は50枚、いや100枚ぐらいはありますから」
「はっ?100枚?アホか」
「いや、ステテコ1枚で何日も過ごす方が…って、ふふふ」
くだらないことで言い合っているのがさらに可笑しくて、私はケタケタ笑い転げた。
「そんなに可笑しいか?」
「なんか久しぶりに楽しくて。笑ったらスッキリした。ありがとう…えっと、あなたの名前…なんて呼べばいい?」
つづく