第1話はこちら↓
「俺のことは、カズナと呼べ。お前のことは、ネズミと呼ぶ」
ね、ネズミ ?
「ちょ、待ってよ、私の名前は…」
私が名前を言おうとしたそのとき、扉が乱暴に開いて、背の高い男が元気よく飛び込んできた。
「カズナ、持ってきたぞ、メシ!」
本当に出前が来た。驚く私の前に、ズカズカやってくる出前の男。
「オメェ、誰だ」
「わ、私は…」
見下ろされて怯む私と出前の男の間に、カズナが割って入って言った。
「話したろ?こいつがネズミだ」
「こいつがネズミ?ネズミって言うから、てっきり男だと思ってた」
出前の男は黙ってアゴに手を添えて、私の頭から爪先まで視線を走らせる。
「女ってことは…それじゃあ…」
「ああ、そのつもりだ」
話が終わって私を見る、物言いたげな出前の男。
「な、なによ」
私は、後退りしながら男を睨んだ。男はニカっと口を開け、懐に手を突っ込んで何かを取り出すと、ずいっと私の前にきて拳をパッと開いた。
「ほれ」
「ぎゃあ!」
でっかいクモ!
「ネズミで遊ぶな、こいつは病み上がりだ」
カズナに言われて、出前の男は、私にペコリと頭を下げる。
ごめんごめん、俺はマーサ。よろしくね」
つづく