第1話はこちら↓
悲しくなって涙が溢れてくる。いきなりこんなところに来て、もう二度と戻れないなんて。
「戻りたい…」
不安と絶望感に襲われて、溢れる涙を抑えきれず、両手で顔を覆って泣いた。
「どうにもならないのか?」
私は、両手で顔を覆ったまま首を振る。
「…わからない。私だけじゃ…もう…」
森を吹き抜ける強い風が、すだれをカタカタ揺らしていた。カズナは立ち上がり、細く開いた窓をバタンと閉める。私は顔を両手で覆ったまま、絶望感に押しつぶされそうになっていた。長い沈黙を破り、囲炉裏の焚き火がバチンと大きく弾けたその時、
「俺がいる」
カズナが私を抱きしめた。後ろから、なんの前触れもなく。
「俺が…ネズミのそばにいるから」
突然すぎる出来事に、私の心は大きく揺れた。カズナの優しい声と体温を近くに感じて鼓動が速くなる。
つづく