短編 37.弟みたいなキミにときめくなんてありえない | 「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

趣味で小説を書いています。絵を描いたり写真を撮ったり、工作をしたり書道をしたり、趣味たくさんです。古典で人生変わりました。戦国時代&お城好き。百人一首とにかく好き。2016年、夢叶って小説家デビューできました。のんびり更新ですが、どうぞよろしくお願いします。




第1話はこちら↓





悲しくなって涙が溢れてくる。いきなりこんなところに来て、もう二度と戻れないなんて。
「戻りたい…」
不安と絶望感に襲われて、溢れる涙を抑えきれず、両手で顔を覆って泣いた。

「どうにもならないのか?」

私は、両手で顔を覆ったまま首を振る。

「…わからない。私だけじゃ…もう…」

森を吹き抜ける強い風が、すだれをカタカタ揺らしていた。カズナは立ち上がり、細く開いた窓をバタンと閉める。私は顔を両手で覆ったまま、絶望感に押しつぶされそうになっていた。長い沈黙を破り、囲炉裏の焚き火がバチンと大きく弾けたその時、


「俺がいる」


カズナが私を抱きしめた。後ろから、なんの前触れもなく。

「俺が…ネズミのそばにいるから」


突然すぎる出来事に、私の心は大きく揺れた。カズナの優しい声と体温を近くに感じて鼓動が速くなる。






つづく