猫街

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『猫街』(発行人:三宅やよい、編集人:赤石忍、同人代表:近江文代)3号と4号を、送って頂きました。表紙には少しずつポーズの違う黒猫がいて、全体のグラデーションのカラーも少し異なるデザインのお洒落な表紙の同人誌です。各号とも、同人13名の各ページには、それぞれ俳句20句から40句の俳句とエッセイが掲載されています。それぞれのページの伸びやかな俳句の雰囲気。各人の言葉へのこだわりや感性が表現されていて、驚いたり共感したり、楽しませてもらいました。

3号と4号から

近江文代 コインランドリー他人の夏がぐるぐると 

       くすぐってみたい守宮の脇の下

       楽しいと書いて寂しいラ・フランス 

       愚痴ならいつでも聞くよという暑さ

他人だからよかったり、楽しいと書きながら寂しかったり、逆に寂しさの極みがいっそ秘かな慰めになることも。いつでも聞くよが暑苦しさに感じることもあるのだから。そんな時は、守宮の脇の下をくすぐってみたいなんて。

沈 脱  おむすびと温めますか秋の恋  

      案山子行く雲の流儀に任せます

秋の恋、雲の流儀が素敵。

ねじめ正一 春の宵空飛ぶ母の紙オムツ  

        夕立の真ん中走るペリカン

空飛ぶ紙オムツは、母への愛が溢れてる。夕立の真ん中を走れば、ペリカンに会えそうだ。

藤田俊  工場の夜景鯨の尾びれ跳ね       

      海の日の闇にあふれるポップコーン

工場夜景の輝きは、鯨の跳ねる尾びれのよう。海の日の闇にはポップコーンが跳ねている。

三宅やよい  空色に染まるみぞおち春の風邪     

         秋日和不要不急のバクといる

みぞおちが空色に染まるなら、春の風邪も悪くない。バクはいつだって不要不急だよ、秋日和

もね。

諸星千綾   ヒヤシンスお遊戯意地でも踊らない     

         友売って拝むごとくに髪洗う

お遊戯会で意地でも踊らないこどもは、ヒヤシンスのようにクールで美しい。友達を裏切るようなこともある私です。そんな時は、神様をいや友達を拝んで髪を洗います。   

山崎垂   ミモザ咲くくちびるのびるイタリア語  

       自転車のきいと痛がる啄木忌  

元気いっぱいのイタリア語は、くちびるのばして発音する。ゆさゆさミモザが咲くように。

自転車がきいと軋む痛そうに、そうだ今日は啄木忌。

芳野ヒロユキ お正月全人類がチンアナゴ

         風鈴に人にひとつののどちんこ

お正月には、人々はみんな首だしてキョロキョロ、チンアナゴ。

風鈴にも人にもあるね、のどちんこ。

きゅうこ アルパカの毛を刈る頃に来ると言う  

      人格の半分多分夏みかん

アルパカの毛を刈る頃来ると言ったのは、誰?こんな人、いいな。

夏みかんの人格って、きっと酸っぱくて、、さっぱりしてるかな?

静誠司  春の橋ムーンウォークで渡りきる       

       タンポポは地面あいつは枝の先

ムーンウォークで渡るって、難しそう。でも春の橋ならきっとできるよね。

タンポポの咲いている日、枝の先にいる危なっかしいけれど気になるあいつ。

赤石忍  木菟の尖ったキスする石川くん     

      九月には九月のかたち木の実落つ

木菟の尖ったキスって、いい感じ。

八月でも十月でもなくて、九月のかたちがいい、木の実が落ちるなら。

今泉秀隆 もういいかーいとあの子が薄桜   

       あのころの君と今ひぐらしを聴く

いつもあの子と一緒です、薄桜のような。

ひぐらしを聴くのも、あの頃の君と一緒、ちょっと切ないひぐらしの声。

杉山魯壜 エレベーターRを押せば春になる

       夏空や君のワガママが好きでした

何処でも連れて行ってくれるエレベーター、春にだって行ける。

夏空を見れば思い出す君のワガママ、切なくって素敵なお話。