宝物のおかえし | 青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記

青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記

「青い光が見えたから(講談社)」の筆者、高橋絵里香による
フィンランドの暮らしの記録。

青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記


2年前、学校に取材で通っていたとき、

4年生だったユリアがビーズで作った、とかげをくれた。

日本出身の私だからと、

国旗の色の白と赤を使って。


その心づかいが嬉しくて、

思いがけないプレゼントに一瞬言葉を失った。


このとかげは、私の宝物になった。

ユリアがこれを差し出してくれた瞬間も、

彼女との思い出はぜんぶ

大切な宝物になった。


その彼女が、明日小学校を卒業する。


ユリアをはじめ、取材のときにお世話になった

今年の6年生には、感謝の気持ちをこめて、

マカロンを作った。

夜なべして、大量に作って、

今日学校に持っていった。


仕事日はすでに終わったのだが、

今日は教会で集会があったり、

終業式、卒業式の準備をする日だったので、

私も行ってみた。

少しでも、子どもたちと一緒にいる時間を増やしたかった。


「口に合うかなぁ」と心配しながら、

マカロンをガラスの大皿に並べて教室に入ると、

「わぁお~!」アルットゥがびっくりした声をあげた。


みんなに改めて2年前のお礼を言って、2個ずつ取ってもらった。

「おいしい」という声が聞こえてきて、

ホッとした。

けっこうあまったので、

「もし、まだ食べたい人がいたら、どうぞ」と言ったら、

みんないっせいにダッシュで取りに来たので、

一瞬で完売!

お皿をさげに職員室に戻ろうとすると、

「ありがとう!」とみんなが口々に言ってくれた。


しばらく、顔が熱かった。

6年生のみんなに喜んでもらえたことが、

たまらなく嬉しかった。

彼らが私に与えてくれたものの、

ほんの10分の1でも返すことができたら…。


くすぐったいような幸せで

顔がほころんだ日々も、

明日でおしまい。


最後だという実感のないまま、

彼らの卒業式を迎える。




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