2年前、学校に取材で通っていたとき、
4年生だったユリアがビーズで作った、とかげをくれた。
日本出身の私だからと、
国旗の色の白と赤を使って。
その心づかいが嬉しくて、
思いがけないプレゼントに一瞬言葉を失った。
このとかげは、私の宝物になった。
ユリアがこれを差し出してくれた瞬間も、
彼女との思い出はぜんぶ
大切な宝物になった。
その彼女が、明日小学校を卒業する。
ユリアをはじめ、取材のときにお世話になった
今年の6年生には、感謝の気持ちをこめて、
マカロンを作った。
夜なべして、大量に作って、
今日学校に持っていった。
仕事日はすでに終わったのだが、
今日は教会で集会があったり、
終業式、卒業式の準備をする日だったので、
私も行ってみた。
少しでも、子どもたちと一緒にいる時間を増やしたかった。
「口に合うかなぁ」と心配しながら、
マカロンをガラスの大皿に並べて教室に入ると、
「わぁお~!」アルットゥがびっくりした声をあげた。
みんなに改めて2年前のお礼を言って、2個ずつ取ってもらった。
「おいしい」という声が聞こえてきて、
ホッとした。
けっこうあまったので、
「もし、まだ食べたい人がいたら、どうぞ」と言ったら、
みんないっせいにダッシュで取りに来たので、
一瞬で完売!
お皿をさげに職員室に戻ろうとすると、
「ありがとう!」とみんなが口々に言ってくれた。
しばらく、顔が熱かった。
6年生のみんなに喜んでもらえたことが、
たまらなく嬉しかった。
彼らが私に与えてくれたものの、
ほんの10分の1でも返すことができたら…。
くすぐったいような幸せで
顔がほころんだ日々も、
明日でおしまい。
最後だという実感のないまま、
彼らの卒業式を迎える。