最後の仕事日 | 青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記

青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記

「青い光が見えたから(講談社)」の筆者、高橋絵里香による
フィンランドの暮らしの記録。

青い光が見えたから - 16歳のフィンランド留学記



とうとう、この日が来てしまった。

1ヶ月とは、とてつもなく早いもの。

スクールアシスタントとして、小学校で仕事をするのも、

今日が最後。


最後に参加した授業は、

1、2年生の複式クラスと

2年生のクラスの合同体育。

クラス対抗で、フィンランド式野球をした。

まだ上手く打てない人も多いので、

得意な人も、不得意な人も、

みんなで楽しめるように、先生が特別なルールを作ってくれた。


クラス対抗になると、燃え上がる男の子たち。

「この日を待ってたんだ!」

また、死ぬか生きるかの

ものすごい白熱した試合になった(笑)。


カッカしている男の子にどなられて拗ねてたけど、

とんできたボールを見事にキャッチして

先生やみんなに褒められてすっかり自信をとりもどしたミンットゥ。


新しいルールが覚えられなくてミスをして

「ぼくなんて、ダメだ……!」と泣き出したけど、

その後大活躍して、チームをひっぱっていたサンテリ。


「今、まだ12対12?」と、得点を私に確認して、

「うわぁ、ドキドキするー!!」と、

ほっぺに両手をあてて、飛び跳ねていたタトゥ。


たった1時間の中にも、

たくさんのドラマを生み出す小さな英雄たち。


怒りも涙も、笑顔も

どれもこの世の何よりも本物で、

どれも輝いていた。


これから私は、彼らなしで、

どうやって生きていけるだろうか、と思うくらい

1人ひとりがかけがえのない存在になっていた。


子どもたちは、いつでも全力投球。

不器用だけど、精一杯「生きていた」。

大人になった私は、加減を覚えて、

器用に生きられるようになったけれど、

「生きている実感」が持てるのは、限られた機会だけになってしまった。


大人の私たちが、失くしたものを

持っているのが子どもたち。

だから本当は、とても尊い存在。

彼ららしく在ることで、

私の心を再び救ってくれた。


今はまだ、胸のうちのとてつもない気持ちを

上手く言葉に表すことができないけど、

これから時間をかけて

少しずつ言葉にしていこうと思う。


ただ、ひとつ今言えるのは、

この1ヶ月の体験が、

私の心に眩しい光を灯してくれたこと。

その光が、私のこれから先を明るく照らし

導いてくれるにちがいない、ということ。

彼らは、私の光だった。




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