間取り相談の打ち合わせ中、間取りの住まい手であるE子さんと、あーでもないこーでもないと考えた使い方3パターンを紹介する話。
前回の記事↓に引き続き、今回も岡山県在住のE子さんちの話なんだけど…
まずは今回記事の定義を2つ。
- 1マス
- 押入1個分
「1マス」とは、間取り相談で一番多い「尺モジュール」の1マスのこと。
「押入1個分」とは、2マス分で押入1つ。
押入1つ分のイメージ↓
【リクシルの押入】
E子さんちの押入は、「和室」と「玄関ホールからリビングに向かう廊下」の間にあり、両側から互い違いに使う計画になっていた。
↓当初計画の押入付近(図面は収納と表記)
これについてE子さんは、特別お悩みはない様子だったけど、具体的にどんな風に使うつもりか?を聞いてみると…
①は、和室の窓辺で乾いた洗濯物を畳んでしまう。
主に子供の服、置けるなら夫婦の日常服も。
②は、掃除道具や雑多なモノ、大量にあるCDやマンガ本などの奥行きの薄いモノしまう予定であると。
さらに…
和室は特定の誰かの寝室にする予定はなく、「毎日敷布団を仕舞うことはない」ことも確認した。
ちなみに、敷布団をしまうなら、巾1マス分に布団は納まらないのでご注意を!
↑敷布団を入れるなら、奥行き1マス、巾1.5マスか2マス以上いる。
ふむふむなるほど…
計画の状態でもE子さんの計画どおりに使えないワケじゃないんだけど…
E子さんの使い方だと、収納①は必ずしも押入の奥行き(910㎜)は要らないよなぁ…(③の付近)
「畳んだ服を可動棚に積む仕舞い方」もアリだけど、もっと自由度の高い収納方法という手もあるよなぁ…(④の付近)
④の可動棚のために、③④の間に壁があるけど、この壁が無いことによるメリットもあるよなぁ…
ということで、E子さんと「あーでもないこーでもない」と模索しながら、ひとまず3パターンを考えてみた。
補足として…E子さんは、廊下(玄関ホール)側から見た時の「収納扉の統一感」を少し気にされていた。
- 和室窓前で洗濯物をグッズ(ハンガー等)にセットする。
- 和室窓を開け、屋外テラス(屋根付き)に干す。
- 帰宅後、洗濯物を取り込み、一旦、窓辺の竿に移動させておく。
- 時間のある時に和室で洗濯物を畳み、和室の収納へ仕舞う。(←基本的に畳む派。一部ハンガー物もアリ)
和室側の収納は、可動棚など細かい棚を造作せず「ハンガーパイプ付き枕棚」のみにして、下へ引出収納などを置いて、畳んだモノはそこへ入れることとした。
和室側収納の横幅は、なるべく広い方がいいが、廊下側に奥行き深い収納も欲しいので、押入1つ分とする。
奥行きは、1マス(910㎜)も必要はなく、洋服をかけられればよいので、1マスの2/3(607㎜)あれば十分と判断し、凸凹の無いスッキリした収納にすることになった。
ただし…
廊下側は、「残った部分をすべて使いたい」「扉に統一感が欲しい」という部分を優先すると、「リビングドアと物入③扉の干渉」という問題がある。
和室側はA案と変わらず…
廊下側は、「収納扉を1つにまとめたい」「リビングドアとの干渉避けたい」という部分を優先すると、「廊下側の収納力が落ちる」という問題がある。
「廊下側の収納力を増」「ドアの干渉避ける」という部分を優先すると、「廊下側の収納扉の種類に統一感がなくなる」という問題がある。
総合的には↑コレが一番理想に近いかも?
ということになったが、打ち合わせ中に結論は出ず。
「ゆっくり考えてみる…」ということで、ひとまずこの3パターンを図面化し、納品した。
その後、月日は流れ…
E子さんから完成報告をいただいたワケなんだけど、あのとき考えた収納がどうなったのか?気になったので、「最終図面」を送ってもらったところ…
「なるほど、こうしたのね!」となっていた。
結局、E子さんが採用したものは、間取り相談時に考えたC案をベースに、少し改良したものになっていた。
基本的なところは同じなんだけど…
- 「物入②」の扉が「折戸→引違戸」
- 物入②の奥行き確保のため、収納背面壁が「うす壁」に
※引違戸は奥の扉が物入内に入るので、折戸よりも奥行きが必要
1マス分しかない廊下に対し、折戸よりも引戸の方が使い勝手は確かにいいので、この作戦が一番しっくり来る!と思った。
ビルダーさん、ナイスな提案をしてくださったようで、よかった!
■折戸は開けた時、全体が見えるのがメリットだが、手前に扉が折れるので通行の邪魔。
■採用図面は、引違戸になっているので、開けっ放しでも通行に支障はない。
そんな当たり前なことを、坂口がなぜ当初提案しなかったのか?
それは…「建材メーカーの規格寸法にサイズがなかったから」である。
大半のビルダーは、建材メーカーのカタログに載っている規格品を使う。
規格外のサイズにしたい場合は、多少追加費用がかかるが「可能な範囲で特別寸法対応」という手がある。
…が、予算もあるし、特寸対応も色んな兼ね合いがあったりで100%絶対有効というワケでもないので、E子さんちでは当初提案しなかったんだけど、ビルダーさんの計らいでそれらをしてもらえた、ということである。
もう少し細かく言うと…
例えば今回、E子さんちの廊下収納はC案では、横幅1,365㎜である。(←つまり1.5マス分)
この巾にピッタリなクローゼット折戸は、例えばリクシル社のカタログ「ラシッサD」でいうと…
↑このW呼称12というサイズがそれである。
「クローゼット折戸」の横幅は、W07~18Mまで7種類のサイズ展開があり…
高さは、H20、23の2種類がある(画像は23の方なので20の表記はないけど)
つまり…尺モジュールの巾1マス、1.5マス、2マスだけでなく、メーターモジュール1マス、1.5マス、2マスにも対応しているという意味である。
これに対し「クローゼット引違戸」は、横幅W16×高さH20の一択のみ。
つまり…巾2マス分は規格品があるけど、1.5マス分は無いという意味である。
これ以外を希望する場合は、規格サイズ価格の1.3倍の料金、の特寸で…となるのだ。
特寸対応範囲内なら可能だが、割増し料金がかかるし、ビルダーによっては「規格品以外選択NG」という場合もある。
今回、E子さんちのビルダーさんは、積極的に巾×高さ共に「特寸」を提案してくださり、採用できたのだと思う。
E子さんと坂口のあーでもないこーでもないから出てきた3案。
その1つをビルダーさんが上手くまとめてくださった結果、E子さんは↓こんな風に使っておられるそう…
まずは廊下側の収納の向かって左手↓
同じ収納の右手↓
おお~、CDとマンガ、その他もろもろ…整然と納まっていい感じじゃないですか!
奥行きがあまり要らないモノを入れる収納なら、奥行き20㎝あれば十分だし、浮いた分を反対側の収納に回して有効活用できたら最高ですよね!
↓こっちが反対側。和室からみた収納内の左半分。
E子さん、スッキリキレイに納まってますね~。
一緒にあれこれ考えた甲斐がありましたね!
そういえば…
間取り相談直後で、納品図面やレポートをお送りしたときにE子さんから素敵なコメントをいただいていたのでちょこっとご紹介…
「頭の中が整理できた」とありますが…
このセリフ、間取り相談のOBさんもよくおっしゃるんですよね。
■やりたいことは頭の中にあるんだけど、それを目の前の図面に具体的に反映させるにはどうしたらいいのかわからない!
■フワッとしたイメージなので、どうやって担当さんに伝えていいのかわからない!
■間取り相談をしてみたら、ぼんやりしていた部分のイメージがハッキリできた!
…つまり、「頭の中が整理できた」につながるんだなぁと。
坂口の間取り相談では、ホントにしつこいほど根掘り葉掘り「あなたのこうしたい」という部分を掘り下げる質問しまくり…。
言われるがまま図面に…しません。
坂口が「なるほどね~!そうしたいからこうするのね!」と腑に落ちるまで質問攻め
質問をされるウチに住まい手さんも「そこまで考えてなかった」という部分に自分で気づいたり…。
例えるなら…
引出の中の探し物を何となく探すんじゃなくて、中身を一回全部出してひっくり返して一緒に一つずつ取捨選択しつつ探す…みたいな感じ。
だから探し物だけじゃなくて、自然と要らないモノもあぶりだされたりして、引出の中が広くなって使いやすい!みたいな。
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あなたの間取りでも、何となく存在する「収納」ってありませんか?
その使い方を深く考えてなかったかも…という場合、
具体的に何を入れる?そのためには奥行きどのくらい必要?こんなに要らない?不足?などと考えてみてはどうでしょう。
何か気づくことがあるかも…!