佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。



脳卒中後、急性期を過ぎた回復期の時期の機能回復のしくみとして「神経可塑性」があります。





可塑性とは、「状況に応じて役割を柔軟に変化させる能力」のことで、脳卒中などによってダメージを受けた場合、一度獲得した機能が他の機能にかわる能力を意味します。

 

 

1996年のヌード博士らのサルの実験で、麻痺した手足を使うように訓練すると壊れた脳の神経回路が再構築されたことを報告しました。

 

 

この報告で、いったんダメージを受けた脳の機能が、脳の可塑性により回復することを証明したのです。

 

 

この実験では、麻痺した手を積極的に使うように麻痺していない手を使えないように拘束し、麻痺手で強制的にエサを取らなければならない環境をつくっています。

 

 

サルが麻痺手を使ってエサがとれるようになったのち、脳を電気刺激で調べると、もともと細かい手の動きに反応しない部分が手の細かい動きに関する部分に変化していたことがわかりました。

 

 

この報告によって、訓練を行うと手の機能が回復することと、回復に伴って脳が柔軟に変化するという事実が示されました。



この神経可塑性にとって大切なことがらが3点あります。



まず、モチベーションが挙げられます。



モチベーションは脳の中でやる気をつかさどる部分が運動をつかさどる脳部位を活性化することがわかっています。







また、豊かな環境も神経可塑性に大切な視点の1つです。



豊かな環境では、神経の枝がどんどん増えていくことがわかっています。



最後に、運動も神経可塑性に重要であることもわかっています。



これら3点から考えると、リハビリスタッフは患者さんのモチベーションを挙げながら、適度な運動量を決めたり、豊かな環境をセッティングする大切さを痛感します。



患者さん方が最大限回復できるように、これからもいろんなことを調べて、頭の中に留めていた内容を思い出していきたいと思いました。



引用・参考


1) 大高洋平 他:脳卒中患者のリハビリテーション

治療に対するモチベーション. Jpn J Rehabil Med 2022;59:260-264

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/3/59_59.260/_pdf



2) Masahiro Sawada et al.:Function of nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science. 2015.




3) 山本竜也:豊かな環境.脳科学とリハビリテーション.2012

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrn/12/0/12_120102/_pdf/-char/ja



4) 道免和久:運動学習から考察するリハビリテーション臨床. Jpn J Rehabil Med 2019;56:391-397

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/5/56_56.391/_pdf/-char/ja



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