急性期のリハビリ:早く始めることと、やりすぎないことのあいだで
佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。脳卒中を発症したあと、できるだけ早くリハビリを始めることは、これまで多くの研究で重要だといわれてきました。けれど「早く始めるほど良い」ということばかりを重要視できるわけではありません。世界的に有名な研究「AVERT試験(Lancet, 2015)」では、発症24時間以内に高頻度で起立や歩行練習を行ったグループで、3か月後の回復がかえって低くなる傾向が報告されています。つまり、「早期離床」は大切だけれど、「過度の早期・高頻度リハビリ」は身体に負担をかけすぎてしまうのです。急性期の身体は、脳も心臓も自律神経も、まだ嵐のなかにいます。もちろん、ご自身の状況であるかわからずに、お気持ちもついていかない時期のことが多いです。だからこの時期のリハビリは、「短く」「頻回に」「慎重に」が基本だと思っています。たとえば1回あたり数分から十数分の練習を、体調を見ながら一日に何度かに分けて行うこと。ベッド上での寝返りや座位練習から始まり、少しずつ立つ・歩くなどの動作へと進めていきます。研究によれば、過剰な負荷よりも“安全に繰り返せる小さな動き”を増やすことが回復の第一歩とされています。スタッフが呼吸や血圧、意識状態をこまめに確認しながら、慎重にステップアップしていく。このバランスが、長い回復の道のりを支える土台になります。急性期の目的は「脳を守りながら、回復のための地ならしをすること」だと考えています。また、とても重要なことは必ず医師の判断でリハビリが開始されるということです。場合によっては、発症まもないころは麻痺の状態が悪くなるパターンの脳梗塞であったり、脳が腫れて命が危険な場合もあります。リハビリスタッフは医師の指示がなければリハビリは行えません。このことは決して軽んじることはありません。動くことを止めないこと、でも“やりすぎないこと”、”医師の指示に従うこと"。この時期の小さなリハビリこそが、未来のリハビリを支えると思っています。☆*:.。.最後まで読んでいただきありがとうございました.。.:*☆