『ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会』 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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『ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会』(著/青柳碧人)

「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」で一躍注目を浴びた青柳氏作品。

晴れて女子大生になった中川亜可美が憧れのりサークル活動を通し、恋に友情に悩みつつ成長していく青春ストーリーである。

と、書くと一見まともだが、彼女がうっかり入ってしまったサークルが問題である。

ヘンな建物研究所、略してヘンたて。

例えば窓が潰されたのに庇だけが残っていたり、たった三段しかない階段だったり。

本来の役目を果たせずに存在する『トマソン』な建物などを見て回り研究するという奇怪なサークルだったのだ。

ありえへん建物が舞台のミステリー、青柳節炸裂である。

短編連作となっているこの本にはいくつかの『ヘンな建物』が登場する。

この程度なら実在しても無理はないかな?と思うものから、いや、推理先行で建物考えたでしょ?っていう無理な建物まで色々と登場する。

推理のほうは(少々屁理屈っぽいが)納得できる筋書きになっているのでそこは青柳ワールドに没入してお楽しみ頂きたい。

なにせこの話、ミステリーだが本物の殺人事件が起きない。

メンタル弱ってる(人が死ぬ話すらきつい)ミステリー好きには有り難い設定なのだ。

ヘンたて研究会のメンバーも個性豊かで、彼らとのサークル活動は楽しそう。

ただメンバーの名前に中途半端に魚の名前(すしネタ)が入っていたのが気にかかる。

全員が魚関係の名前でないのに、無理にすしネタっぽい名前にしたような不自然な名前もある。

このあたりが狙ったことなのか、はたまた偶然のことだったのか是非とも作者さまにお伺いたい。