『マヨナカキッチン収録中』(著/森崎 緩)
(注:感想を書く前に本を図書館に返してしまったので記憶違いがあってもご容赦ください)
舞台はテレビ番組制作会社、つまりはテレビ局の下請け。
主人公の麻生霧歌はこの会社『チルエイト』のアシスタントプロデューサーだ。
ハードで目まぐるしい職場だが、熱意と愛情を持って仕事に励んでいる。
彼女が手掛ける深夜番組『マヨナカキッチン』は、かつてのスキャンダルで干されていた俳優・文山遼生がメニューを考え作るお料理番組だ。
文山はプロ顔負けの料理の腕前を披露する。対して霧歌は料理の手際こそ良いが包丁を使わずキッチンバサミで全てを済ますズボラ料理の申し子だ。
霧歌は問題にぶつかった時や困ったときなどに、文山が番組で紹介した料理を作りやすくアレンジして周囲に振る舞い、幾度となく問題を収拾してきた。
それがこの物語の肝である。
霧歌のアレンジ法を見ていると、難しかったり面倒だったりなレシピに出会っても作りやすく省略すればよいか、と気持ちが楽になる。
また彼女の年齢が三十代半ばというのがリアルだ。少し前なら女性の主人公は多少設定に無理がきても二十代に納めただろうに。
尊敬する先輩、切磋琢磨する同僚、まだ目が離せないけど成長を願う後輩。
それぞれを見詰める霧歌の想いがこの年齢であるからこその重みが出てくる。
主人公の年齢をどこに設定するかは、物語を通して伝わるものに大きな影響が出てくるのだ。
ふと我が身を振り返る。
自分は年齢に相応しい中身を伴っているのだろうか。
まあ霧歌はフィクションの人だしと言い訳しつつ、年相応の立ち居振る舞いを心掛けようと誓うアラフィフであった。