以前(情報とヘルスリテラシー①)の記事は、『情報社会の問題点とそれに対する意識』ということで
- 食や体の“専門家”でも、必ずしも有益な情報を発信しているとは限らない
- 情報社会の中で論理的に物事を判断するための知識がなければ、自分にとって最良の判断をするのは難しいのではないか
というお話でした。
今回はそれの続きで
『誰もが安全な情報を取捨選択できるようになるにはどうしたら良いのか』
つまりは“情報リテラシー”や“ヘルスリテラシー”の獲得の仕方
について考えていこうと思います。
※これから述べることはそういった資格の持つ方全員が該当する、というのではなく、
“正しく誤解のないように細心の注意を払って発信・指導されている方も勿論いるけれど、そうでない人も少なくない”
という前提があってのお話ですので、その点はご理解いただきたく思います。
【前回の振り返り】
対策をお話する前に、まずはどんな課題があったのかを振り返ってみようと思います。
“身近にいる食や体の“専門家”でも、必ずしも有益な情報を発信しているとは限らない“
という事でしたが、これに該当する場合をざっくり挙げるとすれば
- 資格は持っているが有益な情報では無い場合
- そもそも資格を持っていない場合
- 発信している本人が良かれと思ってやっている場合
の3パターンがありました。
まず①の『資格は持っているが有益な情報では無い場合』でどういったことが考えられるのかというと、
- 人が『早くて楽で簡単』なものを好むことを利用してビジネスを展開しようとする人(個人相談・SNS・ダイエット商品など)
- テレビの出演料をもらって1種の『エンターテインメント』として“出演”している場合
などが考えられます。
次に②の『そもそも資格を持っていない場合』は
- 意図的に嘘をついて注目を集めようとする人
- 資格の条件を理解せずに使ってしまっている人
の2つを挙げました。
最後に③の『発信している本人が良かれと思ってやっている場合』は、
資格を持っているものの、
勉強してきたものの中に“抜け”がある、
もしくは発信者本人の情報・ヘルスリテラシーが不十分であることで新しい情報の精査ができていない、
などによって生じる可能性が考えられます。
つまりは資格を持った専門家が良かれと思って提供する情報が正しいとは言えないものだった場合ですね。
個人的にはこの③のパターンが一番厄介なものだと思っていて、その理由は2つあります。
1つ目は本人が良かれと思って(情報を心から信じていて)発信しているために、発信することに悪気はない事。
これがどうしてかと言うと、悪気がある文章とない文章では雰囲気が全く異なるからです。
人に合う・合わないがあるように、文章にも『相性』があって
実際、どんな文章なのか・どんなウェブページなのか・どんな投稿なのか……によって受け取り側が感じる印象もかなり変わってきます。
それは、文章にその人の考え方や人柄が現れるからだと私は思っていて、
私自身、同じ文章でも『合わない』場合は全く聞き入れられない一方で、
『合う』場合はすんなりはいってくるうえに、信憑性を気にせず鵜呑みにしてしまうことが多い傾向にありました。
そして2つ目は、所々に有益な情報が交えてある事。
つまりこれは、①のビジネス展開として利用する人とは異なり、
すべてにおいて誇張表現しているわけではないので、話している一部分がフェイクで、ほかの部分は有益である状態という事です。
そしてこれがなぜ厄介なのかと言うと、
一部の有益で正しい情報でフェイクの情報の信憑性が変に増して、間違った部分がまるで有益な情報のように感じられてしまうことが多々あるからです。
こうして書いていると、私も将来、無意識のうちに間違った情報を発信してしまわないように気を引き締めて勉強に努めなくてはと姿勢を正されますね。
このように、もはや信頼できる相談先だという証明になるはずの資格でさえ、本当に鵜呑みにしても良いのか分からなくなってしまっている現状があります。
そんな情報社会の中で思わぬ被害を受けないように生きていくためには、『早くて楽で簡単』という誘惑に揺らぐことなく、冷静に情報を取捨選択していく能力が必要です。
しかし『論理的思考』を得る、すなわち自身が専門書や専門の学校で勉強をし、正しく理解しない限りはそういった能力を身に着けること自体が難しくなっているようにも思います。
ただ、それを「難しい」だけで済まして目を背ければ、私のように情報に翻弄されて摂食障害になる人がこれからも増え続けていくことになりかねません。
では一体どうすればこのような事態を防ぎ抗うことができるのでしょうか。
私なりの解決案をこれから一つずつ書いていこうと思います。
【1:資格は持っているが有益な情報では無い場合への対策】
上記した問題点で言うと、
- ビジネスとして展開している人
- CMとしての役割やエンターテイメントとして出演している場合
に対する対策です。
これは前回もお話ししたものなのですが、最も有力な対策はやはり
- 人は『早く、楽に。簡単に』という道を選びがちである
- 所謂“ギャラ”をもらって番組が面白くなるコメントをする“仕事”である
など、こういった資格の利用の仕方があるのだという現状を知っているか否かが、翻弄されやすさを大きく左右するポイントの一つだと思っています。
減量という意味合いでの『ダイエット』は、日本の中に限らず多くの人の関心を集めている話題です。
だからこそテレビを中心としたメディアはピックアップして視聴率を上げるために面白い報道の仕方を考える。
でも実際、『ダイエット』として減量する最も効率的で現実的な方法は『食事を整えて運動する』という、とても地味な作業しかありません。
それを面白くするためには、やはり誇張表現が必要になってきてしまいます。
しかし、誇張表現しすぎると話題にしているもの自体が嘘っぽく感じてしまう。
そこで番組を盛り上げる“仕事”の一環として専門家を呼ぶ、という方法に至るのかもしれませんね。
【そもそも資格を持っていない人への対策】
そもそも資格を持っていない場合への対策は、
正直言うと『その人が資格を持っているか否か』を判断するのはなかなか難しいので、これといった解決案は浮かびませんでした。
しかし、その人の発信する情報が
- 何か特定の栄養素や食品を全く摂ってはいけないと主張している
- 「なぜそういった結果になるのか」具体的な説明ができていない
(例えば、『~はダイエットに良い食品なので…』『~は痩せる成分が入ってるみたいなんです』等)
- 『病院(もしくは医師)が実際に行っている方法』を主張
→病院での徹底的な管理下でしか行えない減量方法があるため、それを積極的に取り上げている場合は、信憑性が低い情報かどうかの判断材料となります。
またこれは理想論ですが、
人の身体に関する大事な情報を扱う仕事なのであれば、資格のレベルは条件が比較的厳しい国家資格か公的資格レベルだけに絞って管理する必要があるのではないかと思います。
なぜなら、今や摂食障害は世界問題にまでになってしまっていますし、『医食同源』という言葉があるように、食と健康(医療)は密接に関わっているからです。
人の身体は一度壊してしまうと戻るのは容易ではありません。そんな大事な人の身体と食に関して、
講習会に何回か参加しテストを受ける、という比較的『早く』取得できるようなもの含めて “専門家”と一括りにしても良いのだろうか、と些か疑問に思います。
【発信する本人が良かれと思っている人への対策】
こちらに関しては上記した通り、『利益のある情報と無い情報が混同している』状態ですので、
いきなり表現が曖昧になったり、具体性に欠けたり、根拠が無い主張になっていたり、何か一つの成分や食品に固執するような(~は絶対食べちゃダメ、~は痩せるから毎日摂れetc…)部分が出てきたら注意する目印かもしれません。
そして、これもまた理想論ですが、これから国絡みで対策するべきだと感じる点として
- 国や市町村が管轄する、疾患を持っていない人向けの相談先を作る
- 大人から子供までを対象とした『食育』の充実化
の2点があると私は考えています。
まず前者は、『ダイエット』含める体のことに対する相談を専門家にしてもらおうという風潮が殆ど無く、気軽に検索できるインターネット等に頼るしかない問題を解決するための案です。
公的に一般の人が食や健康・ダイエットについて国や市町村の太鼓判を押された専門家に相談できる施設があれば、非罹患者でも気軽で安心な正しい栄養指導を受けることができます。
また責任の所在が国や市町村であれば法的な管理が為されるため、無責任な指導をする人もむやみやたらに出てくる確率も低くなると思います。
その施設に相談に行けば、必ず“国や市町村の太鼓判”つまりは“国家資格”や“公的資格”を持った人たちに相談できる。
もしそんな環境を作ることができたのだとしたら、もっと多くの人が『論理的思考』を得る機会を得られるのではないでしょうか。
一方で後者の“大人から子供までを対象とした『食育』の充実化”が必要だと思う理由は、
- 子供たちに義務教育と同等の扱いで『食育』を学習に取り入れ、医食同源の意識を高める事、
- 大人自身の健康の保持増進はもちろん、(大人から子供への影響で起こる)食に対する固定概念からの悪循環を断ち切る事
が必要だと思うからです。
特に、多くの人が健康や食に関心があるにも関わらず有益な情報を得られる機会があまりにも少ない現代において、
どんな人でも平等に教えてもらえる機会が与えられる『食育』はボディイメージや摂食障害含む食関係のトラブルを防ぐカギになってくる気がします。
【“考える”ことを辞めない】
『バナナダイエット』『発酵食品ダイエット』『○時間断食ダイエット』『スムージーダイエット』『燃焼スープダイエット』、『ヴィーガンは痩せる』『痩せている人はベジタリアン』 etc...
最近では『糖質制限ダイエット』『脂質制限ダイエット』『オートミール』や『アサイーボウル』なんかも流行りましたよね。
テレビでは特定の食材をピックアップしては『ダイエットに効果あり!』という言葉をよく耳にしますし、
どれが不健康で、どれが詐欺商品で、どれが効果的だ……なんて議論も絶えることはありません。
そんなダイエット法の流行り廃りがある傍ら、いつまで経っても肥満症の治療に速効性のあるダイエット法は確立されていませんし、100%理想の体型になれるダイエット法は生まれません。
その理由はずばり、人間(自分)の身体を理想の身体へ持っていくことは「簡単で楽で単純」な事ではないからです。
治療において『食事療法』とされるものでも、
その患者さんの身体に対してどのくらいのペースで減らしていけば栄養失調にならないかを計算し、慎重に経過を見ていく方法を取りますし、
何か特別な疾患がない限りは“炭水化物・脂質・タンパク質”を中心とした栄養素を欠かすことはありません。
事実、肥満症の患者さんに対して極度なカロリー制限で食事療法をする場合もあるようですが、
そういったことになる場合はそれほど早く対策しなければ命に危険が伴う場合など、最終手段のような治療法になります。
そしてそのような場合は必ず、医師や管理栄養士の管理下で行わなければならないということになっています。
つまり結局のところ、人が健康でいられる方法は“バランスの取れた食事”と“適度な運動”をすることのみで、
理想の身体になる為にはそれ相応の“トレーニング”や“栄養素バランスの調整”が必要だという事です。
そしてそれは、様々なダイエット法を探している全員が薄々気づいていることなのではないでしょうか。
それでも『早く楽に単純に』思えてしまう偏った方法や固定概念を選んでしまうのは、それほど『早くて楽で単純にできること』の魅力が大きすぎるからだと思います。
しかしこれに限っては、人間の性なのでどうしようもありません。
論理的に考えられる知識を身につけたとしても、『早くて楽で単純にできること』を選択した方がメリットが大きいのであれば喜んでそちらの方法を選びます。
昔から現代にかけて様々なものが進化し便利になっていくのも、この欲求があるからでしょう。
この人間の性にあらがうことはなかなかできないし、ここで理想論だけを説いても明日から変わるわけではありません。
ならばどんな人でも今からできる事は何なのか?というと、
『考えることをやめない』ことだと私は考えます。
これは、“情報を疑う”と言う意味合いでも“自分に適した戦略を考える”と言う意味でもあります。
『私の目的は何なのか?』
『目的に合った戦略を選んでいるのか?』
『戦略の先に自分の欲しいものはあるのか?』
『本当にこの情報は信憑性のあるものなのか?』
『この情報を発信している人の目的は何か?』
私もついついこうした部分に盲目になってしまうのですが、以前の私と違うところは
私がそうなってしまったときに周りから指摘されて、その言葉を素直に受け入れ我に返ることができる瞬間が多くなった所です。
それはきっと、『考えることをやめない』ことが大事だと自覚したからなのではないかと思っています。
石も宝石もある玉石混交な情報の中から本物をつかみ取る為に、
自分が魅力的だと感じる情報を目の前にしたとき、一度立ち止まって考えてみて
自分が一番後悔しない選択をしていただきたいと、私は切に願っています。
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