前回の記事(『自分を変える②』)では、私が摂食障害から抜け出す方法の一つとして行った『論理的な思考を得ることで自分の価値観を変える』という事についてお話ししました。
しかし、私が論理的な思考を得ることができたのは
- 管理栄養士さんから栄養指導を受けたことできっかけを得た
- 管理栄養士になりたいと専門の大学へ進学した
など、ありがたいことに世界共通の専門知識である『栄養学』として
食事や人体について学ぶ機会があったからで、これらの方法は決して身近なこととは言えません。
そこで「栄養士」「保健師」「ダイエットアドバイザー」「食生活アドバイザー」等
といった資格を持つ人が、身近にアドバイスしてくれる存在として位置していると私は考えています。
ところが、残念ながらそういった人たちの中には“人が『早くて・楽で・速い』ものに魅かれる”ということを上手く利用して、ビジネスを展開させたり注目を集めたりする人も少なくはありません。
また、そういった意味では『医師』や『管理栄養士』を名乗る人も例外ではありません。
保健師は保健センターや保健所・病院などが主な就職先のようですし、個人的にメディア露出も少ない印象ですが
そこで今回から
- 情報社会の問題点とそれに対する意識
- 誰もが安全な情報を取捨選択できるようになるにはどうしたら良いのか(=情報リテラシー・ヘルスリテラシーを得るには)
を二回に分けてお話ししようと思います。
今回は“情報社会の問題点とそれに対する意識”についてです。
【『論理的思考』が必要な理由】
本題に入る前にまず、前回の記事でお話しした『論理的思考』が無いと
どんなデメリットがあるのか、そしてそれを得ることでどんなメリットがあるのかについて改めて整理してみようと思います。
まず、『論理的思考』がない場合にどんなデメリットが考えられるかと言うと、
- 不効率な方法を取ってしまう
- 本末転倒な結果になってしまう
- 目的を見失ってしまう
- 危険なことをしている自覚が持てず、いつの間にか体の負担が大きくなってしまっている
- 体に悪いと自覚していながら、依存状態や自分ルールから抜け出しにくくなる
というような項目が挙げられ、これらは実際に私が経験してきたものです。
このような状態に陥ってからは、
”自分の実際に見聞きしたこと(Ex:食事をした後に数グラム増えていた=太ったと思う…等)”や、”これといって科学的根拠も言えないのにも関わらず、ただ信じているもの”が私の全てになってしまっていました。
そして、その先には「早くて楽で単純」な方法を謳う、自分の信じたい情報に振りまわされる毎日しかありませんでした。
そのため、いくら周りが私を思って体に負担のかからない効率的で正しい方法を教えてくれたり、間違った方向に行くのを引き止めてくれようとしたりしても全く聞く耳を持てずにいました。
寧ろ「周りは私を太らせようとしている」と敵対心を抱くようになっていたほどです。
そうなってしまえば、私も疑心暗鬼になって誰にも相談できませんでしたし、
殆どの場合はいつの日か諦めて私の近くから離れていくという結果になります。
一方で、知識として栄養や体の仕組みについて論理的に理解することができるようになってからは
- 情報過多な中で自分の理想への最短ルートを選ぶことができる。
- 冷静な状態で行動に移しやすい
- 体への負担が少ない
- 目的を失わず、手段として実践と修正を繰り返すことができる
- 人の話を聞けるようになる(=人があまり離れていかない)
など、心身共に自分にとってメリットの方が多くなっているなあ、という実感があります。
これによって、サプリメントやダイエット商品にお金を消費し
「これを飲まなければ太る」「毎日筋トレメニューをこなさなければ太る」
などといった自分ルールに縛られる毎日からは解放されました。
さらに、情報の取捨選択ができるようになると自分の理想を叶えるための最も負担の少ない最短ルートを選択できているように思えます。
この『自分で選択する』ということはその分野について“知らないと”できません。
「~らしいよ!」「その方法はこっちに変えるべきだ!」というような情報を、文献も根拠も説明できないまま信じるのはリスクが大きすぎますし、
いつまで経っても「これでいいのだろうか」「この方法以外は知らない(これしかない、というような依存状態)」などの不安から逃れることはできません。
そのため私は、常に食事や体についての思考を巡らしておかなければならなくなってしまいました。
対して論理的に納得して、自分の考え方を説明できるようになってからは
食や体についての無駄な思考が減り、そのぶん自分のやりたい事を見つけたり、趣味を楽しんだり、自分磨きをしたり、様々な人と関わってみたり……
頭の中の余裕が出れば、それに伴ってやれることも増えていったように思います。
【正しい知識を得る難しさ】
ところが、その『論理的な思考』を得る方法も簡単ではありません。
時間はかかるし、場合によってはお金もそれなりにかかるかもしれないし、まず栄養や体についての正しい知識を専門家から教わることのできる場所も限られています。
私のように栄養指導を受ける機会も万人にあるわけではありませんし、全員が栄養学を学ぶことは現実的ではありません。
「楽しい」と思えない学問を学ぶのはそれこそ“勉強”と言う行為自体が苦痛になりかねず、これまた本末転倒です。
そこで登場するのが
- 栄養士
- 保健師
- ダイエットアドバイザー
- 食生活アドバイザー
などの資格を持つ、管理栄養士などの医療従事者として働くことができる職業に比べると身近にいるイメージがある職種の方々なのではないでしょうか。
しかし、さらにここで問題が発生してしまいます。
それは、資格があっても信頼できる情報を得られるとは限らない、という事です。
ちなみにこれは、医師や管理栄養士の資格を持っているという方でも同様です。
その理由は、私が考え付く限りでは
- 資格をビジネスに活用している
- そもそも資格を持っていない
- 発信している本人が良かれと思ってやっている
の3つがあります。
※これから述べることはそういった資格の持つ方全員が該当する、というのではなく、“正しく誤解のないように細心の注意を払って発信・指導されている方も勿論いるけれど、そうでない人も少なくない”
という前提があってのお話ですので、その点はご理解いただきたく思います。
【資格をビジネスに活用している場合】
健康志向の向上によってテレビや雑誌・ネットなどのメディアでは減量(ダイエット)をテーマにしたものをよく見るようになったのは、昨日今日の話ではありませんよね。
年齢性別問わず、現代社会の中で“食事”や“体型”“減量”などの話題に関心の無い人はあまりいないのではないでしょうか。
それに付随して、
食や人体の専門家を謳う人が“減量”や“健康”に関しての情報をビジネスとして展開しているところも多く見かけるようになりました。
もちろん事実のみを淡々と説明している人もいらっしゃるのですが、
中には人の性である『早くて楽で単純にやりたい』という部分を利用するように事実を誇張表現して、まるで簡単に早く効果が出るかのように発信していらっしゃる方もいます。
また、『この食材を食べればここに脂肪が付く』というような根拠の無い情報を発信している方も残念ながらゼロではありません。
このように、資格を持っていても情報源としては正直お勧めできないことがあります。
“知らない”ので、その情報が自分にとって本当に有益なのか否かを判断するのは難しいのですが、
判断基準の一つとして、その人がどういった目的のもとでその情報を発信しているか、と言う点に注目するのも手ではあります。
ただこれだけは断言できるのが、
速効性のあるもの(目安としては、どんなに肥満型でも1か月に体重の5%減少すれば低栄養と診断されると習いました)は、“ヤバい薬を使っている”か“ただやつれているだけ”という事です。
そして、もし低栄養なのであれば代謝は悪くなってリバウンドの原因にもなってしまいます。
またこれは以前、教授がお話してくださったことなのですが
栄養に関するテーマのときにテレビに出演している先生は、
ほとんどの場合が専門の学会で見かけたことのない人だったり、都合の良い点だけ切り取られていたりすることが多いようです。
全員が全員、所謂“儲けること”が一番の目的で活動しているとは言いません。
しかし、
人の「早く、楽に、簡単に」きれいになりたい(減量したい)という部分を利用したビジネスがある。
それを承知しているか否かで情報を選別する力の質がかなり変わってくるのです。
【そもそも資格を持っていない場合】
このパターンは、“意図的に嘘をついている場合”と“本人すら気づいていない場合”の2通りが考えられます。
“意図的に嘘をついている場合”は説明するまでもないかもしれませんが、
本当は資格を持っていないにも関わらず勝手に資格の名称を悪用している場合です。
もちろん、ブラックな会社でない限り、国家資格や公的資格レベルのものであれば採用試験の時点でバレます。
しかし、民間資格であれば履歴調査や証明書類の提出がない事がありますので、その場合はそのまま仕事をやれなくもない、という状況も考えられます。
また個人経営の場合は、そもそも採用試験が無いので、いくらでも自称ができてしまいます。
情報を受け取る側からすれば、その人が資格を持っているか否かというものは確かめようがないのですが、この場合の判断基準としてひとつ、
情報源が「公的機関」「名前を聞く会社」「大学」など、組織として活動していることもポイントになるかもしれません。
一方で“資格を持っていないことに本人すら気づいていない”という場面はどういった場合かというと、
国家資格・公的資格・民間資格の違いについて理解せずに資格の名称を使っている場合です。
皆さんは『栄養士』と『管理栄養士』の違いがどこにあるのかをご存じでしょうか?
私も大学で説明を受けるまでは知らなかったのですが、簡単に言うと
栄養士=都道府県知事からの認証を受ける公的資格。健康な人々が対象。
管理栄養士=国からの認証を受ける国家資格。健康な人から疾患を持つ人までの生きる人全員が対象。
といった違いがあります。
さらに、栄養士と管理栄養士では学ぶものの数が違いますし、実習がどれくらい入るのかも変わってきます。
また認証されるまでの経過としては、管理栄養士養成が目的の4年制大学に通っている場合、
卒業すれば取得できるのが栄養士、卒業して得られる国家試験受験資格で国家試験に合格したら得られるものが管理栄養士となります。
他にも栄養士に限っては栄養士養成施設に2~4年通えば取得できる資格であり、
そこから管理栄養士を目指すとなるとさらに実務経験を1~3年積んでから国家資格に合格しなければなりません。
つまり、栄養士・管理栄養士を養成する学校で授業を受けて卒業できたとしても、
必ずしも管理栄養士になれるわけではないのです。
しかしそこの区分けが曖昧で(一応、授業内で説明を受けるとは思うのですが) 、栄養士免許を取得し自営業もしくは個人の活動をしようというとき、
「なんか、管理栄養士の方が専門家っぽい」などのような感覚で自称してしまう、という事もあり得なくはありません。
なぜなら上にも書いたように、専門家でない限りは『栄養士』と『管理栄養士』をはっきり説明できる人が少ないからです。
この場合、きっと自称している本人は悪気があるわけではないのかもしれませんが、
やはり資格のイメージという意味では説得力の差も出てきてしまうので、あまり目を伏せられることでもありません。
そもそも『管理栄養士』が国家資格のため、資格の偽装行為と同等のことをしてしまうと法的な問題になってしまう可能性も無きにしもあらず……。
ただ先ほども書いたように、個人経営や活動の場合は確かめようがないのでそのまま自称できてしまうというのも現実です。
そのため、情報を受け取る側としては『こういう人もいなくはない』という心もちで慎重に情報や商品を選別していく必要があるのです。
【発信者が良かれと思ってやっている場合】
これは、本人自体は人に「正しい知識を教えよう」という目的のもとでやっているものでも、結果が伴っていないパターンです。
つまり、資格は正式に取得したものの所々の知識が曖昧である状態ということです。
もしかしたら「試験に合格してるなら大丈夫なのでは?」と思う方もいるかもしれませんし、その意見も間違ってはいません。
なぜなら、知識が曖昧だとまず国家資格を通過できない可能性の方が大きいからです。
管理栄養士や保健師となると
必要なカリキュラムや実習を重ねたうえで、そこでさらに国が定めている国家資格に合格しなければ取得することのできない狭き門を通過しなければいけません。
しかし、大学に通っていて感じたのですが
同じ学校に通う仲間の中には、所々の知識が曖昧でも何故かテストの点数や単位は取れている子や、基礎を習ってきているのにも関わらず偏った減量をしようとする子も残念ながら少なくありません。
もしそのような状態で国家資格に合格できたとしても仕事の中で支障が出てくるのは目に見えてわかります。
一方で、SNSの発信やネット記事のバイト・副業サイト等々の場合はその人の知識の中での『栄養指導』が提供されますから、
信頼できるような情報だという保証があるかと言えば、そうとは言えないのではないかというのが正直な私の意見です。
【安易な情報発信の課題】
ここまでくると、何が正解で何が不正解なのか分からず、疑心暗鬼になってしまいそうですね。
私は、そんな情報社会の中で、専門的な学びを得る機会がない人たち含む個々人が情報を取捨選択していくのは難しい気がします。
今や摂食障害や間違った情報からのトラブルは世界問題です。
だからこそもっと社会的に対策していくべきものがあるのではないでしょうか。
そして私自身も発信する側として、誤解を招くような表現をしないように細心の注意を払わなくてはいけないなと肝に銘じました。
また『管理栄養士』という食の専門家を目指す者として、
常に最新の正しい知識を提供するためには、今からアンテナを張る習慣をつけつつ、取りこぼしがないように勉強に励まなければ!と姿勢を正される思いです。
それを踏まえたうえで、次回は
- この問題をどうしたら情報を正しく選択できる環境に変えていけるのか
- どうしたら情報リテラシー・ヘルスリテラシーが身に付くのか
自分なりの考えを描いていこうと思います。
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