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仮想儀礼〈下〉/篠田 節子

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『ゴサインタン』を読んで以来愛読しているシノセツだけれど、大体他の本は読書メーターでの読者数は二桁。
文庫も出てないのに直木賞の『女たちのジハード』をはるかに上回るこの本の意外な人気はナニよ?と、息子に頼んで図書館で頼んでもらったところ、またもや忘れた頃に借りてきてくれたので、読もうと思っていた本を中断して読んでみました。
学校の図書室はスペースが限られてるので、リクエストされた本全部を学校が買うワケじゃなくて、市の図書館から学校が借りて又貸しするような形をとってるみたいですね。
それはともかく、450ページ前後の単行本を2冊も持って帰ってきてくれた息子に感謝。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
東京都庁で働く地方公務員、30代で本庁の課長というエリートながら、覆面作家としてゲームのノベライズを副業としていた鈴木正彦は、極度の疲労の中囁かれる甘言に弄され、オリジナルのゲームブックを出版しあらゆるメディアで展開するという夢に全てを賭けて妻にも相談なく退職を決意する。
しかし、彼を待っていたのは離婚と彼に企画を持ちかけた元ゲーム会社の社員・矢口の失踪だった。
偶然矢口を捕まえた鈴木は、彼を追求するが、女性問題で元の会社を辞めさせられた矢口自身も、あくどい出版社の被害に遭ったようなものだと知る。
折しも世界貿易センターの自爆テロの映像が報道される中、食い詰めた2人の思考がたどり着いた究極のビジネスが、宗教であった。
鈴木は教祖としてペンネームの桐生慧海を名乗り、ゲームブックの内容を脚色した寄せ集めの教義を謳ったホームページを矢口が開設する。
常識的なアドヴァイスをする鈴木と、女性や生きづらい系の若者の扱いに長けた矢口の興した教団・聖泉真法会は徐々に信者を増やしていく。
やがてさまざまな事件をきっかけにマスコミや信者の家族、一般市民の糾弾を受けるようになった教団と桐生慧海こと鈴木は、一部の熱心な女性信者たちによって生み出された信仰に引きずられるように、常軌を逸していくのだが…。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
いつもながら信仰という人の根本に関わるテーマに社会問題を交えながら一大サスペンスに仕上げる"篠田節"は、本の厚みや書き手の性別を意識させません。
宗教三部作といわれる今までの作品で描かれたのは、それぞれの事情を抱えた男性が求める人やもの追って向かったチベットやアジアの架空の国でのできごとだったり、文芸誌の出版社の一社員が謎の作家を追って東北を旅するといった物語だったのに対して、この作品は日本のごく普通の街中を舞台にし、信者には伏せているものの一介の元地方公務員の書いたゲームブックの世界をたてまえににし、その実は常識的な道徳の心得の訓示や身の上相談しか行っていない教団の元に集った、どこにでもいる若者や主婦、経営者というそれぞれに孤独を抱えた信者層をリアルに描いたことが人気の秘密でしょうか。
ただし複数の人間を巻き込んだリアルな物語だけに、人や現代社会の内に抱えるドロドロとしたものや狂気が、よりヘヴィーに描かれた作品だと思います。
おもしろくないとは言わない、むしろ一気に読める勢いのある作品ですが、個人的にはこの本きっかけに篠田節子を読んだ方にはまた違った作品(『ゴザインタン』や『女たちのジハード』など)も読んでほしいもの。








