クロヤギ頭の読まず買い -8ページ目

クロヤギ頭の読まず買い

ちまちまと進まない読書をしつつ、本を買うのは止められない。

こんなに買っていつ読むん?と自分に一人ツッコミを入れつつ日々を暮らす不良主婦の読書(購入)記録ブログ

仮想儀礼〈上〉/篠田 節子

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仮想儀礼〈下〉/篠田 節子

¥1,890
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『ゴサインタン』を読んで以来愛読しているシノセツだけれど、大体他の本は読書メーターでの読者数は二桁。

文庫も出てないのに直木賞の『女たちのジハード』をはるかに上回るこの本の意外な人気はナニよ?と、息子に頼んで図書館で頼んでもらったところ、またもや忘れた頃に借りてきてくれたので、読もうと思っていた本を中断して読んでみました。

学校の図書室はスペースが限られてるので、リクエストされた本全部を学校が買うワケじゃなくて、市の図書館から学校が借りて又貸しするような形をとってるみたいですね。

それはともかく、450ページ前後の単行本を2冊も持って帰ってきてくれた息子に感謝。

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

東京都庁で働く地方公務員、30代で本庁の課長というエリートながら、覆面作家としてゲームのノベライズを副業としていた鈴木正彦は、極度の疲労の中囁かれる甘言に弄され、オリジナルのゲームブックを出版しあらゆるメディアで展開するという夢に全てを賭けて妻にも相談なく退職を決意する。

しかし、彼を待っていたのは離婚と彼に企画を持ちかけた元ゲーム会社の社員・矢口の失踪だった。

偶然矢口を捕まえた鈴木は、彼を追求するが、女性問題で元の会社を辞めさせられた矢口自身も、あくどい出版社の被害に遭ったようなものだと知る。

折しも世界貿易センターの自爆テロの映像が報道される中、食い詰めた2人の思考がたどり着いた究極のビジネスが、宗教であった。

鈴木は教祖としてペンネームの桐生慧海を名乗り、ゲームブックの内容を脚色した寄せ集めの教義を謳ったホームページを矢口が開設する。

常識的なアドヴァイスをする鈴木と、女性や生きづらい系の若者の扱いに長けた矢口の興した教団・聖泉真法会は徐々に信者を増やしていく。

やがてさまざまな事件をきっかけにマスコミや信者の家族、一般市民の糾弾を受けるようになった教団と桐生慧海こと鈴木は、一部の熱心な女性信者たちによって生み出された信仰に引きずられるように、常軌を逸していくのだが…。

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

いつもながら信仰という人の根本に関わるテーマに社会問題を交えながら一大サスペンスに仕上げる"篠田節"は、本の厚みや書き手の性別を意識させません。

宗教三部作といわれる今までの作品で描かれたのは、それぞれの事情を抱えた男性が求める人やもの追って向かったチベットやアジアの架空の国でのできごとだったり、文芸誌の出版社の一社員が謎の作家を追って東北を旅するといった物語だったのに対して、この作品は日本のごく普通の街中を舞台にし、信者には伏せているものの一介の元地方公務員の書いたゲームブックの世界をたてまえににし、その実は常識的な道徳の心得の訓示や身の上相談しか行っていない教団の元に集った、どこにでもいる若者や主婦、経営者というそれぞれに孤独を抱えた信者層をリアルに描いたことが人気の秘密でしょうか。

ただし複数の人間を巻き込んだリアルな物語だけに、人や現代社会の内に抱えるドロドロとしたものや狂気が、よりヘヴィーに描かれた作品だと思います。

おもしろくないとは言わない、むしろ一気に読める勢いのある作品ですが、個人的にはこの本きっかけに篠田節子を読んだ方にはまた違った作品(『ゴザインタン』や『女たちのジハード』など)も読んでほしいもの。
サラトガ刑事の大手柄 (集英社文庫)/スティーヴン・ドビンズ
(1999 加藤 洋子 訳)
¥600
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今度11名という大所帯で繁昌亭に落語を聴きにいくことになり、前売りチケットを買うために先日天神橋商店街に行ってきました。

この辺りへ来て時間があれば立ち寄るのが昔ながらの古本屋。

数軒あるうちの1軒に100円で売ってたのでまあおもしろくなくても、と買ってみたのですが、いやいや、どうして意外にもおもしろかった。

読み込んでない私がいうのもなんですが、マイクル・Z・リューインなんかが好きな方にはツボなんじゃないでしょうか。

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

41歳の誕生日に1週間の休暇を使ってサラトガ(バカンスには有名人が集まり、競馬やギャンブルで賑わうニューヨーク北部の温泉町とか)からニューヨークに出かけることになったチャーリー・ブラッドショー刑事。

今は見る影もない高校時代のガールフレンド・グラディスの頼みで、連絡のつかない彼女の(彼のでもあるという話のあった)息子・サムを探しに来たのだ。

YMCAに宿を取り、協力を依頼したニューヨーク市警に田舎者扱いされつつ、アパートの管理人ヴィクター、恋人のアナスタシア(ステイシー)に当たってみたチャーリーは、最近になってサムにピーター・ボネンファットという同居人があったことを知り、サムの行きつけのバーでは消費者活動のコンサルタントを名乗るドリスコルという男がサムの行方を探しているという。

チャーリーは魅力的な大学生ステイシーにかつてのグラディスを重ねるが、相手もまんざらでもない様子。

市警のいけすかない警部補ザックと連絡を受けたサラトガの上司にはすぐ戻るよう再三脅され諭されるのだが…。

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

丸顔で童顔、服装には意外にうるさい。

道路をわたる蟻の順番にでも金を賭けたという父親の死後、スパ・シティ・ダイナーでウェイトレスをしながら勝ち目のない共同の持ち馬に一獲千金の夢を馳せる母親、父親代わりの堅物のおじと三人のいとこ、姉とドレスショップを経営する妻がいる。

かつては野球部の用具係、今も少年野球の世話を楽しみにしている少年課の巡査部長。

自分の息子でないとわかった今もかつての恋人の放蕩息子を気にかけ、自身も父親のように人生を踏み外すことを怖れて自省を繰り返す、そんな中年男が主人公。

グラディスとサムのために奔走するチャーリーが、これまでの冴えない人生を噛みしめながら、同時に自分のこれからの人生を模索していたことに気づきます。

詩人でもあるという著者の文章は、素っ気なくもなく飾り過ぎでもなく、抑えたユーモアとペーソスの入り混じった味わいがいい感じ。

このシリーズ、本国では本書の刊行時に10作を超えていたそうですが、日本では3作目の邦訳があるだけのよう。

同じ古書店にあったので近くもう一度探しに行きますよ、これ。

あとは英国推理作家協会賞とブラム・ストカー賞候補のこちらが手に入るようです。

死せる少女たちの家〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)/スティーヴン ドビンズ

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死せる少女たちの家〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)/スティーヴン ドビンズ

¥714
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ベーグル・チームの作戦 (岩波少年文庫)/E.L. カニグズバーグ
(1989 2006新版 松永 ふみ子 訳 小学4・5年以上)
¥672
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☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

メッツのホームゲームは欠かしたことのない母親と読書好きで物識りな会計士の父親、ニューヨーク大学に通う兄というポイントボールドウィンのユダヤ人家庭に暮らす野球少年のマークは、引っ越した親友・ハーシュとの仲が疎遠になった後、新しい友人を見つけられずにいた。

バーミツバ(満13歳で行うユダヤ教の成人式)の準備に追われる一方、婦人会がスポンサーのリトルリーグチームでママが監督、スペンサー兄さんがコーチに就任することに。

ママ兼監督、兄さん兼コーチ、"ダブってる"ことで微妙な立場に立たされるマークだが…。

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

1967年に初めて出版された『魔女とジェニファとわたし』『クローディアの秘密』の2作品がニューベリー賞を争い、1996年に『ティーパーティーの謎』で2度目の受賞をしたという著者。

扉書で「どこにでもいる少年少女を描いて、わくわくする物語にしあげる才能は見事というほかない。」と紹介されています。

古い邦題は『ロールパン・チームの作戦』。

余談ですが、今一般にベーグルとして知られるパンは、旧ポーランド・リトアニア共和国やオーストリアの一部地域からニューヨークに定住したユダヤ人のコミュニティーで定められたパン屋だけで細々と売られていたモノで、やがて外部に知られるようになり、1980年代からニューヨーク全体で急速に名物となったんだとか。

国を問わずごく普通の少年や子どもを持つ家庭が出逢う微妙な問題を交えながら、ユーモアたっぷりに描いた楽しい作品で、この母親(ベッシー)と兄とのやり取りや、何かあるごとに台所の電気の傘を仰いで神に祈る(愚痴をいう?)彼女のしぐさには大人の方がにやにやしてしまうのではないでしょうか。

もし私にこういった物語好きの子どもがいたとしたら、まとめて読めるこちらの作品集をさりげなく本棚に置いておくかも知れませんね。

で、自分も子どもをダシに読むと(笑)

クローディアの秘密・ほんとうはひとつの話 (カニグズバーグ作品集 1)/E.L. カニグズバーグ

¥2,625
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魔女ジェニファと私・ベーグル・チームの作戦 (カニグズバーグ作品集 2)/E.L. カニグズバーグ

¥2,835
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サキ短編集 (新潮文庫)/サキ
(1958 中村 能三 訳)
¥420
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昭和三十三年刊行の平成二十年五十七刷。

ロード・ダンセイニの『二壜の調味料』の解説で引かれた江戸川乱歩の評論の中に登場する英作家の短編集。

ただしここで"可憐なる残虐"として触れられた「スレドニ・ヴァシュター」という作品は岩波文庫の『サキ傑作集』の方に収められているよう。

ビルマに生まれ、海外特派員として世界を旅し、第一次大戦の際に将校にという勧めを断って一兵卒として戦死したというサキですが、欧米ではO・ヘンリと並ぶ短編の名手として「泊まり客の枕もとに、O・ヘンリ、あるいはサキ、あるいはその両方をおいていなければ、女主人として完璧とはいえない」と批評されたといいます。

日本ではO・ヘンリがジュブナイル版などで広く読まれているのに対して、こちらは"可憐なる残虐"だけに敬遠されたの?

「家庭」など大人でこそおもしろく感じるような話もありますが、主人公の脱力や放心が手に取るように感じられる「二十日鼠」「宵闇」やごくごく日常的な出来事を題材にした作品の数々、ファンタジックなホラー「狼少年」やミステリ風の「ある殺人犯の告白」「盲点」など全編がブラックでユーモラスでシニカルなオチの楽しい21編。

オチにはそれほど意外性はないかもしれないけれど、そこに至る登場人物の心理や情景の描写も鮮やか。

この文庫もルビがふられているので是非広い世代に楽しんで欲しいもの。

この作品集の中にも、頭の堅い大人が選んだ玩具や話がいかに子どもに受け入れられないものかを皮肉った話「平和的玩具」「話上手」が。

また日本のSFやホラー作家にも多大な影響をあたえたという「開いた窓」や「おせっかい」ですが、「開いた窓」の方は折原一の『異人たちの館』にもちょうどそっくりな意匠が出てきます。

次はこっちを探してみようっと。


サキ傑作集 (岩波文庫 赤 261-1)/サキ

¥588
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ロスト・トレイン/中村 弦

¥1,470
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先日読んだ『天使の歩廊ーある建築家を巡る物語』に続く受賞第1作です。

息子に図書館で借りてもらったためGW明けには返したいと思いながら浮気していましたが、ようやく駆け込み乗車(笑)

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

出版社の営業マンのぼく(牧村)は、昨秋訪ねた埼玉県川越市の安比奈線を端緒に、廃線跡に俄然興味を覚える。

奥多摩の小河内線を訪ねた時に偶然知り合った筋金入りの<テツ>こと鉄道ファンの年輩の紳士(平間さん)と親交を深めるようになった11月のある日、いつものパブレストランで、珍しく酔った様子の平間さんは誰にも知られていない「まぼろしの廃線跡」の話を興奮した面持ちで語るが、やがて我に返った様子でそそくさと帰宅する。

それがふつうの状態で平間さんに会う最後になった。

連絡の取れないことに心を痛め正月休みに自宅を訪ねた牧村は、居合わせた平間さんの異父弟に行方不明であることを知らされ、平間さんの<テツ>仲間や、以前平間さんに名刺を渡された旅行代理店の女性で<テツ子>の倉本菜月と共に平間さんのいう「まぼろしの廃線跡」の手がかりを探すのだが…。

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

前作は明治時代の東京を舞台にした話でしたが、こちらは現代の東京を出発点にした物語。

しかしながらこの作品の主人公の牧村は、上司や同僚にも「律儀すぎて融通がきかなくて、まるで頑固爺さんみたいだ」と評されるようなどこか古い時代の匂いを身にまとった青年。

舞台や登場人物といった"材料"や手段は違うものの、著者が創り出すこの世と異世界との<間>は、前作と同じ著者独特のの作品世界に感じられます。

それだけ確固たる作品世界を持った著者であると言えるのでしょうが、アッ、この人こんなモノも書けるんだ!と次の作品あたりで驚かせていただきたいと期待しているのですが…。