- 弥勒 (講談社文庫)/篠田 節子
(2001) - ¥960
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『ゴサインタン』『聖域』 など、人が生きることの根源に関わるテーマを読む人を倦ませない圧倒的な迫力を持って描き、それぞれ信仰や宗教の問題にも深く関わってくる大作ですが、これはまた他の2作を凌ぐ凄絶な内容の作品でした。
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ヒマラヤの小国・パスキム。
仏教とヒンドゥー教の融合した建築や工芸品などの美しさは他に類を見ない。
人々の生活様式や姿形は独自の美意識を保ち、年若い国王、イシェ・サーカルの善政のもとに守られ、首都カターの街は豊かに潤っている。
またその独自の文化を保護するため、カター以外の地域への外国人の立ち入りは禁じられている。
新聞社の文化事業担当である永岡は、美に対する感覚と自らの美しさを武器に数々のカタカナの肩書を持って活躍する妻の髪飾りが、パスキムから不正に持ち出されたと思われる仏像の宝冠の一部であることに気付く。
その出所から以前訪れその芸術に魅せられたカターの政変を知り、パスキムを日本で紹介することで文化財を保護しようと美術展を企画するが頓挫、他国との国交を完全に断絶されたパスキムに単身潜入する。
小国の政変情報は報道されず捨てられていく中、わずかな情報から想像していたことと現実の相違を、人の途絶え、美術品の破壊されたカターの街と僧侶の大量虐殺死体を前に永岡は思い知る。
唯一残されていた秘宝の弥勒像を持ち出した永岡は、やがて革命軍に捕えられ、彼らの理想のもとに村人たちと同じく過酷な労働を強いられるのだが…
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永岡やカターの住人が当初虐待と感じた労働や食事内容は、実はパスキムの山間民にはこく普通の生活であり、王政下のカターの繁栄はその民からの搾取によって成り立っていたことがわかります。
このような王政を否定した革命派は全ての人間が平等な社会を理想として一切の異分子や旧体制の遺物を許さず、宗教やそれに関わる仏像だけでなく娼婦や加工食品、医薬品までもを否定し、その改革を断行するのだが、その結果は…
パスキムは架空の国であるが、この政変はカンボジアのポル・ポト政権下の大量虐殺や、中国の文化大革命をモデルにしているといいます。
篠田ファンならこの凄絶さも物語として楽しめると思いますが…万人にお薦めするのは少々躊躇する作品ではあります。





