クロヤギ頭の読まず買い -13ページ目

クロヤギ頭の読まず買い

ちまちまと進まない読書をしつつ、本を買うのは止められない。

こんなに買っていつ読むん?と自分に一人ツッコミを入れつつ日々を暮らす不良主婦の読書(購入)記録ブログ

日曜哲学クラブ (創元推理文庫)/アレグザンダー・マコール・スミス
(2007 柳沢 由実子 訳)
¥987
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スコットランドの古都・エディンバラに住む女性哲学者で<応用倫理学レビュー>誌の編集長、イザベル・ダルハウジーシリーズの第1作。


この訳者の名前を見ると思いだすのは以前は"おばちゃまスパイシリーズ"だったのですが、最近ではヘニング・マンケルのクルト・ヴァランダーシリーズ ですね。


上智大の英文科からストックホルム大学のスウェーデン語科という経歴で、英語だけでなく、北欧の文化までカバーできる貴重な方なんでしょう。


他の女性に心変わりした元夫に未練たらたらで、最愛の姪であるキャットの現在の恋人が気に入らず、キャットの元恋人・ジェイミーに友人関係といいながら実は仄かな恋心を抱いていたり、編集長と言えども日に数時間働けばすむ仕事で、"日曜哲学クラブ"という集まりそのものも、休日にわざわざ会合を開こうというメンバーが集まらないという理由で一度も開かれない…というなんとも煮え切らない、言いかえれば教養があるもののごく普通の中年女性ということでしょうか。


この作品の場合は、おばちゃまスパイならぬ"思索するおばちゃま探偵"という感じです。


彼女は40代前半という設定(つまり私より年下)なんですが、その彼女がまた、人に切符を押しつけられたという煮え切らない理由でコンサートにでかけ、天井桟敷からハンサムな若者が墜落する事件を目撃します。


イザベルは持ち前の知的好奇心と倫理観から、その若者の死の真相を個人的に追及することになり…。


推理するというより直接は事件に関係のない思索にほとんどのページ数を費やしながら、物語が進んでいくという、"寄り道だらけ"のミステリー。


絵や音楽、スコットランドの詩人や作家の話も豊富に織り込まれ、サスペンスを求めるよりもスコットランドの文化と人間観察を楽しむつもりで読める方ならいいかな?


イザベルの家政婦で、これまた40代とは思えない彼女の忠実な執事役であるグレースの存在も印象的。


それとも、私が精神的に幼稚なだけかしらね(苦笑)

国芳一門浮世絵草紙〈2〉あだ惚れ (小学館文庫)/河治 和香
(2007)
¥560
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『侠風むすめ』 に続く、歌川国芳の娘・登鯉(とり)を主人公にしたシリーズ2作目。


弟子たちにも「ヒラヒラ」とあだ名され、会うには家を訪ねるより吉原を訪ねた方が早いという絵師・国芳に連れられ、幼い頃から吉原に出入りしていた登鯉。


島送りにされた彫師の乃げんに想いを残しながら、変わりばえのない毎日にあきあきしていると思えた登鯉だが、どっこい、またもや波乱の日々が過ぎていく…。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


<あだ惚れ>とは、むなしい恋のこと。


親子とも贔屓の花魁・豊岡は無理心中の犠牲になり、友だちの豊雛が名跡を継いでお職を張るという。


豊岡の贔屓を引き継いだ豊雛が自分と同じどこか生臭い匂いのする男に初めて抱いた恋心…「裾風」。


幼い頃"天狗"にさらわれたという国芳一門の女絵師・芳玉ことお玉の過去との決別…「馬埒」


シーボルトと交流のあった医師で北斎の弟子でもある大塚同庵の口利きで、北斎と娘のお栄を訪ねた国芳と登鯉が絵を描くことにのみ徹した二人の暮らしに圧倒される…「畸人」


大目付となったタヌ金こと遠山の金さんが陰で進めた縁談と、国芳の進める縁談の板挟みになった登鯉。


一方で名立たるスリの紋々の下絵を描き逢瀬を重ねながらも、いつしか住む世界の違う天下国家を語る男に惹かれ…「桜褪」


高野長英の脱獄の陰にあった母子の情…「侠気」


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


天保の改革を時代を背景に、キナ臭い世情も語りつつ、気負わず読める連作短篇5つ。


きわどい艶話もそこここにあるけれど、このシリーズは粘つかない感じがいいなあ。

シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)/アンソニー ドーア
(2003 岩本 正恵 訳)
¥1,890
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ジェフリー・ディーヴァーの新作…ではなく(笑)、文学寄りの小説の佳作が多く、最近気に入っている新潮クレスト・ブックスの1冊です。


これは今まで数冊読んできた中でも、群を抜いて素晴らしいのではないかと思える作品でした。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


貝を集める人


ハンターの妻


たくさんのチャンス


長いあいだ、これはグリセルダの物語だった


七月四日


世話係


もつれた糸


ムコンド


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


少年の頃視力を失い、手に触れる様々な貝の美しさに魅せられて研究に没頭するが、今はケニアの孤島に独り暮らす老貝類学者。


マラリアにかかった女性が彼の家に迷い込み、看病をするうちに毒を持つ貝に刺された彼女は奇跡的に回復するが、彼の生活はそれによって一変するー「シェル・コレクター」


"金物喰い"の興行師に魅せられた18歳の姉・グリセルダは、公演に出かけたまま、紡績工場で二交替続けて働く母と妹を残し、世界を巡る。


彼女の手紙を楽しみに母の代わりに紡績工場で働き始めた妹のローズマリーは…ー「長いあいだ、これはグリセルダの物語だった」


オハイオ州自然史博物館の学芸員で化石ハンターのワードは、派遣先のタンザニアでトラックの前を獲物を追うように走る女、ナイーマに出逢い、彼女を連れ帰るために全てを捨てる覚悟で、彼女を追う。


やがて、オハイオで二人の暮らしが始まるのだがー「ムコンド」


…など、O・ヘンリー賞受賞作を含む八篇を収録した短篇集。


オハイオ州立大学大学院の創作科出身という著者のデビュー作だそうですが、すでに貫禄さえ感じるような完成された印象の作品集。


主人公の年齢も少女から老人まで様々で、著者の趣味だという度々登場する釣りの場面を含み、自然の描写が力強く、美しく、短いセンテンスの詩的な文章で綴られるのですが、その展開は単に叙情的なばかりでなく、サスペンスに満ちたもの。


いわゆるエンターテイメントやノンフィクション以外にも、たまには文学寄りの作品もいいな、と思う方は是非読んでみて下さい。

報いの街よ、暁に眠れ (ヴィレッジブックス F ハ 14-1)/マイケル・ハーヴェイ
(2007 中西 和美 訳)

¥893

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「M・コナリーほか絶賛のハードボイルド・ミステリー」そんな売り文句にうかうかと乗せられちゃいけないのはわかってるんだけど…そんなことを思いながら購入した本書。


元ボクサーで警官、ギリシャ哲学に心を寄せ、難なく古代ギリシャ語の警句を走り書きしてみたりする、シカゴに住むアイルランド系の私立探偵、マイケル・ケリーが主人公。


これくらいの存在感のある作品なら話題になってたんでしょうが見逃していました。


続編も順調に刊行され、シカゴを舞台にしたミステリーといえば、すぐ思い浮かぶシリーズになれば楽しいですね。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


マイケルの元を訪ねてきた元パートナーの引退した警官、ジョン・ギボンズは、埠頭で射殺死体となって発見された。


ギボンズが犯人を逮捕したものの、留置場から犯人が失踪して迷宮入りした九年前のレイプ事件。


当時瀕死の重傷を負った被害者、エレイン・レミントンが彼を訪ねてきたことから、ギボンズはマイケルに事件の再調査を依頼した矢先の出来事だった。


未明に事件の取材を申し入れてきたニュース番組のスタジオに向かったマイケルは、番組の女性キャスターと事件現場のビデオと引き換えに情報を提供する取引をする。


現場に残された身に覚えのない証拠で、一時は勾留されたマイケルだが、子どものころからの友人で、検事補として活躍するベネットの計らいで釈放される。


マイケルは内密に過去のレイプ事件の物証を入手し、犯罪科学研究所のDNA分析官で幼なじみという以上の深い心の繋がりのある黒人女性・ニコルの協力を仰いだのだが…。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


著者自身がかつて身を置いて成功を収めたというドキュメンタリー報道番組の製作現場の裏側や、レイプ事件の被害者の問題、連続殺人犯専門のぶっ飛んだプロファイラーなど、400ページ強にしては欲張りすぎの感もあり、設定もどこかで読んだような…と思われる部分もあるかもしれませんが、それでも十分雰囲気のある作品。


重い過去を背負いながらも、そのひと言が我慢できずに殴られようが蹴られようが、気のきいた減らず口のたたける主人公には、つい頬がゆるんでしまいます。


2007年の本書出版時点で2作目を執筆中ということで、そろそろ邦訳が出版されるのか…また情報をチェックしておきたいと思います。

くちぶえ番長 (新潮文庫)/重松 清
(2007)
¥420
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久しぶりに読んでみた重松作品。


ブログの更新をさぼってた時期に読んだ『流星ワゴン』以来かな?


最近になってこの作品の記事をそこここで見かけて買ってみたのですが、もう2年以上前に出た文庫なんですね。


少年時代の夢をかなえて作家になったツヨシが、今は消息のわからない初恋の女の子、くちぶえと木登りのうまいマコトに宛てた物語。


初出は『小学四年生』の連載らしいですが、かつて小学四年生だった全ての人に…そんな言葉のふさわしい作品です。


ごく親しい人には素直じゃないとよくいわれる私も、心を揺さぶられ涙腺のゆるむことしきり。


いつか別れるとしても、いや、いつか必ず別れるからこそ、心に残る出会いをいくつも見つけながら生きていたいもの。