- 人形の部屋 (ミステリ・フロンティア)/門井 慶喜
(2007) - ¥1,575
- Amazon.co.jp
これはindi-bookさんの本の情報の記事
で気になって買ってみた作家の1冊。
ご紹介されていたのは違う作品だったのですが、先に手に入ったものから読んでみました。
日常の謎を巡る連作になるのですが、謎というよりは日常の問題といいますか、読んでみると謎というほどの謎でもない?
知らないから謎なのであって、相応の知識と情報があれば謎ではないということの証明でしょうか。
こういうとちょっとホームズのようですね。
誰かの作品を読んで他の作家をイメージするのはそれが著者の意図したものや、著者のリスペクトする作家でなければ、失礼かと思いつつ、どこか北村薫を彷彿とさせるような作風。
主夫ならぬ家主を自称する父親と中学生の娘を軸にした物語で、「歩く百科事典」とも「電源のいらない検索サイト」ともいわれる主人公の蘊蓄と人の心の機微の織りなす物語が楽しみどころ。
この家の母親も存在は示されるのですが、帰りが遅いらしく、その詳細は巻末の物語まで明らかにされません。
表題作①「人形の部屋」は、主人公・八駒敬典のサラリーマン時代の先輩が持ち込んできた足先の壊れたアンティークドールを巡る謎。
気が弱いのかなんだかよくわからない先輩を庇って自分が壊したことにさせられ、その持ち主と対峙することになる敬典ですが…どうなるのかは読んでのお楽しみ。
普段家事一切を切り盛りする彼が、毎年恒例のクリスマス休暇?に似たようなシチュエーションで出逢った2人の人物の物語②「外泊1ー銀座のビスマルク」④「外泊2-夢見る人の奈良」
引っ越してきた謎のお隣さんが学生時代の淡い思い出に絡んだ何者からしいと知った彼が娘と協力して謎を解く③「お花当番」
愛娘・つばめの家出の顛末⑤「お子様ランチで晩酌を」の5つの物語。(収録は番号順)
右から左ではあるものの、蘊蓄も人の心の機微を描いた小説も私は好きですし、独特の空気の流れる作品で、キャラクターも魅力的。
著者の文章力や知識は相当のものだと思うのですが、なかなかの曲者ぶりが伺えます。
しかしながらこの凝った雑学の部分が強すぎるのか、人の心の機微の方がもうひとつ素直に心に響く話にはなっていないような感想。
こういう味として割り切って楽しめるなら、きっとまた他の作品を読んでみたいと思う作家ではありますね。
「お花当番」に出てくる"妖怪のみほし"の造語には笑ったけれど、それが苦い反省になったりするとこはうまいなあ。
彼の元上司、浅香吉美がなかなかいい味を出していて、シリーズがあるならまた出して欲しい、というより登場するでしょうね、このキャラは。
もう1冊後から買った積読があるので、こちらにも期待したいところ。



