- 放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)/茅田 砂胡
(2003) - ¥680
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パラストの国、モザイの近く。
一人の逞しい若い剣士が、十倍はあろうかという敵に取り囲まれていた。
追い詰められた花畑の中から現れたのは、十二、三歳かと思われる少年。
あわやと思った瞬間、倒れたのは敵の方だった。
異世界から来たという黄金のごとく流れ落ちる髪と宝石のごとき碧眼に薔薇色の肌をした少年、否、少女は、気性に似合わぬ高貴な血を受けたこの男と意気投合し、ただそれだけの理由で、隣国・ディルフィニアの王座を奪回するために戦うことになる…。
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解説によると、本の雑誌で2001年にティーンズノベルの特集が組まれ、大森望とみのうら両氏が初心者向けの10冊を選び、北上次郎がその実験台となってレポートするという企画があったそうな。
- その中の次郎さんイチオシ「十二国記の興奮と金庸のダイナミズムを足してニで割らない小説」がこの『ディルフィニア戦記』。
- 「あ~、知ってるわ、その企画。」って方もいてはるでしょうけど、私の備忘録代わりにその10冊をここに挙げておきますと…
①一般小説寄り 高畑京一郎『タイム・リープ』
とみなが貴和『EDGE(エッジ)』
②①よりちょっと不思議 田中哲弥『やみなべの陰謀』
谷山由紀『天夢航海』
③古きよきジュブナイル 岩本隆雄『昆虫』
④現代ティーンズノベルの典型 秋山瑞人『猫の地球儀』
上遠野(かどの)浩平『ブギーポップは笑わない』
古橋秀之『ブラッドジャケット』
⑤ファンタジー寄り 本書
須賀しのぶ『帝国の娘』
神坂一『白魔術年(セイルーン)の王子』
私はこの中で『猫の地球儀』しか読んでないので、他の作品についてはなんともいえませんが、本書については、(ティーンズ)エンターテイメントの王道のひとつではないでしょうか。
リボンの騎士の音楽が流れれば自然に「タラリラッタリッタラッタッター」と口ずさみつつ、やがては『三銃士』なんぞを読んで育った世代にだって、心躍る物語なはず。
この世の憂さを忘れたい大人にオススメじゃ。
悲壮感のないヒーローとヒロインのお蔭で4巻なんぞはあっちゅー間に読めます。