せどり男爵数奇譚/梶山 季之 | クロヤギ頭の読まず買い

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ちまちまと進まない読書をしつつ、本を買うのは止められない。

こんなに買っていつ読むん?と自分に一人ツッコミを入れつつ日々を暮らす不良主婦の読書(購入)記録ブログ

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)/梶山 季之
(2000)
¥819
Amazon.co.jp
サラリーマンがせどりで副収入5万円…そんなメルマガのタイトルを見かけたりもする昨今。
「せどり」(=糴取、背取、競取)とは何ぞや?
『古本屋仲間で、厭がられる商売の仕方に、新規開拓の店へ行って必要な古本だけを買うのを、俗に「抜く」とか「せどり」と云うんですよね…』(第一話 色模様一気通貫)

「同業者の中間に立ち、注文品などを尋ね出し、売買の取り次ぎをして口銭をとること。また、その人」(解説より・『広辞苑・第四版』)

新古本屋の100円均一にお宝を見つけて読んでらっしゃる方なら、売りこそすれジョーシキかもしれませんが…

第一話 色模様一気通貫

第二話 半狂乱三色同順

第三話 春朧夜嶺上開花

第四話 桜満開十三不塔

第五話 五月晴九連宝燈

第六話 水無月十三ヤオ九(シーサンヤオチュー・ヤオは公の右側の部首がない漢字)



「古書ミステリーの傑作!」との帯ながら、いわゆるミステリーとはちょっと違う、主に古書を巡るマニアックな話で、タイトルの"数奇譚"が相応しい連作短編6話。

セドリー・カクテルなる酒を愛するせどり男爵こと笠井菊哉という古書店主が出会った愛書家、書痴、書狂、ビブリオマニア…異常なほど本に取りつかれた人々の話を、かつてはアルバイトのバーテンダーとして彼と知り合い、今は文士として身を立てている私に語って聞かせるという趣向。

中にはワジルシの話やら、希少本欲しさに盗みに入る婦人、人の皮で装丁をするという男まで出てきて妖しいこと極まりないですが、何かをとことん愛する、追い求めるというのはこういうことなのかも。

著者は1930年ソウルに生まれて後に週刊文春の創刊時にトップ屋といわれ、取材先の香港で客死した人物らしいですが、各話のタイトルに麻雀用語が使われていたりして、相当に遊んだ方なのかもしれませんね。