- つむじ風食堂の夜/吉田 篤弘
(2003 筑摩書房) - ¥1,575
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みなさま、遅れ馳せながら明けましておめでとうございます
年末から正月は電車の移動中などに多少本を読みましたが、大掃除に同窓会に年賀状に帰省に御節作りに年越しそばに初詣…と、至って家庭の主婦らしい時間を過ごしておりました。
一方、ホテルのコックをしているダンナは人とは違う時間を過ごしていて、毎年のことながら少し可哀想なんですが…退職か転職するまではしゃーないやね。
こうやって久しぶりに会う近しい人と過ごす時間も貴重なもので、その時はそれを堪能することにして、すっかり更新もお休みにm(__)m
さて、これはnanikaさんの記事 に惹かれて衝動買いした本。
その後クラフト・エヴィング商曾名義の「クラウド・コレクター 」を先に読んでたんですが、これはすっかり存在が記憶の引き出しにしまわれていて…
ようやく年越になって鞄の中に入れられ、私と一緒に2009年の滋賀から2010年の兵庫まで旅をしてきました。
写真やイラストの満載だった「クラウド…」とは違い、こちらはただひとつ星(灯?)の瞬く夜をイメージした表紙。
シンプルで本文中にも挿画のないオトナな装幀になっています。
"月舟町"の十字路の角にあり、十字路に東西南北から吹きつのる風が起こすつむじ風のせいで「つむじ風食堂」と呼ばれている名無しの食堂が舞台の連作短編集。
「月舟アパートメント」の屋根裏部屋に住み、雑文を売る傍ら雨を降らせる研究をしていることから、ここでは「雨降りの先生」と呼ばれる物書き稼業の私が、手品師だった父にまつわる記憶と、毎夜遅くたずねるこの食堂で出会った人たちのことを綴る物語。
月舟町に「パリの裏町のビストロ」を再現したつもりの食堂のあるじ。
父の注文するエスプレーソを生み出すマシーンとマスターのタブラさん。
<二重空間移動装置>を売る帽子屋。
商店街の明かり代わりにと遅くまで店を開け、オレンジを傍らに本を読む果物屋の青年。
本の値段を人によって変える「デニーロの親方」こと古本屋の主人…
ここにはどこかにありそうで、どこにもないような、そんな街の空気が流れていて、自分も気がつけば果物屋の灯の前を過ぎ、"月舟町"の十字路にひとつ温かそうな灯をともした食堂を目指して、つむじ風に巻かれているような気分になります。
あとがきによると、「どこからも遠い、世界の果てにあるような小さな食堂の物語」を書こうとしてなかなか書けなかった著者が、父の他界を機に自分の生まれた町に想いを帰して生まれた物語なんだそうです。
女優の奈々津さんと私のやりとりは、どこか子どもの頃に教科書で読んだ物語のようで、読み手にまでオレンジの香りが漂ってくるよう。
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