彼女と知り合ったきっかけは、2012年の12月末にNGO懐の被災地支援活動のカニ汁炊き出しでご一緒したことでした。
もともと我が寺の檀家さんでもあり、そのお母さんやお子さんのことをよく知っていたので、心の距離感が近かったです。
その翌年に彼女の勤務する中学校で施設実習などさせていただけないかとお願いしたところ快く受けていただき、保健教諭の彼女の下で実習させていただきました。
なぜか「心の授業」として僕のお話まで実習の一コマ組み入れることになってしまったのは、彼女から僕へ向けたささやかな試練だったのでしょうか。
その後、彼女の亡き旦那さんの法事で再会したのですが、この春学校を辞職し、もっと自由に人々の心のケアをしていきたいという、本当にやりたい道へと歩みだした彼女の笑顔はきらきらと輝いて見えました。
この町の人たちの心を輝かせたいという思いで僕と彼女は意気投合し、同じ思いで集まった仲間で「Hugくむ」というグループを結成。
手初めに「うまれる」という自主上映映画を開催したところ、200人を越える集客があった大成功のイベントとなりました。
それが2014年6月のことでした。
その頃彼女は久斗山の自宅に「いのちを育む子育て保健室」を開き、多くの方の悩みを聞き、寄り添う相談活動をメインに据えています。
いつでも「あなたはあなたのままでいいんだよ」「頑張らなくていいんだよ」と、とびきりの笑顔で包み込んでくれる姿にみんなが勇気をもらったに違いありません。
豊富な知識と巧みな話術で、常に自信満々絶好調な彼女に僕自身も大きく刺激されていました。
そのままの勢いで同年の第二弾のイベントを不登校にスポットライトを当てて行おうとしていたころ、多くの方々の相談から負のエネルギーをうけとってしまったのか、彼女の元気さに陰りが生まれます。
結局彼女抜きでイベントを行うことになってしまいました。
そして忘れもしない、10月16日の尾木ママ講演会を一般客として聞きに行った時のこと。
自信満々だった姿は見る影もなくなり、ただただ自信をなくして仲間に支えられている彼女がありました。
その夜、翌月に引き受けたこども園の講演会のお断りに付き添ってほしいと、彼女と一緒に園長先生のお宅を訪れたのでした。
園長先生はそれを了解してくれたものの、その代役として僕が講演することになってしまったことは大きな誤算で、僕自身もかなりのストレスを伴うこととなりましたが、今となっては面白い「とばっちりエピソード」です。
その後彼女はしばらく話を聞いてほしいと何度もお寺に通ってこられ、過去から現在のことまでを赤裸々に語られ、それを傾聴させていただきました。
僕は大した助けができませんでしたが、そのうちに彼女自身がこれだと思うもので出会えたようで、いつしか再び彼女は心の元気を取り戻していきました。
2015年の春先には以前と変わらぬ自信、いやそれ以上の自信を手に入れて彼女は活動を再開。
その急下降と急上昇はまるでジェットコースターみたいだと思ったものです。
「転んでもただでは起きぬ女ですから。ふふふ」と妖しく笑いながら、「心へ直接アプローチするのではなくて、身体からのアプローチに変えていきます。」とリニューアル宣言をされていました。
お味噌、梅干し、酵素シロップの手づくりワークショップ。
無農薬、無肥料のアートテンピロール米の農業。
「食べ物が変わると心も変わる」を合言葉に、自然の力そのものが味わえるオーガニックな食べ物を作り、皆に共有されました。
我が家も妻が酵素シロップを学んできてくれたので、僕も美味しい梅酵素の水割りジュースを味わえています。
彼女はお寺で開催されたたくさんの講習会も受講してくれました。
・テライク。
・お寺でヨガ。
・たまちゃん筆文字講習会。
・ひより塾和の心講習会。
逆に僕も彼女が主催した講習を受けさせてもらいました。
・シャンタンさんのアウェイクニング瞑想会
・愛と命の法則セミナー
2015年、2016年は本当にいろんな場面でご一緒させていただいたものです。
お互いに快進撃の時期だったかもしれませんね。
2017年はお互いが学びをインプットする段階から、それぞれの道を進もうというアウトプットの段階へとシフトしたため、めっきりご一緒することがなくなりましたが、2018年になって再び力を合わせる時がやってきます。
それがこの地域に計画された諸々の問題を孕んだ巨大風力発電事業への反対活動でした。
ほとんどの人が声を上げることがない中で、彼女と僕ともう一人の女性とわずか三人で立ち上がった自然保護グループ「いのちをつむぐ会」。
今までに知らなかった電気事業法を一から学び、ニュースレターを自分たちで作成し、皆へ問題を共有してもらい、白紙撤回へ向けて尽力する地道で孤独な作業でした。
彼女には頑張らせすぎちゃったかもしれません。
事業者との話し合い、住民同士の話し合いは穏便なばかりではなく、時に感情のぶつけあいにもなり、ものすごく疲弊しました。
自分たちの仕事ややりたいこと以外のことに時間をとられ、余裕をなくすこともありました。
そして道半ばに彼女は倒れてしまいました。
2021年9月のことでした。
それでも一命をとりとめ、不自由な身体ながらもなんとか一人で暮らしていけているようでした。
僕も何度か会いにいったことがあります。
誰にも会いたくないといった心の状態も、少しづつ前向きになっていくのを感じていました。
しかし、2024年2月1日。
再び自宅にて倒れ、彼女の最期の時となりました。
またきっと転んでもタダでは起きない彼女の華麗な復活があるとどこかで思っていたので、とても残念でなりません。
本日2月5日。
彼女のお葬式では導師を勤めさせていただきました。
その儀式の中で、僕は彼女へ戒名をお渡しします。
「美凰妙和」
そう、これが彼女の肉体を超えたもう一つのお名前です。
彼女の名前からとった「美」。
そして「鳳凰」という霊鳥の「凰」。
鳳凰とは目に見えないエネルギーが一所に集まった時に見えるという大きな霊鳥で、それはツガイであるといいます。
雄を「鳳（ほう）」、雌を「凰（おう）」。
先に亡くなられた旦那さんには先代住職が「鳳」という戒名をつけていたので、まさにぴったりだと感じて「凰」としました。
「妙」は「ぴったりあてはまる」という意味で、「和」は「対立を越えて調和する」という意味を込めました。
我々を支えよう助けようとする目に見えぬ美しきエネルギーの流れが鳳凰のように浮かびあがり、「あなたはあなたのままでいい」「戦わなくてもいいんだよ」ってメッセージを送ってくれているよ。
そんなお名前です。
彼女は一度目に倒れた後でこう言っていました。
「あなたはあなたのままでいいなんてどの口が言ってたんだろう。それを押し付けられても受け入れられない私がいるのに」と。
僕はそれを聞いた時、自己一致しないことに気付くことはなんて厳しくも美しい体験なのかと心から思いました。
そして今後もそれを課題に羽ばたいていく彼女の姿が思い浮かんだのです。
こうして戒名をお授けし、仏道へと引導する作法を無事に終えました。
多くの方々が彼女へのお別れに訪れ、感謝を伝えられながら出棺していきます。
きっと彼女も喜んでいるでしょうね。
僕も彼女に出会えて、時に力を合わせ、時に切磋琢磨し、たくさんの思い出と気付きをいただけたことに心から感謝いたします。
ありがとうございました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
※彼女のお骨は自宅でお祀りすることができないため、3月9日の納骨までお寺でお祀りすることになりました。
お参りしたい方はぜひどうぞ。
【たくさんの思い出】
2012年12月31日
NGO懐の被災地支援活動で迎えた年越し（仙台市）
2014年4月20日
法事（岩美町の旬魚たつみ）
2014年6月7日
自主上映映画「うまれる」上映会（新温泉町夢ホール）
2014年11月2日
テライク（善住寺）
2015年4月27日
ひより塾プレ講座（善住寺）
2015年7月27日
ひより塾和の心講習会（善住寺）
2015年12月1日
お寺でヨガ（善住寺）
2016年1月12日
テライク（善住寺）
2016年1月12日
テライク（善住寺）
2016年3月22日
たまちゃん筆文字ワンデイ講座（善住寺）
2016年10月3日
さと原人さんのランチ会（湯村温泉レストラン楓）
2016年11月4日
シャンタンさんのゆるゆる瞑想アウェイクニング初日（久斗山彼女の自宅）
2016年11月5日
シャンタンさんのゆるゆる瞑想アウェイクニング２日目（久斗山彼女の自宅）
2017年4月23日
善住寺住職晋山披露宴（湯村温泉井づつや）
2018年6月7日
いのちをつむぐ会結成
2018年6月22日
いのちをつむぐ会活動ー風力発電施設視察（鳥取市）
2018年8月8日
いのちをつむぐ会ー戦略会議（湯村温泉笑来園）
2018年8月10日
いのちをつむぐ会ー巨大風力発電計画の白紙撤回を求める嘆願書提出（新温泉町役場町長室）
2018年9月14日
いのちをつむぐ会活動ー兵庫県庁訪問
2018年12月26日
いのちをつむぐ会活動ー戦略会議（〇が家）
2020年3月11日
いのちをつむぐ会－鳥取風力発電事業住民説明会にてゲスト講演（鳥取市明治地区公民館）
