アンデスの世界観における二元性について | OverlandVerdeのブログ

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海外在住のセラピストです

こんにちは

インカの末裔の村ケロの伝わる伝統やアンデスの世界観について、引き続きご紹介していきたいと思います。尚、近いうちにホームページ作成の予定で、そちらにまとまった形で記載するつもりですが、ブログにも興味深いテーマを少しずつ載せていこうと思います。

今日は、アンデスの世界観における二元性について、少し書きます。

二元性というのは、相対する二つのものが存在するということですが、アンデスの世界観による二元性は、「お互いの違いを認め合い、片方を排除することなく、補い合いながら共存する」という考え方に基づいています。「善悪」「真偽」のように区別して、一方を差別したり、排除する考え方とは異なります。


彼らの二元性では、右側を「パニャ(Paña)」、左側を「ジョケ(Lloq’e)」と呼びます。それぞれ、下記のように説明されます。

右: パニャ(Paña)
私たちが既にプロセスを知っているもの、知識、論理、科学的に証明されていること、意識の中にあるもの、父親、男性的(陽)エネルギーなど。

左: ジョケ(Lloq’e)
私たちがプロセスを知らないもの、神秘、魔法、未知のこと、無意識の中にあるもの、母親、女性的(陰)エネルギーなど


右のパニャに示されるものは、現代社会において、一般的に「ポジティブ」として捉えているものと言えます。一方、左のジョケに示されるものは、人々が「ネガティブ」なものとして捉えてきたもので、それらを理解できる者たちは、魔術師や魔女などとして恐れられ、迫害すらされてきたと言えると思います。

また、長い間、多くの社会では男尊女卑が続いていたために、男性的なものをよしとする傾向が強く、女性的エネルギーが抑制されてきました。現在この世の中は、まだ両エネルギーの均衡がとれていないと言えると思います。


先に述べたように、アンデスの世界観による二元性は、「お互いの違いを認め合い、片方を排除することなく、補い合いながら共存する」という考え方に基づいています。従って、この二つをつなげるもう一点が中央に存在します。その中央の点が、「ヤナンティン(Yanantin)」です。

ヤナンティンは、パニャとジョケ、つまり男性的なものと女性的なものをつなぎ合わせ、共存を可能とさせるものです。この概念は、アンデス社会において、性質を異なる者同士の相互依存と補完的な関係を成立させるための基盤となっています。

アンデスでは、男女の仕事がはっきりと分担されていますが、夫婦がそれぞれ割り当てられた仕事に従事しながら、時によっては相手の仕事も手伝うということが行われています。そうすることで、相手を知り、理解を深め、自分を補うものとして、お互い尊重し合うことができます。アンデスでは非常に若いうちに夫婦となり、早い年齢からこのことを学び始めます。

ケロ村では、両親同士で決められた縁組で、相手を知らないまま結婚し、同棲する中でお互いを知り、共に働き遊ぶ中で、恋愛感情を深めていくということが行われてきたそうです。私たちの社会では、初めに出会い、相手を知り、恋をして、お付き合いをした後、婚約し、結婚に至るというのが通常ですが、それとは全く異なります。

また、ヤナンティンは必ずしも夫婦間や恋人同士の関係だけで成立するものではなく、友人間、親子間など、如何なる男女の間でも成立するものです。更に、女性と男性のように性別による区別ではなく、別のジャンルの仕事や趣味を持つ者同士の間でも成立するものです。つまり、自分とは異なる者を、自分を補うものとして尊重し、相互依存の関係の中で、お互いに学び、相乗的に成長しながら、共存していくということです。

自分が正しければ相手は間違っている、どちらが優っているか劣っているか、善か悪か、という考え方に基づく社会では、自分と性質や意見の異なる者を差別・排除しようとし、常に争いや競争が絶えません。共存を可能にさせるヤナンティンの概念を広めることは、今世界中で起こっている戦争や不和を無くすことにつながるはずだと思います。


以上、長文を最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。