〜Night38〜
サヤカが差し出してきた錠剤は、鮮やかな赤色の包装をした通称「赤玉」というものだった。
眠気を押し殺してかろうじて入ったシャワーのおかげでさっきより少し元気を取り戻した僕は、冷静にその錠剤を見つめる。
「これってバイアグラ的なやつ?」
勿論、当時の僕は赤玉なんていうドラッグもそれ系の知識もない。
サヤカは、
「知らない!笑」
と言い、確実にその薬の効能を知っているのを隠している仕草で僕を挑発してくる。
そんなサヤカの分かりやすい意地悪なところも僕は好きだった。
以前にも、書いたが僕はサヤカとプライベートで会うようになってから一回もそういう関係になったことはない。
サヤカに手を出さないことを正義だと思っていた僕だが、その日は違った。
男なら分かると思うが、オール明けっていうのは異様に性欲が湧いてくる。
動物が本来持っている死に際に子孫を残したいという本能が若干、垣間見れるそんな感覚だ。
まぁ、たかが睡眠不足で変なアドレナリンが出て一瞬で気が変わる僕が正義とか語る資格はないな。
昨日からの刺激的な出来事でいつもよりちょっと大胆な気持ちになっていたのも大きな要因だ。
世間でいう反グレな人達と仲良く飲み明かし、普段なら相手にされないであろう人達に尊敬の目で見られた訳だから。
いわゆる、ヤンキーデビューを成功したかのような高揚感で厨二病を見事に拗らせた勘違い野郎だ。
勘違い野郎は突き進む。
「いいよ!その薬飲む」
サヤカは、僕が絶対に断ると思っていたらしく、目をまん丸くしていた。
「えっ?抱いてくれるっこと?」
「うん…」
続く