いよいよ今回が最終セッションになりました。最終回のテーマは「意思決定」についてです。正確にはタイトルにもある通り「よりよい意思決定」です。これは、不確実性が高い状況下においては、100%正解の意思決定は、まず存在しません。そのような中だからこそ、「よりよい」意思決定を行う事が重要になります。

 

少なからず皆様もお仕事、または生活において何かしらの「意思決定」を行なっていると思います。今回のセッションはこれまで使った要素をフル活用しますので、まずは簡単に過去の内容を振り返ってみましょう。

 

  まずはこれまでの振り返りから

これまで8回に渡り、不確実性が高い状況下におけるマネージャーの解決方法をお伝えしてきました。

 

セッション1 では「システム思考について」、問題が起きる原因は表面的ではなく、システム全体で考える事。また要素に分解することで、それぞれの創発性も考慮する、鳥の目、虫の目、魚の目が大事でした。そしてそういった考え方の中にはセッション2で扱った「バイアス(思考の偏り)がかかる」という事です。次に、自分たちの存在意義を把握するためにも企業、個人のパーパスが大事だったのがセッション3、個人、相手を理解する上では、感情を理解すること、Emotional intelligence、心の知能指数のお話もしましたね。

個人個人を把握した後はチームのフェーズに移りました。チームが与える影響については、エベレストの例も用いたセッション5、そして、セッション6ではこれまでのシステム全体、対人、目的、感情などの要素を考えた上で「相手に伝える」事にフォーカスしてきました。

 

まだまだいきますよwセッション7では、ようやく「対課題」について課題設定そのものがいかに難しいかを紹介し、解決策を考える上で大事なHuman Centric、ユーザーを考え抜くアジャイルイノベーションをセッション8で紹介させていただきました。

 

これまでの内容はすべてつながっており、その集大成が今回の「意思決定」につながっています!それでは意思決定を学んでいきましょう!

 

  なぜ意思決定がなぜ難しいのか?

冒頭でも少しお伝えしましたが、「意思決定」そのものがこれまでほど簡単ではなく、複雑化しているのが現代です。

セッション1でお伝えしたシステム思考のように、多くの要素が複雑に絡み合い、創発作用を起こしていきます。結果的に不確実性が高い状況下においては、一度決めた意思決定が変えることもしばしば。。「今は意思決定しない事を、意思決定する」ような状況も多々あります。

 

この、「いつ」意思決定をするのか、これは現代を生きる私たちの一つの大きな課題かもしれません。完璧がない現代だからこそ、「よりよい」意思決定が重要なのです。そして意思決定には、その人の持つ「バイアス」、「ヒューリスティック(経験則)」が入り込み判断に影響を起こします。解決策を考える上で、何が必要なのかをこれからご紹介していきたいと思います。

 

  意思決定に必要なWRAPプロセス

それでは「意思決定」をする上で、考えるヒントになるフレームワークをご紹介します。それがWRAPです。何かを決める時に、立ち止まり、このフレームワークに当てはめてぜひ考えるようにしてみてください。

 

こちらはスタンフォード大学教授チップハース教授と、デューク大学ダンハースフェローの、ハース兄弟が考案した考え方です。

ちなみにこれは仕事だけではなく、プライベートでも役にたつ考え方だと思います。

Wisden your options 選択肢を広げる

それでは順に解説していきます。まず最初に来るのが、そもそもその解決策がよりよいのか、選択肢は他にないかを再度検討するフェーズです。何かの選択を迫られている時は、よく「〜すべきか否か」の二者択一で考えがちです。考えるスポットライトの方向を変える、複数の選択肢がとれないかを検討する、または、今ある解決策を決して考える事も選択肢を広げる事につながります。

 

Reality test your assumption 仮説を実現性を確かめる 

次に考えた解決策の実現性、実現の角度を検証します。今ある解決策は、過去に誰か行った事はないでしょうか?それも一つの仮説の検証につながります。また、あえて失敗することで仮説の実現性を高めることができます。小さくスタートして実現性を確かめるのもの有効ですね。ただしここでは、自分が成功すると思い解決策の仮説を考えている前提(バイアス)があります。確証バイアスに陥りがちになりますので、多方面から確認することが大事になります。

 

Attain distance before decide 決める前に距離を置く

ここでは本当にその解決策でよいのか、冷静に客観的な判断を促します。そのために、例えば自分の友人にアドバイスするなら?と考えてみたり、10−10−10(10時間後、10ヶ月後、10年後)にどうなっているかを想像してみたり、よりシステム2の思考(熟考、論理)の時間を持つように意識してみてください。その上で複数の選択肢がある場合は最後に悩むこともあります。そういった場合に備えて、「核となる優先事項を決めておく」ことも重要です。

 

Prepare to be wrong 失敗に備える

ここまでのステップにくると考えた解決策が「成功するイメージ」が強いと思います。しかしここで最後に、その選択肢を実行していく中での失敗する可能性に備えます。解決策の結果にある状態は、一つでしょうか?未来を幅で考えることも必要です。また実行していく中で、問題なく進んでいるのか、途中で軌道修正が必要なのか、アラームをセットしながら確認していくことも大事なポイントになります。

 

以上がWRAPのプロセスになります。私自身は意思決定を行う時によく「〜すべきか否か」という視野の狭隘に陥ります。その意思決定は、同じ費用で他にできることはないか?そもそも何のためにやるのか?など、自分自身の弱みを把握し、システム2の思考を用いて、意思決定するようにしています。そして意思決定には、バイアスが大きく影響します。自分の過去の成功体験や断片的な情報、そういった偏りをより強固にしていく思考になりがちです。このWRAPはそういった考えから脱却することができ、それが「よりよい意思決定」につながります。

 

ちなみにプライベートの意思決定でもこのフレームワークは使えます。

「新しいスマホを買う?」という意思決定であれば、そのお金でもっと家族や自分にできることを探してみたり、マルチトラッキングで安いスマホ+何かをするでもよいかもしれません。実際には購入してみて予想以上に使えなかった場合のリスクに備えて(Prepare to be wrong)、どこかでアラームをセットし、転売して現金化するでもよいかもしれません。このように仕事でもプライベートでも使えるフレームワークが「WRAP」です。便利爆  笑

 

さらに詳しく知りたい!という方は、以下の書籍に「WRAP」が詳しく、具体例も含めて書いてありますのでご参考に!

 

決定力

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00HS9IP26/ref=ppx_yo_dt_b_d_asin_title_o03?ie=UTF8&psc=1

 

 

  まとめ

 

 完璧な意思決定は存在しない、「よりよい意思決定」を行う

 

 意思決定には常に、経験則での判断と確証バイアスがかかる

 

 よりよい意思決定のために「WRAP」のフレームワークを用いる

 

前回、「正しい課題を設定する難しさ」について紹介させていただきました。

今回は、その課題に対する解決策を考えていきたいと思います。解決策を考えていく中で、アイデアの「発散と収束」、そしてよりよい解決策を進めるためのデザイン思考、アジャイルイノベーションについて紹介いたします。

 

  アイデアの「発散と収束」

みなさまは日々、課題と向き合う中で、どのように解決策を考えていますか?過去の経験則からでしょうか?それとも調べたり、第三者からの意見を聞くこともあると思います。

 

このセッションでは、課題に対する適切な解決策を見つけるためには、多くのアイデアを発散し、収束する事について紹介します。まずはSix Thinking Hutsについてです。

 

Six Thinking Huts

これは、6つのそれぞれ色が異なる帽子をかぶって(実際にかぶるのではなく、あくまで想像ですw)、解決策を考える手法です。それぞれの帽子に意味があり、帽子をかぶっている間は、その話しかできません。

青い帽子(Process)

青い帽子は課題のプロセスに注目します。プロセス上でのもともとのニーズがなんなのか、プロセス一つ一つにズームインしてみることはもちろん、プロセス全体の中で何ができるか、プロセスを時間軸で見た場合に何が解決策としてできるかを考えます。

 

緑の帽子(Creativity)

次は緑色の帽子です。緑色はクリエイティビティです。前提を疑った上での解決策や、大体の解決策がないか、できる可能性の幅を広げることはできないかなどにフォーカスして解決策を見つけます。

 

白い帽子(Facts)

白い帽子は、ファクト、事実から解決策を導きます。今見えている事実、これから見える事実、その事実に対して解決策を考えてみてください。

 

黄色い帽子(Benefits)

次は黄色い帽子でベネフィットです。これは解決策をよりポジティブに、前向きに思考したり、アイデアをより使いやすいものに、解決策として実行しやすくできる事がないかを見つける事ができます。例えば解決策を実行している人に対して、ポイントポイントでベネフィット(何かを与える)があれば、より実行可能性が高まりますね。

 

赤い帽子(Feelings)

赤い帽子はフィーリングです。今自分の感情がどのような状態か、何を感じているか、どういった感情を変えていかなければならないかという点です。解決策は実行する人がいますので、そういった方々の感情も見ていく必要があるという事ですね。

 

黒い帽子(Cautions)

最後が黒い帽子です。黒い帽子は、注意、難しさ、弱み、危険な部分はないか、課題をそもそもネガティブ前提で考え、解決策を導く方法です。解決策を考える場合、どうしても実現可能な情報に目がいき、失敗する可能性を忘れることもあったりします。そういった可能性を低減することにも繋がりますね。

 

以上がSix Thinking Hutsの考え方です。ちなみに解決策を考える場合の帽子の順番はありません。ただし全ての帽子を一度はかぶって解決策を考えてみる事をお勧めします。また考える際にはそれぞれの帽子の「制約」があるおかげで、より深い思考になったり、グループで行う事でさまざまな解決策がでてくると思います。オンライン会議が多い組織であればZoomの背景などをこういった色に変えてしまって解決策を議論するのも効果ですね。

 

このように制約を設ける事で思考を限定して、解決策を出していきましょう!

 

  アジャイルイノベーション(デザイン思考)とは?

続いては、昨今よく耳にする機会が増えてきたデザイン思考についてです。デザイン思考は、一言でいうと顧客中心の改善の思考方法になります。よくある例がiPhoneだと思います。日本の通信事業者は、携帯電話の機能を追加することばかりを考えていました。しかしAppleは、ユーザーが本当に欲しいものはなんのか?を突き詰めた結果、ボタンがいらない携帯電話を生み出し、そして名前を「iPhone」と名付けたのは有名な話ですね。

 

デザイン思考は5つのプロセスに分解されています。

Emphasize 共感する、ユーザーを想像する

対象となるユーザーを設定し、ユーザーが何を求めているのか、感情、心理へ共感する事からデザイン思考は始まります。何を考え、何を解決したいのか、そのインサイトを探り、解決策を見つけていきます。ユーザーの課題設定と言えるフェーズです。

 

Define

続いてはDefine、課題がなんなのかの定義です。共感から把握した課題を、誰に対して、何を、どのように、提供するのかを定義します。定義することで、課題がぶれずに、チームであれば同じ方向を向いて取り組めるようになります。

 

Idea

アイデアです。アイデアはその名の通り、解決策のアイデアを発散的に考えます。ここではあまり「制約」をかけずに、質よりも量、そして解決策の幅を複数個検討することをお勧めします。それが次のプロセスへつながるからです。

 

Prottype

続いてはプロトタイプです。ユーザーニーズが日々変化する状況下では、完璧な完成品である必要性はありません。ある程度の物がを創る事ができれば、プロトタイプとしてユーザーへ提供していきましょう。

 

Test

最期がテストです。これまでの4つのプロセスの集大成としてテストを実施します。直接ユーザーの反応を聞いたり、Feedbackを求めるフェーズとお考えください。短期間で実施し、変数を特定して、この改善サイクルを高速にまわしていくイメージです。

 

非常に簡単にですが、デザイン思考、アジャイルイノベーションを紹介させていただきました。特にアイデアからプロトタイプ、テストのフェーズでは、時間軸を短くもち高速に回転し続けながら、解決策を見つけてく事をお勧めします。顧客要望が日々変化する中ではそういったプロセスを行う事で最終的にはよりよい、製品、サービスに繋がっていくからです。

 

  イノベーティブな組織とは?

今回は解決策を考える上で大事な事を紹介してきました。しかしながら、こういった解決策は1人で考えつくのでしょうか?

そこにはチームがある事がほとんどだと思います。チームで考えていく、解決策をイノベーティブに考えられる組織とは?どんな組織状態でしょうか?

 

●失敗が賞賛される組織

●なんでも言い合える組織

●心理的安全性、関係性が担保されてる組織

●目的意識がしっかりとある組織

●個人のパフォーマンスが最大化される組織

●カリスマ性のあるリーダーがいる組織

●前向きな組織

 

おそらくどれも正解であり、不確実性が高い昨今の状況下においては、答えがないという事をご理解ください。どんな課題なのか、その課題はどういった要素が関係しているのか、よりよい解決策は何か?そのためにどういったチームがよいのか?こういった問いを続ける事が、さらによいチームになるきっかけになると私は信じています。

 

  まとめ

 

 アイデアを発散的に考える、そういったツールを利用する

 

 反復するプロセスを実施し、解決策の精度を高める

 

 解決策はアジャイルのプロセスで実施し、変数を特定し改善する

 

 チームとしてイノベーティブな組織文化を醸成していく

 

次回はいよいよこのセッション最後の、「意思決定」について、ご紹介します!

過去6回に渡ってお伝えしてきましたが、今回はいよいよ「対課題」についてです。

何かを解決するためにも最も重要なのが「そもそも何が課題なのか?」を正しく理解する点です。今回は正しい課題の把握についてご紹介していきたいと思います。

 

  課題って何?

先に「問題」「課題」の違いについて紹介すると、あるべき姿とのGAPが「問題」です。その問題を解決するために具体的に取り組む内容が「課題」となります。問題の中にいくつもの課題があるという理解でよいと思います。

良い課題を定義することが、良い解決先にも繋がります=「正しい問いを行う」という事です。

 

ちなみに、アインシュタインが残したと言われる名言があります。

 

「私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」

 

問題を解決する以上に、その「問題の定義」、「課題」が何なのかが重要だという事になります。

 

正しい課題を見つける事ができると、正しい問題解決に繋がることはもちろん、解決に取り組む過程でも共通の認識を持ち進める事ができます。また課題を明確にすることで、他の似たような課題に対しても転用する事ができるなどのメリットがあります。

 

それでは次の文章のうち、皆様は何を「課題」だと設定しますか?

 

    

障害の「ある人」と「ない人」を比較すると、前者のほうが平均年収が低いという事がわかっています。障害のある人が職場に占める割合は、肉体労働においては高く、いわゆるホワイトカラーの仕事においては低い事がわかっており、特に製造や業務サポート系の仕事に就ているケースが最も多い事が調査によって明らかになっています。

 

マネージメント、企画など、より高いスキルを必要とする職業には、障害のある労働者が少ないのも事実です。米国労働統計局によれば、仮に学位、職業、業界、労働時間、経験、学歴、年齢、人種、宗教などの条件をすべて均一に調整した場合であても、障害のある人とない人を比べて、9割程度の収入しか得られていないという事が判明しています。

 

この文章ではいろいろな「課題」の設定ができると思います。

 

●企業に対して、障害を持った方の雇用がされていないという課題

●仮に同じ労働をした場合、障害のある、なしに関わらず、支払うべき対価が異なる事が課題

●肉体労働など産業構造全体として平均賃金が低い事が課題

●障害のある方が、マネージメントや企画などの仕事に就けない事が課題

●障害のある方がそもそも、高度な仕事につけないと思っている(であろう)事が課題

●企業側に対して、障がい者の受け入れの努力や、機会の提供ができていない事が課題

●全体で1割しか給料格差がないのであれば、そもそも課題はない

 

この文章だけでも見方を変えれば、さまざまな課題がありますよね。課題は人によって捉え方が異なるという事を理解いただけたと思います。この課題設定が異なれば、もちろんその後、解くべき課題が変わっていきます。

 

逆に全員が同じ認識で「何が課題なのか」を正しく理解することができれば、その後の改善もSpeedyになるという事です。

 

  課題にある見えない制約を見つける

課題を設定する上で1つ重要な要素として、Constraints「制約」があります。制約とは、人や物事に対して何かしら制限をかける事を意味します。ただしこの制約は、意識的にわかる制約もあれば、無意識のうちに制約となっているものもあります。本当にそれが制約なのかどうか、それを正しく理解することが大事です。

 

ここでは、アメリカのサウスウエスト航空が制約を見事に利用した事例についてご紹介します。

 

その昔サウスウエスト航空は、飛行機を1機でも売らなければ、倒産してしまうという事態に陥っていました。このように資源が限られているという「制約」を受けると、多くの人はその制約の犠牲になる決断をする事が多いです。サウスウエスト航空も同様に縮小を受け入れる議論も行いましたが、最終的に全く違う選択をしました。

彼らは、4機ではなく3機でも既存のルートを維持するという目標を達成する方法を見つけました。彼らはこれを、ブルートフォースではなく、制約を受け入れることで実現したのです。

航空機の台数という明らかなリソース制限に注目するのではなく、飛行機の平均的なゲートターンアラウンド時間(着陸してから再び離陸するまでの時間)が約60分であることに気づきました。この間、機体の清掃、整備、給油を行い、食事、荷物、乗客の搭乗を行います。ボトルネックになっている飛行機が、地上に止まっている時間が1分でもあれば、貴重な時間のロスにもなりますよね。

そこでこのゲートターンアラウンドタイムを60分から10分に短縮できれば、飛行機を1機減らしても、今ある既存のすべての路線を飛ぶことができると計算したのです。また、さらに分析を進めると、このゲートターンアラウンド時間の最大の要因は、乗客の搭乗プロセスであることが判明しました。そこで同社は、座席を指定しない抜本的な搭乗手続きを導入し、その結果、飛行機を1機減らしても、すべての路線を維持することに成功したのです。

しかし、そこでも終わりませんでした。皮肉なことに、彼らは自分たちにさらなる制約を課すことによって、ゲートターンアラウンドタイムの最適化を続けました。競合他社は、さまざまな長さのルートを飛ぶために、多様な航空機を搭載しているのに対し、サウスウエスト航空は、単一のタイプの航空機(ボーイング737)だけを使い、短いポイント・ツー・ポイントのルートだけを飛ぶことを方針としたのです。航空機が多様化すると、メンテナンスが複雑になり、ゲートのターンアラウンドタイムが長くなる原因にもなるためこのような制約をあえて設けました。

 

"私たちは、米国で唯一の短距離、低運賃、高頻度、ポイント・ツー・ポイントの航空会社です "と。


いかがでしょうか?

制約があるからこそ、イノベーションが生まれ、そしてさらなる制約を作る事で他社との差別化に成功した事例ですね。

 

課題に対して解決策を考える際にはこの制約が本当に制約かを改めて考えてみましょう!

 

 

  課題定義のプロセス

課題が正しく設定されたところ、次に大事なのがそれを言語化する、定義するステップです。

よくある事ですが、課題が設定された事に満足してそこで終わってしまうという企業も多くはありません。その課題がなぜ必要か、誰のため、求める物は?など、全体を言語化することで次のステップへの認識が合致し、解決策のスピードも向上していきます。

 

1. 取り組む内容の必要性

  • この課題を解決することは、誰かのNeedsがあるのでしょうか?その場合、なぜ必要なのでしょうか?最終的なゴール、求める結果が何なのかを明確にすることで、取り組む内容の必要性が把握できます。

2. 必要性の正当化

  • その課題への取り組みは会社、組織との目標とリンクしているのでしょうか?そもそも取り組むべき課題が戦略に一致していなかったり、一致しているかの結果の測定方法が明確でなければ取り組む事自体が正当化されません。
3. 問題の文脈化
  • ここでは課題に取り組む内容、理由が第三者が見てもわかるような状態にしておく事が重要です。例えば、その取り組み自体、過去に誰かがすでに取り組んだ課題であったらそれを参考にしたりと積み重ねる事ができます。また制約なども見返す事ができるようになるため、文脈にまで落とし込んで言語化する事が大事です。
4. ステートメント
  • 1−3をエビデンスとして残す

以上です。課題が特定できたからといってそこで終わりではありません。たとえ取り組みが失敗に終わったとして、後から見直すことで次の学習する組織へと変わります。だからこそ、課題定義を残す事が重要なのです。

 

  解決策はアナロジー(類推)も有効

解決策については、また別途紹介したいと思いますが、その前にアナロジー、類推を使う方法をご紹介します。類推とは、2つ以上の物事の間にある共通点に着目し、考えている課題に応用する思考法です。

 

例えば、回転寿司の生みの親とされているのが、元禄産業の創業者である故・白石義明さんです。

白石さんは、ビール工場の製造に使われているベルトコンベヤーにヒントを得て回転寿司を開発したといわれています(元禄産業のホームページ参照)。

従来のお寿司屋さんといえば、カウンターとテーブル席(座席)からなり、注文を聞いてから寿司を提供していました。それを、ベルトコンベヤーを使って見込み生産方式で寿司を提供するスタイルに変えたわけです。表面的な同業者の動きだけをみていたら、これほどすごいイノベーションを起こすことはできなかったでしょう。

 

このように類推、アナロジーは、表面的類似ではなく、一見気がつかない遠い先の構造的類似が必要になります。

また、アナロジーには自分の経験則でもあるヒューリスティックや、物の見方のバイアスがかかることも覚えておきましょう。いかに客観的に、そして構造的な共通項をさがすかが、アナロジーのポイントになります。

 

  まとめ

それでは今回のまとめです。今回は課題を正しく設定する方法についてご初回しました。

 

 人により何が課題かの捉え方が異なるため、解くべき問題を明確にし課題設定を行う重要

 

 課題を設定する上で、「制約」を正しく理解する。制約は自社にしかない優位性にもつながる

 

 次の改善に繋げるためにも、課題設定をエビデンスとして残し共通の理解をステークホルダーからえておく

 

 類推、アナロジーでは、構造的な共通項を見つける、ヒューリスティック、バイアスがかかる

 

いかがでしたでしょうか?

 

「課題を設定する」事は容易ではないことが実感できればと思います。いろいろな意見、考えがある中で設定することは難しい事ですが、その課題がそうさせているシステム全体で見る事、企業、組織のパーパス、個人の価値観、そして自分のパワーダイナミクスなどこれまでの要素を利用しながら、正しく課題設定できるように取り組んでいきましょう!!