はい、本日はタイトルどおり1年3ヵ月ぶりの『ザ・ベストテン』レビューをするんですがね。
本当は、やらないつもりだったのよ。だけどいま、ほかに書きたいことがなくて。あったとしても「書いちゃダメ」なやつだったりで。
あんまり気乗りしないまま始めるんですけど、はたして面白くなるかなぁ?
前回の記事をupした後もTBSチャンネルではちょいちょい『ザ・ベストテン』の再放送をやっていたのですが、あまり面白かった回は少なく。とくに1983年以降の放送はアイドルが大半を占めてしまってて呆れるばかりでありました。
だけど今回のは1980年。それも伝説のあのバンドが登場するとあって見逃せないと思っての視聴となったのです――。
ザ・ベストテン(1980年2月28日放送)|音楽|TBSチャンネル https://t.co/RCUmMEomtf #黒柳徹子 #久米宏 #クリスタルキング #沢田研二 #五木ひろし #西城秀樹 #アリス #郷ひろみ #久保田早紀 #小林幸子
— 全温度チ嗚呼 (*´Д`*) 920701 (@_30776506271) March 17, 2022
クリスタルキングの映像が放送されるのはファンですら「ない!」って断言してたから、要注目だな。
再放送開始前の冒頭で、現在の黒柳徹子(=独身)による解説が入る。あらためて番組開始前のエピソード。
・番組のプロデューサー、監督、演出などを担当していた山田修爾氏から番組司会の依頼を受けた日のこと。徹子いわく「その順位というものを正しくやってくださるんならやってもいいんですけど、局の都合とかで順位を変えたりするんだったら嫌だ。絶対に本当のことをやってくださるんならやります」と言ったのだそうだ。
すると山田氏は「約束します」と答えてくれたそうで。で、司会を引き受けることに。
・久米宏は『ベストテン』以前にも歌番組を経験しており、本人は「もう歌番組はやめたい」と思っていたころだったという。それが相方になるのが徹子というのを聞き、「じゃあ面白くなるかもしれない」と思い直して引き受けることにしたもよう。
・初回放送(1978年1月19日)のエピソード。山口百恵の曲が11位で、ランク入りした曲のなかにはテレビへ出ない歌手(中島みゆき)がいた。ちょっとズラせば山口百恵が出てくれるのに、山田氏は「約束だから」とランクの操作をしなかったのだそうだ。
不正をしないことが視聴者に伝わり、信用してくれたことで番組の人気につながったのだろう――と、徹子は分析するのだった。
昨夜再放送したザ・ベストテン1980年2月28日放送分。高校生の時生で見たな、これ。 pic.twitter.com/6Zl0NGzNkO
— Kazuyoshi Tashiro (@BugnoKatz) March 21, 2022
【ザ・ベストテン 1980年2月28日放送分】
10位は初登場で、小林幸子の『とまり木』。ブルーのドレスを着ている。この人はずっと変わらないなぁ。
いまでは「ラスボス」と呼ばれることもあるが、当時は20代後半であった。ちょっと仕草が松居一代に似てる気がする(笑)。
9位は松山千春の『恋』。やっぱり出演しない。
久米宏いわく「春のコンサートツアーの準備のため」とのことだが、本当はそういうことじゃないのは視聴者もわかっている。
徹子もこのときは『シュバルツの裸の王様』という舞台へ出演中とのことで豪勢なドレス姿でキラキラした指輪や首飾りや王冠なんかもつけてたりしているのだが、すっかりお姫さま気どりで久米宏のことを「爺」と呼んでおる。この日の徹子は久米宏を「爺」と呼ぶことに決めたようだ。
8位は久保田早紀の『異邦人』。正式なタイトルは『異邦人 -シルクロードのテーマ-』というらしい。
この曲はもちろん知ってはいたのだが、久保田早紀の姿は写真くらいしか知らず、動いたりしゃべったりするところは最近まで見たことがありませんでした。また曲のイメージも暗かったり幻想的だったりもするので、私にとって久保田早紀という人はUMAのような存在だったのです。
また商業音楽家としての活動期間が短かったこともあって、テレビに出ない歌手のひとりなのかとも思っていました。それがこのたびの再放送で複数回、彼女を拝見。ふつうに大人しそうな女子大生じゃんって思った。UMAじゃなかったって思ったよ。
決してカメラ目線にならず、どこを見ているのかよくわからない表情で歌う。まだカメラ慣れしてないんだろう。それにしてもこの曲、大袈裟なアレンジだな(笑)。
7位は郷ひろみで『セクシー・ユー』。何を血迷ったか、この時期のヒロミは頭がアフロで鼻の下にヒゲを生やしている。でも面白いので還暦過ぎててもまたやってほしい。あと、カラダが細い。徹子と大して変わらないくらい細い。
先ほどの久保田早紀とは違い、複数台あるカメラの位置を計算した目線で歌っている。さすがにこのへんはエンターテイナーだ。
6位はアリスの『秋止符』。矢沢透を中心に、右が堀内孝雄、左に谷村新司が立ち、しばしのトーク。
ヒゲのないチンペイは初めて見た。帽子を目深に被ってて目がよく見えない。しゃべり声はいい。さすが、数々のラジオパーソナリティを務めていただけのことはある。
あれれ、ベーヤンの髪型、聖子ちゃんカットだぞ!? ちょっと待て、この時点で松田聖子はまだデビュー前。なのにおなじ髪型をベーヤンがしているということは、松田聖子はベーヤンの髪型をパクったのか? じゃあ、あの髪型はベーヤンカットと呼ぶべきだ。
キンちゃんもしゃべった。この方もパッと見、女性みたいにやさしい顔立ちと、後の女性アイドルがやるようになる髪型をしている。しかも話し方まで女性っぽい(笑)。徹子が「こないだスーパーマーケットでお会いしたの。スーパーマーケットでお会いしたら大きいのね」と、プライベートネタを話してる途中で話を遮るように爺が3人をステージへ促す。
5位に西城秀樹『悲しき友情』。兵庫県の西宮マリーナから中継。MBSの青木和雄アナが“追っかけマン”を務める。西宮マリーナは日本でいちばん古いヨットハーバーなんだと解説。
ヒデキは日本を含む南方の海と黒潮の動きが描かれてあるボードを手に「グァム島で流したものを気にしておりまして、こちらの海に来たんですけれども。先週ですね、だいたいボクの予定ですと、フィリピンあたりに流れておりまして、今秋は台湾沖あたりに流れてるんじゃないかなという予定でございます」と説明。流れて? なんのことじゃ(笑)?
そこへ専門家(?)の方が登場。岡本卓也さんという、この前年夏、親子で太平洋を横断された方だという。あれぇ、この人、心当たりがあるぞぅ!? たしか一緒に行った息子さんが書いた日記を書籍化した『ぼくの太平洋大航海』という本が実家にある! ずっと前に読んだ記憶もある。そうか、あのお父さんだ。
その岡本さんが太平洋横断時に使ったヨットもそこにあると紹介する。
徹子「西城さんがグァム島から流した瓶でございますが、日本に着くとお思いでしょうか?」
岡本さん「10%の確率はあると思いますね」
ああそうか。おそらくヒデキは瓶に何かを詰めたものを海へ流して、その行方を気にしているということなんだろう。う~ん、いかにも昭和にありそうな企画ですな。詳細をご存知な方がいたら、おしえてください。
浮かんでいるヨットの上で歌うヒデキ。黄色い長靴を違和感なく履きこなすヒデキ。正直、この曲は売れなさそうな雰囲気がする。だけどヒデキの口パクなしの歌唱は、やはりさすがであった。
4位、オフコース『さよなら』。
久米「申しわけございません。オフコースのみなさん、お考えが変わってらっしゃいませんで今週もご出演いただけません」
なんかもう、出てくれそうな雰囲気がまったく感じられない(笑)。この当時のフォーク・ニューミュージック系のミュージシャンは、とても頑固だ。でも、それがよかった面も少なからずあるんだが。
ラジオのベストテン情報。福岡RKB毎日放送の“しゃべる博多人形”葉山さつきアナによる進行。
「RKBベスト歌謡50」なるボードを立て、このラジオ局のランキングを簡単に紹介(といっても書いてあるのは上位10曲のみ。全員が男性歌手だった)。ついでに彼女の母校の在校生による寄せ書きを紹介・・・と、どうでもいいようなコーナー(笑)。まるでここだけ別番組。
なお葉山アナは、この年でいったん寿退社するようだ。
20位から11位の発表。
3位は五木ひろし『おまえとふたり』。あずき色のカシミアを着てきたひろしと、それを触って興奮する徹子。ひろしは着るものを寝押しするんだという話題に。
久米「カシミアを寝押しする人はあまりいません」
まだ触りまくってる徹子。カシミアって、そんなに手触りがいいものなのか?
徹子「あたくしなんか24枚のお布団のいちばん下にエンドウ豆があったってゴロゴロして寝られないのよ」
こんなのが台本に書いてあるのかなぁ(笑)?
歌唱するひろし。バックにむき出しの生演奏。ヴァイオリンが多い構成。オーケストラ、と呼んだほうがいいかも。
2位が沢田研二で『TOKIO』。カリフォルニア州ディスバレーで2月25日に撮ったVTRが流される。広大な土地のなかで、ドリフの探検隊コントみたいな出で立ちのジュリーが一方的にしゃべりまくるだけの映像。
「暇で、することがない」とのこと。けっこう長い。本当に、することがないんだろう。
こんなところへ来ていても、例のパラシュートは持っていってたらしい。ただし生バンドまでは来ておらず、カラオケ機材なども見当たらない。よく見ると映像と音声とのあいだに僅かなズレがある。口パクだと思う。
そして1位はクリスタル・キングの『大都会』。個人的にはコレが目当て。レコードは持っているがリアルタイムで買ったものではなく、この時期の彼らの姿をテレビで見たことはなかったので要注目である。
まず驚いたのが、表記がクリスタルキングではなく「クリスタル・キング」になってること。クリスタルとキングのあいだに「・」が入ってるのを見たことがない。『大都会』のレコードジャケットですら、それは見当たらないのだ。
どう表記されているか、というのはけっこう重要な問題だ。わざわざ「・」を入れているということは、きっと意味がある。こうなると彼らの本当のバンド名は何なのか、という大いなる疑問が私を襲うことになるのである。
やたらアフロ率の高いメンバーたちがミラーゲートをくぐって、ビックリドッキリメカのように登場。彼らは九州の出身だが、おなじく九州つながりで先ほどの葉山アナが再登場し、福岡は宮地嶽の「ぜんざい祭り」から持ってきたという、ぜんざいを出演者に配り始めた。
これが大好評のようで、歌手たちは砂糖にたかるアリのように、ぜんざいを持っていく。郷ひろみなんか、いままさにカメラの前でしゃべっている久米宏の前を横切って箸を取りにいっていた(笑)。演奏しなきゃいけないクリキンだけは、いったんおあずけ。
スイーツ系というのは盛り上がりますな。だいぶ前に当ブログで書いた伴大介さんの集いの場でも、メインとなる料理はあるのに、最後でオマケのように配られたガリガリ君が出たら盛り上がりましたから。
今週の1位はクリスタルキング 大都会 pic.twitter.com/cAopGDb69j
— mercedes (@mercedesw245) April 10, 2022
で、いよいよ演奏が始まるわけですけどね。見入ってしまう。聴き入ってしまう。これは当時、相当なインパクトであっただろうなーというのが容易に想像できる。曲の構成からして、よくこんなの思いついたなーとは思っていたけれど。
テナーハイトーンヴォイスのマー坊については、いまさら多くを語る必要はない。ただ、やはりあの歌声は彼だけのものだ。ものまね番組などで高音の出るタレントや歌手らが近い声を再現しようとはするのだが、どうしても本人の声ほどの感動には届かない。ああいうのは、単に高音が出ればいいというものではないのであろう。
ハイインパクトのマー坊に隠れがちかもしれないが、じつは“低音のムッシュ”と評されるムッシュ吉﨑も相当に上手い。情感をゆさぶるような表現力は大いに長けている歌手だと思う。
そして前にも書いたことはあるが、ムッシュは演歌が上手いであろうことも想像がつくのである。世良公則などにもいえることだが、この当時のロックミュージシャンは基本ができているので演歌だってできるのがわかる。そういう歌い方をしている。
だからクリスタルキングが、本格的な演歌もリリースしてくれてたら・・・と思うことがたびたびあるのだ。ましてマー坊とのツインヴォーカルでやる演歌だと・・・? ワクワクして仕方ないではないか。
ムッシュのライブへ行ったことのある方の情報では演歌を歌うこともあるそうだが、もともと本人たちも憶えてないほど多彩なレパートリーを持つ彼らのことだから、レコーディングもされてないような持ち歌のなかには、もしかすると演歌も存在していたのかもしれないな。山下三智夫か今給黎博美の作曲でね。
なお、この回で5週目の1位となるクリキンは、このあと8週まで記録を伸ばすことになる。これは1980年の同番組で連続1位を記録した曲のなかでは最長であるハズ。
放送時間も残りわずか。番組終わり間際の記念撮影。クリキンのメンバーも、ぜんざいにパクついている。西城秀樹とともに岡本卓也さんと、そのお坊ちゃん(=『ぼくの太平洋大航海』の著者)が加わって映っている。
それへ向かって徹子が矢継ぎ早に言葉を浴びせかけているが、ドサクサ紛れに「五木さんはふたつもお餅を食べたんですよ!」と、どうでもいい情報を提供していた(笑)。ひろしはあずき色のカシミア着てたんだから、ぜんざい食べるのには気合が入ってたのよー。
はい、ポーズ!
レビューはこれにて終了。なお本日のMVPは、聖子よりもベーヤンよりも聖子ちゃんカットを長く長く続けている片山さつきということにいたします。さつきは最近、セットが雑になり気味だけどな。
このシリーズ、次回は・・・・・・あるかもしれないし、ないかもしれません。 <(_ _)>