前記事の『八月のシャハラザード』から、わずか1週間後の12月16日。こんどは『純喫茶 せつな。』なるお芝居を観に、またしても戸野廣浩司記念劇場まで行ってきましたー!
 また千秋楽です。というか、だいたい私は千秋楽に観劇することが多いです。これで同劇場へは、この4週間で3回という、私にしてはかなりのハイペースで通わせていただくことになりました。

 まず、そもそもこの作品を観ることになったきっかけは、11月25日に同劇場でおこなわれた戸野広浩司さんの誕生日会でお話した高橋春菜さんが出演されると伺ったことから。
 実際にお会いした春菜さんが2月に観た舞台『トノ、何がしたいんだ?』に立っていたときの印象と違って見えたこともあり、「この人の違う作品でのお芝居を観てみたい」と思ったのが最初の動機。
 また、同劇場の館長さんであり、この作品の脚本も担当する平山さんから「『トノ~』みたいのが好きな人にはオススメですよ」と言われましたんで、この時点でほぼ観劇しようとは思っていたのですが。
 そして後日、この作品には村下孝蔵さんのLP『夢の跡』に収録されていた『明日あればこそ(「ナナカマドの挽歌」を読んで)』が、ある役割を担っているという情報を聞きました。
 おお、さすが平山さんだ! 『明日あればこそ』にスポットを当てようとする着眼点が素晴らしい。
 これが決定打となりまして、足を運ぶに至りました。だけど『初恋』『踊り子』だったら、逆にテンション落ちてしまうところだった。


$大正生まれのブログ

 当日、例によって時間ギリギリで劇場へ駆けつける。平山さんや営業の黒田さんらに挨拶し、そそくさと客席へ。すると、このところ同劇場へ行くたびに顔を合わす塩野勝美さんが既にいらっしゃってたので隣に座ることに。
 じつは前日、塩野さんも同じ回で観劇する予定であることをツイッターで知っていたのでした。
 もうそこそこ埋まっていた客席は、開始時間が迫ると、さらにいっぱいになりました。私や塩野さんも奥へ詰めて座ることにします。満席状態。どうやら女性客の割合が多いようでした。
 さて、開演。演劇

 このお話は、まず若き夢追い人の姿を描くというお題があったそうです。脚本担当の平山さんは30代後半でして、もっと若い20代の出演者の方々と同じ目線のものにしたかったらしく、ご自身が18歳(日活養成所時代?)のときに書いていたものをベースに作り上げたものらしい。う~ん、ナイスアイディア!
 なので30代後半である平山さんが、18歳当時のご自身と向き合うような感覚だったとか。面白いなぁ。

 物語は1972年を舞台に、ある喫茶店で、ある日、ある瞬間に居合わせた人びとの、その後の運命を「闇の中の光」「歌を忘れたカナリア」「思い出の散歩道」と題し、3組に分けてそれぞれを描くというオムニバス形式で展開されていきました。

 1972年っていったら、まだ平山さんも生まれてないじゃん(笑)。でも、そこへ時代設定を置こうとするわけですから平山さん、まだまだチャレンジ精神は衰えていないと見ましたよ。

 3つの物語はどれも、ある喫茶店での、ある日、ある瞬間から始まります。したがって、そのたびに同じ場面が繰り返し演じられるのです。
 その際、台詞の言いまわしにクセのようなものを感じる瞬間があったのは、同じ場面であることを印象づけるためにワザとやっていたのかなーと思いました。

「闇の中の光」は田舎から出てきた売れない作家と、それを支えようとする恋人の話。
「歌を忘れたカナリア」は歌手として新人賞を獲ったものの、評価されていたのは歌ではないと知り挫折したアイドルの話。
「思い出の散歩道」は老画家が人生を振り返るという縦軸があるのですが、ひとつ目の「闇の中~」に少し似ています。売れない作家時代の彼を支えようとする恋人がいまして、彼が夢を諦めかけていることに耐え切れなくなった彼女は彼のもとを去り・・・そんなお話。
 それぞれの物語は最終的にシンクロし、長い年月を経てみれば、因縁めいたものも感じさせつつドラマティックに展開されていました。

 しんみりとしてしまいがちな展開なんですが、そこへアクセントをつけるべく登場してきたのが大星圭子さん。喫茶店のママを演じたMARUさんの旧友の役・・・だったかな?
 なぜか店の厨房あたり(?)からズカズカと登場。大袈裟にいえば、巨体であるがゆえ、それが客席からは奥の位置にいたとしても手前に見える・・・まるで『紅白』に初出場して遠近法無視を見せつけた天童よしみさんのような存在感である。
 この大星さんという方、いまにして思えばストーリーとはあんまり関係ないことばっかりやってたように思える。いや、もし関係あることやってたとしても存在自体が強烈すぎて憶えていない(笑)。
 MARUさんへネタ振りしては何か芸をやらせ、逆にMARUさんからもネタ振りさせられて自分も・・・を何度か繰り返す。
 客席から、変な笑い声が聞こえる(明らかに通常のものとは異質な笑い)。それも必要以上に。最初はその笑いの意味がわかりませんでした。でも・・・。
 そうか、これってアドリブなんだ! 笑ってたお客さんは、それをいち早く察知してて笑ってたんだ。というか、もう何度か観ているから知ってたのかもしれない。
 これに気づいてからは(それが正解だったのかは確認し損ないましたが)、たしかにその場面が妙に可笑しく思えてきました。
 たぶん、しんみりさすだけでは肩が凝るだろうと、休憩的な場面を入れる演出だったのでしょう。例えて言うなら『人造人間キカイダー』ハンペン『犬神家の一族』なら橘警察署長あたりのポジションですかね(こんなんしか具体例が思いつかなかった)。

 あと、ビックリしたのが田中孝征さんが演じた老画家の付き人(?)=オカマちゃんでした。
 田中さんといえば『トノ、何がしたいんだ?』で、テツ(モデルは狭間鉄さん)という男っぽい役を演った方。あの人が、コレを・・・?
 前日の15日、『トノ~』で共演されていたゲキ塾。ぐっちょさんロクさんが観劇に来てたそうです。ぐっちょさんといえば、かつて同劇場で披露した舞台に出演し、見事なゲイ役で驚かせてくれた実績のある方。九州男児でありながら女子力も非常に高い役者さんということは私も存じております。
 そのぐっちょさんをして嫉妬さすほど(?)のオネエぶり。彼女・・・いや、彼の「ね、せんせ❤」で何度客席が爆笑したことか・・・。
 田中さんの怪演、これも強烈でありました。

 本当の成功とは――?
 それがこの作品の大テーマに掲げられていたものです。もちろん、誰だって現在の自分が本当の成功者かなんてわからないものだとは思いますが(明らかな失敗の場合はわかるのかも?)、こうして具体例を挙げられますと、あらためて人生の「せつなさ」を痛感させられますねぇ。

 終幕後は出演者の皆さんで自己紹介。ここでも大星さんが仕切るようなカタチで笑いを誘いながら進行されます。
 その際、出演者に女子プロレスラーが複数名いたことが明らかとなり、しかも見た目が華奢ということもあってかビックリする人が続発する客席。
 このときは明言してませんでしたけど、じつはMARUさんも元女子プロレスラーだそうですからね。なんだ、みんな知ってて来てるのかと思ってたんだけど(笑)。
 ただし、最も体格のよかった大星さんが、自分のことを指して「誰がプロレスラーじゃ」と、しきりに毒づいてたのを見て、本当に同業の人だと思わなかった人は少なかったものと推測されます。 (;´▽`A``

 観劇後は例によって、劇場の外で出演者の皆さんがお見送り。ここで私は平山さんと談笑、裏エピソードなども聞かせていただきました。
 タイトルとなった“せつな”は、じつは演出を担当した床田菜摘さんの名前をもじったものであったこと。「思い出の散歩道」で関根慶人さん&山口祐介さんが演じる光夫と床田菜摘さん演じる小百合の名前は、日活青春映画のスター・浜田光夫さん&吉永小百合さんによる黄金コンビから採ったものであること。
 また、後で知ったのですが「闇の中の光」で森川翔太さんが演じた石坂洋二という役は作家の石坂洋次郎さんから、世羅りささんが演じた瞳は坂本九さんの『心の瞳』の歌詞から採ったのだとか。
 あと「歌を忘れたカナリア」で春菜さん演ずる花園マリコは志賀真理子さんと、志賀さんが声をあてていたというアニメ『魔法のアイドルパステルユーミ』の主人公・花園ユーミの名前をミックスさせたものであったそうで。
 この志賀真理子さんという方も『パステルユーミ』という番組も私は知らなかったんですけれども、偶然にもこの観劇に向かう直前くらいに当サイトへペタをくれた方のブログで志賀さんの歌や事故のことが綴られていた記事を目にしておりまして、ちょっと驚いてしまいました。
 そうだ、二人の若者が田舎から出てきた当時の場面、演じてた翔太さんと世羅さんの方言が広島弁のように聞こえました。なんで広島にしたのか確認するの忘れてた。平山さん、これ見てたらおしえてください。

 平山さんからの紹介で、売れない作家・洋二役を演じた森川翔太さんとお話させていただきました。翔太さんは劇中、故・村下孝蔵さんのものと思われるジャケット(平山さんが入手していた)を着て出演されていたのでした。
 モリカワショウタといえば、この1週間前、同劇場にて公演された『八月のシャハラザード』の終演後、出演者の正太さんから「来週もモリカワショウタって人が出ますんで」という話をされてましたし、同じモリカワショウタつながりということで劇場の人からもネタにされてたようなんです。
 もっとも、正太さんの場合は本当はぜんぜんショウタじゃなくって、ただ名字が「森川」というだけでそう呼ばれているわけなんですけれども(笑)。
 こうして二人のモリカワショウタさんと遭遇させていただいたわけですが、未だ本家の森川正太さんとはお会いしておりませんデス。
 翔太さん曰く「むかし同じ名前の俳優さんがいたというのは、よく聞きます」とのこと。
「森川正太さんという人はですね、青春ドラマの顔のような方でしてね。それが青春ドラマか否かを見分けるラインは、森川正太さんがキャスティングされてるかどうかで決まるのですよ」
 ・・・そんな話をしましたよ。まぁ「むかし同じ名前の俳優さんが・・・」と言いましても、べつに森川正太さんが俳優を引退したわけじゃないとは思うんですけどね。翔太さんはまだあどけなくも爽やかなイケメンスマイルで応対してくださいました。
 あ、いま翔太さんの誕生日が私と同じなのを知りました。今後「同じ誕生日の有名人は?」という質問があったら森川翔太さんの名前を挙げることにします。


●せっかくなんで、ここで『おはよう!こどもショー』の挿入歌で、森川正太さんが自ら作詞&作曲して歌っていたという『グヤグヤの唄』を聴いてください。


 直前まで他の方と談笑されていました春菜さんが空いたようです。「あのときぶり(笑)」って言いながら、こちらへもいらっしゃいました。
 やっぱり春菜さんの笑顔はいいですね。私が知るかぎり保育系の仕事を目指す方によく見られる、屈託のない笑顔。
 劇中ではアイドル歌手を辞め、最終的に幼稚園だったか保育園だったかの職員になることで歌を歌える喜びを取り戻す・・・という結末でしたが、そこで「あっ、春菜さんから感じた雰囲気って・・・そうだったのか!」って気づいたのですよ。だから春菜さんには非常に適役だったのではないかと思います。
 これをご本人にも話したところ「私、教育学部出身なんです」とのこと。うん? 教育学部といえば学校の職員とか公務員や福祉関係などが主な進路というイメージがあるのですが、私が感じたのは、とくに子ども好きな人から伝わる空気なんですよ。たぶんコレ、武器になると思います。だけど、くれぐれも凶器には使うことのないようお願いいたします(笑)。 <(_ _)>

 そのあとは塩野さんと、近所の焼き鳥屋さんで終電近くまでお食事。聞くところによると塩野さんは、クリエイターとしてかなり幅広く活動されておられる方で驚きました。
 塩野さんの生き方、そして私の生き方。お互い「こうしたい」と思いながらきたわけですけれども・・・。
 本当にそれでよかったのか――?
 結局のところ、そんなのは自分にもわからんのですよ(笑)。ただ、結果はどうあれ各々が納得できる生き方でありたいものですね。
 そういえば今回のお芝居、私が最も好きな洋画『ニュー・シネマ・パラダイス』と共通点がいくつもありましたことを付け加えておこう。

 ――というわけで年末、トノゲキさんにはいろんな方々と遭遇する機会を作っていただくことになり、たいへん楽しませていただきました。またヨロシクお願いいたします。

 最後に。
 私がなるべく千秋楽に足を運びたいと思う理由。
 それは、皆さんが大役から解放されたときの「あー、終わったー!」というお顔を見たいから。


●『明日あればこそ(「ナナカマドの挽歌」を読んで)』は、暗転の際に使われていました。


【追伸】
 後日、調子に乗って高橋春菜ファンクラブなるグルっぽをシャレで作ってみたんですわ。
 ご本人からは快諾いただいたんですけれども、非公認のほうが面白いと思うので当面はこのまんまでいきたいと思います。にひひ