「お米って根っこに成るのかと思っていた」と驚くスペインからの若いカップル。田んぼを見るのも、垂れ下がった稲穂を見るのも、もちろん稲刈りも初めてである。
昨夜、二人が着いたのは、農作業を手伝ってもらう代わりに、寝泊まりと食事を無料で提供してくれる山形にある大家族農家。家主の海外体験から、お米屋だった家を海外国内問わず誰でも気軽にやって来られる場に変え、すでに八十人もの人を迎えているという。
こどもからお年寄りまで大勢それぞれの笑顔が、ことばも通じない日本に来たばかりの不安げな二人を、家族の夕飯のテーブルに招き入れる。
朝早起きしてのナスの収穫、朝食をはさんで稲刈り、稲干し…、こどもと戯れる二人、家族とのおしゃべり、土地のたべものと特別なことは一切ない。感謝のしるしに二人がスペインの郷土菓子を嬉々として作るあたりはジンとくる…わずか10日余りの滞在だが、別れの時には絶対サヨナラとは言わないそうだ。行ってらっしゃいと言って送り出す。送る者も送られる者も、ともに涙を浮かべながら………。
家族とうまくいかず自転車旅の最中に立ち寄った日本の青年、家族に会いたくなったと大家族に見送られながら、行ってきますと旅立って行った。フランスのテロのニュース、ピンとこないのは何故だろう。実感に乏しいのはオレがおかしくなっちゃったのか。
〈どんな人でも、家のなかでは有名人なんです。……人間がそれ以上の有名というものを求めるのは間違いではないかと思いますね。 鶴見俊輔〉

