年明けて毎日から朝日に、日曜版は「be」って言うらしい。あれっ今日は土曜だぞ、土曜版 be on Saturdayか。それも二つある。一つは小澤征爾さん、もう一つは「蜘蛛巣城」が特集、黒澤監督1957年の、マクベスを下地にした映画だ。よく読むと映画の説明というより、それまで黒澤組を支えた名プロデューサーの本木荘二郎さんの話でもある。
この作品を最後に彼は黒澤監督と決別する訳だが、その原因はともかく後の彼の人生が凄まじい。いくつも名前を変えて、当時勃興し始めたピンク映画を二百本も監督したというから驚く。さらに晩年は無一文のホームレス状態で亡くなったという。
あの労働争議以後『映画芸術協会』を設立、「羅生門」「生きる」「七人の侍」などを世に送り出し、名実共に日本映画の絶頂期を華やかに生きた、東宝の名プロデューサーの何という変わり様、その生き様がスゴい。
ベネチア映画祭の金獅子賞に輝いた「羅生門」、原作は「藪の中」と「羅生門」芥川龍之介の短編だ。自身の名を冠した作家の登竜門たる文学賞は余りにも有名だが、芥川自身はどんな絶頂期を経験したのか。35才で自らの命を絶った芥川龍之介に、晩年の変わり様なんて有り得なかったのか。文芸評論家の秋山駿さんが、芥川龍之介についてこんなことを言ってる。
この人は、聡明な精神で、理知の人であるということになっている。
僕は、若年の頃、この聡明と理知とを大いに愛したが、その後しだいに、どうか彼のようには聡明でも理知的でもありたくない、と思うような人間になった。この聡明と理知に匹敵するだけの、十分な鈍感と愚かしさとを自分に欲するようになった。〈中略〉
この理知の人に欠けているのは、自分の理知を否定する愚かしさであると思う。
