暗闇の中を歩いている。整備されていない足場は草木に覆われていて、足裏には小石の感触が伝わってくる。目を凝らしても入ってくる色彩情報は乏しく、踏み外さないよう努めるのが精一杯であった。
しばらくそうして歩いていると、遠くに仄かな灯りがあった。近付くと、それは他人の灯した灯りであって、彼らは懐中電灯という先代の作った利器を使用して灯りを生み出していた。仄かな灯りであっても、何も持たない自分より遥かに足場は確保され確実に進めていけているようであった。
そうして、ようやく自分も灯りを所持していることに気付いたのだ。
携帯電話のライトを使用して自分の足場を照らす。自分の履いたデニムの色や靴の色が黒い世界に色を与えた。相変わらず1メートル先の道は見えないが、手の届く範囲に危険はないと認識して、安堵したのだ。
暗闇の先は安全なのか、目的地に近付いているのか、分からずに、ただ足下の石ころに転ばないように歩いていく。
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通勤時間に書く30分SS第1弾!
先輩の意見や上司の意見は明るく照らしてくれているようで、自分の道に正しいかなんて分からないよねって話。現代設定で失敗例を書くほうが伝わるけれど、比喩表現のほうが好きです。