「まーくん、お帰り!」
狭いアパートだ。
部屋にいた二宮は玄関前の気配に気づき、待ちかねたとばかりに内側から勢い良くドアを開けた。
しかし、そこに居たのは相葉だけでは無かった。
相葉の肩を抱いた櫻井と目が合う。
まただ。
またあの瞳を覗き込んでしまった。
自分と同じ瞳を……。
「和、ただいま。遅くなっちゃってごめん」
相葉はそっと櫻井を押しやると、二宮に向かって少しだけ気弱な笑みを浮かべた。
そこにある遠慮めいたものに、二宮は眉を顰める。
「二宮君、すまない。俺が引き留めたんだ」
そう言って、櫻井は相葉の肩にのせた手に力を込める。
絵に描いたような騎士道精神。
二宮は突き放した思考でそう思う。
「構わないですよ。どうせ、まーくんは、金であんたに買われてるんだから」
「和!」
窘める相葉の声にも、二宮は少しも動揺しない。
ちゃんと覚悟が出来ているのだ。
長い時間、大切に、大事に培ってきた思いを成就させるという覚悟が。
冷やかな眼差しで櫻井を見やれば、やがて相手は、小さな溜息を漏らした。
「すまないついでに、もう一つ、話があるんだ君に……」
「何ですか?こんな遅い時間に」
「もう!和、失礼でしょ!」
すると、相葉の胸元できらりと光るものが二宮の目に飛び込んで来た。
無言で相葉に手を伸ばす。
注意深く見れば、昨日、自分がした首輪は傷だらけになり、相葉の細い首にも赤く擦れた痕が残る。
しかし、一番気になるのはそこじゃない。
二宮の意図に気づいた相葉は、咄嗟に後ずさろうとしたが、櫻井がいるので動けない。
スローモーションのように、二宮の指が自分の首筋に届いたのを感じる。
二宮の指先に触れたのは細いチェーン。
掬い上げれば、シンプルだが高価そうなプラチナの指輪が揺れた。
頭がかっとするのと同時に、心が氷のように冷たくなる。
傷だらけの首輪。
首から下げたプラチナ・リング。
それらが意味するものは明白だ。
……最愛の人に裏切られた?
いや、最愛の人を奪われたのだ。
二宮は、すうっと全身の血の気が引いて行くのを感じる。
生まれて初めて、本物の怒りを覚えた瞬間だった。
夢なんて見ないと、決めていた心。
相葉によって、その心はゆっくりと解され、一緒に描いていた二人の未来。
そこには、相葉の笑顔が必要なのだ。
だが、……まだ間に合う。
完全には奪われてはいない。
「か、和、これはね!あの、でも、櫻井さんは悪くないの!」
「二宮君、俺、……相葉くん、いや、雅紀にプロポーズしたんだよ。本気なんだ」
互いに支え合い、庇い合うようにする二人。
お似合いの二人だ。
二宮の口元に笑みが浮かぶ。
「なるほど。そういう事ね」
その声音には諦めとも取れる響きがあったが、二宮の瞳には、違う色が覗いているのだった。
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貴族探偵、3話。
またまた、新たな御前の魅力が!!
眼鏡にぎゃーっ!となり、シュビ様との戯れにむらむらし、そりゃ、もう大変でした!
ううっ、続きも楽しみです!!
次回、15分拡大なんですよねえ。
はたして、御前の入浴シーンはあるのかな?
しかし、ニノちゃんの30日のベイスト。
すごかったね。
重かったね。
これは、ちゃんと語りたいなあ。
時間差でもイイから、自分なりの思いを吐きだしたいな。(T_T)