櫻井に連れられてマンションに戻った相葉は、急いで料理を仕上げた。
ブイヤベースの味を調え、手早くサラダを作る。
心の動揺はまだ完全には消えなかったが、櫻井と一緒にいるだけで、自然と落ち着きを取り戻していく。
相葉の周りを手持ち無沙汰でうろつく櫻井が、気遣って手伝おうとするが、それが返って邪魔なだけなのも、心にゆとりを与えてくれる。
キッチンに、食欲をそそる、いい香りが満ちて来た。
「それ、俺が運ぶよ」
ブイヤベースの鍋を鍋つかみで掴んだ相葉に、そう櫻井が声を掛ける。
「そう?熱いから気をつけてくださいね」
鍋をレンジに置くと、相葉はふわりと優しく笑った。
涙の痕が残るそれは、とても綺麗で儚げに見える。
櫻井はぐっと息を詰まらせ、それからゆっくり吐いた。
「あのさ、それ、止めねえ?」
「えっ?……何をですか?櫻井さん」
不意に不安になった相葉は、少しだけ胸が切なくなる。
すると、瞳を泳がせた櫻井は口籠りながら早口で言う。
「そ、それ、その敬語だよ。それに、櫻井さんってのも……」
「でも……」
「だって、他人行儀じゃねえ?い、一応、俺達好きあってる仲なんだし、それも、もうヤっちゃってるし……」
照れたような拗ねたような口振り。
それを聞いた相葉は、自分の頬が赤くなるのを感じていた。
行為の最中、櫻井は何度も雅紀と呼んでくれたのだ。
「もう少し、相葉くんも俺を信じて、遠慮を無くしてくれてもイイんじゃないかな?」
「じゃあ、櫻井さんも」
「んっ?俺?」
「俺の事、相葉さんって」
「ああ、じゃ、じゃあ、雅紀……。雅紀って、ほんと、綺麗な名前だよな」
「そう、ありがと。でも、名前だけ?」
黒々とした瞳を細めてそう返せば、櫻井は簡単に慌てた。
「ち、ちげえよ!雅紀は、ぜ、全部が綺麗なんだよ!心も身体も!俺はだから……」
櫻井は、目の前にある少し華奢な身体を抱きしめた。
「雅紀が好きだ」
「俺も、俺もあなたを諦められない。翔、翔さんが好きだから……」
櫻井は、一瞬、自分の耳を疑った。
だが、湧き上がる多幸感は本物だ。
「雅紀……」
抱きしめていた腕を緩め、口付けしようと頭を傾ける。
その時、二人の間でぐうーっと音が鳴った。
バツの悪そうな顔をする櫻井に、相葉は楽しそうな洗い声を上げたのだった。
「翔さん、冷めちゃうから、先にご飯にしよう?」
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TVふぁん!
そうとう、酷いことになってますねえ。
櫻葉、リア充か!!
ああ、素晴らしいなあvv