夕暮れの一人ぽっちの子山羊 スペイン ムルシア州ロルカ | ロンドン徒然日記 

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ロンドンの様子、スペイン旅行、食べ物、日本への一時帰国のことを中心に語っていきたいと思います。


スペイン ムルシア州 ロルカと言う街の標高450m程の山の上にあるパラドールに宿泊した時のことです。
夕暮れ時、周辺を散歩していたら、20メートルぐらいの距離に、いきなり3匹の山羊の親子が走って来ました。この付近は、15世紀のユダヤ人地区の遺跡がある所で、鹿の親子は野生で、付近の山に住んでいるようでした。


崩れかけた遺跡の石壁の下は、急な崖になっていて、3頭は下りて行くのを、ためらっている様子でした。
しかし、遺跡の中には、餌となる草があまり生えていません。このままでは、まだ空腹は満たされません。
暗くなる前に草のたくさんある所に行きたいお母さん山羊。


しかし、下は絶壁のようで、親子は勇気がでません。

『他の道がないか見て来るわね。』 とお母さん山羊。


『お母さん 待って 』 と一頭の子山羊も続きます。



あたりは、だんだん薄暗くなっていきます。
さあ どうするか、早く決めないと、、、
お母さん山羊は、決心して崖を下りて行きました。
『お母さん大丈夫かな?』



残された、子山羊2頭。
お母さんの後について行きたいけど、崖を下りるのは怖い。


すると、一頭の子山羊は、勇気を振り絞って、崖を下りて行ってしまいました。
もう一頭の子山羊は、崖の上に残されたままでした。
みんなと一緒に行きたいけれど、怖くて勇気がありません。


『みんな 今どこにいるのかな? 寂しいなぁ。』
しかし、子山羊は、崖を下りようとしません。


『お母さん 迎えに来てよ 寂しいよう。』
残された子山羊は、ずっとお母さんを待っていました。

ムルシア地方の山々に日が落ちて、あたりの空がオレンジ色に染まっています。


私は、ひとりぽっちの子山羊のことが心配になり、遠くからじっと見守っていました。


だいぶ時間がたちました。


すると一頭の山羊が戻って来ました。

『来ないから、とても心配したのよ。』と母山羊。

『お母さん。一人ぽっちで、寂しかったよ。崖が怖くて、下りられない。』




『もっと勇気を持たなければだめよ』とお母さん
『でも、怖いよ』と子山羊




しばらくすると、もう一頭の子山羊が戻って来ました。

3頭が再び合流しました。

そして、遺跡の中の少ない草を、のんびりと食べ始めました。



あたりは、薄暗くなっていましたが、みんな一緒なので、安心です。

私は、母山羊が、子山羊のことを忘れていなかったので、ほっとして、夕暮れの遺跡を後にしました。