私の恋は、いつでも中途半端な上書き保存で成立している。
私は男とカラオケに行けば、
相手の男性に
昔の男が歌った曲を歌わせ、
思い出の上書き保存を試みる。
昔の男と行った場所へ行っては、
また思い出を上書き保存。
しかし、
上書き保存は不完全らしく
度々
昔のデータが、見え隠れして、新しいデータを邪魔する。
昨夜、六本木のアマンド前で待ち合わせしている時、
人と車が行き交う六本木交差点を眺めていた。
初めて六本木を見たのは、テレビの特番。
上京して六本木でキャバクラで働き始めた女性の特集だった。
浜崎あゆみの「We wish」がバックに流れていたことが、今でも何故か強烈に記憶として残っている。
人生で初めて六本木に来たのは、
まだ「アマンド」も知らない上京当初。
スカウトに連れられていった、キャバクラの面接だった。
夜の仕事で、
ずっとここ2年六本木には関わっていて、
出勤の度に
六本木の交差点で信号待ちをする度、一つ自分を偽った。
同伴に、アフターに
行ったお店は数多い。
六本木交差点で、
好きだったTくんがキャッチをしていたこともあった。
雑踏に紛れて
Tくんの顔を見つけては、私はサングラスのレンズの奥で泣いた。
レイプされたのも、この街。
Tさんと初デートしたのも、
この街。
Aさんも、
Sくんも、
Sくん2も、
出会ったのは、この街だった。
勿論Fさんにも・・・
真夜中、六本木交差点でキスをした。
手を繋いで、
あの道を歩いた。
数々のお客様も
この街で出会った。
Fさんも、Oさんも
この街に住んでいる。
今の新しいバイト先は、六本木の程近く。
私は、何かを上に塗ってしまいたかったのかもしれない。
私は、六本木という街の思い出を
いまだ上書き保存出来ずにいる。
でも、昨日気づいた。
過去は消せない。
過去の上に、現実があるという当たり前の現実。
私が、六本木で関わった人とのことも、
やったことも消えはしない。
だから、
今この気持ち、この行動、この私がいるのを忘れていた。