京都大学原子炉実験所の原子力安全研究グループで緊急研究会があったらしい。

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/

このグループは例の熊取六人組のことだと思う。そのなかに、山田定明さん(2003年に逝去)という方の書かれた『原発防災を考える』というブックレットの抜粋のPDFが出ていた。

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/Bousai-1.pdf

便利なのでダウンロードして、できたらプリントアウトして持ち歩いておくと良いのではないかと思う。
日本の原発に冷却塔がないのは何故か、気になっていたのだが、理由を知らなかった。余熱を海にすべて捨てるという無茶をやっていたせいだ。

>原子炉を効率的・経済的に冷やせる海を前に立地しながら、
>わざわざ巨大な冷却塔を建てる必要を、事業者も規制官庁も考えなかったに違いない。

というこの発想は決して正当化されない。なぜなら、原発というのは非常にエネルギー効率の悪い発電所で、水蒸気を300度にしか上げられず、原子炉の出す熱のうち三分の一だけを電気にして、あとは海に捨てるという無茶苦茶な環境破壊をしているのだ。いくら無限の水量がある海でも、原発のある海域の水温は、大幅に引き上げられることになるからである。

もし、この環境破壊を気にしていれば、冷却塔を建てたであろう。そうすれば、今回のこの事態を防ぐことができた。たとえ電源が復旧しても、福島第二原発の冷却水の取水装置が壊れていたように、第一原発も壊れているであろうから、そう簡単には復旧しないと予想される。

http://www.jema-net.or.jp/Japanese/denki/2010/de-744/p13-14.pdf

によれば最新鋭の火力発電所は1500度まで上げて、59%を電気に変換している。捨てるのは41%にまで下がっている。もしも原発に依存するという愚行をしていなければ、火力発電所の熱効率はもっと引き上げられていたであろう。

原発が日本経済を支えるエネルギーを生み出しているというのは幻想だと私は考える。理由は以下だ。

(1)電気以外の代替エネルギーの利用技術を衰退させた。
(2)膨大な放射性廃棄物を生み出し、低レベルでも数十年、高レベルは数万年も保持せねばならない。
(3)廃炉となった原発の処理のしようがない。
(4)放射能汚染による疾病およびのちの世代への遺伝的悪影響。
(5)今回および今後の事故による日本の技術、環境、農産物への海外での風評被害。


既に、もはや日本の技術は信用できず、環境も食べ物も放射能に汚染されている、と思われている。輸出も観光も深刻なダメージを受けるであろう。これらを総合計すれば、原発が何らの経済的利益も、日本社会にもたらしていない、と私は考えている。


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日本の原発、「海依存」が弱点 冷却に構造的課題

編集委員 滝順一
(1/2ページ)2011/3/21 16:15

 福島第1原子力発電所での放水作業を指揮した東京消防庁の緊急消防援助隊の警防部長は「海からの取水場所を探すのに苦労した」と記者会見で明らかにした。原発施設の浜側は津波が押し上げた泥などで一面が覆われ、作業が困難だったらしい。

 福島第1原発はいま、眼前にある海から切り離されてしまっている。海に依存するという日本独特の原発のありようが、今回の大事故の根っこにある構造的要因だ。

 欧米の多くの原発で、外観を見てだれの目にも印象的なのは、白い蒸気を上げる巨大な冷却塔だ。1979年に炉心溶融事故を起こした米スリーマイル島原発も例外ではない。こうした原発では川からくみ上げた水で原子炉などを冷やす。温かくなった河川水をそのまま川に戻すわけにはいかないから、冷却塔で空気で冷やしてから戻す。そこには空冷の仕組みがある。

 日本の原発に冷却塔はない。原発で発生した余分な熱は海水で取り除き、巨大な自然の放熱器である海に流し込む。完全な水冷方式である。だから、すべての原発は海岸に立地する。誤解のないように言い添えれば、通常は海水で直接原子炉を冷やすのではない。真水の冷却水で原子炉を冷やし、熱くなった冷却水の熱を海水で取り除く仕組みだ。

 こうした構造であるから、海水を取り込めなくなると、原子炉を冷やせなくなる。福島第1で起きた電源の全喪失という事態は、冷却水を冷やす海水ポンプも動かなくなったということだ。詳しい情報が表に出ていないようだが、仮に海水の取水施設に大きな損傷があれば、所内電源が回復し冷却装置が動き出しても、冷却水を冷ます海水の確保に苦労する事態も考えられる。

 御巣鷹山に墜落した日本航空ジャンボ機は、飛行に不可欠な補助翼を動かす複数系統の油圧装置を備えていた。安全のために冗長性を持たせていたのだ。しかし、すべての油圧配管が尾部では同じ場所を通っていた。このため、後部圧力隔壁の破壊によってすべての油圧系が破損し、操縦不能に陥った。

 福島第1も、複数の緊急冷却装置や多数の非常用電源を備え、原子炉を多重的に守っていた。しかし、海にすべて依存する冷却システムという基本構造が損なわれると、たちまち機能不全に陥った。

自衛隊の消防車から放水を受けた東京電力福島第1原発3号機(18日午後)=陸上自衛隊中央特殊武器防護隊撮影
 同原発の建設にかかわった専門家が「冷却塔があれば」と漏らしたという話を人づてに聞いた。仮定の話が許されるなら、福島第1の原子炉のいくつかを空冷にしていたら、事態は違ったかもしれない。もっとも、それは選択の外だったろう。原子炉を効率的・経済的に冷やせる海を前に立地しながら、わざわざ巨大な冷却塔を建てる必要を、事業者も規制官庁も考えなかったに違いない。

 冷却が日本の全原発に共通する構造的な弱点であることが、今回の事故でわかった。重要なのは、これをどう生かしていくかだ。

 今回の原発事故では「想定外」という言葉が繰り返し使われている。しかし、想定できなかったということは、防災や原子力安全にかかわる行政や事業者、科学者や技術者の能力不足を意味する。原発が津波に弱いのではないかとの指摘も、これまでなかったわけではない。誠実に耳を傾け、想定してみる意欲・能力に欠けていただけだ。

 宮城県沖では、繰り返し地震が起きることが知られており、政府の地震調査研究推進本部も30年以内に99%の確率で発生を予測していた。ただし、それはマグニチュード(M)7級であり、東日本大震災を引き起こしたM9の巨大地震ではなかった。

 M9巨大地震が、予測の範囲にあったM7級地震を包含するものなのか、別物なのか、地震の本体についての解明はこれから進むだろう。とりあえず現時点で言えば、政府予測はまったくはずれたと断じざるを得ない。むしろ、この海域で起きうる地震の大きさを過小評価し、必要十分な防災対策を講じる妨げになった恐れがある。

 日本の地震学は阪神大震災に有効な警告を出せず、今回も世間の目をミスリードした。「想定外」は責任の免罪符にはならない。


「じゃがたら」というバンドがあった。その名曲、「もう我慢できない」である。これこそ、日本社会の歪んだ本質を的確に表現している。バンドリーダーの江戸アケミ(えど アケミ、1953年7月1日 - 1990年1月27日)は、

「原発なんか作って、十年後、二十年後には、大変なことになるよ」

と予言していた。あまりにも鋭敏な神経を持つ彼は、その予言の示す事態の恐ろしさのあまり、精神の平衡を失い、自宅に風呂に入っているときに溺死してしまった。

歌詞はこちら
武谷三男という偉大な物理学者・哲学者がいた。私は昔、岩波新書の武谷三男編『原子力発電』を読んでいたく感心した。極めて重要な本なので、絶対に読んでほしい。ところが岩波書店のアホが絶版にしている。中古で60円から売っているので、早い者勝ちだ。

今回読みなおしてみて、このブログの議論も、大半は同書に拠っていることに気づいた。詳細は記憶していなかったのだが、大切なことが沢山書かれている。今回の事故がなぜ起きたのかも、きちんと説明されている。1976年に出た本である。「予見できなかった」などというのは、100%嘘である。

「知ってたけど、知らんぷりしていた」

が正しい。

特に、武谷の「許容量は、がまん量だ」という思想は非常に重要である。これだけで、20世紀最大の科学者・思想家といって間違いない。

http://www.h-nisshou.com/yosist-3.htm

に非常に良いまとめがあるので、これだけは最低、必ず読んで欲しい。放射能以外にも、一生、役に立つ。たとえばハラスメントにも同じ考えで対応できる。

既に述べたように、放射線には「しきい値」はない。それゆえ、どんなに微量でも害がある。ではどれだけの害ならいいか、というのは、科学的概念ではなく、社会的概念だというのである。たとえば病気になってレントゲン写真をとる場合、とらないよりもとったほうが治る確率が大幅に上昇するのであれば、多少のリスクは我慢しよう、ということになる。これが「許容量」であり、「がまん量」とでも呼ぶべきものなのだ。

 「許容量という言葉があるが、これが長い間ゴマ化しに使われていた。つまり、ここまでは安全で、
ここから先は始めて危険であるというふうに使われていたわけだ。専門家はそれを値にとって、これは
許容量以下だから安全だといってきた。ところが許容量以下でも危ないということを最近はっきりさせたのが放射能の問題だ。このような蓄積的なものは許容量以下でも被害がある。」

この言葉に、マスコミ、政府、電力会社、御用学者は、何と応えるのだ。
ちょっと油断していたら、すぐにこういうことが起きた。決して予断を許さない事態であることに変わりはない。

http://ameblo.jp/anmintei/entry-10836865796.html

で論じた昨日午後の赤外線写真から、3号機の使用済燃料プールは62度であった。そこから水が沸騰し、更に燃料棒が発熱して何かを焦がして灰色の煙が出るとは考えられない。ということは、

(1)赤外線写真が何か間違っている。
(2)別の火種がある。

のどちらかである。4号機の火災も、(1)が示すようにプールが平温であれば、決して起きないはずの事態である。また、停電している原発に別の火種があるとも考えられない。

そうすると、答は、

(1)赤外線写真が何か間違っている。

である。先の記事で私は、

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これは、かなり良い知らせだ。
(防衛庁がデータを変造していない限りは。多分、やっていないだろう。)
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と書いた。どうもカッコの中が怪しい。意図的に変造していないとしても、都合の良いデータに飛びついた可能性は高い。とすると話は一挙に振り出しに戻る。

(1)4号機のプールが割れている可能性。
(2)水をたっぷり入れたはずの3号機のプールにさえ異常がある可能性。
(3)2号機の状態。

などなど。それより何より、

原子力安全欺瞞言語の健在
が一番怖い。


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3号機から「やや灰色がかった煙」 福島第一原発

2011年3月21日17時1分 朝日新聞

 東京電力は21日、東日本大震災で被害を受けた福島第一原発3号機で同日午後3時55分ごろ、原子炉建屋の屋上の南東よりの場所から、やや灰色がかった煙が発生しているのが見つかった、と発表した。煙は使用済み燃料プールがあるあたりという。電源復旧にあたっていた作業員を一時避難させ、現場を確認している。煙は少なくなっているという。当時は放水していなかった。
どちらかというと反原発のはずの朝日が、政府に対して融和的姿勢を示して、気持ち悪い報道を続けていたのに対して、明確に原発推進派の読売新聞が、原発に対してキツめの報道をしていたのが気になっていた。朝日が民主党、読売が自民党という関係になっていることが反映しているのであろうか。そんなことが反映すること自体、不愉快である。

読売新聞が明確に原発推進派であるのは、長く社主であった正力松太郎が日本に原子力発電を導入し、かつそのあり方を歪めた張本人だからである。有馬哲夫(早稲田大学教授)によれば、正力松太郎は CIA に利用されつつ CIA を利用し、原子力発電を通じて政界に出て総理大臣になろうとしていたという。

そういうことと関係あるのか知らないが、読売新聞の記事にはアメリカの動向がよく出てくる。http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/?from=yoltop でざっと見ただけで、16日以降だけで以下のようなものがあった。

無人放水設備、米が4機提供へ (3月20日 03:04)
米の退避勧告圏は過剰?国際指針より厳しい基準 (3月19日 19:20)
米で微量のキセノン133…日常の百万分の1 (3月19日 12:22)
原発事故、自国民に退避を求めている主な国・地域 (3月19日 08:17)
日本の対応、各国に不安…正確な情報発信必要 (3月19日 01:32)
政府筋「東電が米支援は不要と」…判断遅れ批判 (3月18日 15:11)
日本政府は危機感欠如、不信といら立ち募らす米 (3月18日 14:18)
外国人の日本脱出続く…大使館機能の大阪移転も (3月18日 11:07)
米軍450人放射線事故専門部隊、日本へ派遣へ (3月18日 10:40)
福島第一原発、ヘリ放水直後の画像…米衛星写真 (3月18日 10:08)
原発事故直後、日本政府が米の支援申し入れ断る (3月18日 08:12)
欧米各国に広がる退避の動き…米は80km圏外 (3月17日 12:47)
米原子力委員長「4号機プールに水ないと思う」 (3月17日 10:04)
米西海岸は過剰反応、安定ヨウ素剤購買急増 (3月16日 23:05)
米大統領、原発新規建設の推進を確認 (3月16日 17:48)
米国から原子力専門家7人、新たに到着 (3月16日 17:48)
第一原発事故はレベル6または7…米機関が見解 (3月16日 09:56)

いずれにせよ、核エネルギーは、アメリカの世界戦略と不可分なものであり、イラン、インド、パキスタンの原子炉や原爆も、アメリカが昔、熱心に支援したからである。そういう側面を明らかにしてくれる意味で、読売新聞のアメリカ寄りの報道は貴重である。

そのなかに以下のような報道があった。アメリカは、まだまだ現状を危険視していると見て良いであろう。私は当然だと思う。被爆経験があり、放射能の恐ろしさを身を以て知っているはずの日本人が、原爆を落とした方のアメリカ人よりも楽観的になる、というのは、どう見てもおかしい。

最悪の事態は回避されつつあると思うが、既に事態はどうやって収束させたら良いか、見当のつかない状態になっている。炉心の容器が崩壊しているので、危なすぎて原子炉から取り出すことが出来ないからだ。お片づけのしようが無くなっているのである。

チェルノブイリでは全体がコンクリート固めとなって「石棺」というものを作って原子炉自体をなんとか閉じ込めているが、既に内部の放射能を持つ物質の発するエネルギーのために、石棺が崩壊しつつある。福島第一原発も、これから何十年にもわたる「おかたづけ」をしなければならない。まだ生まれていない人々まで、これの処理の片棒を担がされることになる。

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防護服1万着、米が提供…21日にも日本に空輸

福島原発

 米政府は19日、東京電力福島第一原子力発電所の事故対応のため、核・生物・化学(NBC)兵器から身を守るための防護服1万着を提供することを決め、日本政府に伝えた。

 21日にも日本に空輸される。日米関係筋が明らかにした。日本政府の要請に応じたもので、事故現場で作業する東電職員らに提供される。

 米国はすでに、在日米軍が150着、原子力空母ジョージ・ワシントンから100着の防護服を自衛隊や東電に提供している。

 防護服は、放射性物質などに汚染されると使い捨てにしなければならない。今後の作業では大量の防護服が必要と見られており、自衛隊や東電が所有する防護服だけでは足りなくなる可能性が高いことから、米国が大量提供に踏み切った。

(2011年3月21日07時55分 読売新聞)
原子炉の最悪の事態が回避されつつあるように感じる。
現段階では、農作物や水道に入った放射能を持つ物質の処理の方が問題だろう。

テレビで見たのだが、「放射能汚染された野菜を食べても全然、大丈夫」と太鼓判を押していた長崎大学の講師という先生様の顔が、ものすごく怖かった。目が寄っていて、引きつった顔をしている。本当はとても怯えているのに、それを「知識」で押し隠している、という風情で、こんな医者の言う事を聞いていたら、とてもじゃないが、命がいくつあっても足りない。

ハイパーレスキュー隊の指導者のような、放射能に対する知識ゆえの恐怖と、それを綿密な思考による対応によって克服する、という姿勢と、正反対である。こういう君子に説明してもらわないと、安心できない。

放射性物質が検出されたら、さっそく行政が責任逃れの対応を始めた。

茨城のホウレンソウがやられたから、茨城のホウレンソウは全部出荷自粛。
福島の牛乳で放射能が出たから、福島の牛乳はぜんぶ自粛。


こんなアホな対応があるだろうか。先が思いやられる。放射能が県境などの行政区画を確認しながら汚染してくれているとでも思っているのだろうか?これでは、

放射能を持つ物質の汚染の被害を抑制するには不十分で、
かつ
風評被害を拡大する

という効果があるように私は感じる。こんなことを言っておいて、放射能や原発の危険性を指摘する人には、

風評被害が拡大するから黙れ、非国民!!

というのは無茶苦茶である。

やらないといけないことは、

(1)どの程度の放射性物質の汚染が生じているかについての詳細な調査。
(2)汚染状況の迅速な公開。
(3)迅速な除染などの対応。
(4)被害を受けた農家への迅速な経済的、精神的サポート。

といったことではないかと思う。