下の記事は22日のものでもはや旧聞に属するが、重要なことだと思うので論評しておきたい。新たに内閣官房参与に任命されたのは、

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有冨正憲東工大教授(同大原子炉工学研究所長)(63)、
斉藤正樹東工大教授(62)
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の二人である。同研究所のHPで見たところ、有冨教授の専門は、

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社会的受容性の向上を目指し、信頼性の高い次世代の原子力エネルギーシステムの構築に資する研究と、その基盤となる学問の体系化を図るために気液二相流の流動・伝熱特性に関する実験的、解析的な研究を中心とする基礎研究を行っている。
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というものであった。現在主流の大型原子炉は、放っておくと暴走する危険なシステムなので、中小型原発を「未来型」と言っているようである。しかし、本当に関心があるのは気液二相流(つまり気体と液体との混合)の流動・熱伝導のように思える。

一方、斉藤教授は、

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21世紀における人類の生存基盤を脅かす地球規模の人類共通の危機(エネルギー危機、地球環境危機、水・食糧危機、生命・医療危機等)に対し、「地球とその家族をどう護るか?」を原子力の科学技術を基にして、その戦略を科学する。さらに、新しい未来型原子力が未来の文明(未来の人間社会や地球環境、さらに人類の宇宙への進出等)に対してどう貢献するかを科学する。
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であった。具体的テーマを見ると、

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1. 核拡散抵抗性の高い原子炉システムの研究(平和と持続的発展を目指して)
2. 人間社会や地球環境と調和する原子力システム(放射能消滅を目指して)
3. 医療用超ミニ原子炉システムの研究(医療への応用)
4. 未来の宇宙開発を支える宇宙用原子力システムの研究(宇宙開発への応用)
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というものである。誠に結構なテーマであるが、軍事転用可能なプルトニウムが出ない「平和利用」専用の原子炉という1以外は、実現性が乏しいように私は感じる。特に、4は怖い。原子力ロケットが、打ち上げに失敗したらどうなるというのであろう。

いずれにせよ、二人とも、「より安全・安心な原子力」という方向性の基礎的な研究をしている。こんな人びとを、この非常時に官邸に呼んできたところで、おそらく大した役には立たないと私は思う。

役に立つのは、過去の原子力重大事故に精通している人で、以前から「日本でもこういう事故が起きる」と警告してきた人々である。東京工業大学の原子炉工学研究所の研究室一覧を見てみたが、そんな研究をしている人はいない。

なぜそんなことになるのか、というと、原子炉重大事故に関心を持つような人は、学会でつまはじきにされるからだと私は考える。たとえば日本原子力学会の和文雑誌の論文タイトルを見ても、そういう感じの論文は見当たらない。事故のことを「異常事象」と言ったりして、事態を糊塗する論文が関の山である。

そういうわけであるから、東電や原子力危険・隠蔽院が信頼できないからといって、「ちゃんとした学者」を呼んできても無駄である。結局のところ彼らは、原子力安全欺瞞言語に習熟した人びとだからである。そういう言語を使っていると、脳のニューロンの接続がおかしくなって、まともな言語を使えなくなるのである。「事故」と言おうとしても無意識のうちに「事象」と言ってしまうくらいでないと、この業界では学者としてやっていけないのだと思う。

もし、官邸がいま本当に役に立つ人を必要としているのであれば、京大の原子炉実験所の「熊取六人組」のような、原子力の推進に反対しつづけて、出世できなかった人を呼んでくるしかない。彼らを呼んできて、原子力安全欺瞞言語を話す連中と、両方の意見を聞き、場合によっては論争させて、それを菅直人首相が見ていれば良いのである。どちらが正しいか、彼が決めて、それにしたがって行動すれば良い。

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官邸肥大化、参与が14人…組織も増殖

巨大地震
 東日本巨大地震を受け、菅首相を取り囲む組織は増殖、肥大化する一方だ。

 「既存の省庁の縦割りで物事が全く進まず、官邸が仕切るしかない」というのが首相周辺の説明だが、民主党側の組織も合わせると、相当な数が増えた。

 地震直後に発足させた緊急災害対策本部、原子力災害対策本部はいずれも首相が本部長。17日には緊急対策本部の下に「被災者生活支援特別対策本部」、22日には同対策本部を各府省次官らが支える「被災者生活支援各府省連絡会議」が発足。このほか、13日には「電力需給緊急対策本部」、15日には東京電力と連携するための「福島原子力発電所事故対策統合本部」も発足。「この混乱時にとても機能的に動いているとは言い難い」(民主党筋)との指摘も出ている。

 首相のブレーン的な役割を担う内閣官房参与の任命も相次いでいる。地震後に5人が追加され、態勢は総勢14人に膨張した。

 首相は地震発生後、放射線、危機管理、情報通信の専門家を参与に迎え、22日には原子炉工学を専門とする2人を任命。2人は首相の母校・東工大の教授だ。

 東京電力や経済産業省原子力安全・保安院に原子力の専門家がいるにもかかわらず、外から放射線や原子炉工学に詳しい学者らを次々参与に任命したのは、「これまでの経緯で、首相が東電や保安院に対する信頼を失ったため」(内閣府幹部)との見方が強い。

 民主党内からは「首相が表に出ず、側近ばかり使って危機をしのごうとするのは、余裕のなさの表れだ。リーダーシップを持って官僚機構を使いこなし、民間と連携してオールジャパンで対策に取り組まなければこの危機は乗り越えられない」(中堅議員)との不満の声が出ている。

(2011年3月23日22時25分 読売新聞)
下の記事で東電を批判している元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さん(原子核工学)と、同実験所の小出裕章助教(同)のお二人は、例の熊取六人組である。漸くにして御用学者ではない人びとの見解が大手メディアに出るようになってきた。遅すぎるのだが。

なぜ汚染情報が共有されなかったのか。東電の担当者が「現場の混乱」のせいにしているが、それはちがう。しつこいようだが、これも原子力安全欺瞞言語のせいなのである。原発において本当の情報を皆が知ったら、みんな怖くなって逃げ出してしまい、運営できなくなる。それゆえ、情報は細分化して無意味化し、目の前の操作に必要な知識・情報以外は、決して流通しないようにしておかねばならない。平井憲夫さんの言われた「絶対安全」という「5時間の洗脳教育」もそのために必要とされるのである。

原子力安全欺瞞言語は、この目的のために構築された。危険性についての情報を、細分化して無意味化し、「安全性」に関する情報に変換することが、この言語の機能である。

福島第一原発においては、恐るべき事故によって、危険性は極限的に増大している。それゆえ、本当のことに目を向けたら、心底恐ろしくなって全員逃げ出さざるをえない。それが人情というものである。しかし、そんなことをしたら東電は終わりである。そこで、原子力安全欺瞞言語を更に強化して用いているものと推定される。

かくして福島第一原発では、情報は以前にも増して、細分化され、流通しなくなっているのではなかろうか。限られた報道からも、互いに口もきかないで、黙々と作業し、黙々と休憩しているような印象を受ける。つまり、「現場が混乱」しているから、情報が流通しなくなっているのではなく、現場を混乱させないために情報が流通しなくなっているのである。それは政府やマスコミが「パニック」を恐れて情報を出さないように、出すにしても無意味化して出るように加工しているのと同じ理屈である。

ハイパーレスキュー隊は、相互に声を掛け合いながら、必死で助けあって作業していた。あのような状態にならなければ、危機を乗り越えるのは難しいだろう。それが東電に可能であろうか。また、日本国民も、彼らに倣って情報を蜜に交換しながら、助け合っていかなければこの危機を乗り越えられないだろう。「パニック」を恐れてばかりの政府やマスコミには、その実現は不可能である。


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「汚染情報なぜ共有しない」東電の対応、専門家ら批判

2011年3月26日17時0分 朝日新聞

 東京電力福島第一原子力発電所3号機のタービン建屋内で起きた作業員3人の被曝(ひばく)事故をめぐり、東電側が1号機の同建屋でも同様の放射線量を6日前に把握しながら、注意喚起していなかったことが判明。東電側は26日、後手にまわった対応への釈明に追われた。専門家らは、ずさんな安全管理を批判している。

 同日午前の東電本社。連日の記者会見に姿を見せた福島第一原発の藤森昭彦・環境担当は、注意喚起がなかった理由を問われ、言葉に窮した後、「十分な情報共有がなされていなかった。現場の混乱があったと思われる」。絞り出すような声だった。1号機関連の高い放射線量の公表が遅れたことについても、吉田薫広報部部長が「申し訳ない」と述べるにとどまった。

 経済産業省原子力安全・保安院も、東電から1号機関連の報告を25日未明に受けながら、公表したのはほぼ1日後。西山英彦審議官は「3号機に神経が集中していたという事情があった」と釈明。ある保安院職員は「バタバタした状況が続いて、保安院でも情報整理ができていないのだ」と混乱ぶりを嘆いた。

 元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さん(原子核工学)は、「情報共有されていなかったことは非難されるべきだ。一義的には放射線管理担当者の責任だと思うが、組織としてずさんだったと言われても仕方ない」と東電の対応を批判。同実験所の小出裕章助教(同)は、「作業員は非常に困難な状況で、一刻も早く冷却ポンプを復活させようと水に入ったのだろう。これを教訓に、東電側は情報を共有させ、作業員一人一人の身を守ることを考えないといけない」と話す。

 また、宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子炉工学)は、「長靴を履いていれば、水につかって作業してもやむを得ない放射線量だった。直接肌に触れることの危険性が、現場で作業する人にどの程度伝わっていたのか。東電が協力会社側にも十分に注意し、管理する必要があった」と指摘した。
3号機でも1号機でも、高濃度の放射性物質によって汚染された水が見つかっている。また、放水口から少し離れた海から、うんざりするような濃度の放射性物質が検出された。

原子力安全欺瞞言語を使う人びとの認識はこうだった。

(1)原子炉から出る配管は丈夫だから割れないはず。
(2)すべての配管は自動的に弁が閉まっているから漏れないはず。
(3)だから周辺の水はさほど汚染されていないはず。

しかし実際には、とんでもない濃度の放射性物質を含む水が発生し、海にダラダラ流され続けた。

普通の考えでは、これだけの異常事態が起きているのだから、どこかで配管が壊れて水が漏れるのではないか、と考えるはずだ。最初に掲げておいた読売新聞の記事に、地震直後に「やばい水」が漏れてきたという作業員の証言があるくらいだから、私はそう思っていた。私の判断力が優れているというのではなく、それが普通の判断というものである。

それができなくなる原子力安全欺瞞言語を使用し続ける限り、事態は収拾されないだろう。こと原子炉に関する限り、収拾されないということは、最悪の事態になる、ということである。なぜなら炉心は放っておくとドンドン熱くなり、崩壊していくのだから。

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ずれた配管、やばい水!…原発作業員の恐怖証言

福島原発
 強い横揺れで天井のパイプがずれ、大量の水が漏れてきた――。


 東日本巨大地震が発生した11日、東京電力福島第一原子力発電所で、稼働中だった1号機棟内にいた男性作業員の証言から、建物内が激しく損壊した様子が初めて明らかになった。

 この作業員は、同原発の整備などを請け負う会社に勤務。昨夏からたびたび同原発で作業しており、地震があった11日は、稼働していた1号機の建物内のうち、放射能汚染の恐れがなく防護服を着用する必要がないエリアで、同僚数人と電機関係の作業をしていた。

 「立っていられないほどの強い揺れ。横向きに振り回されている感じだった」。地震発生の午後2時46分。上階で作業用クレーンや照明などの機器がガチャンガチャンと激しくぶつかり合う音も聞こえた。「これは普通じゃない揺れだと直感した」

 建物内の電気が消え、非常灯に切り替わった。「その場を動かないように」という指示が聞こえたが、天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきた。「これはやばい水かもしれない。逃げよう」。誰かが言うのと同時に、同僚と出口がある1階に向けて階段を駆け降りた。

 建物内で漏水を発見したら、手で触ったりせず必ず報告するのがルール。だが、この時は余震が続いており、放射能に汚染されているかもしれない水の怖さより、このまま原子炉といっしょに、ここに閉じこめられてしまうのでは、という恐怖の方が強かった。

 1階は作業員でごった返していた。外に出るには、作業服を着替え、被曝
ひばく
量のチェックを受けなければならないが、測定する機器は一つだけ。細い廊下は長い行列ができていた。

 激しい余震はその後もさらに続き、「早くしろ」とあちこちで怒声が上がった。被曝はしていなかったが、「水素爆発した後の1号機の建物の映像をテレビで見た。あそこに閉じ込められていたかもしれないと思うと今でも足がすくむ」。(影本菜穂子)

(2011年3月16日14時37分 読売新聞)

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汚染水除去を最優先 福島原発、破損場所の特定急ぐ
2011/3/26 15:41 日経新聞

 東京電力福島第1原子力発電所では1、3号機タービン建屋地下の水たまりで高濃度の放射性物質が検出され、1号機で水を取り除く作業を急いでいる。原子炉とタービン建屋をつなぐ配管が損傷して水が漏れた可能性が指摘されており、破損場所の特定も必要。今後漏水が拡大する恐れもあり、復旧作業は厳しい状況が続いている。

 1、3号機の水で検出された放射性物質は、通常運転時の炉心の水の1万倍という高い濃度で、復旧作業の妨げになる。このため1号機では汚染された水をポンプでくみ上げ、とりあえず復水器にためておく排水作業を進めている。復水器は本来、タービンを回した水蒸気を冷やして水に戻す設備。2、3号機タービン建屋の水は量が多すぎて排水方法を検討中という。

 たまっていた水について東電は放射性物質の種類と濃度を25日に分析、3号機ではセリウム144とヨウ素131の濃度が特に高かった。1号機も同様にヨウ素131などが高かった。

 経済産業省原子力安全・保安院は、原子炉内の水が漏れ出た可能性が高いとの見解を示している。使用済み核燃料プールの水では高濃度の放射性物質は想定しにくいからだ。

 また、ヨウ素131の濃度が高かったことも理由。使用済み核燃料プールだとしたら半減期が8日と短いヨウ素131はすでにほとんどなくなっているはずで、地震発生直前まで運転していた原子炉の水とみるのが自然なためだ。

 原子炉内の水が漏出した原因は定かではないが、保安院は「圧力が保たれているので、原子炉にひびが入っていることはない」とし、配管や弁から漏れた可能性が高いとみている。原子炉からタービン建屋には水蒸気を送る管などがあり、これらの一部で破損し、水が漏れた可能性がある。

 通常、原子炉でつくられた水蒸気は「主蒸気管」と呼ぶ配管を通ってタービンに送られる。冷やされた水は復水器から「復水管」という配管を通って原子炉に戻る。これら2つが主要な配管だが、ほかの配管の可能性もある。

 ただ、本来、配管は地震対策が施され「非常に頑丈で壊れるとは考えにくい」(東京工業大学の沢田哲生助教)ものだという。

 北海道大学の奈良林直教授は配管の破損のほかに、「格納容器のどこかに破損があってそこから漏水し、なんらかの原因でタービン建屋へ水が流れ込んだ可能性もある」とみている。格納容器の本体と圧力抑制室をつなぐ接続部は以前から弱いと指摘されており、そこが壊れたかもしれないという。格納容器の破損で漏水しているなら「現段階では放射線量が高いので、すぐに直して水漏れを止めるのは不可能」とみる。

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原子力発電の配管とは
2011/3/26 15:41 日経新聞

 ▼原子力発電の配管 原子炉が入っている原子炉建屋の機器と、水蒸気から電気をつくるタービン建屋の機器をつなぐ様々な配管がある。原子炉で発生した蒸気をタービンに運ぶ主蒸気管と、水に戻してから再び原子炉に届ける復水管が主体。

 このほか、ごみを除去したり、余分な熱を取り除いたりする管など複数種類のものが建屋の中を網目状に走っている。

 通常の運転時、配管を通る水蒸気や水には、核分裂反応で生じた特定の放射性物質がわずかに含まれているものの、核燃料棒の中にあるコバルトやテクネチウム、セリウムなどの放射性物質は含まれていない。

 管には弁やポンプがついており、流れる量などを細かく調節できる。地震などで原子炉が緊急停止すると、弁を自動的に閉める設計になっているため、放射性物質を含んだ水や蒸気が外部に漏れることはないとされている。

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福島第1原発:海水から1250倍のヨウ素 放水口付近

2011年3月26日 11時44分 更新:3月26日 14時54分 毎日新聞


海水を採取した場所

体に影響する被ばく線量の目安
 経済産業省原子力安全・保安院は26日、東京電力福島第1原発の放水口から南へ330メートル離れた場所で25日午前8時半に採取した海水から、放射性物質のヨウ素131が法律で定められている値の1250.8倍の放射能濃度で検出されたと発表した。東電は「放射性物質を含んだ水が海水に漏れ出している可能性が高い。(1~3号機のタービン建屋地下で見つかった)水たまりから出ている可能性も否定できない」とし、海水の調査を1日1回から2回に増やす。

 保安院によると、同濃度の水を500ミリリットル飲むと、一般人の1年間の人工的な被ばく限度と同等の1ミリシーベルトになる水準。ほかにセシウム134については117.3倍、セシウム137は79.6倍だった。24日午前に同じ場所で実施した調査結果(ヨウ素131で基準の103.9倍)と比べると、10倍以上に上昇している。

 保安院は「潮流に流されて拡散するので、海洋生物に取り込まれるまでには相当程度薄まる。周辺は避難区域に指定されており、住民への直接の影響はない」として、人体への直接的な影響を否定した。

 一方、海、魚と放射性物質の関係について詳しい水口憲哉・東京海洋大名誉教授(資源維持論)は「1250倍とは非常に大きな値だ。海では希釈されるが、10~100倍に薄まったとしても懸念の残る濃度ではないか。現状では、放射性物質を多く含む水を海に捨てるなということは言えないが、千葉県沖などを含めた広い範囲の海水の調査をする必要がある」と話す。【八田浩輔、日野行介、大場あい】
菅首相は昨夜の会見で、以下のように述べた。

「悪化を防ぐという形で対応しているが、予断を許す状況にはなっていない」

という表現は、原子力安全欺瞞言語の影響を受けていてわかりにくいが、事態を正確に伝えているように感じる。普通の言葉で言えば次のようになると私は解釈する。

「炉心溶融による圧力容器や格納容器の破砕、あるいは水蒸気爆発といった、極めて深刻な放射性物質の散布という最悪の事態を防ぐという形で対応している。しかし、状況は一進一退であり、そうならないと保証できるようにはなっていない。最悪の事態になったりしたら、内閣がふっとぶどころか、日本の将来が危ぶまれる事態であるから、責任者として非常に緊張する。最悪の事態を回避するためには、すべての原子炉の冷却系を作動させて炉心を100度以下にせねばならない。しかしそれにはやるべきことが山積している。放射性物質の濃度が高い現場で、それら全てを実現するという困難な任務を、一つ一つやっていかねばならない。」

こういう風に言ってくれたら、何が起きているのか、よくわかると思うのだが。

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菅首相の会見全文〈25日午後7時半〉(朝日新聞)より引用

 ――首相は現段階での原子炉、福島第一原発の現状をどのように認識しているのか。また、収束させるメドについてどう考えているのか。さらに、避難指示の範囲を拡大する考えはないのか。

 今日の福島第一原子力発電所の状況は、まだまだ予断を許す状況には至っていない、悪化を防ぐという形で対応しているが、予断を許す状況にはなっていないという認識を持っている。引き続き、極めて高い緊張感を持って一つ一つの事態にあたっていかなければならない局面が続いている、このように認識している。
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京都大学大学院 人間・環境学研究科 自然環境動態論講座 宇宙論・重力グループ の阪上雅昭教授からコメントをいただいた。阪上さんは物理学者であるから、私よりも原子炉内外で生じている物理過程を理解する知識をお持ちである。ご専門は原発ではなく、ブラックホールの動態とか魚の群体の運動とかの非線形科学である。このブログを毎日読んで下さっている、とのことであった。

(1)阪上教授も、「浜岡原発の運転再開はすべきでない」とお考えである。川勝平太知事はよく考えて欲しい。

(2)”チェルノブイリの10%~50%の放射性物質"に関して、阪上教務も「こんなに出ているとは思いませんでした.驚きました.」とのことで、これについて以下のコメントを頂いているので、ご参考にしていただきたい。(※)は私の註釈。

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オーストリア気象当局
http://www.zamg.ac.at/aktuell/index.php?seite=1&artikel=ZAMG_2011-03-18GMT09:52
のシミュレーションに基づいて推定しているようです.

念のため,私の見解を述べておきます.

シミュレーションはそれなりに信頼できると思います.もちろん,安冨さんなら容易に理解できるように,流れの上での拡散ですから,カオティックで,計算された濃度の空間パターンの精度は高くないと予想されます.(※つまり、ここで描かれている絵は、かなりいい加減だ、ということである。それはやり方が悪いのではなく、原理的なもので、どんなに頑張っても正確にはならない。)

いい加減な言い方ですが,ある場所の放射性物質の濃度は,計算に用いた空間差分より大きいスケールで平均した統計的な意味でしか信頼できないと思います.(※いい加減な計算をたくさんやってみて、その平均をとったような、そういう程度のものだということ。)

このシミュレーションでは,初期の放出量,従って濃度分布の絶対値は決められません.絶対値は観測データから決めているようです.3月18日~19日あたりの計算の場合は群馬の高崎やPetropavlovsk(ロシア)にある CTBTO の観測所のデータで濃度分布の絶対値を決めているようです.(※どれだけいつ放射性物質が放出されたかを決められないので、周辺のデータをとって、それに合うように計算している、ということ。)

ただ,元々のシミュレーションが本質的に不安定で精度の期待できない計算なので,分布の絶対値を決める観測点の数が少なすぎるという印象を受けます.(※もともといい加減な計算を、ろくなデータもなしにやっているので、かなりいい加減ということになる、ということ。)

その意味では SPEEDI の試算
http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf
の方が局所的計算であるかつ観測点が多いので信頼性は高いと思います.

その意味では
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103240465.html
の3万~11万テラベクレルという推定値の方が信頼性が高いと思われます.ただ朝日新聞以外が記事にしていないようなので,気になっています.

静岡県知事の川勝平太は、経済史が専門の学者であるが、とんでもない馬鹿であることを露呈した。

(1)浜岡原発は60キロヘルツなので東京へは送電できない。
(2)中部電力は別に発電能力の不足をきたしていない。
(3)マグニチュード9.0の巨大広域地震という「想定外の事態」が起きた今、「今の事態を想定して対策を立てれば十分」という論法はおかしい。
(4)たとえば今回の地震の影響で、富士山が噴火するおそれが指摘されている。プレートが三つ出会っているこの場所にある浜岡原発で何が起きるのか、誰にもわからない。
(5)東京と名古屋との中間にあるこの原発に、もしものことがあった場合の被害を想定すべきである。

この前提に立って思考することがなぜできないのだろう?浜岡原発が被災すれば、名古屋と東京とは、間違いなく大きな被害を受ける。この世界最悪の場所にある原発を、しばし止めるくらいのことが、なぜできないのだろうか。



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浜岡原発の4月上旬再開、静岡知事が容認

 中部電力の水野明久社長は24日、静岡県庁に川勝知事を訪ね、非常事態訓練を行うなどの安全対策を講じたうえで、定期検査中の浜岡原子力発電所(同県御前崎市)の3号機の運転を早ければ4月上旬に再開するとの方針を説明した。

 川勝知事も「安全対策をしっかりしたうえで決断すれば、尊重したい」と述べ、安全措置をとったうえで運転を再開することを認める考えを明らかにした。

 会談後、水野社長は「知事の力強い言葉は大変ありがたい。東日本で計画停電が行われている緊急事態のなかで、3号機を間もなく立ち上げ、(中電の)管内の電力の安定供給と東日本の応援に全力を挙げて取り組みたい」と語った。

 3号機の運転を再開するには地元4市の同意も必要となるが、水野社長は「安全対策を丁寧に説明して理解をいただく。今回は緊急事態ということもあり、そのことも合わせて説明して理解を得たい」と述べた。

 ◆「津波対策説明を」地元自治体◆

 中電の方針に対し、浜岡原発の地元自治体からは厳しい声が相次いだ。

 同県牧之原市の西原茂樹市長は24日、読売新聞の取材に「(運転を再開しないと)エネルギーが逼迫する事情は理解できる」としながらも、「(中部電力が津波対策として示した)防波壁ができていない現状で、想定を超える津波が来たらどうするのか。津波対策に不安が残るなかでは、できれば原発を止めてほしい」と語った。

 同県菊川市の太田順一市長も「今の段階で運転再開を認めるわけにはいかない。『原発は安心、安全だ』と言っていたのが根底から覆り、住民の不安は大きい。中電は津波対策などをきっちりと説明すべきだ。今は運転を止めてくれたらいいと思っている」と述べた。

 同県掛川市の松井三郎市長は「津波であれだけの被害があり、市民から『浜岡原発は大丈夫か』という声が出ている。中電の津波対策については具体的な説明を受けていない。市民感情からも、運転再開を認めるとは簡単には言えない。中電には津波対策の方針をしっかりと示してもらいたい」と強調。同県御前崎市の石原茂雄市長は「現段階では、近く行われる外部電源接続などの訓練を現地で見て確認し、詳しい説明を聞いてから判断したい」と語った。

(2011年3月25日09時54分 読売新聞)


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浜岡原発「福島とは対策違う」 中電、新たな津波対策も
2011年3月19日


海水ポンプを指さしながら、機能や安全性を説明する中部電力の社員=御前崎市の浜岡原発

 阪神大震災を上回る死者が確認された東日本大震災の発生から、18日で1週間。福島第一原発は依然として危機的状況を脱していない。東海地震の危険性を抱える県内にある浜岡原発は大丈夫なのか。周辺自治体の不安が募るなか、中部電力は新たな津波対策に取り組み始めている。

■「10m以上の砂丘が津波防ぐ」

 県の小林佐登志・危機管理監らが18日、浜岡原発を視察。福島第一原発で、津波により作動しなくなったとされる海水ポンプや非常用ディーゼル発電機を見て回った。

 対応した水谷良亮・浜岡原子力総合事務所長らは「福島第一原発とは地震対策が違う」と強調。図や写真を用いながら、二つの原発の地震対策を比較してみせた。

 中電によると、福島第一原発の津波対策は高さ5メートルまで。一方、浜岡原発は海岸との間に高さ10~15メートルの砂丘があり、この砂丘が津波を防ぐとした。また、非常用ディーゼル発電機の設置場所について、福島第一原発はタービン建屋内だが、浜岡原発は強固な構造で水を通さない原子炉建屋内にあると説明した。

 小林危機管理監は「東海地震に備えて、地震対策はしっかりやっているという印象を持った」と話すとともに、「あらゆる事態を想定し、地震対策を見直して欲しい」と中電に要望した。

■説明会、質問1時間以上

 中電は「これまで住民が不安にならないような対策を取ってきた」と繰り返す一方で、大震災を受けて新たな対策に取り組み始めている。

 福島第一原発は、緊急炉心冷却システム(ECCS)が働かなくなった。電源が落ちても非常用のディーゼル発電機で動くはずが、「想定外」の津波で故障したとされる。

 大震災後、中電は砂丘と原子炉建屋の間に、高さ12メートル以上の防波壁を設置する計画を公表。冷却用の海水を取り込むポンプの周囲に防水壁も設けることにした。これまで浜岡原発にはなかった発電機車2台も確保した。

 18日午後、中電が御前崎市役所で開いた町内会長への説明会は、これまでにない切迫感が漂った。「子どものころに波が砂丘を超えて池ができたことがある」「6、7回津波が起きても砂丘は耐えられるか」「住民をどう退避させればいいか不安が募る」……。質問は1時間以上も続いた。

 川勝平太知事は17日の定例会見で、「想定外の事態が起きた。対策を抜本的に見直さねばならない」と述べ、あらゆる想定や対策を改める必要があると訴えた。さらに、浜岡原発で計画中のプルサーマルや6号機の建設について、現在の計画のままでは認めない意向を示した。

■「20~30キロ圏内にも意見聞くべき」

 福島第一原発の事故では、半径20キロ圏内に避難指示、20~30キロ圏内に屋内退避要請が出ている。一方、浜岡原発はこれまで、10キロ圏内の御前崎、掛川、菊川、牧之原の4市を周辺自治体とし、避難訓練などを行ってきた。

 国の原子力安全委員会は「防災対策を重点的に充実すべき地域」の目安を10キロ圏内としており、浜岡原発はこれに従ったかたちだ。同安全委は「今回は念のための措置。直ちに指針を変更するということではない」とする。

 菊川市内のうち、10キロ圏外の旧菊川町は防災計画外。しかし、大震災後、住民から「どこへ逃げれば良いのか」という問い合わせが寄せられているという。20キロ圏内の袋井市の原田英之市長は「これからは言うべきことは言う」。吉田町の田村典彦町長も「原発神話が崩れた。20~30キロ圏内の自治体にも意見を聞くべきだ」と話す。

 さらに、30キロ圏内からも、「今まで隣接4市だけだったのがおかしい。事故が起きれば、市内でも市民が逃げまどうことになる」(清水泰・焼津市長)、「市長会全体で、これまで以上の安全追求と住民説明の徹底を申し入れたい」(北村正平・藤枝市長)などの声が上がっている。
昨日、作業員の深刻な被曝事故があった。理由は、

「作業を開始してからアラームが鳴りましたものの、故障と思って勘違いをしてしまって、作業を継続してしまったということでございます」

というものである。東京消防庁のハイパーレスキュー隊は、放射能の恐ろしさを熟知し、心のそこから恐怖しつつ、冷静な思考によって立案した対策によって安全を確保して、恐怖心を克服して作業した。これに対して原発の作業員は、「安全神話」に依拠しつつ、「大丈夫だろう」という思い込みによって作業していることが明らかとなった。

平岡憲夫氏の『原発がどんなものか知ってほしい』によれば、

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原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間かけて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消のためです。原発が危険だとは一切教えません。国の被曝線量で管理しているので、絶対大丈夫なので安心して働きなさい、世間で原発反対の人たちが、放射能でガンや白血病に冒されると言っているが、あれは“マッカナ、オオウソ”である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと、五時間かけて洗脳します。  
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ということが行われているそうである。こういう風になっていなければ、あれだけの事故が起きている現場で、「アラームがこんなに早く鳴るはずがない」と思い込むことは無理であろう。

二番目に引用した記事に出ているように、安月給の下請け会社の社員までがこのひどい事態に立ち向かっている理由は、

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断ったら後々の立場が悪くなるというか。今の会社で、またこういう仕事を続けていきたい気持ちなんで、少しでも協力し、会社の指示にできることは従って(やっていきたい)
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というものである。日本社会は、「人間」ではなく「立場」から出来ている、というのが私の説なのだが、それを立証してくれる証言である。「立場」上必要があれば、原発事故現場にでも行くのである。この心情があればこそ、事故対応が続けられているのであるが、この心情があるから、こんな事態にもなるのである。というのも、原子力安全欺瞞言語を使って喋っているのは、「人間」ではなく「立場」だからである。

3つ目に引用した記事で東電社員の家族は、

「いま体を張っているのは、家庭を持つ、普通の市民であることもわかって欲しい」

と言っている。その通りである。最初からそのことに、気づくべきだったのである。普通の市民に、原発などという危険なシステムを運営できはしないのであるから。そんな無茶ができるのは、「普通の市民」ではなく、「立場」の集合体である。このことを意味を我々はしっかりと認識しなければならない。


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福島第1原発3号機・作業員被ばく事故 線量計のアラームを誤作動と思い込み作業

フジテレビ系(FNN) 3月25日(金)6時31分配信

福島第1原発の3号機で24日、3人の作業員が被ばくした事故について、東京電力は、3人は線量計のアラームが鳴っていたにもかかわらず、誤作動だと思い込み、作業を続けていたと説明した。
25日午前4時半ごろ、東京電力は会見で「作業を開始してからアラームが鳴りましたものの、故障と思って勘違いをしてしまって、作業を継続してしまったということでございます」と話した。
東京電力によると24日、3号機のタービン建屋の地下でケーブルの敷設を行っていた協力会社の男性作業員3人から、17万3,000マイクロシーベルト~18万マイクロシーベルトの高い放射線量が確認され、このうち2人は「ベータ線熱傷」の可能性もあるとして、病院に搬送された。
東京電力の説明では、この作業現場では前日、放射線量が低かったため、3人は事故当日、線量計のアラームが作業開始直後に鳴ったにもかかわらず、「アラームがこんなに早く鳴るはずがない」として、誤作動だと思い込み、高い放射線量の中、作業を続けたという。
東京電力は、今回の事故を受け、現場の環境が変わりやすい状況にあるため、被ばくの可能性が高い現場は、専門の社員を同行させる方針を示した。
一方、東京電力は、作業員が踏み入れた水たまりの放射性物質の濃度が、通常運転中の原子炉内の水が含む量のおよそ1万倍の濃度であることを明らかにした。
水たまりからは、コバルト60、ヨウ素131、セシウム137、セリウム144などの放射性物質が検出されており、1立方cmあたり、あわせておよそ400万ベクレルになるという。
検出されたセシウムやセリウムは、核分裂反応の生成物であることから、東京電力は、高濃度の放射性物質が検出された原因について、燃料が破損して原子炉の外部に流出したためではないかとしている。
最終更新:3月25日(金)6時31分



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福島第1原発:英雄でも何でもない…交代で懸命の復旧作業


災害時のために造られた免震重要棟内の「緊急時対策室」=東電福島第1原発のホームページから
 東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発では東電だけでなく原子炉メーカーや下請け企業の作業員らも懸命に復旧作業を続けている。水素爆発や構内火災で一時は約50人にまで減った作業員を、一部の海外メディアには「フクシマ・フィフティーズ」と英雄視した報道もあるが、実際は多くの作業員が交代で危機回避に取り組んでいる。近く現場に入るという下請け会社の30代の男性社員が毎日新聞の取材に応じ「不安はあるが、少しでも(事態の)沈静化に協力したい」と話した。【袴田貴行、日下部聡】

 東電によると、原子炉建屋内は20日午前も照明が消えたまま。安全性を考慮して放水時は放水だけ、電気工事の際にはその作業だけを行い、19日現在の従事者は約500人。一方、3号機周辺の放射線量は19日午後2時の3443マイクロシーベルトが、放水後の20日午前3時40分に2758マイクロシーベルトに下がったものの依然高い。20日午前5時現在、以前の制限値だった100ミリシーベルト以上の放射線を受けた作業員は7人。このため東電は交代要員集めを進めている。

 取材に応じた下請け会社の30代男性社員は「東電から元請けに話がきて、そこから1次、2次と下請けに要請があった。私も準備が整い次第向かう」という。海外メディアなどの注目については「残っている人がずっと放射線を浴びながら作業していると思われるかもしれないが、実際は法にのっとった管理で人を入れ替えながら作業を進めているので、英雄でも何でもないと思います」と冷静だ。

 一方で「不安は当然ありますね。それだけ高い放射線の中でやっているし、現場もどうなるか分からないですから。また爆発が起こるかもしれないし、放射線量が上がるかもしれない。断る選択肢もありますよね。家族からそういうこと言われますけど。すごく難しい判断で、みんな考えていると思います」。

 ◇「今後も原発で働きたいから」
 それでも現場行きを決めたのは「原発の仕事をしてきた職業人としてのプライドより、沈静化した後のこと」だという。「これからもこの仕事で食べていきたいという気持ち。断ったら後々の立場が悪くなるというか。今の会社で、またこういう仕事を続けていきたい気持ちなんで、少しでも協力し、会社の指示にできることは従って(やっていきたい)」と淡々と話した。

 現在、現場で作業に携わっているのは東電と子会社の東電工業、原子炉メーカーの東芝、日立のほか、鹿島、関電工やそれらの関係会社など。電源復旧では送電で4社、変電で5社、配電で3社という。地震発生直後に約800人いた作業員は15日の4号機の爆発による退避で一時約50人まで減ったとされるが、それ以降は300~500人で推移。18日に米軍に借りた高圧放水車で3号機に放水したのも、東電工業の社員2人だった。

 現在の急務は原子炉冷却に不可欠な電源の復旧作業だが、東電によると、実際に作業できるのは技術を持つ70人程度。しかも高レベルの放射線を長時間浴びるのを避けるため、20人くらいずつ順番に作業せざるを得ない。「真っ暗な中、投光器や懐中電灯を使いながら、防護服と顔を全部覆うマスク、ゴム手袋での作業になる。大変時間がかかり苦労している」(東電の担当者)

 作業員の「命綱」となっているのが、原発の敷地中央付近にある免震重要棟だ。07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発の事務本館が被災したことを教訓に昨年7月完成した。2階建てで延べ床面積約3700平方メートル。震度7に耐えられる免震構造で、内部には災害時のための「緊急時対策室」が設置されている。

 1~4号機の中央制御室は放射線レベルが高すぎて誰もいない状態。普段は緊急時対策室にいる作業員が、定期的に交代で制御室に行き、監視や操作をしている。作業に出る時はやはり防護服を着て現場へ向かい、作業を終えると免震重要棟に入る前に脱ぎ捨てる。大量の防護服が必要とされている。


毎日新聞 2011年3月21日 13時41分(最終更新 3月21日 14時40分)



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原発、過酷な現場 食事はカロリーメイト・椅子で睡眠(1/2ページ)

2011年3月25日8時1分 朝日新聞

福島第一原発の復旧作業から休憩に戻り、線量計の測定を受ける東京電力の作業員=23日、福島県いわき市の小名浜港、河合博司撮影
 震災から25日で2週間。東京電力福島第一原発は予断を許さない状態が続く。一方で、現場の作業環境も劣悪さを増している。その一端を、東電社員の家族が明かした。

 「睡眠はイスに座ったまま1、2時間。トイレは水が出ず、汚れっぱなし」

 今週初め。神奈川県に住む女性のもとに、第一原発で復旧作業にあたっている夫から初めて電話があった。夫は40代、東京本社の原発部門の社員だ。11日の震災発生後からほぼ連日、対応のため会社に泊まり込んだ。16日、ようやく自宅に戻ったが、出勤すると、そのまま第一原発行きを命じられた。

 「ヘリに乗る。福島に行く」

 こんなメールを最後に、メールも電話もつながらなくなった。

 16日は3号機から白煙が上がり、放射線量が上昇。自衛隊は上空からの放水を断念した。東電の会見では、夫の旧知の同僚がつらそうな顔で対応を迫られていた。

 「お父さん大丈夫かな」。2人の小学生の子どもも不安を口にした。

 夫は原発部門を希望したわけではなかった。理系の大学を出て入社し、「たまたま配属された」。以後、原発の現場と本社勤務を繰り返した。2007年の中越沖地震の際、柏崎刈羽原発で火災が起きた時も現地に2週間ほど詰めた。当時はメールや電話で様子を知ることができたが、今回は音信不通。自衛隊が接近をためらうほどの放射能の中で、「いったいどうしているのか」。

 20日、ようやく本社の専用線を経由して自宅に電話があった。「食事は“カロリーメイト”だけ。着替えは支給されたが、風呂には入れない」。あまり感情を表に出さない夫は淡々と語り、2分ほどで電話を切った。

 23日の電話では、「そろそろ被曝(ひばく)量が限界のようだ」。交代はまだか。もし夫が健康を害したら、家族はどうなるのだろう。政府に頼りたいが、新聞やテレビのニュースによると、菅直人首相は東電幹部に「撤退などありえない。覚悟を決めて下さい。撤退した時は、東電は100%つぶれます」と怒鳴ったという。不安と、悲しさがこみ上げた。

 24日、原子力安全・保安院が、3号機のタービン建屋地下1階で作業員3人が被曝したことを明らかにした。

 国民の、電力会社への厳しい視線は理解できる。でも、「いま体を張っているのは、家庭を持つ、普通の市民であることもわかって欲しい」。(佐々木学)
福島原発:気になること+真宗大谷派の英断という21日に書いた記事に、以下のように書いた。

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(1)2号機になんだか穴が空いていて、白煙が出ていること。
(2)既に述べたように、アメリカが4号機のプールが破損していると言っていること。
(3)3号機の格納容器の圧力が一時期上がっていたこと。
(4)1号機が何の音沙汰もないこと。
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その後、事態はどうなったかというと、

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(1)2号機は配電盤が残っているから一番可能性がある、と言っていたのに、実際には一番、壊れていた。
(2)4号機のプールの話が出なくなった。
(3)3号機の格納容器はなんとか持ったが、冷却系の起動は一進一退。
(4)1号機の中央制御室が回復したら、最も危険な状態であることが判明。
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というわけで、外部電源が回復した以外は、事態が改善していない。特に、1号機の音沙汰が無くなっていたことが、予想通りに悪い知らせだったことは、非常に不愉快である。私がなぜこういうことを言ったかというと、こういう連中の行動パターンとして、

都合の悪いことは無視する

というのがあるからだ。これは典型的な東大話法でもある。それゆえ、報道が無くなったことが非常に不気味だったのであるが、図星だった。

1号機は燃料棒が相当に壊れているようである。圧力容器が上も下も400度というのは、怖い。というのも、海水注入を続けて冷却していたのだから、下の方には水が溜まって、上よりも温度が低いはずだからである。それが両方400度というのは、水がない状態がずっと続いていたことを意味する。水を入れたら260度程度になったと言うが、今度は、上と下の温度が出ていない。これも感じが悪い。

いずれにせよ、1~3号機で燃料棒の崩壊は進んでいる。これが圧力容器の下に落ちてきて、容器を直接熱する状態になると、容器が壊れることになる。そうすると、格納容器も壊れる。それが非常に危険な事態であるが、その状態が接近している。

下の記事で、近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「原子炉本来の冷却機能を早く稼働させることが不可欠」と言っている。この困難な課題を、炉心が圧力容器を壊してしまうまで達成できるかどうか。際どい勝負である。

ひとつの希望は、さすがに「原子力安全欺瞞言語」を平然と使う人が、徐々に減ってきたことだ。はやく撲滅しないと間に合わない。


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福島第1 遅れる冷却機能復旧 3号機、真水注入が難航
1号機、温度抑制に不安
2011/3/24 15:27 日経新聞

 東京電力の福島第1原子力発電所では予断を許さない状況が続いている。1号機の圧力容器の温度が一時、高くなり、注水量を増やしたため、今度は格納容器の圧力が上昇した。専門家は燃料の一部が溶けている可能性もあるとみている。外部電源を使った「補給水系」による真水の注水を計画していた3号機では23日夕に再び原因不明の黒煙が上がり、作業が長時間、中断した。1~4号機すべてが通電可能になったが、東日本大震災で失った冷却機能の本格的な回復は遅れそうだ。

 地震時の津波による影響を最も受けたとされる1号機は、多くの専門家が危険な状態と指摘している。近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「(地震後、海水注入を継続してきたが)圧力容器内の温度制御がうまくいっていない可能性が高い」と話す。燃料棒の一部が溶融し、原形をとどめていない公算もあるという。

 1号機では23日、一時的に圧力容器の上部と下部でセ氏約400度まで温度が上昇した。通常の運転時の温度より100度以上高く、設計温度を大きく上回る。高橋実・東京工業大学准教授は「水がほとんどなくなって、水蒸気が大量にたまっている可能性が高い」という。

 東電などは圧力容器内に注水する量を8~9倍に増やし、急速に温度を下げた。24日朝には230度前後まで下がった。ただ、海水注水時には圧力容器の圧力を逃がす弁は開いており、注水によって大量に発生した水蒸気は格納容器にどんどん出ている。圧力容器の温度は下がるが、格納容器の圧力が上がるというジレンマに陥る。

 エネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「原子炉の状態が不安定な場合、消防ポンプによる注水の冷却では限度がある。原子炉本来の冷却機能を早く稼働させることが不可欠」と指摘する。

 3号機は22日夜に中央制御室の照明が点灯し、本格的な復旧作業が進むと期待されていた。安定的な冷却に向けて原子炉に真水を入れて冷却するシステムである補給水系を復旧する計画だったが、23日夕の黒煙の発生で作業が中断し、遅れている。

 補給水系は原子炉や使用済み核燃料プールを冷やすために備わっている冷却システムで、圧力抑制室の水などを出し入れするポンプを使い炉心に真水を入れる。

 これまでは緊急手段として、非常用ポンプで海水を注入して冷却していた。ただ、海水は塩分を含んでおり、ポンプなどに悪影響を及ぼす恐れがある。今後、本格的な冷却機能の復旧を目指す上で、真水に切り替えなければならない。