食管法違反事件上告審判決

事案:食料管理法に従っていたのでは食事が足りず、生きて行けないから、食管法の規定は生存権侵害である。

25条に関する判断部分のみ
さて、憲法第二五条第二項において、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定しているのは、
前述の社会生活の推移に伴う積極主義の政治である社会的施設の拡充増強に努力すべきことを国家の任務の一つとして宣言したものである。
そして、同条第一項は、
同様に積極主義の政治として、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務として宣言したものである。
(◯プログラム規定説)

それは、主として社会的立法の制定及びその実施によるべきであるが、
かかる生活水準の確保向上もまた国家の任務の一つとせられたのである。
すなわち、国家は、国民一般に対して概括的にかかる責務を負担しこれを国政上の任務としたのであるけれども、
個々の国民に対して具体的、現実的にかかる義務を有するのではない。
(◯具体的権利性なし)
言い換えれば、この規定により直接に個々の国民は、国家に対して具体的、現実的にかかる権利を有するものではない。
社会的立法及び社会的施設の創造拡充に従つて、始めて個々の国民の具体的、現実的の生活権は設定充実せられてゆくのである。


朝日訴訟上告審判決多数意見

事案:生活保護受給者が、兄から仕送りを受ける様になったので支給を打ち切ったところ、基準金額600円が、健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでないとして提訴。

主 文
本件訴訟は、昭和三九年二月一四日上告人の死亡によつて終了した。
中間の争いに関して生じた訴訟費用は、上告人の相続人A、同Bの負担とする。

理 由
本件上告理由は、別紙記載のとおりである。
職権をもつて調査するに、上告人は、昭和三八年一一月二〇日本件上告の申立をしたが、昭和三九年二月一四日死亡するにいたつたこと、記録上明らかである。

上告人は、十数年前から国立岡山療養所に単身の肺結核患者として入所し、
厚生大臣の設定した生活扶助基準で定められた最高金額たる月六〇〇円の日用品費の生活扶助と現物による全部給付の給食付医療扶助とを受けていた。

ところが、同人が実兄Cから扶養料として毎月一、五〇〇円の送金を受けるようになつたために、
津山市社会福祉事務所長は、月額六〇〇円の生活扶助を打ち切り、
右送金額から日用品費を控除した残額九〇〇円を医療費の一部として上告人に負担させる旨の保護変更決定をした。

同決定が岡山県知事に対する不服の申立および厚生大臣に対する不服の申立においても是認されるにいたつたので、
上告人は、厚生大臣を被告として、
右六〇〇円の基準金額が生活保護法の規定する健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するにたりない違法のものであると主張して、
同大臣の不服申立却下裁決の取消を求める旨の本件訴を提起した。

おもうに、生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、
単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であつて、
保護受給権とも称すべきものと解すべきである。

しかし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であつて、他にこれを譲渡し得ないし(五九条参照)、相続の対象ともなり得ないというべきである。


(なお、念のために、本件生活扶助基準の適否に関する当裁判所の意見を付加する。
一、憲法二五条一項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。
この規定は、
すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり(プログラム規定説)、
直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない(具体的権利性否定
(昭和二三年(れ)第二〇五号、同年九月二九日大法廷判決、刑集二巻一〇号一二三五頁参照)。
具体的権利としては、
憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によつて、はじめて与えられているというべきである。
生活保護法は、
「この法律の定める要件」を満たす者は、「この法律による保護」を受けることができると規定し(二条参照)、
その保護は、厚生大臣の設定する基準に基づいて行なうものとしているから(八条一項参照)、
右の権利は、厚生大臣が最低限度の生活水準を維持するにたりると認めて設定した保護基準による保護を受け得ることにあると解すべきである。

もとより、厚生大臣の定める保護基準は、法八条二項所定の事項を遵守したものであることを要し、
結局には憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するにたりるものでなければならない。

しかし、健康で文化的な最低限度の生活なるものは、抽象的な相対的概念であり、
その具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴つて向上するのはもとより、
多数の不確定的要素を綜合考量してはじめて決定できるものである。
したがつて、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、
いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、
その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあつても、
直ちに違法の問題を生ずることはない。

ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等
憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、
法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、
違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない(例外的に裁判規範性を認める)。

原判決は、保護基準設定行為を行政処分たる覊束裁量行為であると解し、
なにが健康で文化的な最低限度の生活であるかは、厚生大臣の専門技術的裁量に委されていると判示し、
その判断の誤りは、法の趣旨・目的を逸脱しないかぎり、当不当の問題にすぎないものであるとした。
覊束裁量行為といつても行政庁に全然裁量の余地が認められていないわけではないので、
原判決が保護基準設定行為を覊束裁量行為と解しながら、
そこに厚生大臣の専門技術的裁量の余地を認めたこと自体は、理由齟齬の違法をおかしたものではない。

また、原判決が本件生活保護基準の適否を判断するにあたつて考慮したいわゆる生活外的要素というのは、
当時の国民所得
ないしその反映である国の財政状態、国民の一般的生活水準、
都市と農村における生活の格差、
低所得者の生活程度とこの層に属する者の全人口において占める割合、
生活保護を受けている者の生活が保護を受けていない多数貧困者の生活より優遇されているのは不当であるとの一部の国民感情
および予算配分の事情である。

以上のような諸要素を考慮することは、保護基準の設定について厚生大臣の裁量のうちに属することであつて、
その判断については、法の趣旨・目的を逸脱しないかぎり、当不当の問題を生ずるにすぎないのであつて、
違法の問題を生ずることはない。

二、本件生活扶助基準そのものについて見るに、
この基準は、昭和二八年七月設定されたものであり、
また、その月額六〇〇円算出の根拠となつた費目、数量および単価は、第一審判決別表記載のとおりである。

生活保護法によつて保障される最低限度の生活とは、
健康で文化的な生活水準を維持することができるものであることを必要とし(三条参照)、
保護の内容も、要保護老個人またはその世帯の実際の必要を考慮して、有効かつ適切に決定されなければならないが(九条参照)、
同時に、それは最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、かつ、これをこえてはならないこととなつている(八条二項参照)。

本件のような入院入所中の保護患者については、
生活保護法による保護の程度に関して、
長期療養という特殊の生活事情や医療目的からくる一定の制約があることに留意しなければならない。

この場合に、日用品費の額の多少が病気治療の効果と無関係でなく、
その額の不足は、病人に対し看過し難い影響を及ぼすことのあるのは、否定し得ないところである。

しかし、患者の最低限度の需要を満たす手段として、
法は、その需要に即応するとともに、保護実施の適正を期する目的から、
保護の種類および範囲を定めて、これを単給または併給することとし、
入院入所中の保護患者については、
生活扶助のほかに給食を含む医療扶助の制度を設けているが、
両制度の間にはおのずから性質上および運用上の区別があり、

また、これらとは別に生業扶助の制度が存するのであるから、
単に、治療効果を促進しあるいは現行医療制度や看護制度の欠陥を補うために必要であるとか、
退院退所後の生活を容易にするために必要であるとかいうようなことから、
それに要する費用をもつて日用品費と断定し、生活扶助基準にかような費用が計上されていないという理由で、
同基準の違法を攻撃することは、許されないものといわなければならない。

さらに、本件生活扶助基準という患者の日用品に対する一般抽象的な需要測定の尺度が
具体的に妥当なものであるかどうかを検討ずるにあたつては、
日用品の消費量が各人の節約の程度、当該日用品の品質等によつて異なるのはもとより、
重症患者と中・軽症患者とではその必要とする費目が異なり、
特定の患者にとつてはある程度相互流用の可能性が考えられるので、
単に本件基準の各費目、数量、単価を個別的に考察するだけではなく、その全体を統一的に把握すべきである。
また、入院入所中の患者の日用品であつても、経常的に必要とするものと臨時例外的に必要とするものとの区別があり、
臨時例外的なものを一般基準に組み入れるか、特攻基準ないしは一時支給、貸与の制度に譲るかは、
厚生大臣の裁量で定め得るところである。

以上のことを念頭に入れて検討すれば、原判決の確定した事実関係の下においては、
本件生活扶助基準が入院入所患者の最低限度の日用品費を支弁するにたりるとした厚生大臣の認定判断は、
与えられた裁量権の限界をこえまたは裁量権を濫用した違法があるものとはとうてい断定することができない。)

よつて、民訴法九五条、八九条に従い、
裁判官奥野健一の補足意見および裁判官草鹿浅之介、同田中二郎、同松田二郎、同岩田誠の反対意見があるほか、
全裁判官一致の意見により、主文のと判り判決する。


ここから堀木訴訟上告審判決の多数意見

事案:障害福祉年金受給者の児童扶養手当併給禁止規定の合憲性

主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理 由
上告代理人井藤誉志雄、同藤原精吾、同前哲夫、同佐伯雄三、同宮崎定邦、同堀田貢、同前田修、同木村治子、同高橋敬、同吉井正明、同田中秀雄、同持田穣、同野田底吾、同原田豊、同中村良三、同羽柴修、同山崎満幾美、同野沢涓、同小牧英夫、同山内康雄、同宮後恵喜、同大音師建三、同田中唯文、同伊東香保、同前田貢、同山平一彦、同古本英二、同前田貞夫、同川西譲、同木下元二、同垣添誠雄、同上原邦彦、同足立昌昭、同木村祐司郎、同竹内信一名義、同岩崎豊慶、同橋本敦、同西元信夫、同松本晶行、同新井章、同大森典子、同高野範城、同渡辺良夫、同四位直毅、同池田真規、同金住典子、同田中峯子、同門井節夫、同金井清吉の上告理由について

一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係は次のとおりである。
上告人は、国民年金法別表記載の一級一号に該当する視力障害者で、
同法に基づく障害福祉年金を受給しているものであるところ、同人は内縁の夫との間の男子A(昭和三〇年五月一二日生)を右夫との離別後独力で養育してきた。

上告人は、昭和四五年二月二三日、被上告人に対し、児童扶養手当法に基づく児童扶養手当の受給資格について認定の請求をしたところ、被上告人は、同年三月二三日付で右請求を却下する旨の処分をし、上告人が同年五月一八日付で、被上告人に異議申立てをしたのに対し、被上告人は、同年六月九日付で、右異議申立てを棄却する旨の決定をした。その決定の理由は、上告人が障害福祉年金を受給しているので、昭和四八年法律第九三号による改正前の児童扶養手当法四条三項三号(以下「本件併給調整条項」という。)に該当し受給資格を欠くというものであつた。

二 そこで、まず、本件併給調整条項が憲法二五条に違反するものでないとした原判決が同条の解釈適用を誤つたものであるかどうかについて検討する。
憲法二五条一項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定しているが、
この規定が、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであること、
また、同条二項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定しているが、
この規定が、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであること、
そして、同条一項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、
同条二項によつて国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解すべきことは、
すでに当裁判所の判例とするところである((◯食料管理法違反事件)最高裁昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決・刑集二巻一〇号一二三五頁)。

このように、憲法二五条の規定は、国権の作用に対し、一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものである。
しかも、右規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、
その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、
右規定を現実の立法として具体化するに当たつては国の財政事情を無視することができず
また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。
したがつて、憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、
立法府の広い裁量にゆだねられており、
それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、
裁判所が審査判断するのに適しない事柄である
といわなければならない。

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日本国内での判例とプログラム規定説 [編集]
日本国内でプログラム規定説が問題となった訴訟としては、
日本国憲法第25条と生活保護法について争った「朝日訴訟」、社会保障立法における併給禁止規定の合憲性を争った「堀木訴訟」などが典型である。
これらの訴訟における最高裁判所の判例はプログラム規定説に立っている[1]が、
両訴訟とも裁量権の著しい逸脱など、一定の場合に第25条の裁判規範性を認めていることから、
純然たるプログラム規定説ではないとも言われる[


堀木訴訟控訴審判決

第二項に基づいて国の行う施策は、結果的には国民の健康で文化的な最低限度の生活保障に役立つているとしても、その施策がすべて国民の生存権確保を直接の目的とし、その施策単独で最低限度の生活の保障を実現するに足りるものでなければならないことが憲法上要求されているものとは解されない。
むしろ憲法第二五条は、すべての生活部面についての社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進を図る諸施策の有機的な総合によつて、国民に対し健康で文化的な最低限度の生活保障が行われることを予定しているものと考えられるのである。
結局同条第二項により国の行う施策は、個々的に取りあげてみた場合には、国民の生活水準の相対的な向上に寄与するものであれば足り、特定の施策がそれのみによつて健康で文化的な最低限度という絶対的な生活水準を確保するに足りるものである必要はなく、要は、すべての施策を一体としてみた場合に、健康で文化的な最低限度の生活が保障される仕組みになつていれば、憲法第二五条の要請は満たされているというべきである。
本条第二項の趣旨が以上のようなものであるとすると、同項に基づいて国が行う個々の社会保障施策については、各々どのような目的を付し、どのような役割機能を分担させるかは立法政策の問題として、立法府の裁量に委ねられているものと解することができる。
また、本条第二項による国の責務の遂行には、当然に財政措置を伴うものであり、而も財政には制約があるから、国は国家財政、予算の配分との関連において、できる限り、社会生活水準の向上及び増進に努めればよく、それをもつて同条項の規定の趣旨に十分合致するものと解すべきである。
そうして、国が右のような努力を続けることによつて、国民の生活水準が相対的に向上すれば、国民の最低限度に満たない生活から脱却する者が多くなるが、それでもなお最低限度の生活を維持し得ない者もあることは否定することはできないので、この落ちこぼれた者に対し、国は更に本条第一項の「健康で文化的な最低生活の保障」という絶対的基準の確保を直接の目的とした施策をなすべき責務があるの
である。
すなわち、本条第二項国の事前の積極的防貧施策をなすべき努力義務のあることを、同第一項第二項の防貧施策の実施にも拘らず、なお落ちこぼれた者に対し、国は事後的、補足的且つ個別的な救貧施策をなすべき責務のあることを各宣言したものであると解することができる。

ここまで堀木訴訟控訴審判決


朝日訴訟地裁判決
:この憲法第二五条第一項は国に対しすべて国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるように積極的な施策を講ずべき責務を課して国民の生存権を保障し、同条第二項は同条第一項の責務を遂行するために国がとるべき施策を列記したものである(最高裁判所昭和三二年九月二九日大法廷判決、刑集二巻一〇号一二三五頁参照)。

: 生活保護法(昭和二五年法律第一四四号)は
国がまさにこの憲法第二五条の明定する生存権保障の理念に基いて
困窮者の生活保護制度を、同条第二項にいう社会保障の一環として、国の直接の責任において実現しようとするものであり、
憲法の前記規定を現実化し、具体化したものに外ならない(同法第一条参照)。
同法第二条は「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる」と規定している。
これは同法に定める保護を受ける資格をそなえる限り
何人に対しても単に国の事実上の保護行為による反射的利益を享受させるにとどまらず、
積極的に国に対して同法第三条の規定するような「健康で文化的な生活水準」を維持することができる
最低限度の生活を保障する保護の実施を請求する権利、すなわち保護請求権を賦与することを規定したものと解すべきである。

そこで、本件において問題とされている併給調整条項の設定について考えるのに、
上告人がすでに受給している国民年金法上の障害福祉年金といい、
また、上告人がその受給資格について認定の請求をした児童扶養手当といい、
いずれも憲法二五条の規定の趣旨を実現する目的をもつて設定された社会保障法上の制度であり、
それぞれ所定の事由に該当する者に対して年金又は手当という形で一定額の金員を支給することをその内容とするものである。
ところで、児童扶養手当がいわゆる児童手当の制度を理念とし将来における右理念の実現の期待のもとに、
いわばその萌芽として創設されたものであることは、立法の経過に照らし、一概に否定することのできないところではあるが、
国民年金法一条、二条、五六条、六一条、児童扶養手当法一条、二条、四条の諸規定に示された障害福祉年金、母子福祉年金及び児童扶養手当の各制度の趣旨・目的及び支給要件の定めを通覧し、
かつ、国民年金法六二条、六三条、六六条三項、同法施行令五条の四第三項及び児童扶養手当法五条、九条、同法施行令二条の二各所定の支給金額及び支給方法を比較対照した結果等をも参酌して判断すると、
児童扶養手当は、もともと国民年金法六一条所定の母子福祉年金を補完する制度として設けられたものと見るのを相当とするのであり、
児童の養育者に対する養育に伴う支出についての保障であることが明らかな児童手当法所定の児童手当とはその性格を異にし、
受給者に対する所得保障である点において、
前記母子福祉年金ひいては国民年金法所定の国民年金(公的年金)一般、
したがつてその一種である障害福祉年金と基本的に同一の性格を有するもの、と見るのがむしろ自然である。
そして、一般に、社会保障法制上、同一人に同一の性格を有する二以上の公的年金が支給されることとなるべき、
いわゆる複数事故において、
そのそれぞれの事故それ自体としては支給原因である稼得能力の喪失又は低下をもたらすものであつても、
事故が二以上重なつたからといつて稼得能力の喪失又は低下の程度が必ずしも事故の数に比例して増加するといえないことは明らかである。
このような場合について、社会保障給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは、
さきに述べたところにより、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。
また、この種の立法における給付額の決定も、立法政策上の裁量事項であり、
それが低額であるからといつて当然に憲法二五条違反に結びつくものということはできない。

以上の次第であるから、本件併給調整条項が憲法二五条に違反して無効であるとする上告人の主張を排斥した原判決は、
結局において正当というべきである。
(なお、児童扶養手当法は、その後の改正により右障害福祉年金と老齢福祉年金の二種類の福祉年金について児童扶養手当との併給を認めるに至ったが、
これは前記立法政策上の裁量の範囲における改定措置と見るべきであり、このことによつて前記判断が左右されるわけのものではない。)

三 次に、本件併給調整条項が上告人のような地位にある者に対してその受給する障害福祉年金と児童扶養手当との併給を禁じたことが憲法一四条及び一三条に違反するかどうかについて見るのに、
憲法二五条の規定の要請にこたえて制定された法令において、
受給者の範囲、支給要件、支給金額等につきなんら合理的理由のない不当な差別的取扱をしたり、
あるいは個人の尊厳を毀損するような内容の定めを設けているときは、
別に所論指摘の憲法一四条及び一三条違反の問題を生じうることは否定しえないところである。

しかしながら、本件併給調整条項の適用により、
上告人のように障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に
児童扶養手当の受給に関して差別を生ずることになるとしても、
さきに説示したところに加えて原判決の指摘した諸点、
とりわけ身体障害者、母子に対する諸施策及び生活保護制度の存在などに照らして総合的に判断すると、
右差別がなんら合理的理由のない不当なものであるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。
また、本件併給調整条項が児童の個人としての尊厳を害し、
憲法一三条に違反する恣意的かつ不合理な立法であるといえないことも、上来説示したところに徴して明らかであるから、
この点に関する上告人の主張も理由がない。

以上の次第であるから、論旨は、いずれも採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

ここまで堀木訴訟

以下朝日訴訟の補足意見、反対意見 
省略

以上、28分

暴走族の定義:明確であり、過度に広汎でない(判例に同旨)。

因果関係の断絶:行為から結果に向けて因果の流れが進行中、当該行為と無関係の事情により、当該結果が発生した場合をいう。
→因果関係は認められない。

因果関係の中断:当該行為と当該結果との間に条件関係は認められるが、因果経過に被害者、加害者、第三者の故意又は過失行為が介在する場合に、因果関係を否定することをいう。
=条件説の不当性修正=行為後の事情
→説が分かれる。

放火罪の構成要件整理

自救行為:正当防衛を認めるだけの侵害の急迫、現在は存在しないが、国家機関の救済をまっていたのでは権利の回復が著しく困難になる場合、侵害者に対し、自ら実力により救済を図る行為ををいう(判例に同旨)(前田)。
→阻却を認めた判例なし。

盗品関与罪の客体:盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得されたもの(256)
→転換財産は含まない。

37条2項
:前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
/義務遂行の過程で、当該義務の履行と関係のない場合は、適用あり。
=消火作業中逃げ出すのは×。崩れ始めたた家屋を避けるため隣家の塀を壊す行為は◯。

交通反則切符の有形偽造
:交通反則切符は、作成名義人以外のものがこれを作成することは法令上許されないから、名義人の承諾があっても偽造罪が成立する(判例に同旨)。

被害者の行為を利用した間接正犯で、被害者に被告人の命令に応じて自殺する気持ちはなかった場合
:被害者には被告人の命令に応じて自殺する気持ちはなかったものであって、この点は被告人の予期したところに反していたが、被害者に対し死亡の現実的危険性の高い行為を強いたこと自体については、被告人において何ら認識に欠けるところはなかったから、殺人の故意が認められる(判例に同旨)。

職務権限の認定
=警視庁警部補として同庁調布警察署地域課に勤務し、犯罪の捜査等の職務に従事していた者に、同庁多摩中央警察署長に対し告発状を提出していた事件について、便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に現金の供与を受けた場合、「職務に関し賄賂を収受した」といえるか。
:警察法64条等の関係法令によれば、同庁警察官の犯罪捜査に関する職務権限は、同庁の管轄区域である東京都の全域に及ぶと解されることなどに照らすと、
被告人が、調布警察署管内の交番に勤務しており、多摩中央警察署刑事課の担当する上記事件の捜査に関与していなかったとしても、
被告人の上記行為は、その職務に関し賄賂を収受したものであるというべきである(判例に同旨170311)。

実行未遂における共犯関係からの離脱
:他の共犯者の行為を阻止する必要がある
⇔一向に聞き入れる気配はなく、逆にXに対して殴り掛かろうとする気配を示して来たので逃走した場合
→阻止したか?:していない。

強制わいせつ罪
:傾向犯
→専ら復讐目的で裸体を撮影した場合、内心的傾向がなく、同罪不成立(判例に同旨)。

以上50分+10分。
愛媛玉串料訴訟

主 文
原判決中主文第一項を破棄し、被上告人B1の控訴を棄却する。
上告人らのその余の上告を棄却する。
前項の部分に関する上告費用は上告人らの負担とし、その余の部分に関する控訴費用及び上告費用は、被上告人B1の負担とする。

理 由
第一 上告理由について

一 事実関係及び訴訟の経過
1 原審の適法に確定した事実関係

2 第一審は、本件支出は、その目的が宗教的意義を持つことを否定することができないばかりでなく、その効果が靖國神社又は護國神社の宗教活動を援助、助長、促進することになるものであって、本件支出によって生ずる県と靖國神社及び護國神社との結び付きは、我が国の文化的・社会的諸条件に照らして考えるとき、もはや相当とされる限度を超えるものであるから、憲法二〇条三項の禁止する宗教的活動に当たり、違法なものといわなければならないと判断した。

これに対して、原審は、本件支出は宗教的な意義を持つが、一般人にとって神社に参拝する際に玉串料等を支出することは過大でない限り社会的儀礼として受容されるという宗教的評価がされており、知事は、遺族援護行政の一環として本件支出をしたものであって、それ以外の意図、目的や深い宗教心に基づいてこれをしたものではないし、その支出の程度は、少額で社会的な儀礼の程度にとどまっており、その行為が一般人に与える効果、影響は、靖國神社等の第二次大戦中の法的地位の復活や神道の援助、助長についての特別の関心、気風を呼び起こしたりするものではなく、これらによれば、本件支出は、神道に対する援助、助長、促進又は他の宗教に対する圧迫、干渉等になるようなものではないから、憲法二〇条三項、八九条に違反しないと判断した。

二 本件支出の違法性に関する当裁判所の判断
原審の右判断は是認することができない。その理由は以下のとおりである。
1 政教分離原則と憲法二〇条三項、八九条により禁止される国家等の行為
憲法は、二〇条一項後段、三項、八九条において、いわゆる政教分離の原則に基づく諸規定(以下「政教分離規定」という。)を設けている。

一般に、政教分離原則とは、国家(地方公共団体を含む。以下同じ。)は宗教そのものに干渉すべきではないとする、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を意味するものとされているところ、国家と宗教との関係には、それぞれの国の歴史的・社会的条件によって異なるものがある。

我が国では、大日本帝国憲法に信教の自由を保障する規定(二八条)を設けていたものの、
その保障は「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」という同条自体の制限を伴っていたばかりでなく、
国家神道に対し事実上国教的な地位が与えられ、ときとして、それに対する信仰が要請され、あるいは一部の宗教団体に対し厳しい迫害が加えられた等のこともあって、同憲法の下における信教の自由の保障は不完全なものであることを免れなかった。

憲法は、明治維新以降国家と神道が密接に結び付き右のような種々の弊害を生じたことにかんがみ、新
たに信教の自由を無条件に保障することとし、更にその保障を一層確実なものとするため、政教分離規定を設けるに至ったのである。
元来、我が国においては、各種の宗教が多元的、重層的に発達、併存してきているのであって、このような宗教事情の下で信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結び付きをも排除するため、政教分離規定を設ける必要性が大であった。
これらの点にかんがみると、憲法は、政教分離規定を設けるに当たり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものと解すべきである。

しかしながら、元来、政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、信教の自由そのものを直接保障するものではなく国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。

そして、国家が社会生活に規制を加え、あるいは教育、福祉、文化などに関する助成、援助等の諸施策を実施するに当たって、宗教とのかかわり合いを生ずることを免れることはできないから、現実の国家制度として、国家と宗教との完全な分離を実現することは、実際上不可能に近いものといわなければならない。
さらにまた、政教分離原則を完全に貫こうとすれば、かえって社会生活の各方面に不合理な事態を生ずることを免れない。
これらの点にかんがみると、政教分離規定の保障の対象となる国家と宗教との分離にもおのずから一定の限界があることを免れず、政教分離原則が現実の国家制度として具現される場合には、それぞれの国の社会的・文化的諸条件に照らし、国家は実際上宗教とある程度のかかわり合いを持たざるを得ないことを前提とした上で、そのかかわり合いが、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で、いかなる場合にいかなる限度で許されないこととなるかが問題とならざるを得ないのである。

右のような見地から考えると、憲法の政教分離規定の基礎となり、その解釈の指導原理となる政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、
国家が宗教とのかかわり合いを持つことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、
そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものであると解すべきである。

右の政教分離原則の意義に照らすと、憲法二〇条三項にいう宗教的活動とは、
およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を指すものではなく、
そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、
当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。

そして、ある行為が右にいう宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては、
当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。

憲法八九条が禁止している公金その他の公の財産を宗教上の組織又は団体の使用、便益又は維持のた
めに支出すること又はその利用に供することというのも、前記の政教分離原則の意義に照らして、公金支出行為等における国家と宗教とのかかわり合いが前記の相当とされる限度を超えるものをいうものと解すべきであり、これに該当するかどうかを検討するに当たっては、前記と同様の基準によって判断しなければならない。

以上は、当裁判所の判例の趣旨とするところでもある(最高裁昭和四六年(行ツ)第六九号同五二年七月
一三日大法廷判決・民集三一巻四号五三三頁、最高裁昭和五七年(オ)第九〇二号同六三年六月一日大
法廷判決・民集四二巻五号二七七頁参照)。

2 本件支出の違法性
そこで、以上の見地に立って、本件支出の違法性について検討する。
(一) 原審の適法に確定した事実関係によれば、被上告人B2らは、いずれも宗教法人であって憲法二〇
条一項後段にいう宗教団体に当たることが明らかな靖國神社又は護國神社が各神社の境内において挙行
した恒例の宗教上の祭祀である例大祭、みたま祭又は慰霊大祭に際して、玉串料、献灯料又は供物料を奉納するため、前記回数にわたり前記金額の金員を県の公金から支出したというのである。

ところで、神社神道においては、祭祀を行うことがその中心的な宗教上の活動であるとされていること、例大祭及び慰霊大祭は、神道の祭式にのっとって行われる儀式を中心とする祭祀であり、各神社の挙行する恒例の祭祀中でも重要な意義を有するものと位置付けられていること、みたま祭は、同様の儀式を行う祭祀であり、靖國神社の祭祀中最も盛大な規模で行われるものであることは、いずれも公知の事実である。
そして、玉串料及び供物料は、例大祭又は慰霊大祭において右のような宗教上の儀式が執り行われるに際して神前に供えられるものであり、
献灯料は、これによりみたま祭において境内に奉納者の名前を記した灯明が掲げられるというものであって、いずれも各神社が宗教的意義を有すると考えていることが明らかなものである。

これらのことからすれば、県が特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀にかかわり合いを持ったということが明らかである。
そして、一般に、神社自体がその境内において挙行する恒例の重要な祭祀に際して右のような玉串料等を奉納することは、
建築主が主催して建築現場において土地の平安堅固、工事の無事安全等を祈願するために行う儀式である起工式の場合とは異なり、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底いうことができず、
一般人が本件の玉串料等の奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考え難いところである。
そうであれば、玉串料等の奉納者においても、それが宗教的意義を有するものであるという意識を大なり小なり持たざる得ないのであり、このことは、本件においても同様というべきである。

また、本件においては、県が他の宗教団体の挙行する同種の儀式に対して同様の支出をしたという事実がうかがわれないのであって、県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができない。

これらのことからすれば、地方公共団体が特定の宗教団体に対してのみ本件のような形で特別のかかわり合いを持つことは、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており、それらの宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ない。

被上告人らは、本件支出は、遺族援護行政の一環として、戦没者の慰霊及び遺族の慰謝という世俗的な目的で行われた社会的儀礼にすぎないものであるから、憲法に違反しないと主張する。

確かに、靖國神社及び護國神社に祭られている祭神の多くは第二次大戦の戦没者であって、その遺族を始めとする愛媛県民のうちの相当数の者が、県が公の立場において靖國神社等に祭られている戦没者の慰霊を行うことを望んでおり、
そのうちには、必ずしも戦没者を祭神として信仰の対象としているからではなく、故人をしのぶ心情からそのように望んでいる者もいることは、これを肯認することができる。

そのような希望にこたえるという側面においては、本件の玉串料等の奉納に儀礼的な意味合いがあることも否定できない。
しかしながら、明治維新以降国家と神道が密接に結び付き種々の弊害を生じたことにかんがみ政教分離規定を設けるに至ったなど前記の憲法制定の経緯に照らせば、
たとえ相当数の者がそれを望んでいるとしても、そのことのゆえに、地方公共団体と特定の宗教とのかかわり合いが、相当とされる限度を超えないものとして憲法上許されることになるとはいえない。

戦没者の慰霊及び遺族の慰謝ということ自体は、本件のように特定の宗教と特別のかかわり合いを持つ形でなくてもこれを行うことができると考えられるし、
神社の挙行する恒例祭に際して玉串料等を奉納することが、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとも認められないことは、前記説示のとおりである。

ちなみに、神社に対する玉串料等の奉納が故人の葬礼に際して香典を贈ることとの対比で論じられることがあるが、香典は、故人に対する哀悼の意と遺族に対する弔意を表するために遺族に対して贈られ、その葬礼儀式を執り行っている宗教家ないし宗教団体を援助するためのものではないと一般に理解されており、これと宗教団体の行う祭祀に際して宗教団体自体に対して玉串料等を奉納することとでは、一般人の評価において、全く異なるものがあるといわなければならない。

また、被上告人らは、玉串料等の奉納は、神社仏閣を訪れた際にさい銭を投ずることと同様のものであるとも主張するが、
地方公共団体の名を示して行う玉串料等の奉納と一般にはその名を表示せずに行うさい銭の奉納とでは、その社会的意味を同一に論じられないことは、おのずから明らかである。

そうであれば、本件玉串料等の奉納は、たとえそれが戦没者の慰霊及びその遺族の慰謝を直接の目的としてされたものであったとしても、
世俗的目的で行われた社会的儀礼にすぎないものとして憲法に違反しないということはできない。

以上の事情を総合的に考慮して判断すれば、県が本件玉串料等靖國神社又は護國神社に前記のとおり
奉納したことは、
その目的が宗教的意義を持つことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、
これによってもたらされる県と靖國神社等とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものであって、憲法二〇条三項の禁止する宗教的活動に当たると解するのが相当である。
そうすると、本件支出は、同項の禁止する宗教的活動を行うためにしたものとして、違法というべきである。
これと異なる原審の判断は、同項の解釈適用を誤るものというほかはない。

(二) また、靖國神社及び護國神社は憲法八九条にいう宗教上の組織又は団体に当たることが明らかで
あるところ、
以上に判示したところからすると、本件玉串料等を靖國神社又は護國神社に前記のとおり奉納したことによってもたらされる県と靖國神社等とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと解されるのであるから、
本件支出は、同条の禁止する公金の支出に当たり、違法というべきである。
したがって、この点に関する原審の判断も、同条の解釈適用を誤るものといわざるを得ない。

三 被上告人らの損害賠償責任の有無
原審は、右の誤った判断に基づき、本件支出に違法はないとして、上告人らの請求をいずれも棄却すべきであるとしたが、
以上のとおり、本件支出は違法であるというべきであるから、更に進んで、被上告人らの損害賠償責任の有無について検討することとする。

原審の適法に確定した事実関係によれば、~これを行ったというのである。

右のように、被上告人B1は、自己の権限に属する本件支出を補助職員である被上告人B2らに委任し、又は専決により処理させたのであるから、
その指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったと認められる場合には、
県に対し右違法な支出によって県が被った損害を賠償する義務を負うことになると解すべきである(最高裁平成二年(行ツ)第一三七号同三年一二月二〇日第二小法廷判決・民集四五巻九号一四五五頁、最高裁昭和六二年(行ツ)第一四八号平成五年二月一六日第三小法廷判決・民集四七巻三号一六八七頁参照)。

原審の適法に確定したところによれば、
被上告人B1は、靖國神社等に対し、被上告人B2らに玉串料等を持参させるなどして、これを奉納したと認められるというのであり、本件支出には憲法に違反するという重大な違法があること、
地方公共団体が特定の宗教団体に玉串料、供物料等の支出をすることについて、
文部省、自治省等が、政教分離原則に照らし、慎重な対応を求める趣旨の通達、回答をしてきたことなどをも考慮すると、その指揮監督上の義務に違反したものであって、
これにつき少なくとも過失があったというのが相当である。
したがって、被上告人B1は、県に対し、違法な本件支出により県が被った本件支出金相当額の損害を賠償する義務を負うというべきである。

これに対し、被上告人B2らについては、
地方自治法二四三条の二第一項後段により損害賠償責任の発生要件が限定されており、
本件支出行為をするにつき故意又は重大な過失があった場合に限り県に対して損害賠償責任を負うものであるところ、
原審の適法に確定したところによれば、
被上告人B2らは、いずれも委任を受け、又は専決することを任された補助職員として知事の前記のような指揮監督の下で本件支出をしたというのであり、
しかも、本件支出が憲法に違反するか否かを極めて容易に判断することができたとまではいえないから、被上告人B2らがこれを憲法に違反しないと考えて行ったことは、その判断を誤ったものではあるが、著しく注意義務を怠ったものとして重大な過失があったということはできない。

そうすると、被上告人B1以外の被上告人らは県に対し損害賠償責任を負わないというべきである。

四 結論
以上によれば、上告人らの被上告人B1に対する請求は、これを認容すべきであり、
その余の被上告人らに対する請求は、これを棄却すべきであるところ、
これと同旨の第二審判決は、結論において是認し得るから、
第一審判決のうち上告人らの被上告人B1に対する請求に係る部分を取り消して同請求を棄却した原判決主文第一項は、破棄を免れず、右部分については、同被上告人の控訴を棄却すべきであり、
上告人らのその余の被上告人らに対する控訴を棄却した原判決主文第二項に対する上告は、
理由がないとして、これを棄却すべきである。

第二 A1の上告取下げの効力について
本件上告を申し立てた者のうちA1は、平成六年七月七日、上告を取り下げる旨の書面を当裁判所に提出した。そこで、職権により、右上告取下げの効力について判断する。

本件は、地方自治法二四二条の二に規定する住民訴訟である。同条は、普通地方公共団体の財務行政
の適正な運営を確保して住民全体の利益を守るために、当該普通地方公共団体の構成員である住民に対
し、いわば公益の代表者として同条一項各号所定の訴えを提起する権能を与えたものであり、同条四項が、
同条一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもって同一の請求をすることができないと規定しているのは、
住民訴訟のこのような性質にかんがみて、複数の住民による同一の請求については、必ず共同訴訟として提訴することを義務付け、これを一体として審判し、一回的に解決しようとする趣旨に出たものと解される。
そうであれば、住民訴訟の判決の効力は、当事者となった住民のみならず、当該地方公共団体の全住民に及ぶものというべきであり、複数の住民の提起した住民訴訟は、民訴法六二条一項にいう「訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合」に該当し、いわゆる類似必要的共同訴訟と解するのが相当である。

ところで、類似必要的共同訴訟については、共同訴訟人の一部の者がした訴訟行為は、全員の利益においてのみ効力を生ずるとされている(民訴法六二条一項)。上訴は、上訴審に対して原判決の敗訴部分の是正を求める行為であるから、類似必要的共同訴訟において共同訴訟人の一部の者が上訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として上訴審に移審し、上訴審の判決の効力は上訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶものと解される。
しかしながら、合一確定のためには右の限度で上訴が効力を生ずれば足りるものである上、住民訴訟の前記のような性質にかんがみると、公益の代表者となる意思を失った者に対し、その意思に反してまで上訴人の地位に就き続けることを求めることは、相当でないだけでなく、住民訴訟においては、複数の住民によって提訴された場合であっても、公益の代表者としての共同訴訟人らにより同一の違法な財務会計上の行為又は怠る事実の予防又は是正を求める公益上の請求がされているのであり、元来提訴者各人が自己の個別的な利益を有しているものではないから、提訴後に共同訴訟人の数が減少しても、その審判の範囲、審理の態様、判決の効力等には何ら影響がない。そうであれば、住民訴訟については、自ら上訴をしなかった共同訴訟人をその意に反して上訴人の地位に就かせる効力までが行政事件訴訟法七条、民訴法六二条一項によって生ずると解するのは相当でなく、
自ら上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならないものと解すべきである。
この理は、いったん上訴をしたがこれを取り下げた共同訴訟人についても当てはまるから、
上訴をした共同訴訟人のうちの一部の者が上訴を取り下げても、その者に対する関係において原判決が確定することにはならないが、その者は上訴人ではなくなるものと解される。
最高裁昭和五七年(行ツ)第一一号同五八年四月一日第二小法廷判決・民集三七巻三号二〇一頁は、右と抵触する限度において、変更すべきものである。
したがって、A1は、上告の取下げにより上告人ではなくなったものとして、本判決をすることとする。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官大野正男、同福田博の各補足意見、裁判官園部逸夫、同高橋久子、同尾崎行信の各意見、
裁判官三好達、同可部恒雄の各反対意見があるほか、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 三 好 達
裁判官 園 部 逸 夫
裁判官 可 部 恒 雄
裁判官 大 西 勝 也
裁判官 小 野 幹 雄
裁判官 大 野 正 男
裁判官 千 種 秀 夫
裁判官 根 岸 重 治
裁判官 高 橋 久 子
裁判官 尾 崎 行 信
裁判官 河 合 伸 一
裁判官 遠 藤 光 男
裁判官 井 嶋 一 友
裁判官 福 田 博
裁判官 藤 井 正 雄



平成22年1月20日 砂川神社事件
主 文 原判決を破棄する。 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。
理 由
1 憲法判断の枠組み
憲法89条は,公の財産を宗教上の組織又は団体の使用,便益若しくは維持のため,その利用に供してはならない旨を定めている。
その趣旨は,国家が宗教的に中立であることを要求するいわゆる政教分離の原則を,公の財産の利用提供等の財政的な側面において徹底させるところにあり,
これによって,憲法20条1項後段の規定する宗教団体に対する特権の付与の禁止を財政的側面からも確保し,
信教の自由の保障を一層確実なものにしようとしたものである。
しかし,国家と宗教とのかかわり合いには種々の形態があり,
およそ国又は地方公共団体が宗教との一切の関係を持つことが許されないというものではなく,
憲法89条も,公の財産の利用提供等における宗教とのかかわり合いが,
我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合に,
これを許さないとするものと解される。

国又は地方公共団体が国公有地を無償で宗教的施設の敷地としての用に供する行為は,
一般的には,当該宗教的施設を設置する宗教団体等に対する便宜の供与として,
憲法89条との抵触が問題となる行為であるといわなければならない。

もっとも,国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されているといっても,
当該施設の性格や来歴,無償提供に至る経緯,利用の態様等には様々なものがあり得ることが容易に想定されるところである。

例えば,一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても,
同時に歴史的,文化財的な建造物として保護の対象となるものであったり,
観光資源,国際親善,地域の親睦の場などといった他の意義を有していたりすることも少なくなく,
それらの文化的あるいは社会的な価値や意義に着目して当該施設が国公有地に設置されている場合もあり得よう。

また,我が国においては,
明治初期以来,一定の社寺領を国等に上知(上地)させ,官有地に編入し,又は寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって,
国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じた。

このような事例については,戦後,国有地につき「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」(昭和22年法律第53号)が公布され,
公有地についても同法と同様に譲与等の処分をすべきものとする内務文部次官通牒が発出された上,
これらによる譲与の申請期間が経過した後も,譲与,売払い,貸付け等の措置が講じられてきたが,
それにもかかわらず,現在に至っても,なおそのような措置を講ずることができないまま社寺等の敷地となっている国公有地が
相当数残存していることがうかがわれるところである。

これらの事情のいかんは,当該利用提供行為が,
一般人の目から見て特定の宗教に対する援助等と評価されるか否かに影響するものと考えられるから,
政教分離原則との関係を考えるに当たっても,重要な考慮要素とされるべきものといえよう。

そうすると,国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されている状態が,
前記の見地から,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて憲法89条に違反するか否かを判断するに当たっては,
当該宗教的施設の性格,当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯,
当該無償提供の態様,これらに対する一般人の評価等,諸般の事情を考慮し,
社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。

以上のように解すべきことは,当裁判所の判例(津市地鎮祭訴訟、愛媛玉串料訴訟)の趣旨とするところからも明らかである。

2 本件利用提供行為の憲法適合性
(1) 前記事実関係等によれば,本件鳥居,地神宮,「神社」と表示された会館入口から祠に至る本件神社物件は,一体として神道の神社施設に当たるものと見るほかはない。

また,本件神社において行われている諸行事は,
地域の伝統的行事として親睦などの意義を有するとしても,
神道の方式にのっとって行われているその態様にかんがみると,宗教的な意義の希薄な,単なる世俗的行事にすぎないということはできない。

このように,本件神社物件は,神社神道のための施設であり,その行事も,このような施設の性格に沿って宗教的行事として行われているものということができる。

(2) 本件神社物件を管理し,上記のような祭事を行っているのは,本件利用提供行為の直接の相手方である本件町内会ではなく,本件氏子集団である。
本件氏子集団は,前記のとおり,町内会に包摂される団体ではあるものの,町内会とは別に社会的に実在しているものと認められる。

そして,この氏子集団は,宗教的行事等を行うことを主たる目的としている宗教団体であって,寄附を集めて本件神社の祭事を行っており,
憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に当たるものと解される。

しかし,本件氏子集団は,祭事に伴う建物使用の対価を町内会に支払うほかは,
本件神社物件の設置に通常必要とされる対価を何ら支払うことなく,
その設置に伴う便益を享受している。
すなわち,本件利用提供行為は,その直接の効果として,
氏子集団が神社を利用した宗教的活動を行うことを容易にしているものということができる。

(3) そうすると,本件利用提供行為は,
市が,何らの対価を得ることなく本件各土地上に宗教的施設を設置させ,
本件氏子集団においてこれを利用して宗教的活動を行うことを容易にさせているものといわざるを得ず,
一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものである。

前記事実関係等によれば,本件利用提供行為は,
もともとは小学校敷地の拡張に協力した用地提供者に報いるという世俗的,公共的な目的から始まったもので,
本件神社を特別に保護,援助するという目的によるものではなかったことが認められるものの,
明らかな宗教的施設といわざるを得ない本件神社物件の性格,
これに対し長期間にわたり継続的に便益を提供し続けていることなどの本件利用提供行為の具体的態様等にかんがみると,
本件において,当初の動機,目的は上記評価を左右するものではない。

(4) 以上のような事情を考慮し,社会通念に照らして総合的に判断すると,本件利用提供行為は,
市と本件神社ないし神道とのかかわり合いが,我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,
信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして,
憲法89条の禁止する公の財産の利用提供に当たり,
ひいては憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権の付与にも該当すると解するのが相当である。

第3 職権による検討
1 本件は,被上告人らが地方自治法242条の2第1項3号に基づいて提起した住民訴訟であり,
被上告人らは,前記のとおり政教分離原則との関係で問題とされざるを得ない状態となっている本件各土地について,
上告人がそのような状態を解消するため使用貸借契約を解除し,
神社施設の撤去を求める措置を執らないことが財産管理上違法であると主張する。

2 本件利用提供行為の現状が違憲であることは既に述べたとおりである。
しかしながら,これを違憲とする理由は,
判示のような施設の下に一定の行事を行っている本件氏子集団に対し,
長期にわたって無償で土地を提供していることによるものであって,
このような違憲状態の解消には,神社施設を撤去し土地を明け渡す以外にも適切な手段があり得るというべきである。
例えば,戦前に国公有に帰した多くの社寺境内地について戦後に行われた処分等と同様に,
本件土地1及び2の全部又は一部を譲与し,
有償で譲渡し,又は適正な時価で貸し付ける等の方法によっても上記の違憲性を解消することができる。
そして,上告人には,
本件各土地,本件建物及び本件神社物件の現況,違憲性を解消するための措置が利用者に与える影響,関係者の意向,実行の難易等,諸般の事情を考慮に入れて,
相当と認められる方法を選択する裁量権があると解される。
本件利用提供行為に至った事情は,それが違憲であることを否定するような事情として評価することまではできないとしても,
解消手段の選択においては十分に考慮されるべきであろう。

本件利用提供行為が開始された経緯や本件氏子集団による本件神社物件を利用した祭事がごく平穏な態様で行われてきていること等を考慮すると,
上告人において直接的な手段に訴えて直ちに本件神社物件を撤去させるべきものとすることは,
神社敷地として使用することを前提に土地を借り受けている本件町内会の信頼を害するのみならず,
地域住民らによって守り伝えられてきた宗教的活動を著しく困難なものにし,
氏子集団の構成員の信教の自由に重大な不利益を及ぼすものとなることは自明であるといわざるを得ない。

さらに,上記の他の手段のうちには,市議会の議決を要件とするものなども含まれているが,
そのような議決が適法に得られる見込みの有無も考慮する必要がある。

これらの事情に照らし,上告人において他に選択することのできる合理的で現実的な手段が存在する場合には,
上告人が本件神社物件の撤去及び土地明渡請求という手段を講じていないことは,
財産管理上直ちに違法との評価を受けるものではない。

すなわち,それが違法とされるのは,
上記のような他の手段の存在を考慮しても,
なお上告人において上記撤去及び土地明渡請求をしないことが上告人の財産管理上の裁量権を逸脱又は濫用するものと評価される場合に限られるものと解するのが相当である。

3 本件において,当事者は,上記のような観点から,
本件利用提供行為の違憲性を解消するための他の手段が存在するか否かに関する主張をしておらず,
原審も当事者に対してそのような手段の有無に関し釈明権を行使した形跡はうかがわれない。

しかし,本件利用提供行為の違憲性を解消するための他の手段があり得ることは,当事者の主張の有無にかかわらず明らかというべきである。

また,原審は,本件と併行して,本件と当事者がほぼ共通する市内の別の神社(T神社)をめぐる住民訴訟を審理しており,
同訴訟においては,市有地上に神社施設が存在する状態を解消するため,
市が,神社敷地として無償で使用させていた市有地を町内会に譲与したことの憲法適合性が争われていたところ,
第1,2審とも,それを合憲と判断し,当裁判所もそれを合憲と判断するものである(最高裁平成19年(行ツ)第334号)。

原審は,上記訴訟の審理を通じて,本件においてもそのような他の手段が存在する可能性があり,上告人がこうした手段を講ずる場合があることを職務上知っていたものである。
そうすると,原審が上告人において本件神社物件の撤去及び土地明渡請求をすることを怠る事実を違法と判断する以上は,
原審において,本件利用提供行為の違憲性を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて適切に審理判断するか,
当事者に対して釈明権を行使する必要があったというべきである。

原審が,この点につき何ら審理判断せず,上記釈明権を行使することもないまま,上記の怠る事実を違法と判断したことには,
怠る事実の適否に関する審理を尽くさなかった結果,
法令の解釈適用を誤ったか,釈明権の行使を怠った違法があるものというほかない。

第4 結論
以上によれば,本件利用提供行為を違憲とした原審の判断は是認することができるが,
上告人が本件神社物件の撤去請求をすることを怠る事実を違法とした判断には,
判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
そこで,原判決を職権で破棄し,本件利用提供行為の違憲性を解消するための他の手段の存否等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官今井功,同堀籠幸男の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

なお,裁判官藤田宙靖,同田原睦夫,同近藤崇晴の各補足意見,
裁判官甲斐中辰夫,同中川了滋,同古田佑紀,同竹内行夫の意見がある。
自衛官合祀訴訟
主 文
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
被上告人の請求を棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理 由

一 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。

二 原審は、右事実関係の下において大要次のとおり判断し、被上告人の損害賠償請求を認容すべきも
のとした。
1 本件合祀申請は、県護国神社への合祀が行われるための前提をなすものとして、基本的な宗教的意義を有しており、かつ、同神社の宗教を助長、促進する行為であるから、宗教的活動というべきである。

2 本件合祀申請は、県隊友会の発意により、その費用をもつて、その名義によつてされている。
しかし、地連職員の一連の行為がなければ、本件の如くに合祀申請に至つたとはみられない状況にあり、地連職員がこのように積極的に関与してきたのは、殉職者の合祀が自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚の効果をもたらすもので地連自身も是非その実現を図りたいと考えていたからと推認され、
地連職員と県隊友会は合祀実現を相謀り役割りを分担しつつ準備して、県隊友会の名義で本件合祀申請に及んだもので、本件合祀申請は地連職員と県隊友会の共同の行為とみることができる。

3 県隊友会と共同して本件合祀申請をした地連職員の行為は、
憲法二〇条三項に違反することにより、公の秩序に反するものとして、
私人に対する関係で違法な行為というべきである。

4 被上告人は、本件合祀申請によるAの県護国神社への合祀によつて静謐な宗教的環境の下で信仰生
活を送るべき法的利益、すなわち宗教上の人格権を侵害された。

三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
1 本件合祀申請を地連職員と県隊友会の共同の行為と評価すべきか否かを検討する。
合祀は、神社にとつて最も根幹をなすところの奉斎する祭神にかかわるものであり、
当該神社の自主的な判断に基づいて決められる事柄であることはいうまでもないところ、
本件合祀申請に至る経緯をみると、県護国神社による殉職自衛隊員の合祀問題は、
昭和三九年一一月に行われた慰霊祭の際における殉職自衛隊員の遺族からの県隊友会への要望に端を発し、
その実現に向けて県隊友会が働き掛けた結果、県護国神社は当初難色を示したものの、
既に昭和四五年秋には県隊友会のE会長は同神社のF宮司から合祀実現が可能であるとの感触を得ていたというのである。
その後、E会長が合祀申請を行うことについて県隊友会の役員会の了承を得て同宮司と折衝した結果、
昭和四六年秋には同神社は殉職自衛隊員を合祀する方針をとるに至つたのであり、
引き続き同宮司と折衝を重ねながら合祀のために県隊友会としてなすべき事項について同宮司と了解に達したのも、E会長である。
また、合祀申請を準備するため自衛隊殉職者奉賛会を設立したのも、E会長が中心となつてしたことである。
昭和四六年三月中国四国外郭団体懇談会の席上において、E会長がした合祀問題の進捗状況の報告に
対し陸上自衛隊第一三師団長の賛意の表明と推進の要望があり、その後地連において合祀申請を積極的
に推進する態勢がとられるに至つたというのが原審の確定するところであるが、
本件合祀申請に至る過程において地連職員のした具体的行為は、
H総務課長において長崎県を除く九州各県の自衛隊地方連絡部の総務課長にあてて各地の護国神社における殉職自衛隊員の合祀状況等を照会して、その回答をE会長に閲覧させ、
E会長の依頼によりJ事務官において奉斎準則と県隊友会の募金趣意書とを起案し、右趣意書を配布し、寄せられた募金を管理し、殉職者の遺族から合祀に必要な殉職者の除籍謄本及び殉職証明書を取り寄せたにとどまるのであり、
地連ないしその職員が直接県護国神社に対し合祀を働き掛けた事実はない。
これらの事実からすれば、Aを含む殉職自衛隊員二七名の県護国神社による合祀は、
基本的には遺族の要望を受けた県隊友会がその実現に向けて同神社と折衝を重ねるなどの努力をし、
同神社が殉職自衛隊員を合祀する方針を決定した結果実現したものである。
してみれば、県隊友会において地連職員の事務的な協力に負うところがあるにしても、
県隊友会の単独名義でされた本件合祀申請は、
実質的にも県隊友会単独の行為であつたものというべく、
これを地連職員と県隊友会の共同の行為とし、地連職員も本件合祀申請をしたものと評価することはできないものといわなければならない。
原審は、地連は自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚のため殉職自衛隊員の合祀の実現を図りたいと考えていたと推認されると判示しているが、
地連職員のした具体的行為が右のとおりであつてみれば、右推認をもつてしても右判断を左右することはできない。


2 本件合祀申請に至る過程において県隊友会に協力してした地連職員の行為が、憲法二〇条三項にい
う宗教的活動に当たるか否かを検討する。
右条項にいう宗教的活動とは、
宗教とかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいい、
ある行為が宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たつては、
当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、
社会通念に従つて、客観的に判断しなければならないものである
(最高裁昭和四六年(行ツ)第六九号同五二年七月一三日大法廷判決・民集三一巻四号五三三頁)。

合祀は神社の自主的な判断に基づいて決められる事柄であることは前記のとおりであつて、
何人かが神社に対し合祀を求めることは、合祀のための必要な前提をなすものではなく、
本件において県護国神社としては既に昭和四六年秋には殉職自衛隊員を合祀する方針を基本的に決定していたことは原審の確定するところである。

してみれば、本件合祀申請という行為は、
殉職自衛隊員の氏名とその殉職の事実を県護国神社に対し明らかにし、合祀の希望を表明したものであつて、宗教とかかわり合いをもつ行為であるが、
合祀の前提としての法的意味をもつものではない。
そして、本件合祀申請に至る過程において県隊友会に協力してした地連職員の具体的行為は前記のとおりであるところ、
その宗教とのかかわり合いは間接的であり、その意図、目的も、合祀実現により自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚を図ることにあつたと推認されることは前記のとおりであるから、どちらかといえばその宗教的意識も希薄であつたといわなければならないのみならず、その行為の態様からして、国又はその機関として特定の宗教への関心を呼び起こし、あるいはこれを援助、助長、促進し、又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるような効果をもつものと一般人から評価される行為とは認め難い。

したがつて、地連職員の行為が宗教とかかわり合いをもつものであることは否定できないが、これをもつて宗教的活動とまではいうことはできないものといわなければならない。

なお、憲法二〇条三項の政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であつて、
私人に対して信教の自由そのものを直接保障するものではなく、
国及びその機関が行うことのできない行為の範囲を定めて国家と宗教との分離を制度として保障することにより、
間接的に信教の自由を確保しようとするものである(前記最高裁大法廷判決)。

したがつて、この規定に違反する国又はその機関の宗教的活動も、
それが同条一項前段に違反して私人の信教の自由を制限し、あるいは同条二項に違反して私人に対し宗教上の行為等への参加を強制するなど、
憲法が保障している信教の自由を直接侵害するに至らない限り、
私人に対する関係で当然には違法と評価されるものではない。

3 被上告人の法的利益の侵害の有無を検討する。
被上告人は、本件合祀申請によりAの合祀がされ、法的利益を侵害された旨を主張するが、
合祀は神社の自主的な判断に基づいて決められる事柄で、
本件合祀申請は合祀の前提としての法的意味をもつものではないことは前記のとおりであるから、
合祀申請が神社のする合祀に対して事実上の強制とみられる何らかの影響力を有したとすべき特段の事情の存しない限り、
法的利益の侵害の成否に関して、合祀申請の事実を合祀と併せ一体として評価すべきものではないというべきである。

そうであつてみれば、本件合祀申請が右のような影響力を有したとすべき特段の事情の主張・立証のない本件においては、
法的利益の侵害の成否は、合祀それ自体が法的利益を侵害したか否かを検討すれば足りるものといわなければならない。
また、合祀それ自体は県護国神社によつてされているのであるから、法的利益の侵害の成否は、同神社と被上告人の間の私法上の関係として検討すべきこととなる。

私人相互間において憲法二〇条一項前段及び同条二項によつて保障される信教の自由の侵害があり、
その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超えるときは、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、法的保護が図られるべきである(最高裁昭和四三年(オ)第九三二号同四八年一二月一二日大法廷判決・民集二七巻一一号
一五三六頁参照)。

しかし、人が自己の信仰生活の静謐を他者の宗教上の行為によつて害されたとし、
そのことに不快の感情を持ち、そのようなことがないよう望むことのあるのは、その心情として当然であるとしても、
かかる宗教上の感情を被侵害利益として、直ちに損害賠償を請求し、又は差止めを請求するなどの法的救済を求めることができるとするならば、
かえつて相手方の信教の自由を妨げる結果となるに至ることは、見易いところである。

信教の自由の保障は、何人も自己の信仰と相容れない信仰をもつ者の信仰に基づく行為に対して、
それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものというべきである。
このことは死去した配偶者の追慕、慰霊等に関する場合においても同様である。
何人かをその信仰の対象とし、あるいは自己の信仰する宗教により何人かを追慕し、その魂の安らぎを求めるなどの宗教的行為をする自由は、誰にでも保障されているからである。

原審が宗教上の人格権であるとする静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益なるものは、
これを直ちに法的利益として認めることができない性質のものである。

以上の見解にたつて本件をみると、県護国神社によるAの合祀は、
まさしく信教の自由により保障されているところとして同神社が自由になし得るところであり、
それ自体は何人の法的利益をも侵害するものではない。

そして、被上告人が県護国神社の宗教行事への参加を強制されたことのないことは、
原審の確定するところであり、またその不参加により不利益を受けた事実、そのキリスト教信仰及びその信仰に基づきAを記念し追悼することに対し、禁止又は制限はもちろんのこと、圧迫又は干渉が加えられた事実については、被上告人において何ら主張するところがない。

県護国神社宮司から被上告人あてに発せられた永代命日祭斎行等に関する書面も、
その内容は前記一の3の(三)のとおりであつて、被上告人の信仰に対し何ら干渉するものではない。
してみれば、被上告人の法的利益は何ら侵害されていないというべきである。

本訴において被上告人は、被侵害利益として、(一)宗教上の人格権、(二)宗教上のプライバシー及び(三)政教分離原則が保障する法的利益を選択的に主張しているが、
(一)及び(二)は、その主張内容をみればいずれも原審が宗教上の人格権とするところのものと結局同一に帰するのであつて、
これらを法的利益として認めることができないことは右に述べたとおりであり、
(三)は憲法二〇条三項の規定が私人に対し法的利益を保障していることを主張するものであるところ、

右規定は前記のとおりいわゆる制度的保障の規定であつて、私人の法的利益を直接保障するものではないから、
このような法的利益もまたこれを認めることができない。

原審の判断には、憲法二〇条の解釈適用を誤つた違法があり、また、法令の解釈適用を誤つた違法があつてその違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
そして、以上によれば、被上告人の本訴請求は理由がないことが明らかであるから、
これを認容した第一審判決を取り消し、被上告人の本訴請求を棄却すべきである。

よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官長島敦の補足意見、裁判官髙島益郎、同四ツ谷巖、同奧野久之の補足意見、裁判官島谷六郎、同佐藤哲郎の意見、裁判官坂上壽夫の意見、裁判官伊藤正己の反対意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

裁判官長島敦の補足意見は、次のとおりである。
裁判官髙島益郎、同四ツ谷巖、同奧野久之の補足意見は、次のとおりである。
裁判官島谷六郎、同佐藤哲郎の意見は、次のとおりである。
裁判官坂上壽夫の意見は、次のとおりである。

裁判官伊藤正己の反対意見は次のとおりである。
私は、本件について、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、被上告人の請求を棄却すべきであるとする多数意見に賛成することができない。
その理由は次のとおりである。

一 本件は、国の行為によつて精神的苦痛を受けたとして被上告人の提起する不法行為に基づく損害賠
償請求訴訟であり、のちにみるように信教の自由、政教分離の原則のごとき憲法上の論点を含むものではあるが、
その争点は、不法行為責任の有無であり、結局、被侵害利益と侵害行為の態様との相関関係において考察する必要のある問題であるといわねばならない。
そこで、まず問われるのは、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の判示するところが不法行為法上の保護に値する利益と認められるものの侵害となるかどうかである。

多数意見は、信教の自由の侵害となるものでない限り、他者により信仰生活の静謐を害されても法的利益を侵害したものとは認められないとしている。

信教の自由は明白に法的な権利であり、それが不法行為法上の被侵害利益となりうることはいうまでもない。
そして、信教の自由は、多数意見もいうように、国によつて信教を理由とする不利益な取扱いがされたり、宗教的行事への参列強制のように何らかの宗教上の強制が加えられたり、逆に宗教的活動への制止、妨害がなされたりする場合に、国による侵害があつたということができる。

しかし、本件において、被上告人は、自己の信ずる宗教上の活動を阻害されたり、県護国神社への参拝を強制されたりしたことはないのであるから、信教の自由そのものへの侵害は認めることができないのである。

そこで、問題は、信教の自由とかかわりをもつとはいえ、信教の自由そのものではない、原判示の「静謐な環境のもとで信仰生活を送る利益」が被侵害利益となりうるかどうかということになる。
私は、現代社会において、他者から自己の欲しない刺激によつて心を乱されない利益、いわば心の静穏の利益もまた、不法行為法上、被侵害利益となりうるものと認めてよいと考える。
この利益が宗教上の領域において認められるとき、これを宗教上の人格権あるいは宗教上のプライバシーということもできるが、それは呼称の問題である。
これを憲法一三条によつて基礎づけることもできなくはない。
私は、そのような呼称や憲法上の根拠はともかくとして、少なくとも、このような宗教上の心の静穏を不法行為法上の法的利益として認めうれば足りると考える。

社会の発展とともに、不法行為法上の保護利益は拡大されてきたが、このような宗教上の心の静穏の要求もまた現在において、一つの法的利益たるを失わないといつてよい。
本件においても、被上告人がキリスト教信仰によつて亡夫Aを宗教的に取り扱おうとしているのに、
合祀の結果その意に反して神社神道の祭神として祀られ、鎮座祭への参拝を希望され、事実に反して被上告人の篤志により神楽料が奉納されたとして通知を受け、永代にわたつて命日祭を斎行されるというのは、
まさに宗教上の心の静穏を乱されるものであり、法的利益の侵害があつたものといわねばならず、
県護国神社への合祀は、
被上告人に対し、せいぜい不快の感情を与えるものにとどまるもので法的な利益の侵害があつたとは認められないとするのは適切でない。

私は、基本的人権、特に精神的自由にかかわる問題を考える場合に少数者の保護という視点に立つことが必要であり、特に司法の場においてそれが要求されると考えている。
多数支配を前提とする民主制にあつても、基本的人権として多数の意思をもつても奪うことのできない利益を守ることが要請されるのはこのためである。

思想や信条の領域において、多数者の賛同するものは特に憲法上の保障がなくても侵害されるおそれはないといつてもよく、
その保障が意味をもつのは、多数者の嫌悪する少数者の思想や信条である。
宗教の領域にあつては、わが国における宗教意識の雑居性から宗教的な無関心さが一般化しているだけに、宗教的な潔癖さの鋭い少数者を傷つけることが少なくない。
「たとえ、少数者の潔癖感に基づく意見と見られるものがあつても、かれらの宗教や良心の自由に対する侵犯は多数決をもつてしても許されない」という藤林裁判官の意見(多数意見引用の昭和五二年七月一三日大法廷判決における追加反対意見)は傾聴すべきものと思われる。

本件において、被上告人は宗教上の潔癖感が余りにも強いという批判もありうるかもしれない。
しかし、そこに少数者にとつて守られるべき利益があるというべきであり、宗教的な心の静穏は少なくとも不法行為法上の保護を受ける利益であると認めてよいと思われる。
このような心の静穏は、人格権の一つということができないわけではないが、
まだ利益として十分強固なものとはいえず、信仰を理由に不利益を課したり、特定の宗教を強制したりすることによつて侵される信教の自由に比して、なお法的利益としての保護の程度が低いことは認めざるをえないであろう。
しかし、そうであるからといつて、宗教的な心の静穏が不法行為法における法的利益に当たることを否定する根拠となりえないことはいうまでもない。

二 次に、本件侵害行為のとらえ方が問題となる。
被上告人の宗教的な心の静穏を害したのは、亡Aを県護国神社に合祀したことであるが、
被上告人は、その前提となつた合祀申請をもつて侵害行為としている。

もしこれが昭和四七年三月三一日ころ県隊友会が会長名義で行つた県護国神社への合祀申請行為のみを指すのであれば、多数意見のいうように、名義上も実質上も県隊友会の単独の行為と判断するのが相当かもしれない。
しかし、本件において侵害行為の態様を考える場合に、具体的な合祀申請行為をそこに至る一連の行為と切り離してとらえるのは適当ではなく、全体の経過のうちに総合的にとらえることが必要であると思
われる。
単に右の三月三一日ころの合祀申請行為のみをとらえて本件における侵害行為とすることは、本件の実態を見失うものであり、
被上告人が請求の原因にいう合祀申請も、このような継続的な過程における諸行為を指すものと解してよい。
特に、人格権侵害による精神的損害の賠償を求める事件においては、このような侵害行為を全体としてとらえるのでなければならない。
本件における宗教的な心の静穏が人格権として成熟したものといえるかどうかは別として、人格権の場合におけると同様に、一連の行為を侵害行為としてとらえて、その態様を考察すべきである。

三 不法行為責任を認めるためには、加害行為と損害の発生との間に因果関係の存在が必要である。
本件の場合、前記二に述べたように、本件合祀に至る一連の行為を全体としてとらえるならば、
本件合祀申請行為と被上告人の法的利益の侵害との間に因果関係を認めることができる。

多数意見は、合祀は神社の自主的な判断に基づいて決められる事柄であり、県隊友会のした本件合祀申請という行為は本件合祀の前提としての法的意味をもつものではないとし、また、本件合祀申請前に県護国神社においてすでに本件合祀を決めていたとしており、本件合祀申請と本件合祀との因果関係を否定するものであるかのようにみえる。

昭和四七年三月三一日ころの合祀申請行為を切り離してみればそのように考えられるかもしれないが、この考え方の適当でないことは、すでに述べたとおりである。

原審の確定するところによれば、
県隊友会は、県護国神社に対し殉職自衛隊員を合祀することを要望したが、県護国神社の宮司の賛同を得られないまま経過し、
昭和四五年秋に至り、F宮司から合祀実現が可能であるとの感触を得、その後も折衝を重ねた結果、
昭和四六年秋に至つてF宮司から合祀について基本的な了解を得、更に同宮司との事務的な打合せを経て、
昭和四七年三月三一日ころ本件合祀申請をし、これを受けた県護国神社が本件合祀をするに至つたものであり、
本件合祀申請は、従前の折衝の結果宮司に翻意させたうえで、いわば最終的な仕上げとしてなされたものであるから、従前の折衝経過を無視してその意味を論ずることができないものというべきである。

このように考えると、本件合祀申請と本件合祀とは密接不可分の関係にあるものというべきであり、
合祀に至る全体の経過をみるとき、一連の働き掛けがあつて初めて合祀が実現したものであつて、
本件合祀申請と本件合祀との間に因果関係の存在を認めて差し支えはないと考える。

四 本件における合祀に至る一連の行為を、
原判決のように地連職員と県隊友会の共同行為であるとみるか、
多数意見のように地連職員の行為は単に事務的な協力にすぎず専ら県隊友会の単独の行為であるとみるかは、
本件の事実関係をどう評価するかにかかわる本件の重要な点である。

ここで合祀申請行為を他と切り離してみる態度をとるときには、その名義人である県隊友会の単独の行為であるとみるのが自然かもしれない。

しかし、合祀に至る全体の過程をみるという私の立場からは、右のような見解をとることはできない。

原審の確定したところによれば、(一) (六) というのである。

右のうち地連職員の行為は、それだけを見れば事務的な行為にすぎないとみられるかもしれないが、
合祀申請に至る間において、地連職員深くかかわつていたことを推知しうるものといえるのである
(なお、地連職員が合祀後にとつた行動は、侵害行為のあつたのちのものであるが、
合祀後は県隊友会よりもむしろ地連職員が主となつて被上告人と折衝し、その説得に当たつていたことをうかがわせるものであり、
このことは合祀前における地連職員の関与の深さを推認させるものといつてよいと思われる。)。

また、社団法人隊友会は、自衛隊諸業務に対する各種協力をその事業の一つとするものであり、
県隊友会と地連との関係は極めて密接であつて、県隊友会の事務局は当時地連の建物内にあり、
専任の事務員はおらず、県隊友会の業務の大半は地連職員が代行し、これは外郭協力団体への援助として公務とされ、上司の指示のもとでなされていたというのであるから、
本件合祀申請の形式は県隊友会単独の行為であるとしても、
そこに至る過程において、地連が物心ともに協力支援したものということができる。

そして、地連職員は、合祀実現により自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚を図る意図、目的のもとに前記のような行為をしたというのであるから、
地連職員の意思も単なる事務的な協力の域をこえていたものというべきである。

以上に述べたところからすると、本件合祀申請行為は、原判決のいうように、県隊友会と地連職員とが相謀り共同して行つたものとみるのが相当である。

県隊友会は地連職員の関与する前に殉職自衛隊員の合祀実現を企図していたものであり、
地連職員が後からこれに加わつたことになるが、このことは、本件合祀申請行為をもつて両者の共同の行為であるとすることの妨げになるものではない。

なお、多数意見は、地連ないしその職員が直接に県護国神社に働き掛けたことがないことをあげ、共同行為であることを否定する一つの理由としているようにみえる。

しかし、もし地連ないし地連職員が合祀について県護国神社に直接に働き掛けを行つた場合には、
明らかに憲法に反すると断定される行為ともいうべきであり、
当然に地連として自ら抑制すべきことである。

このように憲法上禁止されているともいえる行為をしなかつたことをもつて、
本件合祀申請における地連職員の行為が単に事務的なものにすぎなかつたと速断することは合理的とはいえないと考える。

五 前記四において述べたように、本件合祀申請行為が県隊友会と地連職員との共同の行為であるとすると、
問題は、このような地連職員の行為が、被上告人の被侵害利益との関係において違法なものといえるかどうかである。

ここで、憲法二〇条三項の定める政教分離の原則からみて、地連職員の行為が憲法上どのように評価されるかが問題となるのである。
そして、右の検討に当たつては、県隊友会の行為をも含めて考察する必要があることはいうまでもない。
地連職員が県隊友会と相謀り共同して本件合祀申請行為をしたということは、
地連職員が県隊友会の行為を自己の行為として利用する意図のもとに行動していたということにほかならず、
県隊友会の行為は地連職員の行為と同視すべきものだからである。

政教分離規定は、信教の自由を実質的に保障するためのものであるが、いわゆる制度的保障の規定であつて、直接私人の人権を保障するものではないから、
これに反する国ないし国の機関の行為も、私人に対する関係で直ちに違法と評価されるものではない。

しかし、地連職員の行為が政教分離規定に反し国が憲法上行うことのできないものであると判断されるときには、右の行為は憲法秩序に違反するものであるから侵害性の高度なものというべきであり、
また、国には保護されるべき利益もないこととなるので、国が被害者に対して受忍を求めうる立場にないことは明らかである。

右のことは、地連職員の行為の違法性の判断に当たつて考慮されるべき重要な要素であるといえる。

したがつて、本件における地連職員の行為が政教分離の原則からみてどう考えられるか、
すなわち、それが憲法によつて国に対して禁止される宗教的活動に当たるかどうかが検討されなければならないこととなる。

当裁判所は、憲法二〇条三項にいう宗教的活動とは、
およそ国やその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、
そのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度をこえるものに限られ、
その行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解している(前出昭和五二年七月一三日大法廷判決)。
多数意見もこの見解を踏襲している。

この考え方は、政教分離の原則により国に禁止される宗教的活動の判断基準を目的、効果、かかわり合いの程度の三つに求めたものであり、抽象的には正しいものといえよう。

問題はその基準の適用であろう。
憲法二〇条三項の規定がわが国における過去の経験を踏まえて国家と宗教との完全分離を理想としたものであることにかんがみると、
この基準を国に禁止される宗教的活動の範囲を狭く限定するように適用することは、憲法の趣旨を没却するおそれがあり、適当とは思われない。

しばしば指摘されるように、欧米においては、基本的人権は信教の自由の保障に発したといわれ、それがすべての人権の核心であるとされるのに反し、
わが国では宗教意識の雑居性もあつて、国民一般の宗教への関心は高くなく、信教の自由への鋭敏な感覚に欠けるところがある。
このことからは、政教分離をゆるめてよいということにはならず、むしろそれだけに政教分離の原則に忠実であることが要請されるといえるのである。

また、宗教的活動に当たるかどうかの検討に当たつては、諸般の事情を考慮することは適当であるが、行為に対する一般人の宗教的評価、行為の一般人に与える効果、影響などを強調することは、
前記判例のような地鎮祭という一種の習俗的行事の宗教性の判断の場合にはともかくとして、
個人の宗教的利益の侵害が問題となる場合には、
すでにみたような多数者による少数者の抑圧になる可能性があるので、一層の慎重さを求められるというべきものと思われる。

右のような観点に立つて、本件における地連職員の行為が憲法二〇条三項にいう宗教的活動に当たるか否かを検討する。
多数意見は、合祀は神社の自主的な判断に基づいて決められる事柄であり、県隊友会のした本件合祀申請という行為は合祀の前提としての法的意味をもつものではないことを前提とし、
地連職員の具体的行為が宗教とかかわり合いをもつものであることは否定できないが、
これをもつて憲法二〇条三項にいう宗教的活動に当たるということはできないとしている。

しかし、私は、この見解に賛成することができない。

第一に本件合祀申請行為の意味についてであるが、これが法的意味での申請に当たるものでないことはいうまでもない。
しかし、このことから、本件合祀申請行為を単に殉職自衛隊員の氏名とその殉職の事実を県護国神社に対して明らかにし、合祀の希望を表明したにすぎないものと位置づけることは妥当でなく、
前記二において述べたとおり、本件合祀申請に至るまでの県護国神社との交渉経過を一体のものとして考えると、
本件合祀申請と本件合祀とは密接不可分の関係にあるものというべきであり、多数意見のように考えることは到底できないものといわなければならない。

第二に本件合祀申請行為の目的であるが、その重要な目的として、自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚という世俗的なものがあつたことは明らかであり、
それを主たる目的とみれば、宗教的活動であることは希薄になるといえよう。

しかし、同時に、合祀申請はまさに自衛隊の殉職者の霊を神道によつて祭神として祀ることを直接の目的とするものであり、
地鎮祭等のように社会の一般的慣習に従つた儀礼とは性質を異にするものであつて、その目的が宗教的意義をもたないとするのは行為のもつ客観的な意味を不当に軽視するものである。

第三にその効果であるが、本件合祀申請行為がキリスト教を含めた他の宗教に対する圧迫、干渉等の効果をもつものでないことは明らかである。
問題は、それが神道、特に県護国神社に対する援助、助長、促進となるかどうかである。

確かに、本件合祀申請行為は、特定宗教に対して資金援助をするものではないし、
特定宗教の教義等の宣伝、布教、教育に当たるものでもなく、通常の意味での宗教に対する援助、助長、促進となるようなものとはいえない。

しかし、他の宗教ではなく神道に従つて県護国神社に合祀してもらうよう申請する行為は、
その効果において、神道を特別に扱つてこれに肩入れすることとなり、その援助、助長に当たるとみることができると考える。

そして、地連職員は、以上のような性質を有する本件合祀申請を県隊友会と相謀り共同して行つたものであるから、
そのかかわり合いは相当とされる限度をこえているものと認めるのが相当である。

そうすると、地連職員の行為は憲法二〇条三項にいう宗教的活動に当たるものというべきである。

右に述べたとおりであるとすると、
被上告人の被侵害利益は法的保護に値する利益としていまだ十分強固なものとはいえないけれども、
これを侵害した地連職員の行為は許容されない態様のものであり、
また、被上告人が受忍すべきいわれはないというべきであるから、
地連職員の行為は被上告人に対する関係でも違法なものといわなければならない。

六 以上説示してきたとおり、私は多数意見とは異なり、上告人の不法行為責任を認めるのが相当であると考えるので、被上告人の本訴請求を認容すべきものとした原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができず、本件上告はこれを棄却すべきものと考える。

最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 矢 口 洪 一
裁判官 伊 藤 正 己
裁判官 牧 圭 次
裁判官 安 岡 滿 彦
裁判官 角 田 禮 次 郎
裁判官 島 谷 六 郎
裁判官 髙 島 益 郎
裁判官 藤 島 昭
裁判官 大 内 恒 夫
裁判官 香 川 保 一
裁判官 坂 上 壽 夫
裁判官 佐 藤 哲 郎
裁判官 四 ツ 谷 巖
裁判官 奧 野 久 之
裁判官長島敦は、退官につき署名押印することができない。
裁判長裁判官 矢 口 洪 一
レモンテスト
国家にゆるされる宗教的行為の判定として、アメリカ連邦最高裁判所はいくつかの判決を経た上で1971年にレモン対カーツマン事件において、修正第1条との関係で合憲とされるためには、

1. 政府の行為は適法で世俗的な目的をもつものでなければならない。
2. 政府の行為はその主たる効果が宗教を助長または抑制するものであってはならない。
3. 政府の行為は政府と宗教との「過度の関わり合い」をもたらすものであってはならない。

の3要件を充足することが必要と判断した。この基準は、当事者の名前をとってレモンテストと呼ばれている。


津地鎮祭事件
しかしながら、元来、政教分離規定は、
いわゆる制度的保障の規定であつて、信教の自由そのものを直接保障するものではなく、
国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。

ところが、宗教は、信仰という個人の内心的な事象としての側面を有するにとどまらず、
同時に極めて多方面にわたる外部的な社会事象としての側面を伴うのが常であつて、
この側面においては、教育、福祉、文化、民俗風習など広汎な場面で社会生活と接触することになり、
そのことからくる当然の帰結として、
国家が、社会生活に規制を加え、あるいは教育、福祉、文化などに関する助成、援助等の諸施策を実施するにあたつて、
宗教とのかかわり合いを生ずることを免れえないこととなる。
したがつて、現実の国家制度として、国家と宗教との完全な分離を実現することは、実際上不可能に近いものといわなければならない。

更にまた、政教分離原則を完全に貫こうとすれば、かえつて社会生活の各方面に不合理な事態を生ずることを免れないのであつて、
例えば、特定宗教と関係のある私立学校に対し一般の私立学校と同様な助成をしたり、
文化財である神社、寺院の建築物や仏像等の維持保存のため国が宗教団体に補助金を支出したりすることも疑問とされるに至り、
それが許されないということになれば、そこには、宗教との関係があることによる不利益な取扱い、すなわち宗教による差別が生ずることになりかねず、
また例えば、刑務所等における教誨活動も、それがなんらかの宗教的色彩を帯びる限り一切許されないということになれば、
かえつて受刑者の信教の自由は著しく制約される結果を招くことにもなりかねないのである。

これらの点にかんがみると、政教分離規定の保障の対象となる国家と宗教との分離にもおのずから一定の限界があることを免れず、
政教分離原則が現実の国家制度として具現される場合には、
それぞれの国の社会的・文化的諸条件に照らし、国家は実際上宗教とある程度のかかわり合いをもたざるをえないことを前提としたうえで、
そのかかわり合いが、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で、
いかなる場合にいかなる限度で許されないこととなるかが、問題とならざるをえないのである。

右のような見地から考えると、
わが憲法の前記政教分離規定の基礎となり、その解釈の指導原理となる政教分離原則は、
国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、
国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、
宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、
そのかかわり合いが右の諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合に
これを許さないとするものであると解すべきである。

(二) 憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動
憲法二〇条三項は、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と規定するが、
ここにいう宗教的活動とは、前述の政教分離原則の意義に照らしてこれをみれば、
およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、
そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであつて、

当該行為の目的が宗教的意義をもち、
その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。
その典型的なものは、同項に例示される宗教教育のような宗教の布教、教化、宣伝等の活動であるが、
そのほか宗教上の祝典、儀式、行事等であつても、その目的、効果が前記のようなものである限り、当然、これに含まれる。

そして、この点から、ある行為が右にいう宗教的活動に該当するかどうかを検討するにあたつては、
当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、
その順序作法(式次第)が宗教の定める方式に則つたものであるかどうかなど、
当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、
当該行為の行われる場所、
当該行為に対する一般人の宗教的評価、
当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、
当該行為の一般人に与える効果、影響等、
諸般の事情を考慮し、社会通念に従つて、客観的に判断しなければならない。


なお、憲法二〇条二項の規定と同条三項の規定との関係を考えるのに、両者はともに広義の信教の自由に関する規定ではあるが、

二項の規定は、何人も参加することを欲しない宗教上の行為等に参加を強制されることはないという、
多数者によつても奪うことのできない狭義の信教の自由を直接保障する規定であるのに対し、

三項の規定は、直接には、国及びその機関が行うことのできない行為の範囲を定めて国家と宗教との分離を制度として保障し、
もつて間接的に信教の自由を保障しようとする規定であつて、
前述のように、後者の保障にはおのずから限界があり、

そして、その限界は、社会生活上における国家と宗教とのかかわり合いの問題である以上、
それを考えるうえでは、当然に一般人の見解を考慮に入れなければならないものである。

右のように、両者の規定は、それぞれ目的、趣旨、保障の対象、範囲を異にするものであるから、
二項の宗教上の行為等と三項の宗教的活動とのとらえ方は、その視点を異にするものというべきであり、
二項の宗教上の行為等は、必ずしもすべて三項の宗教的活動に含まれるという関係にあるものではなく、
たとえ三項の宗教的活動に含まれないとされる宗教上の祝典、儀式、行事等であつても、
宗教的信条に反するとしてこれに参加を拒否する者に対し国家が参加を強制すれば、
右の者の信教の自由を侵害し、二項に違反することとなるのはいうまでもない。
それ故、憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動について前記のように解したからといつて、
直ちに、宗教的少数者の信教の自由を侵害するおそれが生ずることにはならないのである。


裁判官藤林益三、同吉田豊、同団藤重光、同服部髙顯、同環昌一の反対意見:完全な分離説
(◯多数意見は完全な分離は実際上不可能であるとする)
しかしながら、多数意見のいう国家と宗教とのかかわり合いとはどのような趣旨であるのか必ずしも明確でないばかりでなく、
そのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものと認められる場合とはどのような場合であるのかもあいまいであつて、
政教分離原則を多数意見のように解すると、
国家と宗教との結びつきを容易に許し、
ひいては信教の自由の保障そのものをゆるがすこととなりかねないという危惧をわれわれは抱かざるをえないのである。

なお、われわれのような国家と宗教との徹底的な分離という立場においても、
多数意見が政教分離原則を完全に貫こうとすれば社会の各方面に不合理な事態を生ずることを免れないとして挙げる例のごときは、
平等の原則等憲法上の要請に基づいて許される場合にあたると解されるから、
なんら不合理な事態は生じないのである。


箕面忠魂碑訴訟
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理 由
上告代理人兼上告補助参加人代理人熊野勝之、同藤田一良、同加島宏、同坂和優、同小坂井久、同川下清の上告理由第一点ないし第四点、第一〇点及び第三〇点について
一 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、首肯することができ、原判決に所論の違法はない。原審の適法に確定した事実関係の大要は、次のとおりである。
1 本件忠魂碑の移設、再建に至る経緯について
2 忠魂碑の由来について

二 憲法は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」(二〇条一項前段)とし、
また、「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」(同条二項)として、いわゆる狭義の信教の自由(個人の信教の自由)を保障する規定を設ける一方、
「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」(同条一項後段)、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」(同条三項)とし、
更に「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため......これを支出し、又はその利用に供してはならない。」(八九条)として、
いわゆる政教分離の原則に基づく諸規定(以下「政教分離規定」という。)を設けている。

元来、政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、
信教の自由そのものを直接保障するものではなく、
国家(地方公共団体を含む。以下同じ。)と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。

そして、憲法の政教分離規定の基礎となり、その解釈の指導原理となる政教分離原則は、
国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、
国家が宗教とのかかわり合いを持つことを全く許さないとするものではなく、

宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、
そのかかわり合いが、
我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、
信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合に
これを許さないとするものと解すべきである。

右政教分離原則の意義に照らすと、憲法二〇条三項にいう宗教的活動とは、
およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を指すものではなく、
そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、
当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきであり、
ある行為が右にいう宗教的活動に該当するか否かを検討するに当たっては、
当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法(式次第)が宗教の定める方式に従ったものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、
当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならないものである(最高裁昭和四六年(行ツ)第六九号同五二年七月一三日大法廷判決・民集三一巻四号五三三頁、同昭和五七年(オ)第九〇二号同六三年六月一日大法廷判決・民集四二巻五号二七七頁)。

右の見地に立って、本件をみるのに、前記の事実関係及び原審の適法に確定したその余の事実関係に
よれば、
(1) 旧忠魂碑は、地元の人々が郷土出身の戦没者の慰霊、顕彰のために設けたもので、
元来、戦没者記念碑的な性格のものであり、
本件移設・再建後の本件忠魂碑も同様の性格を有するとみられるものであって、
その碑前で、戦没者の慰霊、追悼のための慰霊祭が、毎年一回、市遺族会の下部組織である地区遺族会主催の下に神式、仏式隔年交替で行われているが、
本件忠魂碑と神道等の特定の宗教とのかかわりは、
少なくとも戦後においては希薄であり、本件忠魂碑を靖国神社又は護国神社の分身(いわゆる「村の靖国」)とみることはできないこと、
(2) 本件忠魂碑を所有し、これを維持管理している市遺族会は、
箕面市内に居住する戦没者遺族を会員とし、戦没者遺族の相互扶助・福祉向上と英霊の顕彰を主たる目的として設立され活動している団体であって、
宗教的活動をすることを本来の目的とする団体ではないこと、
(3)旧忠魂碑は、戦後の一時期、その碑石部分が地中に埋められたことがあったが、
大正五年に分会が箕面村の承諾を得て公有地上に設置して以来、右公有地上に存続してきたものであって、
箕面市がした本件移設再建等の行為は、
右公有地に隣接する箕面小学校における児童数の増加、校舎の老朽化等により校舎の建替え等を行うことが急務となり、そのために右公有地を学校敷地に編入する必要が生じ、旧忠魂碑を他の場所に移設せざるを得なくなったことから、
市遺族会との交渉の結果に基づき、箕面市土地開発公社から本件土地を買い受け、従前と同様、本件敷地を代替地として市遺族会に対し無償貸与し、右敷地上に移設、再建したにすぎないものであることが明らかである。
これらの諸点にかんがみると、
箕面市が旧忠魂碑ないし本件忠魂碑に関してした次の各行為、
すなわち、旧忠魂碑を本件敷地上に移設、再建するため右公社から本件土地を代替地として買い受けた行為(本件売買)、旧忠魂碑を本件敷地上に移設、再建した行為(本件移設・再建)、市遺族会に対し、本件忠魂碑の敷地として本件敷地を無償貸与した行為(本件貸与)は、
いずれも、その目的は、小学校の校舎の建替え等のため、公有地上に存する戦没者記念碑的な性格を有する施設を他の場所に移設し、その敷地を学校用地として利用することを主眼とするものであり、
そのための方策として、右施設を維持管理する市遺族会に対し、右施設の移設場所として代替地を取得して、従来どおり、これを右施設の敷地等として無償で提供し、右施設の移設、再建を行ったものであって、専ら世俗的なものと認められ、
その効果も、特定の宗教を援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められない。
したがって、箕面市の右各行為は、宗教とのかかわり合いの程度が我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとは認められず、
憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動には当たらないと解するのが相当である。

また、所論は、箕面市の右各行為は憲法二〇条一項後段、八九条にも違反する旨主張するが、
箕面市の右各行為が憲法の政教分離規定の基礎となる政教分離原則に違反するものでないことは、右に述べたとおりであり、
また、本件忠魂碑を所有し、これを維持管理している市遺族会は、憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」、八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」のいずれにも該当しないと解すべきことは、
後述のとおりであるから、
箕面市の右各行為は憲法の右各規定に違反するものとはいえず、右違憲の主張も理由がない。
以上の点は、前掲各大法廷判決の趣旨に徴して明らかというべきである。
右と同趣旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に、所論の違憲、違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。


同第一点(右に判断した点を除く。)、第七点ないし第九点について
憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」、憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」とは、
宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体のすべてを意味するものではなく、
国家が当該組織ないし団体に対し特権を付与したり、また、当該組織ないし団体の使用、便益若しくは維持のため、公金その他の公の財産を支出し又はその利用に供したりすることが、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になり、憲法上の政教分離原則に反すると解されるものをいうのであり、
換言すると、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指すものと解するのが相当である。
このことは、前掲各大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。

本件についてこれをみるのに、所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、
右事実及び原審が適法に確定したその余の事実関係によれば、財団法人日本遺族会及びその支部である市遺族会、地区遺族会は、いずれも、戦没者遺族の相互扶助・福祉向上と英霊の顕彰を主たる目的として設立され活動している団体であって、
その事業の一つである英霊顕彰事業として、政府主催の遺骨収集、外地戦跡の慰霊巡拝、全国戦没者追悼式等への参加、協力などの活動のほか、神式又は仏式による慰霊祭の挙行、靖国神社の参拝等の宗教的色彩を帯びた行事をも実施し、靖国神社国家護持の推進運動にも参画しているが、
右行事の実施及び右運動への参画は、
会の本来の目的として、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行おうとするものではなく、その会員が戦没者の遺族であることにかんがみ、戦没者の慰霊、追悼、顕彰のための右行事等を行うことが、会員の要望に沿うものであるとして行われていることが明らかである。

これらの諸点を考慮すると、財団法人日本遺族会及びその支部である市遺族会、地区遺族会は、
いずれも、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体には該当しないものというべきであって、
憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」、憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に該当しないものと解するのが相当である。
これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違憲、違法はない。
論旨は、いずれも採用することができない。


同第五点及び第六点について
原判決に所論の違法はなく、論旨は、いずれも採用することができない。

同第一一点、第一二点及び第二八点について
一 本件各慰霊祭について、原審の適法に確定した事実関係の大要は、次のとおりである。

二 被上告人Dが本件各慰霊祭に参列した行為が、憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規
定に反するものであるか否かをみるのに、右事実関係及び原審が適法に確定したその余の事実関係によれば、
(1) 旧忠魂碑は、地元の人々が郷土出身の戦没者の慰霊、顕彰のために設けたものであり、
元来、戦没者記念碑的な性格のものであって、本件移設・再建後の本件忠魂碑も同様の性格を有するとみられるものであること、
(2) 本件各慰霊祭を挙行した市遺族会の下部組織である地区遺族会は、
箕面地区に居住する戦没者遺族を会員とする団体であって、
特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする団体ではないこと、
(3) 本件各慰霊祭への被上告人Dの参列は、
地元において重要な公職にある者の社会的儀礼として、
地区遺族会が主催する地元の戦没者の慰霊、追悼のための宗教的行事に際し、
戦没者やその遺族に対して弔意、哀悼の意を表する目的で行われたものであることが明らかである。

これらの諸点にかんがみると、被上告人Dの本件各慰霊祭への参列は、
その目的は、地元の戦没者の慰霊、追悼のための宗教的行事に際し、
戦没者遺族に対する社会的儀礼を尽くすという、専ら世俗的なものであり、
その効果も、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為とは認められない。
したがって、被上告人Dの本件各慰霊祭への参列は、
宗教とのかかわり合いの程度が我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとは認められず、
憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではないと解するのが相当である。

以上の点は、前掲各大法廷判決の趣旨に徴して明らかというべきである。
これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違憲、違法はない。

さらに、所論は、被上告人Dが本件各慰霊祭に参列した行為が憲法二〇条二項に違反するものであり、同人に対する右参列に要した時間に相当する分の給与の支給は違法である旨主張するが、
右規定は、狭義の信教の自由を直接保障する規定であり、
同人の信教の自由の侵害に関する事実は原審において認定されていないから、
右違憲の主張は、その前提を欠く。

また、同人に対する右参列に要した時間に相当する分の給与の支給を適法とした原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
論旨は、いずれも採用することができない。


同第一三点ないし第二一点について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論引用の各判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は、いずれも採用することができない。

同第二二点について
:省略。

同第二三点について
:省略。

同第二四点ないし第二七点、第二九点、第三一点ないし第三四点について
:省略。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官園部逸夫の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官園部逸夫の補足意見は、次のとおりである。

最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 貞 家 克 己
裁判官 坂 上 壽 夫
裁判官 園 部 逸 夫
裁判官 佐 藤 庄 市 郎
裁判官 可 部 恒 雄
北方ジャーナル事件
人格的価値を侵害された者は,人格権に基づき,
加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,
侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。

どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは,
侵害行為の対象となった人物の
社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ,
予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを
比較衡量して決すべきである比較衡量

そして,①侵害行為が明らかに予想され,
②その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,
③かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは
侵害行為の差止めを肯認すべきである。

被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるときは、…例外的に事前抑制が許される(北方ジャーナル事件)。


ノンフィクション逆転事件
公表が違法とはいえない場合
①事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められる場合。
②その者の社会活動の性質あるいはこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などの如何によっては、
その社会的活動に対する批判あるいは、評価の一資料として。
③社会一般の正当な関心の対象となる公的立場にある人物である場合には、
その者が、公職にあることの適否などの判断の一資料として。
賠償請求
その著作物の目的、性格等に照らし、実名を使用することの意義及び必要性を併せ考えることを要し、
そのような公表が不法行為を構成するか否かは、
その者の、その後の生活状況のみならず、先の諸点を併せて考えるべきで、
その結果、前科等に関わる事実を公表されない法的権利が優越されない場合には賠償を求めうる


月刊ペン事件
私人の私生活上の行状であっても、
その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などの如何によっては、
その社会的活動に対する非難ないし評価の一資料として、
刑法230条の2第1項にいう公共の利害に関する事実にあたる場合があると言うべきである。


北方ジャーナル事件
表現行為に対する事前抑制は、
①新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止して
その内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、
公の批判の機会を減少させるものであり、
②また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から
事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、
③実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであつて、
→表現行為に対する事前抑制は、
表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法二一条の趣旨に照らし、
厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。


①事前抑制は、厳格かつ計画な要件のもとにおいてのみ許される
②出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当する
③その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、
そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、
その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み、憲法上特に保護されるべきであることに鑑みると
当該表現行為に対する事前差止めは原則として許されないものといわなければならない
/ただ、右の様な場合においても、
その表現行為が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、
かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるときは
例外的に事前差止めが許される

仮処分
原則:口頭弁論又は債務者の審尋が必要
例外:口頭弁論又は審尋なく、債権者の提出した資料のみによって実体的要件が明らかなら不要。


税関検査
発表が禁止されるものではないので事前規制でない
思想内容それ自体を網羅的に審査し発表を禁止することを目的とするものではない
検閲
主体:行政権
対象:思想内容等表現物
目的:全部又は一部の発表禁止
手段:対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査
方法:不適当と認めるものの発表を禁止すること


よど号ハイジャック事件
新聞閲読の自由の保障と制約原理(比較衡量論)
本件において問題とされているのは、
東京拘置所長のした本件新聞記事抹消処分による上告人らの新聞紙閲読の自由の制限が
憲法に違反するかどうか、ということである。

そこで検討するのに、
およそ各人が、自由に、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、
その者が個人として自己の思想及び人格を形成・発展させ、
社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものであり、
また、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも、必要なところである。

それゆえ、これらの意見、知識、情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、
思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、
表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、
いわばその派生原理として当然に導かれるところであり、
また、すべて国民は個人として尊重される旨を定めた憲法一三条の規定の趣旨に沿うゆえんでもあると考えられる。
しかしながら、このような閲読の自由は、
生活のさまざまな場面にわたり、極めて広い範囲に及ぶものであつて、
もとより上告人らの主張するようにその制限が絶対に許されないものとすることはできず、
それぞれの場面において、これに優越する公共の利益のための必要から、
一定の合理的制限を受けることがあることもやむをえないものといわなければならない。


レペタ事件
もつとも、情報等の摂取を補助するためにする筆記行為の自由といえども、
他者の人権と衝突する場合にはそれとの調整を図る上において、
又はこれに優越する公共の利益が存在する場合にはそれを確保する必要から、
一定の合理的制限を受けることがあることはやむを得ないところである。
しかも、右の筆記行為の自由は、
憲法二一条一項の規定によつて直接保障されている表現の自由そのものとは異なるものであるから、
その制限又は禁止には、
表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではないというべきである。


政見放送
そして、右規定は、
テレビジョン放送による政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に到達して強い影響力を有していることにかんがみ
そのような言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものであるから、
右規定に違反する言動がそのまま放送される利益は法的に保護された利益とはいえず、
したがつて、右言動がそのまま放送されなかつたとしても、
不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。


集会集団行進の自由

泉佐野市市民会館事件
本件条例が予定しているのは、
比較衡量によって、公共の安全が損なわれ得る危険を回避し、
防止することの必要性が優越する場合をいうと限定して解すべき

その危険性の程度としては、
単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、
明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である

そうした事態の発生が許可権者の主観により予測されるだけではなく、
客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されなければならない

また、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、
その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に
公の施設の利用を拒むことは、憲法二一条の趣旨に反するところである。

しかしながら、本件集会の実質上の主催者と目される中核派は、
関西新空港建設反対運動の主導権をめぐって他のグループと過激な対立抗争を続けており、
他のグループの集会を攻撃して妨害し、更には人身に危害を加える事件も引き起こしていたのであって、
これに対し他のグループから報復、襲撃を受ける危険があったことは前示のとおりであり、
これを被上告人が警察に依頼するなどしてあるかじめ防止することは不可能に近かったといわなければならず、
平穏な集会を行おうとしている者に対して一方的に実力による妨害がされる場合と同一に論ずることはできないのである。

4 このように、本件不許可処分は、
本件集会の目的やその実質上の主催者と目される中核派という団体の性格そのものを理由とするものではなく、
また、被上告人の主観的な判断による蓋然的な危険発生のおそれを理由とするものでもなく、
中核派が、本件不許可処分のあった当時、
関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を繰り返し、
対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきたという客観的事実からみて、
本件集会が本件会館で開かれたならば、
本件会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、
その結果、グループの構成員だけでなく、
本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが、
具体的に明らかに予見されることを理由とするものと認められる。
したがって、本件不許可処分が憲法二一条、地方自治法二四四条に違反するということはできない。


成田新法事件
工作物の使用禁止の合憲性
そこで検討するに、本法三条一項一号に基づく工作物使用禁止命令により保護される利益は、
新空港若しくは航空保安施設等の設置、管理の安全の確保
並びに新空港及びその周辺における航空機の航行の安全の確保であり、
それに伴い新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保も図られるのであって、
これらの安全の確保は、国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されるところのものである。
他方、右工作物使用禁止命令により制限される利益は、
多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に供する利益にすぎない。
しかも、前記本法制定の経緯に照らせば、暴力主義的破壊活動等を防止し、
前記新空港の設置、管理等の安全を確保することには高度かつ緊急の必要性があるというべきであるから、
以上を総合して較量すれば、規制区域内において
暴力主義的破壊活動者による工作物の使用を禁止する措置を採り得るとすることは、
公共の福祉による必要かつ合理的なものであるといわなければならない。

また、本法二条二項にいう「暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがあると認められる者」とは、
本法一条に規定する目的や本法三条一項の規定の仕方、
さらには、同項の使用禁止命令を前提として、
同条六項の封鎖等の措置や同条八項の除去の措置が規定されていることなどに照らし、
「暴力主義的破壊活動を現に行っている者又はこれを行う蓋然性の高い者」の意味に解すべきである。
そして、本法三条一項にいう
「その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるとき」とは、
「その工作物が次の各号に掲げる用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認めるとき」
の意味に解すべきである。
したがって、同項一号が過度に広範な規制を行うものとはいえず、
その規定する要件も不明確なものであるとはいえない。





徳島市公安条例事件
ある刑罰が曖昧不明確のゆえに憲法31条に違反するかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる様な基準が読み取れるかどうかによってこれを決定すべきである。


宅地建物取引業法
(昭和二十七年六月十日法律第百七十六号)

最終改正:平成二一年六月五日法律第四九号


 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 免許(第三条—第十四条)
 第三章 宅地建物取引主任者(第十五条—第二十四条)
 第四章 営業保証金(第二十五条—第三十条)
 第五章 業務
  第一節 通則(第三十一条—第五十条の二の四)
  第二節 指定流通機構(第五十条の二の五—第五十条の十五)
  第三節 指定保証機関(第五十一条—第六十三条の二)
  第四節 指定保管機関(第六十三条の三—第六十四条)
 第五章の二 宅地建物取引業保証協会(第六十四条の二—第六十四条の二十五)
 第六章 監督(第六十五条—第七十二条)
 第七章 雑則(第七十三条—第七十八条の四)
 第八章 罰則(第七十九条—第八十六条)
 附則

   第一章 総則

(目的)
第一条  この法律は、
宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、
その事業に対し必要な規制を行うことにより、
その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、
宅地建物取引業の健全な発達を促進し、
もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。

(用語の定義)
第二条  この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、
それぞれ当該各号の定めるところによる。
一  宅地
 建物の敷地に供せられる土地をいい、
都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号 の用途地域内のその他の土地で、
道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。
二  宅地建物取引業
 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換
又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理
若しくは媒介をする行為で業として行なうものをいう。

三  宅地建物取引業者 
第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。


   第二章 免許
(免許)
第三条  宅地建物取引業を営もうとする者は、
二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、
一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の
免許を受けなければならない。

2  前項の免許の有効期間は、五年とする。

3  前項の有効期間の満了後引き続き宅地建物取引業を営もうとする者は、
免許の更新を受けなければならない。

4  前項の免許の更新の申請があつた場合において、
第二項の有効期間の満了の日までにその申請について処分がなされないときは、
従前の免許は、
同項の有効期間の満了後もその処分がなされるまでの間は、なお効力を有する。

5  前項の場合において、免許の更新がなされたときは、
その免許の有効期間は、
従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする。

6  第一項の免許のうち国土交通大臣の免許を受けようとする者は、
登録免許税法 (昭和四十二年法律第三十五号)の定めるところにより登録免許税を、
第三項の規定により国土交通大臣の免許の更新を受けようとする者は、
政令の定めるところにより手数料を、それぞれ納めなければならない。

(免許の条件)
第三条の二  国土交通大臣又は都道府県知事は、
前条第一項の免許(同条第三項の免許の更新を含む。第二十五条第六項を除き、以下同じ。)に条件を付し、
及びこれを変更することができる。

2  前項の条件は、
宅地建物取引業の適正な運営並びに宅地及び建物の取引の公正を確保するため
必要な最小限度のものに限り、
かつ、当該免許を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。

(免許の申請)
第四条  第三条第一項の免許を受けようとする者は、
二以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては
国土交通大臣に、
一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては
当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事に、
次に掲げる事項を記載した免許申請書を提出しなければならない。

一  商号又は名称

二  法人である場合においては、
その役員の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名
三  個人である場合においては、
その者の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名

四  事務所の名称及び所在地

五  前号の事務所ごとに置かれる
第十五条第一項に規定する者(同条第二項の規定によりその者とみなされる者を含む。第八条第二項第六号において同じ。)の氏名

六  他に事業を行つているときは、その事業の種類

2  前項の免許申請書には、次の各号に掲げる書類を添附しなければならない。
一  宅地建物取引業経歴書
二  第五条第一項各号に該当しないことを誓約する書面
三  事務所について第十五条第一項に規定する要件を備えていることを証する書面
四  その他国土交通省令で定める書面

(免許の基準)
第五条  国土交通大臣又は都道府県知事は、
第三条第一項の免許を受けようとする者が
次の各号のいずれかに該当する場合
又は免許申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、
若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、
免許をしてはならない。

一  成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二  第六十六条第一項第八号又は第九号に該当することにより免許を取り消され、
その取消しの日から五年を経過しない者

(当該免許を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内に当該法人の役員

(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問、その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。
以下この条、第十八条第一項、第六十五条第二項及び第六十六条第一項において同じ。)

であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないものを含む。)

二の二  第六十六条第一項第八号又は第九号に該当するとして
免許の取消処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に第十一条第一項第四号又は第五号の規定による届出があつた者(解散又は宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で
当該届出の日から五年を経過しないもの

二の三  前号に規定する期間内に合併により消滅した法人
又は第十一条第一項第四号若しくは第五号の規定による届出があつた法人(合併、解散又は宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の
前号の公示の日前六十日以内に役員であつた者で
当該消滅
又は届出の日から
五年を経過しないもの

三  禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から
五年を経過しない者

三の二  この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第三十二条の二第七項 の規定を除く。第十八条第一項第五号の二及び第五十二条第七号ハにおいて同じ。)に違反したことにより、
又は刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の三、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪を犯したことにより、
罰金の刑に処せられ、
その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

四  免許の申請前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者

五  宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者

六  営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号のいずれかに該当するもの

七  法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者のあるもの

八  個人で政令で定める使用人のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者のあるもの

九  事務所について第十五条に規定する要件を欠く者

2  国土交通大臣又は都道府県知事は、免許をしない場合においては、
その理由を附した書面をもつて、申請者にその旨を通知しなければならない。

(免許証の交付)
第六条  国土交通大臣又は都道府県知事は、
第三条第一項の免許をしたときは、
免許証を交付しなければならない。

(免許換えの場合における従前の免許の効力)
第七条  宅地建物取引業者が第三条第一項の免許を受けた後
次の各号の一に該当して引き続き宅地建物取引業を営もうとする場合において
同項の規定により国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けたときは、
その者に係る従前の国土交通大臣又は都道府県知事の免許は、
その効力を失う。

一  国土交通大臣の免許を受けた者が一の都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなつたとき。
二  都道府県知事の免許を受けた者が当該都道府県の区域内における事務所を廃止して、
他の一の都道府県の区域内に事務所を設置することとなつたとき。
三  都道府県知事の免許を受けた者が二以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなつたとき。

2  第三条第四項の規定は、
宅地建物取引業者が前項各号の一に該当して引き続き宅地建物取引業を営もうとする場合において
第四条第一項の規定による申請があつたときについて準用する。

(宅地建物取引業者名簿)
第八条  国土交通省及び都道府県に、それぞれ宅地建物取引業者名簿を備える。
2  国土交通大臣又は都道府県知事は、
宅地建物取引業者名簿に、
国土交通大臣にあつてはその免許を受けた宅地建物取引業者に関する次に掲げる事項を、
都道府県知事にあつてはその免許を受けた宅地建物取引業者
及び国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内に主たる事務所を有するものに関する
次に掲げる事項を登載しなければならない。

一  免許証番号及び免許の年月日
二  商号又は名称
三  法人である場合においては、その役員の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名
四  個人である場合においては、その者の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名
五  事務所の名称及び所在地
六  前号の事務所ごとに置かれる第十五条第一項に規定する者の氏名
七  第五十条の二第一項の認可を受けているときは、その旨及び認可の年月日
八  その他国土交通省令で定める事項

(変更の届出)
第九条  宅地建物取引業者は、
前条第二項第二号から第六号までに掲げる事項について変更があつた場合においては、
国土交通省令の定めるところにより、
三十日以内に、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

(宅地建物取引業者名簿等の閲覧)
第十条  国土交通大臣又は都道府県知事は、
国土交通省令の定めるところにより、
宅地建物取引業者名簿並びに免許の申請及び前条の届出に係る書類又はこれらの写しを
一般の閲覧に供しなければならない。

(廃業等の届出)
第十一条  宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、
当該各号に掲げる者は、
その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内に、
その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

一  宅地建物取引業者が死亡した場合 その相続人

二  法人が合併により消滅した場合 その法人を代表する役員であつた者

三  宅地建物取引業者について破産手続開始の決定があつた場合 その破産管財人

四  法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合 その清算人

五  宅地建物取引業を廃止した場合
 宅地建物取引業者であつた個人又は宅地建物取引業者であつた法人を代表する役員

2  前項第三号から第五号までの規定により届出があつたときは、
第三条第一項の免許は、その効力を失う。

(無免許事業等の禁止)
第十二条  第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。

2  第三条第一項の免許を受けない者は、
宅地建物取引業を営む旨の表示をし、又は宅地建物取引業を営む目的をもつて、広告をしてはならない。

(名義貸しの禁止)
第十三条  宅地建物取引業者は、
自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。
2  宅地建物取引業者は、
自己の名義をもつて、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、
又は宅地建物取引業を営む目的をもつてする広告をさせてはならない。

(国土交通省令への委任)
第十四条  第三条から第十一条までに規定するもののほか、
免許の申請、免許証の交付、書換交付、再交付及び返納
並びに宅地建物取引業者名簿の登載、訂正及び消除について必要な事項は、
国土交通省令で定める。
   第三章 宅地建物取引主任者

(設置、試験、指定機関、講習機関、主任者登録、主任者証)

(取引主任者の設置)
第十五条  宅地建物取引業者は、
その事務所その他国土交通省令で定める場所
(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、
事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の
成年者である専任の取引主任者(第二十二条の二第一項の宅地建物取引主任者証の交付を受けた者をいう。以下同じ。)を
置かなければならない。

2  前項の場合において、
宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。))が取引主任者であるときは、
その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、
その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなす。

3  宅地建物取引業者は、
第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、
既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至つたときは、
二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。

(試験)
第十六条  都道府県知事は、
国土交通省令の定めるところにより、
宅地建物取引主任者資格試験(以下「試験」という。)を行わなければならない。

2  試験は、宅地建物取引業に関して、必要な知識について行う。
3  第十七条の三から第十七条の五までの規定により国土交通大臣の登録を受けた者
(以下「登録講習機関」という。)が国土交通省令で定めるところにより行う講習
(以下「登録講習」という。)の課程を修了した者については、
国土交通省令で定めるところにより、試験の一部を免除する。

(◯指定試験機関~16条の19まで)
(指定)
第十六条の二  都道府県知事は、
国土交通大臣の指定する者に、
試験の実施に関する事務(以下「試験事務」という。)を行わせることができる。
2  前項の規定による指定は、試験事務を行おうとする者の申請により行う。
3  都道府県知事は、
第一項の規定により国土交通大臣の指定する者に試験事務を行わせるときは、
試験事務を行わないものとする。

(指定の基準)
第十六条の三  国土交通大臣は、
前条第二項の規定による申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、
同条第一項の規定による指定をしてはならない。
一  職員、設備、試験事務の実施の方法その他の事項についての
試験事務の実施に関する計画が試験事務の適正かつ確実な実施のために適切なものであること。

二  前号の試験事務の実施に関する計画の適正かつ確実な実施に必要な
経理的及び技術的な基礎を有するものであること。

三  申請者が、試験事務以外の業務を行つている場合には、
その業務を行うことによつて試験事務が不公正になるおそれがないこと。

2  国土交通大臣は、前条第二項の規定による申請をした者が、
次の各号のいずれかに該当するときは、同条第一項の規定による指定をしてはならない。

一  一般社団法人又は一般財団法人以外の者であること。
二  この法律に違反して、刑に処せられ、その執行を終わり、
又は執行を受けることがなくなつた日から起算して
二年を経過しない者であること。

三  第十六条の十五第一項又は第二項の規定により指定を取り消され、
その取消しの日から起算して
二年を経過しない者であること。

四  その役員のうちに、次のいずれかに該当する者があること。

イ 第二号に該当する者
ロ 第十六条の六第二項の規定による命令により解任され、その解任の日から起算して
二年を経過しない者

(指定の公示等)
第十六条の四  国土交通大臣は、
第十六条の二第一項の規定による指定をしたときは、
当該指定を受けた者の名称
及び主たる事務所の所在地
並びに当該指定をした日を
公示しなければならない。

2  第十六条の二第一項の規定による指定を受けた者(以下「指定試験機関」という。)は、
その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、
変更しようとする日の二週間前までに、
その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

3  国土交通大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

(委任の公示等)
第十六条の五  第十六条の二第一項の規定により
指定試験機関にその試験事務を行わせることとした都道府県知事
(以下「委任都道府県知事」という。)は、
当該指定試験機関の名称、
主たる事務所の所在地及び当該試験事務を取り扱う事務所の所在地
並びに当該指定試験機関に試験事務を行わせることとした日を
公示しなければならない。

2  指定試験機関は、
その名称、主たる事務所の所在地又は試験事務を取り扱う事務所の所在地を変更しようとするときは、
委任都道府県知事
(試験事務を取り扱う事務所の所在地については、関係委任都道府県知事)に、
変更しようとする日の二週間前までに、
その旨を届け出なければならない。

3  委任都道府県知事は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

(役員の選任及び解任)
第十六条の六  指定試験機関の役員の選任及び解任は、
国土交通大臣の認可を受けなければ、
その効力を生じない。

2  国土交通大臣は、
指定試験機関の役員が、この法律(この法律に基づく命令又は処分を含む。)若しくは第十六条の九第一項の試験事務規程に違反する行為をしたとき、
又は試験事務に関し著しく不適当な行為をしたときは、
指定試験機関に対し、
その役員を解任すべきことを命ずることができる。

(試験委員)
第十六条の七  指定試験機関は、
国土交通省令で定める要件を備える者のうちから宅地建物取引主任者資格試験委員(以下「試験委員」という。)を選任し、
試験の問題の作成及び採点を行わせなければならない。

2  指定試験機関は、
前項の試験委員を選任し、又は解任したときは、
遅滞なく、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

3  前条第二項の規定は、第一項の試験委員の解任について準用する。

(秘密保持義務等)
第十六条の八  指定試験機関の役員若しくは職員
(前条第一項の試験委員を含む。次項において同じ。)又はこれらの職にあつた者は、
試験事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

2  試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、
刑法 その他の罰則の適用については、
法令により公務に従事する職員とみなす。

(試験事務規程)
第十六条の九  指定試験機関は、
国土交通省令で定める試験事務の実施に関する事項について試験事務規程を定め、
国土交通大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。

2  指定試験機関は、
前項後段の規定により試験事務規程を変更しようとするときは、
委任都道府県知事の意見を聴かなければならない。

3  国土交通大臣は、
第一項の規定により認可をした試験事務規程が
試験事務の適正かつ確実な実施上不適当となつたと認めるときは、
指定試験機関に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。

(事業計画等)
第十六条の十  指定試験機関は、
毎事業年度、事業計画及び収支予算を作成し、
当該事業年度の開始前に
(第十六条の二第一項の規定による指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後遅滞なく)、
国土交通大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。

2  指定試験機関は、
事業計画及び収支予算を作成し、又は変更しようとするときは、
委任都道府県知事の意見を聴かなければならない。

3  指定試験機関は、
毎事業年度、事業報告書及び収支決算書を作成し、
当該事業年度の終了後三月以内に、国土交通大臣及び委任都道府県知事に提出しなければならない。

(帳簿の備付け等)
第十六条の十一  指定試験機関は、
国土交通省令で定めるところにより、
試験事務に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、
保存しなければならない。

(監督命令等)
第十六条の十二  国土交通大臣は、
試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、
指定試験機関に対し、
試験事務に関し監督上必要な命令をすることができる。

2  委任都道府県知事は、
その行わせることとした試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、
指定試験機関に対し、
当該試験事務の適正な実施のために必要な措置をとるべきことを
指示することができる。

(報告及び検査)
第十六条の十三  国土交通大臣は、
試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、
指定試験機関に対し、
試験事務の状況に関し必要な報告を求め、
又はその職員に、指定試験機関の事務所に立ち入り、
試験事務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2  委任都道府県知事は、
その行わせることとした試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、
指定試験機関に対し、当該試験事務の状況に関し必要な報告を求め、
又はその職員に、当該試験事務を取り扱う指定試験機関の事務所に立ち入り、
当該試験事務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

3  第一項又は前項の規定により立入検査をする職員は、
その身分を示す証明書を携帯し、
関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

4  第一項又は第二項の規定による立入検査の権限は、
犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(試験事務の休廃止)
第十六条の十四  指定試験機関は、
国土交通大臣の許可を受けなければ、
試験事務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。

2  国土交通大臣は、
指定試験機関の試験事務の全部又は一部の休止又は廃止により
試験事務の適正かつ確実な実施が損なわれるおそれがないと認めるときでなければ、
前項の規定による許可をしてはならない。

3  国土交通大臣は、
第一項の規定による許可をしようとするときは、
関係委任都道府県知事の意見を聴かなければならない。

4  国土交通大臣は、
第一項の規定による許可をしたときは、
その旨を、関係委任都道府県知事に通知するとともに、
公示しなければならない。

(指定の取消し等)
第十六条の十五  国土交通大臣は、
指定試験機関が第十六条の三第二項各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、
当該指定試験機関の指定を取り消さなければならない。

2  国土交通大臣は、
指定試験機関が次の各号の一に該当するときは、
当該指定試験機関に対し、その指定を取り消し、
又は期間を定めて試験事務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一  第十六条の三第一項各号の一に適合しなくなつたと認められるとき。
二  第十六条の七第一項、第十六条の十第一項若しくは第三項、第十六条の十一又は前条第一項の規定に違反したとき。

三  第十六条の六第二項(第十六条の七第三項において準用する場合を含む。)、第十六条の九第三項又は第十六条の十二第一項の規定による命令に違反したとき。

四  第十六条の九第一項の規定により認可を受けた試験事務規程によらないで試験事務を行つたとき。

五  不正な手段により第十六条の二第一項の規定による指定を受けたとき。

3  国土交通大臣は、前二項の規定による処分に係る聴聞を行うに当たつては、
その期日の一週間前までに、
行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第十五条第一項 の規定による通知をし、
かつ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。

4  前項の通知を行政手続法第十五条第三項 に規定する方法によつて行う場合においては、
同条第一項 の規定により聴聞の期日までにおくべき相当な期間は、
二週間を下回つてはならない。

5  第三項の聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

6  国土交通大臣は、
第一項又は第二項の規定による処分をしたときは、
その旨を、関係委任都道府県知事に通知するとともに、
公示しなければならない。

(委任の撤回の通知等)
第十六条の十六  委任都道府県知事は、
指定試験機関に試験事務を行わせないこととするときは、
その三月前までに、その旨を指定試験機関に通知しなければならない。

2  委任都道府県知事は、
指定試験機関に試験事務を行わせないこととしたときは、
その旨を公示しなければならない。

(委任都道府県知事による試験の実施)
第十六条の十七  委任都道府県知事は、
指定試験機関が第十六条の十四第一項の規定により試験事務の全部若しくは一部を休止したとき、
国土交通大臣が第十六条の十五第二項の規定により指定試験機関に対し
試験事務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、
又は指定試験機関が天災その他の事由により
試験事務の全部若しくは一部を実施することが困難となつた場合において
国土交通大臣が必要があると認めるときは、
第十六条の二第三項の規定にかかわらず、
当該試験事務の全部又は一部を行うものとする。

2  国土交通大臣は、
委任都道府県知事が前項の規定により試験事務を行うこととなるとき、
又は委任都道府県知事が同項の規定により試験事務を行うこととなる事由がなくなつたときは、
速やかにその旨を当該委任都道府県知事に通知しなければならない。

3  委任都道府県知事は、
前項の規定による通知を受けたときは、
その旨を公示しなければならない。

(試験事務の引継ぎ等に関する国土交通省令への委任)
第十六条の十八  前条第一項の規定により委任都道府県知事が試験事務を行うこととなつた場合、
国土交通大臣が第十六条の十四第一項の規定により試験事務の廃止を許可し、
若しくは第十六条の十五第一項若しくは第二項の規定により指定を取り消した場合
又は委任都道府県知事が指定試験機関に試験事務を行わせないこととした場合における
試験事務の引継ぎその他の必要な事項は、
国土交通省令で定める。

(受験手数料)
第十六条の十九  都道府県は、
地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百二十七条 の規定に基づき
試験に係る手数料を徴収する場合においては、
第十六条の二の規定により指定試験機関が行う試験を受けようとする者に、
条例で定めるところにより、
当該手数料を当該指定試験機関に納めさせ、その収入とすることができる。


(合格の取消し等)
第十七条  都道府県知事は、
不正の手段によつて試験を受け、又は受けようとした者に対しては、
合格の決定を取り消し、又はその試験を受けることを禁止することができる。

2  指定試験機関は、前項に規定する委任都道府県知事の職権を行うことができる。

3  都道府県知事は、前二項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、
三年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

(指定試験機関がした処分等に係る審査請求)
第十七条の二  指定試験機関が行う試験事務に係る処分又はその不作為については、
国土交通大臣に対し、
行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による審査請求をすることができる。


(◯登録講習機関~17条の18まで)
(登録講習機関の登録)
第十七条の三  第十六条第三項の登録は、
登録講習の実施に関する業務(以下「講習業務」という。)を行おうとする者の申請により行う。

(欠格条項)
第十七条の四  次の各号のいずれかに該当する者は、
第十六条第三項の登録を受けることができない。

一  この法律又はこの法律に基づく命令に違反し、
罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から
二年を経過しない者

二  第十七条の十四の規定により第十六条第三項の登録を取り消され、
その取消しの日から
二年を経過しない者

三  法人であつて、講習業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの

(登録基準等)
第十七条の五  国土交通大臣は、
第十七条の三の規定により登録を申請した者の行う登録講習が、
別表の上欄に掲げる科目について、
それぞれ同表の下欄に掲げる講師によつて行われるものであるときは、
その登録をしなければならない。
この場合において、登録に関して必要な手続は、国土交通省令で定める。

2  登録は、登録講習機関登録簿に次に掲げる事項を記載してするものとする。
一  登録年月日及び登録番号
二  登録講習機関の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
三  登録講習機関が講習業務を行う事務所の所在地
四  前三号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項

(登録の更新)
第十七条の六  第十六条第三項の登録は、
三年を下らない政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、
その期間の経過によつて、その効力を失う。

2  前三条の規定は、前項の登録の更新について準用する。

(講習業務の実施に係る義務)
第十七条の七  登録講習機関は、
公正に、かつ、第十七条の五第一項の規定及び国土交通省令で定める基準に適合する方法により
講習業務を行わなければならない。

(登録事項の変更の届出)
第十七条の八  登録講習機関は、
第十七条の五第二項第二号から第四号までに掲げる事項を変更しようとするときは、
変更しようとする日の二週間前までに、
その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

(講習業務規程)
第十七条の九  登録講習機関は、
講習業務に関する規程(以下「講習業務規程」という。)を定め、
講習業務の開始前に、
国土交通大臣に届け出なければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。

2  講習業務規程には、
登録講習の実施方法、登録講習に関する料金その他の国土交通省令で定める事項を
定めておかなければならない。

(業務の休廃止)
第十七条の十  登録講習機関は、
講習業務の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、
国土交通省令で定めるところにより、
あらかじめ、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

(財務諸表等の備付け及び閲覧等)
第十七条の十一  登録講習機関は、
毎事業年度経過後三月以内に、
その事業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書又は収支計算書並びに事業報告書
(その作成に代えて電磁的記録
(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)
の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。
次項及び第八十五条の二において「財務諸表等」という。)を作成し、
五年間登録講習機関の事務所に備えて置かなければならない。

2  登録講習を受けようとする者その他の利害関係人は、
登録講習機関の業務時間内は、
いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
ただし、第二号又は第四号の請求をするには、
登録講習機関の定めた費用を支払わなければならない。

一  財務諸表等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  前号の書面の謄本又は抄本の請求
三  財務諸表等が電磁的記録をもつて作成されているときは、
当該電磁的記録に記録された事項を
国土交通省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

四  前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であつて
国土交通省令で定めるものにより提供することの請求又は当該事項を記載した書面の交付の請求

(適合命令)
第十七条の十二  国土交通大臣は、
登録講習機関が第十七条の五第一項の規定に適合しなくなつたと認めるときは、
その登録講習機関に対し、
同項の規定に適合するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(改善命令)
第十七条の十三  国土交通大臣は、
登録講習機関が第十七条の七の規定に違反していると認めるときは、
その登録講習機関に対し、
同条の規定による講習業務を行うべきこと
又は登録講習の方法その他の業務の方法の改善に関し
必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(登録の取消し等)
第十七条の十四  国土交通大臣は、
登録講習機関が次の各号のいずれかに該当するときは、
その登録を取り消し、
又は期間を定めて講習業務の全部若しくは一部の停止を
命ずることができる。

一  第十七条の四第一号又は第三号に該当するに至つたとき。
二  第十七条の八から第十七条の十まで、第十七条の十一第一項又は次条の規定に違反したとき。
三  正当な理由がないのに第十七条の十一第二項各号の規定による請求を拒んだとき。
四  前二条の規定による命令に違反したとき。
五  不正の手段により第十六条第三項の登録を受けたとき。

(帳簿の記載)
第十七条の十五  登録講習機関は、
国土交通省令で定めるところにより、
帳簿を備え、講習業務に関し国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

(報告の徴収)
第十七条の十六  国土交通大臣は、
講習業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、
登録講習機関に対し、
講習業務の状況に関し必要な報告を求めることができる。

(立入検査)
第十七条の十七  国土交通大臣は、
講習業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、
その職員に、
登録講習機関の事務所に立ち入り、
講習業務の状況又は設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2  前項の規定により立入検査をする職員は、
その身分を示す証明書を携帯し、
関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

3  第一項の規定による立入検査の権限は、
犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(公示)
第十七条の十八  国土交通大臣は、
次に掲げる場合には、
その旨を官報に公示しなければならない。

一  第十六条第三項の登録をしたとき。
二  第十七条の八の規定による届出があつたとき。
三  第十七条の十の規定による届出があつたとき。
四  第十七条の十四の規定により
第十六条第三項の登録を取り消し、又は登録講習の業務の停止を命じたとき。



(取引主任者の登録)
第十八条  試験に合格した者で、
宅地若しくは建物の取引に関し
国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの
又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、
国土交通省令の定めるところにより、
当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。
ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。

一  宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
二  成年被後見人又は被保佐人
三  破産者で復権を得ないもの

四  第六十六条第一項第八号又は第九号に該当することにより
第三条第一項の免許を取り消され、
その取消しの日から五年を経過しない者
(当該免許を取り消された者が法人である場合においては、
当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内に
その法人の役員であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないもの)

四の二  第六十六条第一項第八号又は第九号に該当するとして
免許の取消処分の聴聞の期日
及び場所が公示された日から当該処分をする日
又は当該処分をしないことを決定する日
までの間に
第十一条第一項第五号の規定による届出があつた者
(宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で
当該届出の日から五年を経過しないもの

四の三  第五条第一項第二号の三に該当する者

五  禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から
五年を経過しない者

五の二  この法律
若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、
又は刑法第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の三、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、
罰金の刑に処せられ、
その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から
五年を経過しない者

六  第六十八条の二第一項第二号から第四号まで
又は同条第二項第二号若しくは第三号のいずれかに該当することにより
登録の消除の処分を受け、
その処分の日から五年を経過しない者

七  第六十八条の二第一項第二号から第四号まで
又は同条第二項第二号若しくは第三号の
いずれかに該当するとして
登録の消除の処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から
当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に
登録の消除の申請をした者(登録の消除の申請について相当の理由がある者を除く。)で
当該登録が消除された日から五年を経過しないもの

八  第六十八条第二項又は第四項の規定による禁止の処分を受け、
その禁止の期間中に第二十二条第一号の規定によりその登録が消除され、
まだその期間が満了しない者

2  前項の登録は、
都道府県知事が、
宅地建物取引主任者資格登録簿に
氏名、生年月日、住所その他国土交通省令で定める事項
並びに登録番号及び登録年月日を登載してするものとする。

(登録の手続)
第十九条  前条第一項の登録を受けることができる者が
その登録を受けようとするときは、
登録申請書を同項の都道府県知事に提出しなければならない。

2  都道府県知事は、前項の登録申請書の提出があつたときは、
遅滞なく、登録をしなければならない。

(登録の移転)
第十九条の二  第十八条第一項の登録を受けている者は、
当該登録をしている都道府県知事の管轄する
都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者の事務所の業務に従事し、
又は従事しようとするときは、
当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、
当該登録をしている都道府県知事を経由して、
登録の移転の申請をすることができる。

ただし、その者が第六十八条第二項又は第四項の規定による禁止の処分を受け、
その禁止の期間が満了していないときは、
この限りでない。

(変更の登録)
第二十条  第十八条第一項の登録を受けている者は、
登録を受けている事項に変更があつたときは、
遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない。

(死亡等の届出)
第二十一条  第十八条第一項の登録を受けている者が
次の各号の一に該当することとなつた場合においては、
当該各号に定める者は、
その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内に、
その旨を当該登録をしている都道府県知事に届け出なければならない。

一  死亡した場合 その相続人
二  第十八条第一項第一号又は第三号から第五号の二までに該当するに至つた場合本人
三  第十八条第一項第二号に該当するに至つた場合 その後見人又は保佐人

(申請等に基づく登録の消除)
第二十二条  都道府県知事は、
次の各号の一に掲げる場合には、
第十八条第一項の登録を消除しなければならない。

一  本人から登録の消除の申請があつたとき。
二  前条の規定による届出があつたとき。
三  前条第一号の規定による届出がなくて同号に該当する事実が判明したとき。
四  第十七条第一項又は第二項の規定により試験の合格の決定を取り消されたとき。


(取引主任者証の交付等)
第二十二条の二  第十八条第一項の登録を受けている者は、
登録をしている都道府県知事に対し、
宅地建物取引主任者証(以下「取引主任者証」という。)の交付を申請することができる。

2  取引主任者証の交付を受けようとする者は、
登録をしている都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより
指定する講習で交付の申請前六月以内に行われるものを受講しなければならない。
ただし、試験に合格した日から一年以内に
取引主任者証の交付を受けようとする者
又は第五項に規定する取引主任者証の交付を受けようとする者については、
この限りでない。

3  取引主任者証(第五項の規定により交付された取引主任者証を除く。)の有効期間は、
五年とする。

4  取引主任者証が交付された後
第十九条の二の規定により登録の移転があつたときは、
当該取引主任者証は、その効力を失う。

5  前項に規定する場合において、
登録の移転の申請とともに取引主任者証の交付の申請があつたときは、
移転後の都道府県知事は、
前項の取引主任者証の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする取引主任者証を
交付しなければならない。

6  取引主任者は、
第十八条第一項の登録が消除されたとき、又は取引主任者証が効力を失つたときは、
速やかに、取引主任者証をその交付を受けた都道府県知事に返納しなければならない。

7  取引主任者は、
第六十八条第二項又は第四項の規定による禁止の処分を受けたときは、
速やかに、取引主任者証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなければならない。

8  前項の規定により取引主任者証の提出を受けた都道府県知事は、
同項の禁止の期間が満了した場合において
その提出者から返還の請求があつたときは、
直ちに、当該取引主任者証を返還しなければならない。

(取引主任者証の有効期間の更新)
第二十二条の三  取引主任者証の有効期間は、
申請により更新する。

2  前条第二項本文の規定は
取引主任者証の有効期間の更新を受けようとする者について、
同条第三項の規定は更新後の取引主任者証の有効期間について準用する。

(取引主任者証の提示)
第二十二条の四  取引主任者は、
取引の関係者から請求があつたときは、取引主任者証を提示しなければならない。

第二十三条  削除

(国土交通省令への委任)
第二十四条  この章に定めるもののほか、
試験、登録講習、登録講習機関、指定試験機関、第十八条第一項の登録、その移転及び取引主任者証に関し必要な事項は、
国土交通省令で定める。


   第四章 営業保証金

(供託義務、増額、還付、補填、保管替え、取戻し)

(営業保証金の供託等)
第二十五条  宅地建物取引業者は、
営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。

2  前項の営業保証金の額は、
主たる事務所及びその他の事務所ごとに、
宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して、
政令で定める額とする。

3  第一項の営業保証金は、
国土交通省令の定めるところにより、
国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券
(社債、株式等の振替に関する法律 (平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項 に規定する振替債を含む。)をもつて、
これに充てることができる。

4  宅地建物取引業者は、
営業保証金を供託したときは、
その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、
その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

5  宅地建物取引業者は、前項の規定による届出をした後でなければ、
その事業を開始してはならない。

6  国土交通大臣又は都道府県知事は、
第三条第一項の免許をした日から三月以内に
宅地建物取引業者が第四項の規定による届出をしないときは、
その届出をすべき旨の催告をしなければならない。

7  国土交通大臣又は都道府県知事は、
前項の催告が到達した日から一月以内に
宅地建物取引業者が第四項の規定による届出をしないときは、
その免許を取り消すことができる。

8  第二項の規定に基づき政令を制定し、
又は改廃する場合においては、
その政令で、営業保証金の追加の供託又はその取戻しに関して、
所要の経過措置(経過措置に関し監督上必要な措置を含む。)を定めることができる。

(事務所新設の場合の営業保証金)
第二十六条  宅地建物取引業者は、
事業の開始後新たに事務所を設置したとき
(第七条第一項各号の一に該当する場合において事務所の増設があつたときを含むものとする。)は、
当該事務所につき
前条第二項の政令で定める額の営業保証金を供託しなければならない。

2  前条第一項及び第三項から第五項までの規定は、
前項の規定により供託する場合に準用する。

(営業保証金の還付)
第二十七条  宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者は、
その取引により生じた債権に関し、
宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、
その債権の弁済を受ける権利を有する。

2  前項の権利の実行に関し必要な事項は、
法務省令・国土交通省令で定める。

(営業保証金の不足額の供託)
第二十八条  宅地建物取引業者は、
前条第一項の権利を有する者がその権利を実行したため、
営業保証金が第二十五条第二項の政令で定める額に不足することとなつたときは、
法務省令・国土交通省令で定める日から二週間以内に
その不足額を供託しなければならない。

2  宅地建物取引業者は、
前項の規定により営業保証金を供託したときは、
その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、
二週間以内に、
その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

3  第二十五条第三項の規定は、
第一項の規定により供託する場合に準用する。

(営業保証金の保管替え等)
第二十九条  宅地建物取引業者は、
その主たる事務所を移転したためその最寄りの供託所が変更した場合において、

金銭のみをもつて営業保証金を供託しているときは、
法務省令・国土交通省令の定めるところにより、
遅滞なく、
費用を予納して、
営業保証金を供託している供託所に対し、
移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、

その他のときは、
遅滞なく、
営業保証金を
移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない。

2  第二十五条第二項及び第三項の規定は、
前項の規定により供託する場合に準用する。

(営業保証金の取戻し)
第三十条  第三条第二項の有効期間
(同条第四項に規定する場合にあつては、同項の規定によりなお効力を有することとされる期間を含む。第七十六条において同じ。)が満了したとき、
第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、
同条第一項第一号若しくは第二号に該当することとなつたとき、
又は第二十五条第七項、第六十六条若しくは第六十七条第一項の規定により免許を取り消されたとき
は、宅地建物取引業者であつた者又はその承継人
(第七十六条の規定により宅地建物取引業者とみなされる者を除く。)は、
当該宅地建物取引業者であつた者が供託した営業保証金を取り戻すことができる。
宅地建物取引業者が一部の事務所を廃止した場合において、
営業保証金の額が第二十五条第二項の政令で定める額を超えることとなつたときは、
その超過額について、
宅地建物取引業者が前条第一項の規定により供託した場合においては、
移転前の主たる事務所のもよりの供託所に供託した営業保証金についても、
また同様とする。

2  前項の営業保証金の取りもどし
(前条第一項の規定により供託した場合における移転前の主たる事務所のもよりの供託所に供託した営業保証金の取りもどしを除く。)は、
当該営業保証金につき第二十七条第一項の権利を有する者に対し、
六月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、
その期間内にその申出がなかつた場合でなければ、
これをすることができない。
ただし、営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から十年を経過したときは、
この限りでない。

3  前項の公告その他営業保証金の取戻しに関し必要な事項は、
法務省令・国土交通省令で定める。
   第五章 業務

    第一節 通則

(業務処理の原則)
第三十一条  宅地建物取引業者は、
取引の関係者に対し、
信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。

2  宅地建物取引業者は、
第五十条の二第一項に規定する取引一任代理等を行うに当たつては、
投機的取引の抑制が図られるよう配慮しなければならない。

(誇大広告等の禁止)
第三十二条  宅地建物取引業者は、
その業務に関して広告をするときは、
当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、
環境若しくは交通その他の利便
又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法
若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、
著しく事実に相違する表示をし、
又は実際のものよりも著しく優良であり、
若しくは有利であると
人を誤認させるような表示をしてはならない。

(広告の開始時期の制限)
第三十三条  宅地建物取引業者は、
宅地の造成又は建物の建築に関する
工事の完了前においては
当該工事に関し必要とされる

都市計画法第二十九条第一項 又は第二項 の許可、
建築基準法 (昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項 の確認
その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものが
あつた後でなければ、

当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する
広告をしてはならない


(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限)
第三十三条の二  宅地建物取引業者は、
自己の所有に属しない宅地又は建物について、
自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。
ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

一  宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約
(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているとき
その他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で
国土交通省令・内閣府令で定めるとき。

二  当該宅地又は建物の売買が
第四十一条第一項に規定する売買に該当する場合で
当該売買に関して同項第一号又は第二号に掲げる措置が講じられているとき。

(取引態様の明示)
第三十四条  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、
自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、
代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、
又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別
(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。

2  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、
遅滞なく、その注文をした者に対し、
取引態様の別を明らかにしなければならない。

(媒介契約)
第三十四条の二  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、
遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、
依頼者にこれを交付しなければならない。

一  当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示
又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示

二  当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額

三  当該宅地又は建物について、依頼者が
他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否
及びこれを許す場合の
他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項

四  媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
五  当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
六  報酬に関する事項
七  その他国土交通省令・内閣府令で定める事項

2  宅地建物取引業者は、
前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、
その根拠を明らかにしなければならない。

3  依頼者が
他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを
禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、
三月を超えることができない。
これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。

4  前項の有効期間は、
依頼者の申出により、更新することができる。
ただし、更新の時から三月を超えることができない。

5  宅地建物取引業者は、
専任媒介契約を締結したときは、
契約の相手方を探索するため、
国土交通省令で定める期間内に、
当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、
所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、
国土交通省令で定めるところにより、
国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。

6  前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、
第五十条の六に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。

7  前項の宅地建物取引業者は、
第五項の規定による登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、
国土交通省令で定めるところにより、
遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。

8  専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、
依頼者に対し、
当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上
(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と
売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む
専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)
報告しなければならない。

9  第三項から第六項まで及び前項の規定に反する特約は、無効とする。

(代理契約)
第三十四条の三  前条の規定は、
宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。

(重要事項の説明等)
第三十五条  宅地建物取引業者は、
宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方
若しくは代理を依頼した者
又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者
(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、

その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、
その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、
取引主任者をして、

少なくとも次に掲げる事項について、
これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して
説明をさせなければならない。

一  当該宅地又は建物の上に存する
登記された権利の種類及び内容
並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名
(法人にあつては、その名称)

二  都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限で
契約内容の別
(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別
及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。
以下この条において同じ。)に応じて
政令で定めるものに関する事項の概要

三  当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項

四  飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の
整備の状況
(これらの施設が整備されていない場合においては、
その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)

五  当該宅地又は建物が
宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、
その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項

六  当該建物が
建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項 に規定する
区分所有権の目的であるものであるときは、

当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する
権利の種類及び内容、

同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定め
その他の一棟の建物又はその敷地
(一団地内に数棟の建物があつて、
その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、
その土地を含む。)に関する
権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で

契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの

七  代金、交換差金及び借賃以外に授受される
金銭の額及び当該金銭の授受の目的

八  契約の解除に関する事項
九  損害賠償額の予定又は違約金に関する事項

十  第四十一条第一項に規定する手付金等を受領しようとする場合における
同条又は第四十一条の二の規定による措置の概要

十一  支払金又は預り金
(宅地建物取引業者の相手方等から
その取引の対象となる宅地又は建物に関し
受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭
(第四十一条第一項又は第四十一条の二第一項の規定により
保全の措置が講ぜられている手付金等を除く。)であつて
国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう。以下同じ。)

を受領しようとする場合において、

第六十四条の三第二項の規定による保証の措置
その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を
講ずるかどうか、
及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要

十二  代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容
及び当該あつせんに係る
金銭の貸借が成立しないときの措置

十三  当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し
保証保険契約の締結その他の措置で
国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、
及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要

十四  その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性
及び契約内容の別を勘案して、

次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、
それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項

イ 事業を営む場合以外の場合において
宅地又は建物を買い、又は借りようとする
個人である
宅地建物取引業者の相手方等の
利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令

ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令

2  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物の割賦販売
(代金の全部又は一部について、
目的物の引渡し後一年以上の期間にわたり、
かつ、二回以上に分割して受領することを条件として販売することをいう。
以下同じ。)の相手方に対して、

その者が取得しようとする宅地又は建物に関し、
その割賦販売の契約が成立するまでの間に、
取引主任者をして、

前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について、
これらの事項を記載した書面を交付して
説明をさせなければならない。

一  現金販売価格(宅地又は建物の引渡しまでにその代金の全額を受領する場合の価格をいう。)

二  割賦販売価格(割賦販売の方法により販売する場合の価格をいう。)

三  宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金
(割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分で目的物の引渡し後のものをいう。
第四十二条第一項において同じ。)の額
並びにその支払の時期及び方法

3  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の
受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、
その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地又は建物に関し、
その売買の契約が成立するまでの間に、
取引主任者をして、
少なくとも次に掲げる事項について、
これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して
説明をさせなければならない。

ただし、その売買の相手方の利益の保護のため支障を生ずることがない場合として
国土交通省令で定める場合は、この限りでない。

一  当該信託財産である宅地又は建物の上に存する
登記された権利の種類及び内容
並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名
(法人にあつては、その名称)

二  当該信託財産である宅地又は建物に係る
都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限で
政令で定めるものに関する事項の概要

三  当該信託財産である宅地又は建物に係る
私道に関する負担に関する事項

四  当該信託財産である宅地又は建物に係る
飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況
(これらの施設が整備されていない場合においては、
その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)

五  当該信託財産である宅地又は建物が
宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、
その完了時における形状、構造その他国土交通省令で定める事項

六  当該信託財産である建物が
建物の区分所有等に関する法律第二条第一項 に規定する
区分所有権の目的であるものであるときは、

当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する
権利の種類及び内容、
同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地
(一団地内に数棟の建物があつて、
その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、
その土地を含む。)に関する
権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で国土交通省令で定めるもの

七  その他当該信託の受益権の売買の相手方の利益の保護の必要性を勘案して
国土交通省令で定める事項

4  取引主任者は、
前三項の説明をするときは、
説明の相手方に対し、
取引主任者証を提示しなければならない。

5  第一項から第三項までの書面の交付に当たつては、
取引主任者は、
当該書面に記名押印しなければならない。


(供託所等に関する説明)
第三十五条の二  宅地建物取引業者は、
宅地建物取引業者の相手方等に対して、
当該売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、

当該宅地建物取引業者が
第六十四条の二第一項の規定により指定を受けた
一般社団法人の社員でないときは
第一号に掲げる事項について、

当該宅地建物取引業者が同条同項の規定により指定を受けた
一般社団法人の社員であるときは、
第六十四条の八第一項の規定により
国土交通大臣の指定する弁済業務開始日前においては
第一号及び第二号に掲げる事項について、

当該弁済業務開始日以後においては
第二号に掲げる事項について

説明をするようにしなければならない。

一  営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所及びその所在地
二  社員である旨、当該一般社団法人の名称、住所及び事務所の所在地
並びに第六十四条の七第二項の供託所及びその所在地

(契約締結等の時期の制限)
第三十六条  宅地建物取引業者は、
宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、
当該工事に関し必要とされる
都市計画法第二十九条第一項 又は第二項 の許可、
建築基準法第六条第一項 の確認
その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものが
あつた後でなければ、
当該工事に係る宅地又は建物につき、
自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、
又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない。

(書面の交付)
第三十七条  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物の売買又は交換に関し、

自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、
当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、
その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、

遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

一  当事者の氏名(法人にあつては、その名称)及び住所

二  当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示
又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示

三  代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法
四  宅地又は建物の引渡しの時期
五  移転登記の申請の時期

六  代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、
その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的

七  契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
八  損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容

九  代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合においては、
当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置

十  天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容

十一  当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責任
又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結
その他の措置についての定めがあるときは、その内容

十二  当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

2  宅地建物取引業者は、
宅地又は建物の貸借に関し、
当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、
その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、
次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

一  前項第一号、第二号、第四号、第七号、第八号及び第十号に掲げる事項
二  借賃の額並びにその支払の時期及び方法

三  借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、
その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的

3  宅地建物取引業者は、
前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、
取引主任者をして、
当該書面に記名押印させなければならない。

(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
第三十七条の二  宅地建物取引業者が
自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、

当該宅地建物取引業者の事務所
その他国土交通省令・内閣府令で定める場所
(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、

当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者
又は売買契約を締結した買主
(事務所等において買受けの申込みをし、
事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、

次に掲げる場合を除き、

書面により、
当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除
(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。

この場合において、宅地建物取引業者は、
申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。

一  買受けの申込みをした者
又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、

国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、
申込みの撤回等を行うことができる旨
及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、

その告げられた日から起算して八日を経過したとき。

二  申込者等が、
当該宅地又は建物の引渡しを受け、
かつ、その代金の全部を支払つたとき。

2  申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、
その効力を生ずる。

3  申込みの撤回等が行われた場合においては、
宅地建物取引業者は、
申込者等に対し、
速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金
その他の金銭を返還しなければならない。

4  前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

(損害賠償額の予定等の制限)
第三十八条  宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、
当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、
又は違約金を定めるときは、

これらを合算した額が
代金の額の十分の二をこえることとなる定めを
してはならない。

2  前項の規定に反する特約は、
代金の額の十分の二をこえる部分について、
無効とする。

(手附の額の制限等)
第三十九条  宅地建物取引業者は、
みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、
代金の額の十分の二をこえる額の手附を
受領することができない。

2  宅地建物取引業者が、
みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、
その手附がいかなる性質のものであつても、

当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、
買主はその手附を放棄して、
当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、
契約の解除をすることができる。

3  前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

(瑕疵担保責任についての特約の制限)
第四十条  宅地建物取引業者は、
自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、
その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、

民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条 において準用する
同法第五百六十六条第三項 に規定する期間について
その目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、

同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。

2  前項の規定に反する特約は、無効とする。

(手付金等の保全)
第四十一条  宅地建物取引業者は、
宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買で
自ら売主となるものに関しては、

次の各号のいずれかに掲げる措置を講じた後でなければ、
買主から手付金等
(代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもつて授受される金銭で
代金に充当されるものであつて、
契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるものをいう。
以下同じ。)を

受領してはならない。

ただし、当該宅地若しくは建物について
買主への所有権移転の登記がされたとき、
買主が所有権の登記をしたとき、
又は当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額
(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が
代金の額の百分の五以下であり、

かつ、宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して
政令で定める額以下であるときは、
この限りでない。

一  銀行その他政令で定める金融機関
又は国土交通大臣が指定する者(以下この条において「銀行等」という。)との間において、
宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務を負うこととなつた場合において

当該銀行等が
その債務を連帯して保証することを委託する契約(以下「保証委託契約」という。)を締結し、
かつ、当該保証委託契約に基づいて当該銀行等が
手付金等の返還債務を連帯して保証することを約する書面を買主に交付すること。

二  保険事業者(保険業法 (平成七年法律第百五号)第三条第一項 又は第百八十五条第一項の免許を受けて保険業を行う者をいう。
以下この号において同じ。)との間において、

宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の不履行により買主に生じた損害のうち
少なくとも当該返還債務の不履行に係る手付金等の額に相当する部分を
当該保険事業者がうめることを約する保証保険契約を締結し、
かつ、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付すること。

2  前項第一号の規定による保証委託契約は、
銀行等が次の各号に掲げる要件に適合する保証契約を
買主との間において成立させることを内容とするものでなければならない。

一  保証債務が、
少なくとも宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の全部を保証するものであること。

二  保証すべき手付金等の返還債務が、
少なくとも宅地建物取引業者が受領した手付金等に係る
宅地又は建物の引渡しまでに生じたものであること。

3  第一項第二号の規定による保証保険契約は、
次の各号に掲げる要件に適合するものでなければならない。

一  保険金額が、
宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額
(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)に相当する金額であること。

二  保険期間が、
少なくとも保証保険契約が成立した時から
宅地建物取引業者が受領した手付金等に係る宅地又は建物の
引渡しまでの期間であること。

4  宅地建物取引業者が、
第一項に規定する宅地又は建物の売買を行う場合
(同項ただし書に該当する場合を除く。)において、
同項第一号又は第二号に掲げる措置を講じないときは、
買主は、手付金等を支払わないことができる。

5  宅地建物取引業者は、
次の各号に掲げる措置に代えて、
政令で定めるところにより、
第一項に規定する買主の承諾を得て、
電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、
当該各号に掲げる措置に準ずるものとして
国土交通省令・内閣府令で定めるものを講じることができる。

この場合において、
当該国土交通省令・内閣府令で定める措置を講じた者は、
当該各号に掲げる措置を講じたものとみなす。

一 第一項第一号に掲げる措置のうち、
当該保証委託契約に基づいて
当該銀行等が手付金等の返還債務を連帯して保証することを約する書面を
買主に交付する措置

二 第一項第二号に掲げる措置のうち、
保険証券に代わるべき書面を買主に交付する措置

第四十一条の二  宅地建物取引業者は、
自ら売主となる宅地又は建物の売買(前条第一項に規定する売買を除く。)に関しては、

同項第一号若しくは第二号に掲げる措置を講じた後
又は次の各号に掲げる措置をいずれも講じた後でなければ、
買主から手付金等を受領してはならない。

ただし、当該宅地若しくは建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、
買主が所有権の登記をしたとき、

又は当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額
(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が
代金の額の十分の一以下であり、
かつ、宅地建物取引業者の取引の実情
及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して政令で定める額以下であるときは、
この限りでない。

一  国土交通大臣が指定する者(以下「指定保管機関」という。)との間において、
宅地建物取引業者が
自己に代理して当該指定保管機関に当該手付金等を受領させることとするとともに、
当該指定保管機関が、
当該宅地建物取引業者が受領した
手付金等の額に相当する額の金銭を保管することを約する契約
(以下「手付金等寄託契約」という。)を締結し、
かつ、当該手付金等寄託契約を証する書面を買主に交付すること。

二  買主との間において、
買主が宅地建物取引業者に対して有することとなる手付金等の返還を目的とする債権の担保として、
手付金等寄託契約に基づく寄託金の返還を目的とする債権について質権を設定する契約
(以下「質権設定契約」という。)を締結し、
かつ、当該質権設定契約を証する書面を買主に交付し、
及び当該質権設定契約による質権の設定を
民法第四百六十七条 の規定による確定日付のある証書をもつて
指定保管機関に通知すること。

2  前項第一号の規定による手付金等寄託契約は、
次の各号に掲げる要件に適合するものでなければならない。

一  保管される金額が、
宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額
(既に受領した手付金等で指定保管機関に保管されていないものがあるときは、
その保管されていないものの額を加えた額)に相当する金額であること。

二  保管期間が、
少なくとも指定保管機関が
宅地建物取引業者に代理して手付金等を受領した時から
当該手付金等に係る宅地又は建物の引渡しまでの期間であること。

3  第一項第二号の規定による質権設定契約は、
設定される質権の存続期間が、
少なくとも当該質権が設定された時から
宅地建物取引業者が受領した手付金等に係る宅地又は建物の
引渡しまでの期間であるものでなければならない。

4  宅地建物取引業者は、
第一項各号に掲げる措置を講ずる場合において、
既に自ら手付金等を受領しているときは、
自ら受領した手付金等の額に相当する額
(既に指定保管機関が保管する金銭があるときは、その額を除いた額)の金銭を、
買主が手付金等の支払をする前に、
指定保管機関に交付しなければならない。

5  宅地建物取引業者が、
第一項に規定する宅地又は建物の売買を行う場合
(同項ただし書に該当する場合を除く。)において、
前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる措置を講じないとき、
第一項各号の一に掲げる措置を講じないとき、
又は前項の規定による金銭の交付をしないときは、
買主は、手付金等を支払わないことができる。

6  宅地建物取引業者は、
次の各号に掲げる措置に代えて、
政令で定めるところにより、
第一項に規定する買主の承諾を得て、

電子情報処理組織を使用する方法
その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、
当該各号に掲げる措置に準ずるものとして

国土交通省令・内閣府令で定めるものを講じることができる。

この場合において、
当該国土交通省令・内閣府令で定める措置を講じた者は、
当該各号に掲げる措置を講じたものとみなす。

一 第一項第一号に掲げる措置のうち、
当該手付金等寄託契約を証する書面を買主に交付する措置

二 第一項第二号に掲げる措置のうち、
当該質権設定契約を証する書面を買主に交付する措置

(宅地又は建物の割賦販売の契約の解除等の制限)
第四十二条  宅地建物取引業者は、
みずから売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約について
賦払金の支払の義務が履行されない場合においては、
三十日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、
その期間内にその義務が履行されないときでなければ、
賦払金の支払の遅滞を理由として、
契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。

2  前項の規定に反する特約は、無効とする。

(所有権留保等の禁止)
第四十三条  宅地建物取引業者は、
みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合には、
当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまで
(当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けていない場合にあつては、
代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けるまで)に、
登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。

ただし、買主が、
当該宅地又は建物につき
所有権の登記をした後の代金債務について、
これを担保するための抵当権
若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、
又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでない。

2  宅地建物取引業者は、
みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合において、
当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、
かつ、代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けた後は、
担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。

3   宅地建物取引業者は、
みずから売主として宅地又は建物の売買を行なつた場合において、
代金の全部又は一部に充てるための買主の金銭の借入れで、
当該宅地又は建物の引渡し後一年以上の期間にわたり、
かつ、二回以上に分割して返還することを条件とするものに係る債務を保証したときは、
当該宅地又は建物を買主に引き渡すまで
(当該宅地又は建物を引き渡すまでに受領した代金の額から当該保証に係る債務で
当該宅地又は建物を引き渡すまでに弁済されていないものの額を控除した額が
代金の額の十分の三をこえていない場合にあつては、
受領した代金の額から当該保証に係る債務で弁済されていないものの額を控除した額が
代金の額の十分の三をこえるまで)に、
登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。

ただし、宅地建物取引業者が
当該保証債務を履行した場合に取得する求償権及び当該宅地又は建物につき
買主が所有権の登記をした後の代金債権について、
買主が、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、
又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、
この限りでない。

4  宅地建物取引業者は、
みずから売主として宅地又は建物の売買を行なつた場合において、
当該宅地又は建物の代金の全部又は一部に充てるための買主の金銭の借入れで、
当該宅地又は建物の引渡し後一年以上の期間にわたり、
かつ、二回以上に分割して返還することを条件とするものに係る債務を保証したときは、

当該売買に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、

かつ、受領した代金の額から当該保証に係る債務で弁済されていないものの額を控除した額が
代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けた後は、

担保の目的で
当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。

(不当な履行遅延の禁止)
第四十四条  宅地建物取引業者は、
その業務に関してなすべき
宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払を
不当に遅延する行為をしてはならない。

(秘密を守る義務)
第四十五条  宅地建物取引業者は、
正当な理由がある場合でなければ、
その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
宅地建物取引業を営まなくなつた後であつても、また同様とする。

(報酬)
第四十六条  宅地建物取引業者が
宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、
国土交通大臣の定めるところによる。

2  宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
3  国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
4  宅地建物取引業者は、
その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、
第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

(業務に関する禁止事項)
第四十七条  宅地建物取引業者は、
その業務に関して、
宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

一  宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、

又はその契約の申込みの撤回
若しくは解除
若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、

次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

イ 第三十五条第一項各号又は第二項各号に掲げる事項
ロ 第三十五条の二各号に掲げる事項
ハ 第三十七条第一項各号又は第二項各号(第一号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、
宅地若しくは建物の
所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、
環境、交通等の利便、
代金、借賃等の対価の額
若しくは支払方法
その他の取引条件
又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の
資力若しくは信用に関する事項であつて、

宅地建物取引業者の相手方等の判断に
重要な影響を及ぼすこととなるもの

二  不当に高額の報酬を要求する行為
三  手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより
契約の締結を誘引する行為

第四十七条の二  宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者
(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、
宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、
宅地建物取引業者の相手方等に対し、
利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。

2  宅地建物取引業者等は、
宅地建物取引業に係る契約を締結させ、
又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、
宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。

3  宅地建物取引業者等は、
前二項に定めるもののほか、
宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為
又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、
第三十五条第一項第十四号イに規定する
宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして
国土交通省令・内閣府令で定めるもの
及びその他の宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして
国土交通省令で定めるものをしてはならない。

(証明書の携帯等)
第四十八条  宅地建物取引業者は、
国土交通省令の定めるところにより、
従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、
その者をその業務に従事させてはならない。

2  従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、
前項の証明書を提示しなければならない。

3  宅地建物取引業者は、
国土交通省令で定めるところにより、
その事務所ごとに、従業者名簿を備え、
従業者の氏名、住所、第一項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を
記載しなければならない。

4  宅地建物取引業者は、
取引の関係者から請求があつたときは、
前項の従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。

(帳簿の備付け)
第四十九条  宅地建物取引業者は、
国土交通省令の定めるところにより、
その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え、
宅地建物取引業に関し取引のあつたつど、
その年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積
その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。

(標識の掲示等)
第五十条  宅地建物取引業者は、
事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに、
公衆の見やすい場所に、
国土交通省令で定める標識を掲げなければならない。

2  宅地建物取引業者は、
国土交通省令の定めるところにより、
あらかじめ、第十五条第一項の国土交通省令で定める場所について
所在地、業務内容、業務を行う期間及び専任の取引主任者の氏名を
免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事
及びその所在地を管轄する都道府県知事に
届け出なければならない。

(取引一任代理等に係る特例)
第五十条の二  宅地建物取引業者が、
宅地又は建物の売買、交換又は貸借に係る判断の全部又は一部を
次に掲げる契約により一任されるとともに
当該判断に基づき
これらの取引の代理又は媒介を行うこと(以下「取引一任代理等」という。)について、
あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、
国土交通大臣の認可を受けたときは、
第三十四条の二及び第三十四条の三の規定は、
当該宅地建物取引業者が行う取引一任代理等については、適用しない。

一  当該宅地建物取引業者が
金融商品取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第二十九条 の登録
(同法第二十八条第四項 に規定する投資運用業の種別に係るものに限る。)を受けて
次のイ又はロに掲げる者と締結する当該イ又はロに定める契約

イ 当該宅地建物取引業者が
その運用の指図を行う委託者指図型投資信託
(投資信託及び投資法人に関する法律
(昭和二十六年法律第百九十八号)
第二条第一項 に規定する委託者指図型投資信託をいう。)の
信託財産の受託会社(同法第九条 に規定する受託会社をいう。)
 同法第三条 に規定する投資信託契約

ロ 当該宅地建物取引業者が
その資産の運用を行う投資法人
(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項 に規定する投資法人をいう。)
 同法第百八十八条第一項第四号 に規定する委託契約

二  当該宅地建物取引業者が
次のイ又はロに掲げる規定に基づき
宅地又は建物の売買、交換又は賃貸に係る業務を受託する場合における
当該業務を委託する
当該イ又はロに定める者と締結する
当該業務の委託に関する契約

イ 資産の流動化に関する法律 (平成十年法律第百五号)第二百三条
 同法第二条第三項 に規定する特定目的会社

ロ 資産の流動化に関する法律第二百八十四条第二項
 同法第二条第十六項 に規定する受託信託会社等

2  前項の認可を受けた宅地建物取引業者
(以下「認可宅地建物取引業者」という。)が
取引一任代理等を行う場合には、
当該取引一任代理等に係る
前項各号に掲げる契約の相手方に対しては、
次の各号に掲げる規定にかかわらず、
当該各号に定める行為をすることを要しない。

一  第三十五条第一項 同項に規定する書面の交付及び説明
二  第三十五条第二項 同項に規定する書面の交付及び説明
三  第三十五条の二 同条に規定する説明
四  第三十七条第二項 同項に規定する書面の交付

(認可の条件)
第五十条の二の二  国土交通大臣は、
前条第一項の認可に条件を付し、
及びこれを変更することができる。

2  前項の条件は、
宅地及び建物の取引の公正を確保するため必要な最小限度のものに限り、
かつ、当該認可を受ける者に
不当な義務を課することとならないものでなければならない。

(認可の基準等)
第五十条の二の三  国土交通大臣は、
第五十条の二第一項の認可を受けようとする者が
次の各号のいずれかに該当するときは、
認可をしてはならない。

一  その行おうとする取引一任代理等を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有しないこと。
二  その営む業務の収支の見込みが良好でなく、取引一任代理等の公正を害するおそれがあること。
三  その行おうとする取引一任代理等を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有しないこと。

2  国土交通大臣は、
第五十条の二第一項の認可をしない場合においては、
その理由を付した書面をもつて、
申請者にその旨を通知しなければならない。

3  国土交通大臣は、
第五十条の二第一項の認可をした場合であつて、
当該宅地建物取引業者が都道府県知事の免許を受けたものであるときは、
遅滞なく、その旨を当該都道府県知事に通知しなければならない。

(不動産信託受益権等の売買等に係る特例)
第五十条の二の四  金融商品取引業者
(金融商品取引法第二条第九項 に規定する金融商品取引業者をいう。)
又は金融商品仲介業者
(同条第十二項 に規定する金融商品仲介業者をいう。)である宅地建物取引業者が、

宅地若しくは建物に係る信託の受益権
又は当該受益権に対する投資事業に係る組合契約
(民法第六百六十七条第一項 に規定する組合契約をいう。)、
匿名組合契約
(商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条 に規定する匿名組合契約をいう。)
若しくは投資事業有限責任組合契約
(投資事業有限責任組合契約に関する法律 (平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する
投資事業有限責任組合契約をいう。)
に基づく権利(以下この条において「不動産信託受益権等」という。)の売主となる場合
又は不動産信託受益権等の売買の代理若しくは媒介をする場合においては、
これを当該宅地建物取引業者が
宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の受益権の売主となる場合とみなして
第三十五条第三項から第五項までの規定を適用する。

この場合において、同条第三項本文中「売買の相手方に対して」とあるのは
「売買の相手方又は代理を依頼した者
若しくは媒介に係る売買の各当事者
(以下「不動産信託受益権売買等の相手方」という。)に対して」と、

「信託の受益権に係る」とあるのは
「第五十条の二の四に規定する不動産信託受益権等に係る」と、
同項ただし書中「売買の相手方」とあり、

及び同項第七号中「信託の受益権の売買の相手方」とあるのは
「不動産信託受益権売買等の相手方」とする。


   第二節 指定流通機構

(指定等)
第五十条の二の五  第三十四条の二第五項の規定による指定(以下この節において「指定」という。)は、次に掲げる要件を備える者であつて、次条第一項各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものにつき、国土交通省令で定めるところにより、その者の同意を得て行わなければならない。
一  宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であること。
二  第五十条の十四第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者でないこと。
三  役員のうちに次のいずれかに該当する者がないこと。
イ 第五条第一項第一号、第三号又は第三号の二に該当する者
ロ 指定流通機構が第五十条の十四第一項の規定により指定を取り消された場合において、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内にその指定流通機構の役員であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないもの
2  国土交通大臣は、指定をしたときは、指定流通機構の名称及び主たる事務所の所在地、当該指定をした日その他国土交通省令で定める事項を公示しなければならない。
3  指定流通機構は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
4  国土交通大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

(指定流通機構の業務)
第五十条の三  指定流通機構は、この節の定めるところにより、次に掲げる業務を行うものとする。
一  専任媒介契約その他の宅地建物取引業に係る契約の目的物である宅地又は建物の登録に関すること。
二  前号の登録に係る宅地又は建物についての情報を、宅地建物取引業者に対し、定期的に又は依頼に応じて提供すること。
三  前二号に掲げるもののほか、前号の情報に関する統計の作成その他宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を図るために必要な業務
2  指定流通機構は、国土交通省令で定めるところにより、その業務の一部を、国土交通大臣の承認を受けて、他の者に委託することができる。

(差別的取扱いの禁止)
第五十条の四  指定流通機構は、前条第一項第一号及び第二号に掲げる業務(以下この節において「登録業務」という。)の運営に関し、宅地又は建物を登録しようとする者その他指定流通機構を利用しようとする宅地建物取引業者に対して、不当に差別的な取扱いをしてはならない。

(登録業務規程)
第五十条の五  指定流通機構は、登録業務に関する規程(以下この節において「登録業務規程」という。)を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  登録業務規程には、登録業務の実施方法(登録業務の連携、代行等に関する他の指定流通機構との協定の締結を含む。)、登録業務に関する料金その他の国土交通省令で定める事項を定めておかなければならない。この場合において、当該料金は、能率的な業務運営の下における適正な原価を償う限度のものであり、かつ、公正妥当なものでなければならない。
3  国土交通大臣は、第一項の認可をした登録業務規程が登録業務の適正かつ確実な実施上不適当となつたと認めるときは、指定流通機構に対し、その登録業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

(登録を証する書面の発行)
第五十条の六  指定流通機構は、第三十四条の二第五項の規定による登録があつたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該登録をした宅地建物取引業者に対し、当該登録を証する書面を発行しなければならない。

(売買契約等に係る件数等の公表)
第五十条の七  指定流通機構は、当該指定流通機構に登録された宅地又は建物について、国土交通省令で定めるところにより、毎月の売買又は交換の契約に係る件数その他国土交通省令で定める事項を公表しなければならない。

(事業計画等)
第五十条の八  指定流通機構は、毎事業年度、事業計画及び収支予算を作成し、当該事業年度の開始前に(指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後遅滞なく)、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  指定流通機構は、毎事業年度、事業報告書及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に、国土交通大臣に提出しなければならない。

(登録業務に関する情報の目的外使用の禁止)
第五十条の九  指定流通機構の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、登録業務に関して得られた情報を、第五十条の三第一項に規定する業務の用に供する目的以外に使用してはならない。

(役員の選任及び解任)
第五十条の十  指定流通機構の役員の選任及び解任は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2  国土交通大臣は、指定流通機構の役員が、この法律の規定(この法律に基づく命令又は処分を含む。)若しくは第五十条の五第一項の規定により認可を受けた登録業務規程に違反する行為をしたとき、又は登録業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、指定流通機構に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

(監督命令)
第五十条の十一  国土交通大臣は、第五十条の三第一項に規定する業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定流通機構に対し、当該業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

(報告及び検査)
第五十条の十二  国土交通大臣は、第五十条の三第一項に規定する業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定流通機構に対し、当該業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、指定流通機構の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2  前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(登録業務の休廃止)
第五十条の十三  指定流通機構は、登録業務の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、休止し、又は廃止しようとする日の三十日前までに、国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならない。
2  国土交通大臣は、前項の届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

(指定の取消し等)
第五十条の十四  国土交通大臣は、指定流通機構が次の各号のいずれかに該当するときは、当該指定流通機構に対し、その指定を取り消し、又は期間を定めて登録業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一  登録業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
二  この節の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
三  第五十条の五第一項の規定により認可を受けた登録業務規程によらないで登録業務を行つたとき。
2  第十六条の十五第三項から第五項までの規定は、前項の規定による処分に係る聴聞について準用する。
3  国土交通大臣は、第一項の規定による処分をしたときは、その旨を公示しなければならない。

(他の指定流通機構による登録業務の実施等)
第五十条の十五  国土交通大臣は、第五十条の十三第一項の規定による登録業務の全部若しくは一部の休止若しくは廃止の届出があつたとき、前条第一項の規定により指定を取り消したとき若しくは登録業務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、又は指定流通機構が天災その他の事態により登録業務の全部若しくは一部を実施することが困難となつた場合において必要があると認めるときは、当該登録業務の全部又は一部を、第五十条の五第一項の認可をした登録業務規程に従い、他の指定流通機構に行わせることができる。
2  国土交通大臣は、前項の規定により他の指定流通機構に登録業務を行わせることとしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
3  前二項に定めるもののほか、第一項に規定する事由が生じた場合における所要の経過措置は、合理的に必要と判断される範囲内において、国土交通省令で定めることができる。

    第三節 指定保証機関

(指定)
第五十一条  第四十一条第一項第一号の指定(以下この節において「指定」という。)は、宅地又は建物の売買に関し宅地建物取引業者が買主から受領する手付金等の返還債務を保証する事業(以下「手付金等保証事業」という。)を営もうとする者の申請により行う。
2  指定を受けようとする者は、国土交通省令の定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
一  商号
二  役員の氏名及び住所
三  本店、支店その他政令で定める営業所の名称及び所在地
四  資本金の額
3  前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一  定款及び事業方法書
二  収支の見積りその他国土交通省令で定める事項を記載した事業計画書
三  手付金等保証事業に係る保証委託契約約款
四  その他国土交通省令で定める書類
4  前項第一号の事業方法書には、保証の目的の範囲、支店及び政令で定めるその他の営業所の権限に関する事項、保証限度、各保証委託者からの保証の受託の限度、保証委託契約の締結の方法に関する事項、保証の受託の拒否の基準に関する事項その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。

(指定の基準)
第五十二条  国土交通大臣は、指定を申請した者が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その指定をしてはならない。
一  資本金の額が五千万円以上の株式会社でないこと。
二  前号に規定するほか、その行おうとする手付金等保証事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有しないこと。
三  定款の規定又は事業方法書若しくは事業計画書の内容が法令に違反し、又は事業の適正な運営を確保するのに十分でないこと。
四  手付金等保証事業に係る保証委託契約約款の内容が国土交通省令で定める基準に適合しないこと。
五  第六十二条第二項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しないこと。
六  この法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しないこと。
七  役員のうちに次のいずれかに該当する者のあること。
イ 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
ロ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
ハ この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 の規定に違反したことにより、又は刑法第二百四条 、第二百六条、第二百八条、第二百八条の三、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
ニ 指定を受けた者(以下この節において「指定保証機関」という。)が第六十二条第二項の規定により指定を取り消された場合において、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内にその指定保証機関の役員であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないもの。

(変更の届出)
第五十三条  指定保証機関は、第五十一条第二項各号に掲げる事項又は同条第三項第一号若しくは第三号に掲げる書類に記載した事項について変更があつた場合においては、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

(事業の不開始又は休止に基づく指定の取消し)
第五十四条  国土交通大臣は、第六十二条第二項の規定により指定を取り消す場合のほか、指定保証機関が指定を受けた日から三月以内に手付金等保証事業を開始しないとき、又は引き続き三月以上その手付金等保証事業を休止したときは、当該指定保証機関の指定を取り消すことができる。
2  第十六条の十五第三項から第五項までの規定は、前項の規定による処分に係る聴聞について準用する。

(廃業等の届出)
第五十五条  指定保証機関が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に定める者は、二週間以内に、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
一  合併により消滅した場合 消滅した会社を代表する役員であつた者
二  破産手続開始の決定により解散した場合 その破産管財人
三  合併又は破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合 その清算人
四  手付金等保証事業を廃止した場合 その会社を代表する役員
2  前項第二号から第四号までの規定により届出があつたときは、指定は、その効力を失う。

(兼業の制限)
第五十六条  指定保証機関は、手付金等保証事業以外の事業を営んではならない。ただし、買主の利益の保護のため支障を生ずることがないと認められるものについて、国土交通大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
2  指定保証機関が第四十一条の二第一項第一号の指定を受けたときは、前項ただし書の承認を受けたものとみなす。

(責任準備金の計上)
第五十七条  指定保証機関は、事業年度末においてまだ経過していない保証契約があるときは、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額を、事業年度ごとに責任準備金として計上しなければならない。
一  当該保証契約の保証期間のうちまだ経過していない期間に対応する保証料の総額に相当する金額
二  当該事業年度において受け取つた保証料の総額から当該保証料に係る保証契約に基づいて支払つた保証金(当該保証金の支払に基づく保証委託者からの収入金を除く。)、当該保証料に係る保証契約のために積み立てるべき支払備金及び当該事業年度の事業費の合計額を控除した残額に相当する金額
2  指定保証機関が前項の規定により責任準備金を計上した場合においては、その計上した金額は、法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)の規定によるその計上した事業年度の所得の金額又はその計上した連結事業年度の連結所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
3  前項の規定により損金の額に算入された責任準備金の金額は、法人税法 の規定によるその翌事業年度の所得の金額又はその翌連結事業年度の連結所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

(支払備金の積立て)
第五十八条  指定保証機関は、決算期ごとに、次の各号の一に掲げる金額がある場合においては、支払備金として当該各号に掲げる金額を積み立てなければならない。
一  保証契約に基づいて支払うべき保証金その他の金額のうちに決算期までにその支払が終わらないものがある場合においては、その金額
二  保証契約に基づいて支払う義務が生じたと認められる保証金その他の金額がある場合においては、その支払うべきものと認められる金額
三  現に保証金その他の金額について訴訟が係属しているために支払つていないものがある場合においては、その金額

(保証基金)
第五十九条  指定保証機関は、定款の定めるところにより、保証基金を設けなければならない。
2  指定保証機関は、責任準備金をもつて保証債務を支払うことができない場合においては、当該保証債務の弁済に充てる場合に限り、保証基金を使用することができる。

(契約締結の禁止)
第六十条  指定保証機関は、その者が宅地建物取引業者との間において締結する保証委託契約に係る保証債務の額の合計額が、政令で定める額をこえることとなるときは、保証委託契約を締結してはならない。

(改善命令)
第六十一条  国土交通大臣は、指定保証機関が第五十二条第二号から第四号までの規定に該当することとなつた場合において、買主の利益を保護するため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該指定保証機関に対し、財産の状況又はその事業の運営を改善するため必要な措置を執るべきことを命ずることができる。

(指定の取消し等)
第六十二条  国土交通大臣は、指定保証機関が次の各号の一に該当する場合又はこの法律の規定に違反した場合においては、当該指定保証機関に対して、必要な指示をすることができる。
一  手付金等保証事業に関しその関係者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき。
二  手付金等保証事業に関し不誠実な行為をしたとき。
三  手付金等保証事業に関し他の法令に違反し、指定保証機関として不適当であると認められるとき。
2  国土交通大臣は、指定保証機関が次の各号の一に該当する場合においては、当該指定保証機関に対し、その指定を取り消し、又は六月以内の期間を定めて手付金等保証事業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一  不正の手段により指定を受けたとき。
二  第五十二条第一号、第六号又は第七号に該当することとなつたとき。
三  第五十三条の規定による届出を怠つたとき。
四  第五十五条第一項の規定による届出がなくて同項第二号から第四号までの一に該当する事実が判明したとき。
五  第五十六条第一項の規定に違反して手付金等保証事業以外の事業を営んだとき。
六  第六十条の規定に違反して保証委託契約を締結したとき。
七  前条の規定による改善命令に違反したとき。
八  前項の規定による指示に従わなかつたとき。
九  この法律の規定に基づく国土交通大臣の処分に違反したとき。
3  国土交通大臣は、第一項の規定により必要な指示をし、又は前項の規定により手付金等保証事業の全部若しくは一部の停止を命じようとするときは、行政手続法第十三条第一項 の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
4  第十六条の十五第三項から第五項までの規定は、第一項又は第二項の規定による処分に係る聴聞について準用する。

(事業報告書等の提出)
第六十三条  指定保証機関は、毎事業年度開始前に、収支の見積りその他国土交通省令で定める事項を記載した事業計画書を作成し、国土交通大臣に提出しなければならない。
2  指定保証機関は、事業計画書に記載した事項を変更したときは、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
3  指定保証機関は、事業年度ごとに、国土交通省令で定める様式による事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、国土交通大臣に提出しなければならない。

(報告及び検査)
第六十三条の二  国土交通大臣は、手付金等保証事業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、指定保証機関に対しその業務に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又はその職員をしてその業務を行う場所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。
2  前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

    第四節 指定保管機関

(指定等)
第六十三条の三  第四十一条の二第一項第一号の指定(以下この節において「指定」という。)は、宅地又は建物の売買(第四十一条第一項に規定する売買を除く。)に関し、宅地建物取引業者に代理して手付金等を受領し、当該宅地建物取引業者が受領した手付金等の額に相当する額の金銭を保管する事業(以下「手付金等保管事業」という。)を営もうとする者の申請により行う。
2  前節(第五十一条第一項、第五十七条から第六十条まで及び第六十二条第二項第六号を除く。)の規定は、指定保管機関について準用する。この場合において、第五十一条第二項第三号中「政令」とあるのは「国土交通省令」と、同条第三項第三号及び第五十二条第四号中「保証委託契約約款」とあるのは「手付金等寄託契約約款」と、第五十一条第四項中「保証の目的の範囲、支店及び政令で定めるその他の営業所の権限に関する事項、保証限度、各保証委託者からの保証の受託の限度、保証委託契約の締結の方法に関する事項、保証の受託の拒否の基準に関する事項」とあるのは「手付金等の保管に関する事項」と、第五十二条第五号及び第七号ニ中「の規定により」とあるのは「又は第六十四条第一項の規定により」と、第五十三条中「書類」とあるのは「書類(事業方法書を除く。)」と、第五十六条第二項中「第四十一条の二第一項第一号」とあるのは「第四十一条第一項第一号」と読み替えるものとする。

(事業方法書の変更)
第六十三条の四  指定保管機関は、前条第二項において準用する第五十一条第三項第一号の事業方法書を変更しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければならない。

(寄託金保管簿)
第六十三条の五  指定保管機関は、国土交通省令で定めるところにより、寄託金保管簿を備え、国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

(指定の取消し等)
第六十四条  国土交通大臣は、第六十三条の三第二項において準用する第五十四条第一項又は第六十二条第二項の規定により指定を取り消す場合のほか、指定保管機関が次の各号の一に該当する場合においては、当該指定保管機関に対し、その指定を取り消し、又は六月以内の期間を定めて手付金等保管事業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一  第六十三条の三第二項において準用する第五十一条第三項第一号の事業方法書(第六十三条の四の規定による認可を受けたものを含む。第八十二条において同じ。)によらないで手付金等保管事業を営んだとき。
二  前条の規定に違反して寄託金保管簿を備えず、これに同条に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は寄託金保管簿を保存しなかつたとき。
2  国土交通大臣は、前項の規定により手付金等保管事業の全部又は一部の停止を命じようとするときは、行政手続法第十三条第一項 の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
3  第十六条の十五第三項から第五項までの規定は、第一項の規定による処分に係る聴聞について準用する。


   第五章の二 宅地建物取引業保証協会

(指定)
第六十四条の二  国土交通大臣は、次に掲げる要件を備える者の申請があつた場合において、その者が次条第一項各号に掲げる業務の全部について適正な計画を有し、かつ、確実にその業務を行うことができると認められるときは、この章に定めるところにより同項各号に掲げる業務を行う者として、指定することができる。
一  申請者が一般社団法人であること。
二  申請者が宅地建物取引業者のみを社員とするものであること。
三  申請者が第六十四条の二十二第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者でないこと。
四  申請者の役員のうちに次のいずれかに該当する者がないこと。
イ 第五条第一項第一号から第四号までのいずれかに該当する者
ロ 指定を受けた者(以下この章において「宅地建物取引業保証協会」という。)が第六十四条の二十二第一項の規定により指定を取り消された場合において、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内にその役員であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないもの
2  国土交通大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該宅地建物取引業保証協会の名称、住所及び事務所の所在地並びに第六十四条の八第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日を官報で公示するとともに、当該宅地建物取引業保証協会の社員である宅地建物取引業者が免許を受けた都道府県知事にその社員である旨を通知するものとする。
3  宅地建物取引業保証協会は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
4  国土交通大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を官報に公示しなければならない。
5  第一項の指定の申請に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。

(業務)
第六十四条の三  宅地建物取引業保証協会は、次の各号に掲げる業務をこの章に定めるところにより適正かつ確実に実施しなければならない。
一  宅地建物取引業者の相手方等からの社員の取り扱つた宅地建物取引業に係る取引に関する苦情の解決
二  取引主任者その他宅地建物取引業の業務に従事し、又は従事しようとする者に対する研修
三  社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含む。)の有するその取引により生じた債権に関し弁済をする業務(以下「弁済業務」という。)
2  宅地建物取引業保証協会は、前項の業務のほか、社員である宅地建物取引業者との契約により、当該宅地建物取引業者が受領した支払金又は預り金の返還債務その他宅地建物取引業に関する債務を負うこととなつた場合においてその返還債務その他宅地建物取引業に関する債務を連帯して保証する業務(以下「一般保証業務」という。)及び手付金等保管事業を行うことができる。
3  宅地建物取引業保証協会は、前二項に規定するもののほか、国土交通大臣の承認を受けて、宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な業務を行うことができる。
4  宅地建物取引業保証協会は、国土交通省令の定めるところにより、その業務の一部を、国土交通大臣の承認を受けて、他の者に委託することができる。

(社員の加入等)
第六十四条の四  一の宅地建物取引業保証協会の社員である者は、他の宅地建物取引業保証協会の社員となることができない。
2  宅地建物取引業保証協会は、新たに社員が加入し、又は社員がその地位を失つたときは、直ちに、その旨を当該社員である宅地建物取引業者が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に報告しなければならない。
3  宅地建物取引業保証協会は、社員が社員となる前(第六十四条の八第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日前に社員となつた者については当該弁済業務開始日前)に当該社員と宅地建物取引業に関し取引をした者の有するその取引により生じた債権に関し同項の規定による弁済が行なわれることにより弁済業務の円滑な運営に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、当該社員に対し、担保の提供を求めることができる。

(苦情の解決)
第六十四条の五  宅地建物取引業保証協会は、宅地建物取引業者の相手方等から社員の取り扱つた宅地建物取引業に係る取引に関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するとともに、当該社員に対し当該苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
2  宅地建物取引業保証協会は、前項の申出に係る苦情の解決について必要があると認めるときは、当該社員に対し、文書若しくは口頭による説明を求め、又は資料の提出を求めることができる。
3  社員は、宅地建物取引業保証協会から前項の規定による求めがあつたときは、正当な理由がある場合でなければ、これを拒んではならない。
4  宅地建物取引業保証協会は、第一項の申出及びその解決の結果について社員に周知させなければならない。

(宅地建物取引業に関する研修)
第六十四条の六  宅地建物取引業保証協会は、一定の課程を定め、取引主任者の職務に関し必要な知識及び能力についての研修その他宅地建物取引業の業務に従事し、又は従事しようとする者に対する宅地建物取引業に関する研修を実施しなければならない。

(弁済業務保証金の供託)
第六十四条の七  宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の九第一項又は第二項の規定により弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から一週間以内に、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。
2  弁済業務保証金の供託は、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所にしなければならない。
3  第二十五条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定により供託する場合に準用する。この場合において、同条第四項中「その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に」とあるのは、「当該供託に係る社員である宅地建物取引業者が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に当該社員に係る供託をした旨を」と読み替えるものとする。

(弁済業務保証金の還付等)
第六十四条の八  宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含む。)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき第二十五条第二項の政令で定める営業保証金の額に相当する額の範囲内(当該社員について、すでに次項の規定により認証した額があるときはその額を控除し、第六十四条の十第二項の規定により納付を受けた還付充当金があるときはその額を加えた額の範囲内)において、当該宅地建物取引業保証協会が供託した弁済業務保証金について、当該宅地建物取引業保証協会について国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後、弁済を受ける権利を有する。
2  前項の権利を有する者がその権利を実行しようとするときは、同項の規定により弁済を受けることができる額について当該宅地建物取引業保証協会の認証を受けなければならない。
3  宅地建物取引業保証協会は、第一項の権利の実行があつた場合においては、法務省令・国土交通省令で定める日から二週間以内に、その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。
4  前条第三項の規定は、前項の規定により供託する場合に準用する。
5  第一項の権利の実行に関し必要な事項は法務省令・国土交通省令で、第二項の認証に関し必要な事項は国土交通省令で定める。

(弁済業務保証金分担金の納付等)
第六十四条の九  次の各号に掲げる者は、当該各号に掲げる日までに、弁済業務保証金に充てるため、主たる事務所及びその他の事務所ごとに政令で定める額の弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
一  宅地建物取引業者で宅地建物取引業保証協会に加入しようとする者 その加入しようとする日
二  第六十四条の二第一項の規定による指定の日にその指定を受けた宅地建物取引業保証協会の社員である者 前条第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日の一月前の日
2  宅地建物取引業保証協会の社員は、前項の規定による弁済業務保証金分担金を納付した後に、新たに事務所を設置したとき(第七条第一項各号の一に該当する場合において事務所の増設があつたときを含むものとする。)は、その日から二週間以内に、同項の政令で定める額の弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
3  宅地建物取引業保証協会の社員は、第一項第二号に規定する期日までに、又は前項に規定する期間内に、これらの規定による弁済業務保証金分担金を納付しないときは、その地位を失う。
4  第一項の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、弁済業務保証金の追加の供託及び弁済業務保証金分担金の追加納付又は弁済業務保証金の取戻し及び弁済業務保証金分担金の返還に関して、所要の経過措置(経過措置に関し監督上必要な措置を含む。)を定めることができる。

( 還付充当金の納付等)
第六十四条の十  宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の八第一項の権利の実行により弁済業務保証金の還付があつたときは、当該還付に係る社員又は社員であつた者に対し、当該還付額に相当する額の還付充当金を宅地建物取引業保証協会に納付すべきことを通知しなければならない。
2  前項の通知を受けた社員又は社員であつた者は、その通知を受けた日から二週間以内に、その通知された額の還付充当金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
3  宅地建物取引業保証協会の社員は、前項に規定する期間内に第一項の還付充当金を納付しないときは、その地位を失う。

(弁済業務保証金の取戻し等)
第六十四条の十一  宅地建物取引業保証協会は、社員が社員の地位を失つたときは当該社員であつた者が第六十四条の九第一項及び第二項の規定により納付した弁済業務保証金分担金の額に相当する額の弁済業務保証金を、社員がその一部の事務所を廃止したため当該社員につき同条第一項及び第二項の規定により納付した弁済業務保証金分担金の額が同条第一項の政令で定める額を超えることになつたときはその超過額に相当する額の弁済業務保証金を取り戻すことができる。
2  宅地建物取引業保証協会は、前項の規定により弁済業務保証金を取りもどしたときは、当該社員であつた者又は社員に対し、その取りもどした額に相当する額の弁済業務保証金分担金を返還する。
3  前項の場合においては、当該社員が社員の地位を失つたときは次項に規定する期間が経過した後に、宅地建物取引業保証協会が当該社員であつた者又は社員に対して債権を有するときはその債権に関し弁済が完了した後に、宅地建物取引業保証協会が当該社員であつた者又は社員に関し第六十四条の八第二項の規定による認証をしたときは当該認証した額に係る前条第一項の還付充当金の債権に関し弁済が完了した後に、前項の弁済業務保証金分担金を返還する。
4  宅地建物取引業保証協会は、社員が社員の地位を失つたときは、当該社員であつた者に係る宅地建物取引業に関する取引により生じた債権に関し第六十四条の八第一項の権利を有する者に対し、六月を下らない一定期間内に同条第二項の規定による認証を受けるため申し出るべき旨を公告しなければならない。
5  宅地建物取引業保証協会は、前項に規定する期間内に申出のなかつた同項の債権に関しては、第六十四条の八第二項の規定による認証をすることができない。
6  第三十条第三項の規定は、第一項の規定により弁済業務保証金を取りもどす場合に準用する。

(弁済業務保証金準備金)
第六十四条の十二  宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の八第三項の規定により弁済業務保証金を供託する場合において還付充当金の納付がなかつたときの弁済業務保証金の供託に充てるため、弁済業務保証金準備金を積み立てなければならない。
2  宅地建物取引業保証協会は、弁済業務保証金(第六十四条の七第三項及び第六十四条の八第四項において準用する第二十五条第三項の規定により供託された有価証券を含む。)から生ずる利息又は配当金を弁済業務保証金準備金に繰り入れなければならない。
3  宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の八第三項の規定により弁済業務保証金を供託する場合において、第一項の弁済業務保証金準備金をこれに充ててなお不足するときは、その不足額に充てるため、社員に対し、その者に係る第六十四条の九第一項の政令で定める弁済業務保証金分担金の額に応じ特別弁済業務保証金分担金を宅地建物取引業保証協会に納付すべきことを通知しなければならない。
4  前項の通知を受けた社員は、その通知を受けた日から一月以内に、その通知された額の特別弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
5  第六十四条の十第三項の規定は、前項の場合に準用する。
6  宅地建物取引業保証協会は、弁済業務保証金準備金を第六十四条の八第三項の規定による弁済業務保証金の供託に充てた後において、第六十四条の十第二項の規定により当該弁済業務保証金の供託に係る還付充当金の納付を受けたときは、その還付充当金を弁済業務保証金準備金に繰り入れなければならない。
7  宅地建物取引業保証協会は、弁済業務保証金準備金の額が国土交通省令で定める額を超えることとなるときは、第六十四条の三第一項から第三項までに規定する業務の実施に要する費用に充て、又は宅地建物取引業の健全な発達に寄与する事業に出えんするため、国土交通大臣の承認を受けて、その超過額の弁済業務保証金準備金を取り崩すことができる。

(営業保証金の供託の免除)
第六十四条の十三  宅地建物取引業保証協会の社員は、第六十四条の八第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後においては、宅地建物取引業者が供託すべき営業保証金を供託することを要しない。

(供託を免除された場合の営業保証金の取りもどし)
第六十四条の十四  宅地建物取引業者は、前条の規定により営業保証金を供託することを要しなくなつたときは、供託した営業保証金を取りもどすことができる。
2  第三十条第三項の規定は、前項の規定により営業保証金を取りもどす場合に準用する。

(社員の地位を失つた場合の営業保証金の供託)
第六十四条の十五  宅地建物取引業者は、第六十四条の八第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後に宅地建物取引業保証協会の社員の地位を失つたときは、当該地位を失つた日から一週間以内に、第二十五条第一項から第三項までの規定により営業保証金を供託しなければならない。この場合においては、同条第四項の規定の適用があるものとする。

(事業計画書等)
第六十四条の十六  宅地建物取引業保証協会は、毎事業年度開始前に(第六十四条の二第一項の規定による指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後すみやかに)、収支の見積りその他国土交通省令で定める事項を記載した事業計画書を作成し、国土交通大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2  宅地建物取引業保証協会は、事業年度ごとに、国土交通省令で定める様式による事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、国土交通大臣に提出しなければならない。

(一般保証業務)
第六十四条の十七  宅地建物取引業保証協会は、一般保証業務を行なう場合においては、あらかじめ、国土交通省令の定めるところにより、国土交通大臣の承認を受けなければならない。
2  宅地建物取引業保証協会は、一般保証業務を廃止したときは、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
3  第五十七条から第六十条までの規定は、一般保証業務を行なう宅地建物取引業保証協会に準用する。この場合において、第六十条中「政令」とあるのは、「国土交通省令」と読み替えるものとする。

(手付金等保管事業)
第六十四条の十七の二  宅地建物取引業保証協会は、手付金等保管事業を行う場合においては、あらかじめ、事業方法書を定め、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣の承認を受けなければならない。
2  宅地建物取引業保証協会が手付金等保管事業について前項の承認を受けたときは、第四十一条の二第一項第一号の指定を受けたものとみなす。この場合においては、第六十三条の三及び第六十四条の規定は適用せず、第六十三条の四中「前条第二項において準用する第五十一条第三項第一号」とあるのは、「第六十四条の十七の二第一項」と読み替えて、同条の規定を適用する。
3  宅地建物取引業保証協会は、手付金等保管事業を廃止したときは、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。この場合において、届出があつたときは、第一項の承認は、その効力を失う。

(報告及び検査)
第六十四条の十八  第六十三条の二の規定は、宅地建物取引業保証協会について準用する。この場合において、同条第一項中「手付金等保証事業」とあるのは、「宅地建物取引業保証協会の業務」と読み替えるものとする。

(役員の選任等)
第六十四条の十九  宅地建物取引業保証協会の役員の選任及び解任並びに解散の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

( 改善命令)
第六十四条の二十  国土交通大臣は、この章の規定を施行するため必要があると認めるときは、その必要の限度において、宅地建物取引業保証協会に対し、財産の状況又はその事業の運営を改善するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(解任命令)
第六十四条の二十一  国土交通大臣は、宅地建物取引業保証協会の役員が、この法律、この法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき、又はその在任により当該宅地建物取引業保証協会が第六十四条の二第一項第四号に掲げる要件に適合しなくなるときは、当該宅地建物取引業保証協会に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

(指定の取消し等)
第六十四条の二十二  国土交通大臣は、宅地建物取引業保証協会が次の各号の一に該当するときは、当該宅地建物取引業保証協会に対して、第六十四条の二第一項の規定による指定を取り消すことができる。
一  弁済業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
二  この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。
三  第六十四条の二十又は前条の規定による処分に違反したとき。
2  国土交通大臣は、第六十四条の二第一項の規定による指定を取り消したとき、又は宅地建物取引業保証協会が解散したときは、その旨を官報で公示しなければならない。
3  第十六条の十五第三項から第五項までの規定は、第一項の規定による処分に係る聴聞について準用する。