(指定の取消し等の場合の営業保証金の供託)
第六十四条の二十三  宅地建物取引業保証協会が第六十四条の二第一項の規定による指定を取り消され、又は解散した場合においては、当該宅地建物取引業保証協会の社員であつた宅地建物取引業者は、前条第二項の規定による公示の日から二週間以内に、第二十五条第一項から第三項までの規定により営業保証金を供託しなければならない。この場合においては、同条第四項の規定の適用があるものとする。

(指定の取消し等の場合の弁済業務)
第六十四条の二十四  第六十四条の二第一項の規定による指定を取り消され、又は解散した宅地建物取引業保証協会(以下この条及び次条において「旧協会」という。)は、第六十四条の二十二第二項の規定による公示の日から一週間以内に、指定を取り消され、又は解散した日において社員であつた宅地建物取引業者に係る宅地建物取引業に関する取引により生じた債権に関し第六十四条の八第一項の権利を有する者に対し、六月を下らない一定期間内に同条第二項の規定による認証を受けるため申し出るべき旨を公告しなければならない。
2  旧協会は、前項の規定による公告をした後においては、当該公告に定める期間内に申出のあつた同項に規定する債権について、なお第六十四条の八第二項の規定による認証の事務を行なうものとする。
3  旧協会は、第一項の公告に定める期間内に第六十四条の八第二項の規定による認証を受けるための申出があつた場合において、同項に規定する認証に係る事務が終了したときは、その時において供託されている弁済業務保証金のうちその時までに同項の規定により認証した額で同条第一項の権利が実行されていないものの合計額を控除した額の弁済業務保証金を取りもどすことができる。
4  旧協会は、第一項の公告に定める期間内に第六十四条の八第二項の規定による認証を受けるための申出がなかつたときは、供託されている弁済業務保証金を取りもどすことができる。ただし、同項の規定により認証した額で同条第一項の権利が実行されていないものの合計額に相当する額の弁済業務保証金については、この限りでない。
5  旧協会は、第六十四条の八第二項の規定又は第二項の規定により認証した額で第六十四条の二十二第二項の規定による公示の日から十年を経過する日までに第六十四条の八第一項の権利が実行されていないものに係る弁済業務保証金については、これを取りもどすことができる。
6  第三十条第三項の規定は、第一項の規定による公告及び前三項の規定による弁済業務保証金の取りもどしについて準用する。

(指定の取消し等の場合の弁済業務保証金等の交付)
第六十四条の二十五  旧協会は、前条第三項から第五項までの規定により取り戻した弁済業務保証金、第六十四条の二第一項の規定による指定を取り消され、又は解散した日(以下この条において「指定取消し等の日」という。)以後において第六十四条の十第二項の規定により納付された還付充当金並びに弁済業務保証金準備金(指定取消し等の日以後において第六十四条の十二第四項の規定により納付された特別弁済業務保証金分担金を含む。)を、指定取消し等の日に社員であつた者に対し、これらの者に係る第六十四条の九第一項の政令で定める弁済業務保証金分担金の額に応じ、国土交通省令の定めるところにより、交付する。

   第六章 監督

(指示及び業務の停止)
第六十五条  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許(第五十条の二第一項の認可を含む。次項及び第七十条第二項において同じ。)を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律 (平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第十一条第一項 若しくは第六項 、第十二条第一項、第十三条、第十五条若しくは履行確保法第十六条 において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項 若しくは第二項 若しくは第八条第一項 若しくは第二項 の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
一  業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき。
二  業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき、又は取引の公正を害するおそれが大であるとき。
三  業務に関し他の法令(履行確保法 及びこれに基づく命令を除く。)に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると認められるとき。
四  取引主任者が、第六十八条又は第六十八条の二第一項の規定による処分を受けた場合において、宅地建物取引業者の責めに帰すべき理由があるとき。
2   国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
一  前項第一号又は第二号に該当するとき(認可宅地建物取引業者の行う取引一任代理等に係るものに限る。)。
一の二  前項第三号又は第四号に該当するとき。
二  第十三条、第十五条第三項、第二十五条第五項(第二十六条第二項において準用する場合を含む。)、第二十八条第一項、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項(第三十四条の三において準用する場合を含む。)、第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二、第四十八条第一項若しくは第三項、第六十四条の九第二項、第六十四条の十第二項、第六十四条の十二第四項、第六十四条の十五前段若しくは第六十四条の二十三前段の規定又は履行確保法第十一条第一項 、第十三条若しくは履行確保法第十六条 において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項 の規定に違反したとき。
三  前項又は次項の規定による指示に従わないとき。
四  この法律の規定に基づく国土交通大臣又は都道府県知事の処分に違反したとき。
五  前三号に規定する場合のほか、宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
六  営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が業務の停止をしようとするとき以前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
七  法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに業務の停止をしようとするとき以前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者があるに至つたとき。
八  個人である場合において、政令で定める使用人のうちに業務の停止をしようとするとき以前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者があるに至つたとき。
3  都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、第一項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは履行確保法第十一条第一項 若しくは第六項 、第十二条第一項、第十三条、第十五条若しくは履行確保法第十六条 において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項 若しくは第二項 若しくは第八条第一項 若しくは第二項 の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
4  都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
一  第一項第三号又は第四号に該当するとき。
二  第十三条、第十五条第三項(事務所に係る部分を除く。)、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項(第三十四条の三において準用する場合を含む。)、第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二又は第四十八条第一項若しくは第三項の規定に違反したとき。
三  第一項又は前項の規定による指示に従わないとき。
四  この法律の規定に基づく国土交通大臣又は都道府県知事の処分に違反したとき。
五  前三号に規定する場合のほか、不正又は著しく不当な行為をしたとき。

(免許の取消し)
第六十六条  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。
一  第五条第一項第一号、第三号又は第三号の二に該当するに至つたとき。
二  営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が第五条第一項第一号から第三号の二までのいずれかに該当するに至つたとき。
三  法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに第五条第一項第一号から第三号の二までのいずれかに該当する者があるに至つたとき。
四  個人である場合において、政令で定める使用人のうちに第五条第一項第一号から第三号の二までのいずれかに該当する者があるに至つたとき。
五  第七条第一項各号のいずれかに該当する場合において第三条第一項の免許を受けていないことが判明したとき。
六  免許を受けてから一年以内に事業を開始せず、又は引き続いて一年以上事業を休止したとき。
七  第十一条第一項の規定による届出がなくて同項第三号から第五号までのいずれかに該当する事実が判明したとき。
八  不正の手段により第三条第一項の免許を受けたとき。
九  前条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき、又は同条第二項若しくは第四項の規定による業務の停止の処分に違反したとき。
2  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が第三条の二第一項の規定により付された条件に違反したときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。

第六十七条  国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者の事務所の所在地を確知できないとき、又はその免許を受けた宅地建物取引業者の所在(法人である場合においては、その役員の所在をいう。)を確知できないときは、官報又は当該都道府県の公報でその事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該宅地建物取引業者から申出がないときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。
2  前項の規定による処分については、行政手続法第三章 の規定は、適用しない。

(認可の取消し等)
第六十七条の二  国土交通大臣は、認可宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該認可を取り消すことができる。
一  認可を受けてから一年以内に第五十条の二第一項各号のいずれかに該当する契約を締結せず、又は引き続いて一年以上同項各号のいずれかに該当する契約を締結していないとき。
二  不正の手段により第五十条の二第一項の認可を受けたとき。
三  第六十五条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき、又は同項の規定による業務の停止の処分に違反したとき。
2  国土交通大臣は、認可宅地建物取引業者が第五十条の二の二第一項の規定により付された条件に違反したときは、当該認可宅地建物取引業者に係る認可を取り消すことができる。
3  第三条第二項の有効期間が満了した場合において免許の更新がなされなかつたとき、第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、又は認可宅地建物取引業者が同条第一項第二号に該当したとき、若しくは第二十五条第七項、第六十六条若しくは第六十七条第一項の規定により免許を取り消されたときは、当該認可宅地建物取引業者に係る認可は、その効力を失う。

(取引主任者としてすべき事務の禁止等)
第六十八条  都道府県知事は、その登録を受けている取引主任者が次の各号の一に該当する場合においては、当該取引主任者に対し、必要な指示をすることができる。
一  宅地建物取引業者に自己が専任の取引主任者として従事している事務所以外の事務所の専任の取引主任者である旨の表示をすることを許し、当該宅地建物取引業者がその旨の表示をしたとき。
二  他人に自己の名義の使用を許し、当該他人がその名義を使用して取引主任者である旨の表示をしたとき。
三  取引主任者として行う事務に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
2  都道府県知事は、その登録を受けている取引主任者が前項各号の一に該当する場合又は同項若しくは次項の規定による指示に従わない場合においては、当該取引主任者に対し、一年以内の期間を定めて、取引主任者としてすべき事務を行うことを禁止することができる。
3  都道府県知事は、当該都道府県の区域内において、他の都道府県知事の登録を受けている取引主任者が第一項各号の一に該当する場合においては、当該取引主任者に対し、必要な指示をすることができる。
4  都道府県知事は、当該都道府県の区域内において、他の都道府県知事の登録を受けている取引主任者が第一項各号の一に該当する場合又は同項若しくは前項の規定による指示に従わない場合においては、当該取引主任者に対し、一年以内の期間を定めて、取引主任者としてすべき事務を行うことを禁止することができる。

(登録の消除)
第六十八条の二  都道府県知事は、その登録を受けている取引主任者が次の各号の一に該当する場合においては、当該登録を消除しなければならない。
一  第十八条第一項第一号から第五号の二までの一に該当するに至つたとき。
二  不正の手段により第十八条第一項の登録を受けたとき。
三  不正の手段により取引主任者証の交付を受けたとき。
四  前条第一項各号の一に該当し情状が特に重いとき、又は同条第二項若しくは第四項の規定による事務の禁止の処分に違反したとき。
2  第十八条第一項の登録を受けている者で取引主任者証の交付を受けていないものが次の各号の一に該当する場合においては、当該登録をしている都道府県知事は、当該登録を消除しなければならない。
一  第十八条第一項第一号から第五号の二までの一に該当するに至つたとき。
二  不正の手段により第十八条第一項の登録を受けたとき。
三  取引主任者としてすべき事務を行い、情状が特に重いとき。

(聴聞の特例)
第六十九条  国土交通大臣又は都道府県知事は、第六十五条又は第六十八条の規定による処分をしようとするときは、行政手続法第十三条第一項 の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
2  第十六条の十五第三項から第五項までの規定は、第六十五条、第六十六条、第六十七条の二第一項若しくは第二項、第六十八条又は前条の規定による処分に係る聴聞について準用する。

(監督処分の公告等)
第七十条  国土交通大臣又は都道府県知事は、第六十五条第二項若しくは第四項、第六十六条又は第六十七条の二第一項若しくは第二項の規定による処分をしたときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
2  国土交通大臣は、第六十五条第二項の規定による処分(第五十条の二第一項の認可に係る処分に限る。)又は第六十七条の二第一項若しくは第二項の規定による処分をした場合であつて、当該認可宅地建物取引業者が都道府県知事の免許を受けたものであるときは、遅滞なく、その旨を当該都道府県知事に通知しなければならない。
3  都道府県知事は、第六十五条第三項又は第四項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、当該宅地建物取引業者が国土交通大臣の免許を受けたものであるときは国土交通大臣に報告し、当該宅地建物取引業者が他の都道府県知事の免許を受けたものであるときは当該他の都道府県知事に通知しなければならない。
4  都道府県知事は、第六十八条第三項又は第四項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、その旨を当該取引主任者の登録をしている都道府県知事に通知しなければならない。

(指導等)
第七十一条  国土交通大臣はすべての宅地建物取引業者に対して、都道府県知事は当該都道府県の区域内で宅地建物取引業を営む宅地建物取引業者に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる。

(内閣総理大臣との協議等)
第七十一条の二  国土交通大臣は、その免許を受けた宅地建物取引業者が第三十一条第一項、第三十二条から第三十四条まで、第三十四条の二第一項(第三十四条の三において準用する場合を含む。次項において同じ。)、第三十五条(第三項を除き、同条第四項及び第五項にあつては、同条第一項及び第二項に係る部分に限る。次項において同じ。)、第三十五条の二から第四十五条まで、第四十七条又は第四十七条の二の規定に違反した場合(当該宅地建物取引業者が、第三十五条第一項第十四号イに規定する宅地建物取引業者の相手方等と契約を締結する場合に限る。)において、第六十五条第一項(第二号から第四号までを除く。)若しくは第二項(第一号及び第一号の二を除く。)又は第六十六条第一項(第一号から第八号までを除く。)の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。
2  内閣総理大臣は、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者の第三十五条第一項第十四号イに規定する宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護を図るため必要があると認めるときは、国土交通大臣に対し、前項に規定する処分(当該宅地建物取引業者が第三十一条第一項、第三十二条から第三十四条まで、第三十四条の二第一項、第三十五条から第四十五条まで、第四十七条又は第四十七条の二の規定に違反した場合(当該宅地建物取引業者が同号イに規定する宅地建物取引業者の相手方等と契約を締結する場合に限る。)におけるものに限る。)に関し、必要な意見を述べることができる。

(報告及び検査)
第七十二条  国土交通大臣は、宅地建物取引業を営むすべての者に対して、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で宅地建物取引業を営む者に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その業務について必要な報告を求め、又はその職員に事務所その他その業務を行なう場所に立ち入り、帳簿、書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。
2  内閣総理大臣は、前条第二項の規定による意見を述べるため特に必要があると認めるときは、同項に規定する宅地建物取引業者に対して、その業務について必要な報告を求め、又はその職員に事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。
3  国土交通大臣は、すべての取引主任者に対して、都道府県知事は、その登録を受けている取引主任者及び当該都道府県の区域内でその事務を行う取引主任者に対して、取引主任者の事務の適正な遂行を確保するため必要があると認めるときは、その事務について必要な報告を求めることができる。
4  第一項及び第二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
5  第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
6  内閣総理大臣は、第二項の規定による報告を求め、又は立入検査をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣に協議しなければならない。

   第七章 雑則

(宅地建物取引業審議会)
第七十三条  都道府県は、都道府県知事の諮問に応じて宅地建物取引業に関する重要事項を調査審議させるため、地方自治法第百三十八条の四第三項 の規定により、宅地建物取引業審議会を置くことができるものとする。

(宅地建物取引業協会及び宅地建物取引業協会連合会)
第七十四条  その名称中に宅地建物取引業協会という文字を用いる一般社団法人(次項に規定するものを除く。)は、宅地建物取引業の適正な運営を確保するとともに宅地建物取引業の健全な発達を図るため、社員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とし、かつ、一の都道府県の区域内において事業を行う旨及び宅地建物取引業者を社員とする旨の定款の定めがあるものでなければならない。
2  その名称中に宅地建物取引業協会連合会という文字を用いる一般社団法人は、宅地建物取引業の適正な運営を確保するとともに宅地建物取引業の健全な発達を図るため、社員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とし、かつ、全国において事業を行う旨及び前項に規定する一般社団法人(以下「宅地建物取引業協会」という。)を社員とする旨の定款の定めがあるものでなければならない。
3  前二項に規定する定款の定めは、これを変更することができない。
4  宅地建物取引業協会及び第二項に規定する一般社団法人(以下「宅地建物取引業協会連合会」という。)は、成立したときは、成立の日から二週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、宅地建物取引業協会にあつては都道府県知事に、宅地建物取引業協会連合会にあつては国土交通大臣に届け出なければならない。
5  国土交通大臣は、宅地建物取引業協会連合会に対して、都道府県知事は、宅地建物取引業協会に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は宅地建物取引業の健全な発達を図るため、必要な事項に関して報告を求め、又は必要な指導、助言及び勧告をすることができる。

(名称の使用制限)
第七十五条  宅地建物取引業協会及び宅地建物取引業協会連合会でない者は、宅地建物取引業協会又は宅地建物取引業協会連合会という文字をその名称中に用いてはならない。

(宅地建物取引業者の使用人等の秘密を守る義務)
第七十五条の二  宅地建物取引業者の使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、宅地建物取引業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業者の使用人その他の従業者でなくなつた後であつても、また同様とする。

(内閣総理大臣への資料提供等)
第七十五条の三  内閣総理大臣は、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者の第三十五条第一項第十四号イに規定する宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護を図るため必要があると認めるときは、国土交通大臣に対し、資料の提供、説明その他必要な協力を求めることができる。

(免許の取消し等に伴う取引の結了)
第七十六条  第三条第二項の有効期間が満了したとき、第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、又は宅地建物取引業者が第十一条第一項第一号若しくは第二号に該当したとき、若しくは第二十五条第七項、第六十六条若しくは第六十七条第一項の規定により免許を取り消されたときは、当該宅地建物取引業者であつた者又はその一般承継人は、当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす。

(信託会社等に関する特例)
第七十七条  第三条から第七条まで、第十二条、第二十五条第七項、第六十六条及び第六十七条第一項の規定は、信託業法 (平成十六年法律第百五十四号)第三条 又は第五十三条第一項 の免許を受けた信託会社(政令で定めるものを除く。次項及び第三項において同じ。)には、適用しない。
2  宅地建物取引業を営む信託会社については、前項に掲げる規定を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなしてこの法律の規定を適用する。
3  信託会社は、宅地建物取引業を営もうとするときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
4  信託業務を兼営する金融機関及び第一項の政令で定める信託会社に対するこの法律の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

第七十七条の二  第三条から第七条まで、第十二条、第二十五条第七項、第六十六条及び第六十七条第一項の規定は、認可宅地建物取引業者がその資産の運用を行う登録投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十三項 に規定する登録投資法人をいう。)には、適用しない。
2  前項の登録投資法人については、前項に掲げる規定並びに第十五条、第三十五条、第三十五条の二、第三十七条及び第四十八条から第五十条までの規定を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなしてこの法律の規定を適用する。

(適用の除外)
第七十八条  この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。
2  第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。

(権限の委任)
第七十八条の二  この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。
2  この法律に規定する内閣総理大臣の権限(政令で定めるものを除く。)は、消費者庁長官に委任する。

(申請書等の経由)
第七十八条の三  第四条第一項、第九条及び第十一条第一項の規定により国土交通大臣に提出すべき申請書その他の書類は、その主たる事務所(同項の規定の場合にあつては、同項各号の一に該当することとなつた者の主たる事務所)の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない。
2  第五十条第二項の規定により国土交通大臣に提出すべき届出書は、その届出に係る業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない。

(事務の区分)
第七十八条の四  第八条、第十条、第十四条及び前条の規定により都道府県が処理することとされている事務(第八条、第十条及び第十四条の規定により処理することとされているものについては、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者に係る宅地建物取引業者名簿の備付け、登載、閲覧、訂正及び消除に関するものに限る。)は、地方自治法第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務とする。

   第八章 罰則

第七十九条  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の手段によつて第三条第一項の免許を受けた者
二  第十二条第一項の規定に違反した者
三  第十三条第一項の規定に違反して他人に宅地建物取引業を営ませた者
四  第六十五条第二項又は第四項の規定による業務の停止の命令に違反して業務を営んだ者

第七十九条の二  第四十七条の規定に違反して同条第一号に掲げる行為をした者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第八十条  第四十七条の規定に違反して同条第二号に掲げる行為をした者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第八十条の二  第十六条の八第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第八十条の三  第十六条の十五第二項又は第十七条の十四の規定による試験事務又は講習業務の停止の命令に違反したときは、その違反行為をした指定試験機関の役員若しくは職員又は登録講習機関(その者が法人である場合にあつては、その役員)若しくはその職員(第八十三条の二において「指定試験機関等の役員等」という。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第八十一条  次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  第二十五条第五項(第二十六条第二項において準用する場合を含む。)、第三十二条又は第四十四条の規定に違反した者
二  第四十七条の規定に違反して同条第三号に掲げる行為をした者

第八十二条  次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一  第四条第一項の免許申請書又は同条第二項の書類に虚偽の記載をして提出した者
二  第十二条第二項、第十三条第二項、第十五条第三項又は第四十六条第二項の規定に違反した者
三  不正の手段によつて第四十一条第一項第一号又は第四十一条の二第一項第一号の指定を受けた者
四  第五十六条第一項の規定に違反して手付金等保証事業以外の事業を営んだ者
五  第六十条(第六十四条の十七第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して保証委託契約を締結した者
六  第六十一条(第六十三条の三第二項において準用する場合を含む。)又は第六十四条の二十の規定による命令に違反した者
七  第六十三条の三第二項において準用する第五十六条第一項の規定に違反して手付金等保管事業以外の事業を営んだ者
八  第六十三条の三第二項において準用する第五十一条第三項第一号の事業方法書によらないで手付金等保管事業を営んだ者

第八十三条  次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一  第九条、第五十条第二項、第五十三条(第六十三条の三第二項において準用する場合を含む。)、第六十三条第二項(第六十三条の三第二項において準用する場合を含む。)又は第七十七条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二  第三十七条、第四十六条第四項、第四十八条第一項又は第五十条第一項の規定に違反した者
三  第四十五条又は第七十五条の二の規定に違反した者
三の二  第四十八条第三項の規定に違反して従業者名簿を備えず、又はこれに同項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をした者
四  第四十九条の規定による帳簿を備え付けず、又はこれに同条に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をした者
五  第五十条の十二第一項、第六十三条第一項若しくは第三項(これらの規定を第六十三条の三第二項において準用する場合を含む。)、第六十三条の二第一項(第六十三条の三第二項及び第六十四条の十八において準用する場合を含む。)又は第七十二条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは事業計画書、事業報告書若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の記載をした事業計画書、事業報告書若しくは虚偽の資料を提出した者
六  第五十条の十二第一項、第六十三条の二第一項(第六十三条の三第二項及び第六十四条の十八において準用する場合を含む。)又は第七十二条第一項若しくは第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
七  第六十三条の五の規定に違反して寄託金保管簿を備えず、これに同条に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は寄託金保管簿を保存しなかつた者
2  前項第三号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

第八十三条の二  次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした指定試験機関等の役員等は、五十万円以下の罰金に処する。
一  第十六条の十一又は第十七条の十五の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかつたとき。
二  第十六条の十三第一項若しくは第二項又は第十七条の十六の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
三  第十六条の十四第一項の規定による許可を受けないで試験事務の全部を廃止し、又は第十七条の十の規定による届出をしないで講習業務の全部を廃止したとき。

第八十四条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第七十九条又は第七十九条の二 一億円以下の罰金刑
二  第八十条又は第八十一条から第八十三条まで(同条第一項第三号を除く。) 各本条の罰金刑

第八十五条  第五十条の十一の規定による命令に違反した者は、三十万円以下の過料に処する。

第八十五条の二  第十七条の十一第一項の規定に違反して財務諸表等を備えて置かず、財務諸表等に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は正当な理由がないのに同条第二項各号の規定による請求を拒んだ者は、二十万円以下の過料に処する。

第八十六条  第二十二条の二第六項若しくは第七項、第三十五条第四項又は第七十五条の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。


宅地建物取引業法
   附 則 抄


別表 (第十七条の五関係)

科目 講師
一 この法律その他関係法令に関する科目
二 宅地及び建物の取引に係る紛争の防止に関する科目 一 弁護士
二 取引主任者であつて、取引主任者として宅地建物取引業に従事した経験を有する者
三 前号に掲げる者と同等以上の知識及び経験を有する者
三 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関する科目
四 宅地及び建物の需給に関する科目
五 宅地及び建物の調査に関する科目 一 不動産鑑定士
二 取引主任者であつて、取引主任者として宅地建物取引業に従事した経験を有する者
三 前号に掲げる者と同等以上の知識及び経験を有する者
六 宅地及び建物の取引に係る税務に関する科目 一 税理士
二 取引主任者であつて、取引主任者として宅地建物取引業に従事した経験を有する者
三 前号に掲げる者と同等以上の知識及び経験を有する者
農地法
(昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)

最終改正:平成二一年六月二四日法律第五七号


 第一章 総則(第一条—第二条の二)
 第二章 権利移動及び転用の制限等(第三条—第十五条)
 第三章 利用関係の調整等(第十六条—第二十九条)
 第四章 遊休農地に関する措置(第三十条—第四十四条)
 第五章 雑則(第四十五条—第六十三条の二)
 第六章 罰則(第六十四条—第六十九条)
 附則

   第一章 総則

(目的)
第一条  この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。
2  この法律で「世帯員等」とは、住居及び生計を一にする親族(次に掲げる事由により一時的に住居又は生計を異にしている親族を含む。)並びに当該親族の行う耕作又は養畜の事業に従事するその他の二親等内の親族をいう。
一  疾病又は負傷による療養
二  就学
三  公選による公職への就任
四  その他農林水産省令で定める事由
3  この法律で「農業生産法人」とは、農事組合法人、株式会社(公開会社(会社法 (平成十七年法律第八十六号)第二条第五号 に規定する公開会社をいう。)でないものに限る。以下同じ。)又は持分会社(同法第五百七十五条第一項 に規定する持分会社をいう。以下同じ。)で、次に掲げる要件のすべてを満たしているものをいう。
一  その法人の主たる事業が農業(その行う農業に関連する事業であつて農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定めるもの、農業と併せ行う林業及び農事組合法人にあつては農業と併せ行う農業協同組合法 (昭和二十二年法律第百三十二号)第七十二条の八第一項第一号 の事業を含む。以下この項において同じ。)であること。
二  その法人の組合員、株主(自己の株式を保有している当該法人を除く。)又は社員(以下「構成員」という。)は、すべて、次に掲げる者のいずれかであること(株式会社にあつては、チに掲げる者の有する議決権の合計が総株主の議決権の四分の一以下であるもの(チに掲げる者の中に、その法人と連携して事業を実施することによりその法人の農業経営の改善に特に寄与する者として政令で定める者があるときは、チに掲げる者の有する議決権の合計が総株主の議決権の二分の一未満であり、かつ、チに掲げる者のうち当該政令で定める者以外の者の有する議決権の合計が総株主の議決権の四分の一以下であるもの)、持分会社にあつては、チに掲げる者の数が社員の総数の四分の一以下であるもの(チに掲げる者の中に、当該政令で定める者があるときは、チに掲げる者の数が社員の総数の二分の一未満であり、かつ、チに掲げる者のうち当該政令で定める者以外の者の数が社員の総数の四分の一以下であるもの)に限る。)。
イ その法人に農地若しくは採草放牧地について所有権若しくは使用収益権(地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権をいう。以下同じ。)を移転した個人(その法人の構成員となる前にこれらの権利をその法人に移転した者のうち、その移転後農林水産省令で定める一定期間内に構成員となり、引き続き構成員となつている個人以外のものを除く。)又はその一般承継人(農林水産省令で定めるものに限る。)
ロ その法人に農地又は採草放牧地について使用収益権に基づく使用及び収益をさせている個人
ハ その法人に使用及び収益をさせるため農地又は採草放牧地について所有権の移転又は使用収益権の設定若しくは移転に関し第三条第一項の許可を申請している個人(当該申請に対する許可があり、近くその許可に係る農地又は採草放牧地についてその法人に所有権を移転し、又は使用収益権を設定し、若しくは移転することが確実と認められる個人を含む。)
ニ その法人の行う農業に常時従事する者(前項各号に掲げる事由により一時的にその法人の行う農業に常時従事することができない者で当該事由がなくなれば常時従事することとなると農業委員会が認めたもの及び農林水産省令で定める一定期間内にその法人の行う農業に常時従事することとなることが確実と認められる者を含む。以下「常時従事者」という。)
ホ その法人に農作業(農林水産省令で定めるものに限る。)の委託を行つている個人
ヘ その法人に農業経営基盤強化促進法 (昭和五十五年法律第六十五号)第四条第二項第三号 に掲げる事業に係る出資を行つた同法第八条第一項 に規定する農地保有合理化法人
ト 地方公共団体、農業協同組合又は農業協同組合連合会
チ その法人からその法人の事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を受ける者又はその法人の事業の円滑化に寄与する者であつて、政令で定めるもの
三  その法人の常時従事者たる構成員が理事等(農事組合法人にあつては理事、株式会社にあつては取締役、持分会社にあつては業務を執行する社員をいう。以下この号において同じ。)の数の過半を占め、かつ、その過半を占める理事等の過半数の者が、その法人の行う農業に必要な農作業に農林水産省令で定める日数以上従事すると認められるものであること。
4  法人の構成員につき常時従事者であるかどうかを判定すべき基準は、農林水産省令で定める。

(農地について権利を有する者の責務)
第二条の二  農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。

   第二章 権利移動及び転用の制限等

(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条  農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可(これらの権利を取得する者(政令で定める者を除く。)がその住所のある市町村の区域の外にある農地又は採草放牧地について権利を取得する場合その他政令で定める場合には、都道府県知事の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。
一  第四十六条第一項又は第四十七条の規定によつて所有権が移転される場合
二  第三十六条第三項の規定により都道府県知事が作成した調停案の受諾に伴い所有権が移転され、又は賃借権が設定され、若しくは移転される場合
三  第三十七条から第四十条までの規定によつて第三十七条に規定する特定利用権が設定される場合
四  第四十三条の規定によつて同条第一項に規定する遊休農地を利用する権利が設定される場合
五  これらの権利を取得する者が国又は都道府県である場合
六  土地改良法 (昭和二十四年法律第百九十五号)、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)、集落地域整備法 (昭和六十二年法律第六十三号)又は市民農園整備促進法 (平成二年法律第四十四号)による交換分合によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合
七  農業経営基盤強化促進法第十九条 の規定による公告があつた農用地利用集積計画の定めるところによつて同法第四条第四項第一号 の権利が設定され、又は移転される場合
八  特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律 (平成五年法律第七十二号)第九条第一項 の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号 の権利が設定され、又は移転される場合
九  農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律 (平成十九年法律第四十八号)第八条第一項 の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第七項 の権利が設定され、又は移転される場合
十  民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)による農事調停によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合
十一  土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合
十二  遺産の分割、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七百六十八条第二項 (同法第七百四十九条 及び第七百七十一条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する裁判若しくは調停又は同法第九百五十八条の三 の規定による相続財産の分与に関する裁判によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合
十三  農業経営基盤強化促進法第八条第一項 に規定する農地保有合理化法人(以下「農地保有合理化法人」という。)又は同法第十一条の十二 に規定する農地利用集積円滑化団体(以下「農地利用集積円滑化団体」という。)が、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、同法第四条第二項第一号 に規定する農地売買等事業(以下「農地売買等事業」という。)の実施によりこれらの権利を取得する場合
十四  農業協同組合法第十条第三項 の信託の引受けの事業又は農業経営基盤強化促進法第四条第二項第二号 若しくは第二号の二 に掲げる事業(以下これらを「信託事業」という。)を行う農業協同組合又は農地保有合理化法人が信託事業による信託の引受けにより所有権を取得する場合及び当該信託の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合
十五  地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下単に「指定都市」という。)が古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法 (昭和四十一年法律第一号)第十九条 の規定に基づいてする同法第十一条第一項 の規定による買入れによつて所有権を取得する場合
十六  その他農林水産省令で定める場合
2  前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、民法第二百六十九条の二第一項 の地上権又はこれと内容を同じくするその他の権利が設定され、又は移転されるとき、農業協同組合法第十条第二項 に規定する事業を行う農業協同組合又は農業協同組合連合会が農地又は採草放牧地の所有者から同項 の委託を受けることにより第一号 に掲げる権利が取得されることとなるとき、同法第十一条の三十一第一項第一号 に掲げる場合において農業協同組合又は農業協同組合連合会が使用貸借による権利又は賃借権を取得するとき、並びに第一号、第二号、第四号及び第五号に掲げる場合において政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。
一  所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地のすべてを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合
二  農業生産法人以外の法人が前号に掲げる権利を取得しようとする場合
三  信託の引受けにより第一号に掲げる権利が取得される場合
四  第一号に掲げる権利を取得しようとする者(農業生産法人を除く。)又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合
五  第一号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員等がその取得後において耕作の事業に供すべき農地の面積の合計及びその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき採草放牧地の面積の合計が、いずれも、北海道では二ヘクタール、都府県では五十アール(農業委員会が、農林水産省令で定める基準に従い、市町村の区域の全部又は一部についてこれらの面積の範囲内で別段の面積を定め、農林水産省令で定めるところにより、これを公示したときは、その面積)に達しない場合
六  農地又は採草放牧地につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業を行う者がその土地を貸し付け、又は質入れしようとする場合(当該事業を行う者又はその世帯員等の死亡又は第二条第二項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため一時貸し付けようとする場合、当該事業を行う者がその土地をその世帯員等に貸し付けようとする場合、農地保有合理化法人又は農地利用集積円滑化団体がその土地を農地売買等事業の実施により貸し付けようとする場合、その土地を水田裏作(田において稲を通常栽培する期間以外の期間稲以外の作物を栽培することをいう。以下同じ。)の目的に供するため貸し付けようとする場合及び農業生産法人の常時従事者たる構成員がその土地をその法人に貸し付けようとする場合を除く。)
七  第一号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業の内容並びにその農地又は採草放牧地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
3  農業委員会又は都道府県知事は、農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権が設定される場合において、次に掲げる要件のすべてを満たすときは、前項(第二号及び第四号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、第一項の許可をすることができる。
一  これらの権利を取得しようとする者がその取得後においてその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められる場合に使用貸借又は賃貸借の解除をする旨の条件が書面による契約において付されていること。
二  これらの権利を取得しようとする者が地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること。
三  これらの権利を取得しようとする者が法人である場合にあつては、その法人の業務を執行する役員のうち一人以上の者がその法人の行う耕作又は養畜の事業に常時従事すると認められること。
4  農業委員会又は都道府県知事は、前項の規定により第一項の許可をしようとするときは、あらかじめ、その農地又は採草放牧地の存する市町村の長に、その旨を通知するものとする。この場合において、当該通知を受けた市町村長は、市町村の区域における農地又は採草放牧地の農業上の適正かつ総合的な利用を確保する見地から必要があると認めるときは、意見を述べることができる。
5  第一項の許可は、条件をつけてすることができる。
6  農業委員会又は都道府県知事は、第三項の規定により第一項の許可をする場合には、当該許可を受けて農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権の設定を受けた者が、農林水産省令で定めるところにより、毎年、その農地又は採草放牧地の利用の状況について、農業委員会又は都道府県知事に報告しなければならない旨の条件を付けるものとする。
7  第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

(農地又は採草放牧地の権利移動の許可の取消し等)
第三条の二  農業委員会又は都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合には、農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権の設定を受けた者(前条第三項の規定の適用を受けて同条第一項の許可を受けた者に限る。次項第一号において同じ。)に対し、相当の期限を定めて、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
一  その者がその農地又は採草放牧地において行う耕作又は養畜の事業により、周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生じている場合
二  その者が地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行つていないと認める場合
三  その者が法人である場合にあつては、その法人の業務を執行する役員のいずれもがその法人の行う耕作又は養畜の事業に常時従事していないと認める場合
2  農業委員会又は都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第三項の規定によりした同条第一項の許可を取り消さなければならない。
一  農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権の設定を受けた者がその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められるにもかかわらず、当該使用貸借による権利又は賃借権を設定した者が使用貸借又は賃貸借の解除をしないとき。
二  前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わなかつたとき。
3  農業委員会は、前条第三項第一号に規定する条件に基づき使用貸借若しくは賃貸借が解除された場合又は前項の規定による許可の取消しがあつた場合において、その農地又は採草放牧地の適正かつ効率的な利用が図られないおそれがあると認めるときは、当該農地又は採草放牧地の所有者に対し、当該農地又は採草放牧地についての所有権の移転又は使用及び収益を目的とする権利の設定のあつせんその他の必要な措置を講ずるものとする。

(農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
第三条の三  農地又は採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得した者は、同項の許可を受けてこれらの権利を取得した場合、同項各号(第十二号及び第十六号を除く。)のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合を除き、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。
2  農業委員会は、前項の規定による届出があつた場合において、その農地又は採草放牧地の適正かつ効率的な利用が図られないおそれがあると認めるときは、当該届出をした者に対し、当該農地又は採草放牧地についての所有権の移転又は使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転のあつせんその他の必要な措置を講ずるものとする。

(農地の転用の制限)
第四条  農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(その者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合(農村地域工業等導入促進法(昭和四十六年法律第百十二号)その他の地域の開発又は整備に関する法律で政令で定めるもの(以下「地域整備法」という。)の定めるところに従つて農地を農地以外のものにする場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第五項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一  次条第一項の許可に係る農地をその許可に係る目的に供する場合
二  国又は都道府県が、道路、農業用用排水施設その他の地域振興上又は農業振興上の必要性が高いと認められる施設であつて農林水産省令で定めるものの用に供するため、農地を農地以外のものにする場合
三  農業経営基盤強化促進法第十九条 の規定による公告があつた農用地利用集積計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第四条第四項第一号 の権利に係る農地を当該農用地利用集積計画に定める利用目的に供する場合
四  特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項 の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号 の権利に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合
五  農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律第八条第一項 の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第五条第七項 の権利に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合
六  土地収用法 その他の法律によつて収用し、又は使用した農地をその収用又は使用に係る目的に供する場合
七  市街化区域(都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第七条第一項 の市街化区域と定められた区域で、同法第二十三条第一項 の規定による協議が調つたものをいう。)内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合
八  その他農林水産省令で定める場合
2  前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項 の規定による告示(他の法律の規定による告示又は公告で同項の規定による告示とみなされるものを含む。次条第二項において同じ。)に係る事業の用に供するため農地を農地以外のものにしようとするとき、第一号イに掲げる農地を農業振興地域の整備に関する法律第八条第四項に規定する農用地利用計画(以下単に「農用地利用計画」という。)において指定された用途に供するため農地以外のものにしようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。
一  次に掲げる農地を農地以外のものにしようとする場合
イ 農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第一号に規定する農用地区域をいう。以下同じ。)内にある農地
ロ イに掲げる農地以外の農地で、集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地として政令で定めるもの(市街化調整区域(都市計画法第七条第一項 の市街化調整区域をいう。以下同じ。)内にある政令で定める農地以外の農地にあつては、次に掲げる農地を除く。)
(1) 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地で政令で定めるもの
(2) (1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で政令で定めるもの
二  前号イ及びロに掲げる農地(同号ロ(1)に掲げる農地を含む。)以外の農地を農地以外のものにしようとする場合において、申請に係る農地に代えて周辺の他の土地を供することにより当該申請に係る事業の目的を達成することができると認められるとき。
三  申請者に申請に係る農地を農地以外のものにする行為を行うために必要な資力及び信用があると認められないこと、申請に係る農地を農地以外のものにする行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないことその他農林水産省令で定める事由により、申請に係る農地のすべてを住宅の用、事業の用に供する施設の用その他の当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合
四  申請に係る農地を農地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
五  仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため農地を農地以外のものにしようとする場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められないとき。
3  都道府県知事が、第一項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。
4  第一項の許可は、条件を付けてすることができる。
5  国又は都道府県が農地を農地以外のものにしようとする場合(第一項各号のいずれかに該当する場合を除く。)においては、国又は都道府県と都道府県知事との協議(その者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合には、農林水産大臣との協議)が成立することをもつて同項の許可があつたものとみなす。
6  第三項の規定は、都道府県知事が前項の協議を成立させようとする場合について準用する。

(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条  農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合(地域整備法の定めるところに従つてこれらの権利を取得する場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第四項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一  国又は都道府県が、前条第一項第二号の農林水産省令で定める施設の用に供するため、これらの権利を取得する場合
二  農地又は採草放牧地を農業経営基盤強化促進法第十九条 の規定による公告があつた農用地利用集積計画に定める利用目的に供するため当該農用地利用集積計画の定めるところによつて同法第四条第四項第一号 の権利が設定され、又は移転される場合
三  農地又は採草放牧地を特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項 の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号 の権利が設定され、又は移転される場合
四  農地又は採草放牧地を農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律第八条第一項 の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第七項 の権利が設定され、又は移転される場合
五  土地収用法 その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合
六  前条第一項第七号に規定する市街化区域内にある農地又は採草放牧地につき、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地及び採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得する場合
七  その他農林水産省令で定める場合
2  前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項 の規定による告示に係る事業の用に供するため第三条第一項 本文に掲げる権利を取得しようとするとき、第一号イに掲げる農地又は採草放牧地につき農用地利用計画において指定された用途に供するためこれらの権利を取得しようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。
一  次に掲げる農地又は採草放牧地につき第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合
イ 農用地区域内にある農地又は採草放牧地
ロ イに掲げる農地又は採草放牧地以外の農地又は採草放牧地で、集団的に存在する農地又は採草放牧地その他の良好な営農条件を備えている農地又は採草放牧地として政令で定めるもの(市街化調整区域内にある政令で定める農地又は採草放牧地以外の農地又は採草放牧地にあつては、次に掲げる農地又は採草放牧地を除く。)
(1) 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地又は採草放牧地で政令で定めるもの
(2) (1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地又は採草放牧地で政令で定めるもの
二  前号イ及びロに掲げる農地(同号ロ(1)に掲げる農地を含む。)以外の農地を農地以外のものにするため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合又は同号イ及びロに掲げる採草放牧地(同号ロ(1)に掲げる採草放牧地を含む。)以外の採草放牧地を採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得しようとする場合において、申請に係る農地又は採草放牧地に代えて周辺の他の土地を供することにより当該申請に係る事業の目的を達成することができると認められるとき。
三  第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする者に申請に係る農地を農地以外のものにする行為又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにする行為を行うために必要な資力及び信用があると認められないこと、申請に係る農地を農地以外のものにする行為又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにする行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないことその他農林水産省令で定める事由により、申請に係る農地又は採草放牧地のすべてを住宅の用、事業の用に供する施設の用その他の当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合
四  申請に係る農地を農地以外のものにすること又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地又は採草放牧地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
五  仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため所有権を取得しようとする場合
六  仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため、農地につき所有権以外の第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合においてその利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められないとき、又は採草放牧地につきこれらの権利を取得しようとする場合においてその利用に供された後にその土地が耕作の目的若しくは主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供されることが確実と認められないとき。
七  農地を採草放牧地にするため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合において、同条第二項の規定により同条第一項の許可をすることができない場合に該当すると認められるとき。
3  第三条第五項及び第七項並びに前条第三項の規定は、第一項の場合に準用する。
4  国又は都道府県が、農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合(第一項各号のいずれかに該当する場合を除く。)においては、国又は都道府県と都道府県知事との協議(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合には、農林水産大臣との協議)が成立することをもつて第一項の許可があつたものとみなす。
5  前条第三項の規定は、都道府県知事が前項の協議を成立させようとする場合について準用する。

(農業生産法人の報告等)
第六条  農業生産法人であつて、農地若しくは採草放牧地(その法人が第三条第一項本文に掲げる権利を取得した時に農地及び採草放牧地以外の土地であつたものその他政令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)を所有し、又はその法人以外の者が所有する農地若しくは採草放牧地をその法人の耕作若しくは養畜の事業に供しているものは、農林水産省令で定めるところにより、毎年、事業の状況その他農林水産省令で定める事項を農業委員会に報告しなければならない。農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合(農業生産法人が合併によつて解散し、又は分割をした場合において、当該合併によつて設立し、若しくは当該合併後存続する法人又は当該分割によつて農地若しくは採草放牧地について同条第一項本文に掲げる権利を承継した法人が農業生産法人でない場合を含む。次条第一項において同じ。)におけるその法人及びその一般承継人についても、同様とする。
2  農業委員会は、前項前段の規定による報告に基づき、農業生産法人が第二条第三項各号に掲げる要件を満たさなくなるおそれがあると認めるときは、その法人に対し、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
3  農業委員会は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた法人からその所有する農地又は採草放牧地について所有権の譲渡しをする旨の申出があつたときは、これらの土地の所有権の譲渡しについてのあつせんに努めなければならない。

(農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合における買収)
第七条  農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合において、その法人若しくはその一般承継人が所有する農地若しくは採草放牧地があるとき、又はその法人及びその一般承継人以外の者が所有する農地若しくは採草放牧地でその法人若しくはその一般承継人の耕作若しくは養畜の事業に供されているものがあるときは、国がこれを買収する。ただし、これらの土地でその法人が第三条第一項本文に掲げる権利を取得した時に農地及び採草放牧地以外の土地であつたものその他政令で定めるものについては、この限りでない。
2  農業委員会は、前項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地があると認めたときは、次に掲げる事項を公示し、かつ、公示の日の翌日から起算して一月間、その事務所で、これらの事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。
一  その農地又は採草放牧地の所有者の氏名又は名称及び住所
二  その農地又は採草放牧地の所在、地番、地目及び面積
三  その他必要な事項
3  農業委員会は、前項の規定による公示をしたときは、遅滞なく、その土地の所有者に同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。ただし、過失がなくてその者を確知することができないときは、この限りでない。
4  農業委員会は、第一項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地が前条第二項の規定による勧告に係るものであるときは、当該勧告の日(同条第三項の申出があつたときは、当該申出の日)の翌日から起算して三月間(当該期間内に第三条第一項又は第十八条第一項の規定による許可の申請があり、その期間経過後までこれに対する処分がないときは、その処分があるまでの間)、第二項の規定による公示をしないものとする。
5  農業委員会は、第一項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地につき第二項の規定により公示をした場合において、その公示の日の翌日から起算して三月以内に農林水産省令で定めるところにより当該法人から第二条第三項各号に掲げる要件のすべてを満たすに至つた旨の届出があり、かつ、審査の結果その届出が真実であると認められるときは、遅滞なく、その公示を取り消さなければならない。
6  農業委員会は、前項の規定による届出があり、審査の結果その届出が真実であると認められないときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
7  第五項の規定により公示が取り消されたときは、その公示に係る農地又は採草放牧地については、国は、第一項の規定による買収をしない。
8  第二項の規定により公示された農地若しくは採草放牧地の所有者又はこれらの土地について所有権以外の権原に基づく使用及び収益をさせている者が、その公示に係る農地又は採草放牧地につき、第五項に規定する期間の満了の日(その日までに同項の規定による届出があり、これにつき第六項の規定による公示があつた場合のその公示に係る農地又は採草放牧地については、その公示の日)の翌日から起算して三月以内に、農林水産省令で定めるところにより、所有権の譲渡しをし、地上権若しくは永小作権の消滅をさせ、使用貸借の解除をし、合意による解約をし、若しくは返還の請求をし、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、若しくは賃貸借の更新をしない旨の通知をし、又はその他の使用及び収益を目的とする権利を消滅させたときは、当該農地又は採草放牧地については、第一項の規定による買収をしない。当該期間内に第三条第一項又は第十八条第一項の規定による許可の申請があり、その期間経過後までこれに対する処分がないときも、その処分があるまでは、同様とする。
9  農業委員会は、第一項の法人又はその一般承継人からその所有する農地又は採草放牧地について所有権の譲渡しをする旨の申出があつた場合は、前項の期間が経過するまでの間、これらの土地の所有権の譲渡しについてのあつせんに努めなければならない。

(農業委員会の関係書類の送付)
第八条  農業委員会は、前条第一項の規定により国が農地又は採草放牧地を買収すべき場合には、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書類を農林水産大臣に送付しなければならない。
一  その農地又は採草放牧地の所有者の氏名又は名称及び住所
二  その農地又は採草放牧地の所在、地番、地目及び面積
三  その農地若しくは採草放牧地の上に先取特権、質権若しくは抵当権がある場合又はその農地若しくは採草放牧地につき所有権に関する仮登記上の権利若しくは仮処分の執行に係る権利がある場合には、これらの権利の種類並びにこれらの権利を有する者の氏名又は名称及び住所
2  農業委員会は、前項の書類を送付する場合において、買収すべき農地若しくは採草放牧地の上に先取特権、質権若しくは抵当権があるとき又はその農地若しくは採草放牧地につき所有権に関する仮登記上の権利若しくは仮処分の執行に係る権利があるときは、これらの権利を有する者に対し、農林水産省令で定めるところにより、対価の供託の要否を二十日以内に農林水産大臣に申し出るべき旨を通知しなければならない。

(買収令書の交付及び縦覧)
第九条  農林水産大臣は、前条第一項の規定により送付された書類に記載されたところに従い、遅滞なく(同条第二項の規定による通知をした場合には、同項の期間経過後遅滞なく)、次に掲げる事項を記載した買収令書を作成し、これをその農地又は採草放牧地の所有者に、その謄本をその農業委員会に交付しなければならない。
一  前条第一項各号に掲げる事項
二  買収の期日
三  対価
四  対価の支払の方法(次条第二項の規定により対価を供託する場合には、その旨)
五  その他必要な事項
2  農林水産大臣は、前項の規定による買収令書の交付をすることができない場合には、その内容を公示して交付に代えることができる。
3  農業委員会は、買収令書の謄本の交付を受けたときは、遅滞なく、その旨を公示するとともに、その公示の日の翌日から起算して二十日間、その事務所でこれを縦覧に供しなければならない。

(対価)
第十条  前条第一項第三号の対価は、政令で定めるところにより算出した額とする。
2  買収すべき農地若しくは採草放牧地の上に先取特権、質権若しくは抵当権がある場合又はその農地若しくは採草放牧地につき所有権に関する仮登記上の権利若しくは仮処分の執行に係る権利がある場合には、これらの権利を有する者から第八条第二項の期間内に、その対価を供託しないでもよい旨の申出があつたときを除いて、国は、その対価を供託しなければならない。
3  国は、前項に規定する場合のほか、次に掲げる場合にも対価を供託することができる。
一  対価の支払を受けるべき者が受領を拒み、又は受領することができない場合
二  過失がなくて対価の支払を受けるべき者を確知することができない場合
三  差押え又は仮差押えにより対価の支払の禁止を受けた場合
4  前二項の規定による対価の供託は、買収すべき農地又は採草放牧地の所在地の供託所にするものとする。

(効果)
第十一条  国が買収令書に記載された買収の期日までにその買収令書に記載された対価の支払又は供託をしたときは、その期日に、その農地又は採草放牧地の上にある先取特権、質権及び抵当権並びにその農地又は採草放牧地についての所有権に関する仮登記上の権利は消滅し、その農地又は採草放牧地についての所有権に関する仮処分の執行はその効力を失い、その農地又は採草放牧地の所有権は国が取得する。
2  前項の規定により消滅する先取特権、質権又は抵当権を有する者は、前条第二項又は第三項の規定により供託された対価に対してその権利を行うことができる。
3  国が買収令書に記載された買収の期日までにその買収令書に記載された対価の支払又は供託をしないときは、その買収令書は、効力を失う。
4  第一項及び前項の規定の適用については、国が、会計法 (昭和二十二年法律第三十五号)第二十一条第一項 の規定により、対価の支払に必要な資金を日本銀行に交付して送金の手続をさせ、その旨をその農地又は採草放牧地の所有者に通知したときは、その通知が到達した時を国が対価の支払をした時とみなす。

(附帯施設の買収)
第十二条  第七条第一項の規定による買収をする場合において、農業委員会がその買収される農地又は採草放牧地の農業上の利用のため特に必要があると認めるときは、国は、その買収される農地又は採草放牧地の所有者の有する土地(農地及び採草放牧地を除く。)、立木、建物その他の工作物又は水の使用に関する権利(以下「附帯施設」という。)を併せて買収することができる。
2  第八条から前条までの規定は、前項の規定による買収をする場合に準用する。この場合において、第八条第一項第二号中「その農地又は採草放牧地の所在、地番、地目及び面積」とあるのは、「土地についてはその所在、地番、地目及び面積、立木についてはその樹種、数量及び所在の場所、工作物についてはその種類及び所在の場所、水の使用に関する権利についてはその内容」と読み替えるものとする。

(登記の特例)
第十三条  国が第七条第一項又は前条第一項の規定により買収をする場合の土地又は建物の登記については、政令で、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)の特例を定めることができる。

(立入調査)
第十四条  農業委員会は、農業委員会等に関する法律 (昭和二十六年法律第八十八号)第二十九条第一項 の規定による立入調査のほか、第七条第一項の規定による買収をするため必要があるときは、委員又は職員に法人の事務所その他の事業場に立ち入らせて必要な調査をさせることができる。
2  前項の規定により立入調査をする委員又は職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者にこれを提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(承継人に対する効力)
第十五条  第八条第二項(第十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知及び第九条(第十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定による買収令書の交付は、その通知又は交付を受けた者の承継人に対してもその効力を有する。
農地法
(昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)

最終改正:平成二一年六月二四日法律第五七号


 第一章 総則(第一条—第二条の二)
 第二章 権利移動及び転用の制限等(第三条—第十五条)
 第三章 利用関係の調整等(第十六条—第二十九条)
 第四章 遊休農地に関する措置(第三十条—第四十四条)
 第五章 雑則(第四十五条—第六十三条の二)
 第六章 罰則(第六十四条—第六十九条)
 附則

   第三章 利用関係の調整等

(農地又は採草放牧地の賃貸借の対抗力)
第十六条  農地又は採草放牧地の賃貸借は、その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があつたときは、これをもつてその後その農地又は採草放牧地について物権を取得した第三者に対抗することができる。
2  民法第五百六十六条第一項 及び第三項 (用益的権利による制限がある場合の売主の担保責任)の規定は、登記をしてない賃貸借の目的である農地又は採草放牧地が売買の目的物である場合に準用する。
3  民法第五百三十三条 (同時履行の抗弁)の規定は、前項の場合に準用する。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の更新)
第十七条  農地又は採草放牧地の賃貸借について期間の定めがある場合において、その当事者が、その期間の満了の一年前から六月前まで(賃貸人又はその世帯員等の死亡又は第二条第二項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため、一時賃貸をしたことが明らかな場合は、その期間の満了の六月前から一月前まで)の間に、相手方に対して更新をしない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。ただし、水田裏作を目的とする賃貸借でその期間が一年未満であるもの、第三十七条から第四十条までの規定によつて設定された第三十七条に規定する特定利用権に係る賃貸借及び農業経営基盤強化促進法第十九条 の規定による公告があつた農用地利用集積計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第四条第四項第一号 に規定する利用権に係る賃貸借については、この限りでない。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限)
第十八条  農地又は採草放牧地の賃貸借の当事者は、政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一  解約の申入れ、合意による解約又は賃貸借の更新をしない旨の通知が、信託事業に係る信託財産につき行われる場合(その賃貸借がその信託財産に係る信託の引受け前から既に存していたものである場合及び解約の申入れ又は合意による解約にあつてはこれらの行為によつて賃貸借の終了する日、賃貸借の更新をしない旨の通知にあつてはその賃貸借の期間の満了する日がその信託に係る信託行為によりその信託が終了することとなる日前一年以内にない場合を除く。)
二  合意による解約が、その解約によつて農地若しくは採草放牧地を引き渡すこととなる期限前六箇月以内に成立した合意でその旨が書面において明らかであるものに基づいて行われる場合又は民事調停法 による農事調停によつて行われる場合
三  賃貸借の更新をしない旨の通知が、十年以上の期間の定めがある賃貸借(解約をする権利を留保しているもの及び期間の満了前にその期間を変更したものでその変更をした時以後の期間が十年未満であるものを除く。)又は水田裏作を目的とする賃貸借につき行われる場合
四  第三条第三項の規定の適用を受けて同条第一項の許可を受けて設定された賃借権に係る賃貸借の解除が、賃借人がその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められる場合において、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て行われる場合
五  第三十七条から第四十条までの規定によつて設定された第三十七条に規定する特定利用権に係る賃貸借の解除が、第四十一条の規定により都道府県知事の承認を受けて行われる場合
六  農業経営基盤強化促進法第十九条 の規定による公告があつた農用地利用集積計画の定めるところによつて同法第十八条第二項第六号 に規定する者に設定された賃借権に係る賃貸借の解除が、その者がその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められる場合において、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て行われる場合
2  前項の許可は、次に掲げる場合でなければしてはならない。
一  賃借人が信義に反した行為をした場合
二  その農地又は採草放牧地を農地又は採草放牧地以外のものにすることを相当とする場合
三  賃借人の生計(法人にあつては、経営)、賃貸人の経営能力等を考慮し、賃貸人がその農地又は採草放牧地を耕作又は養畜の事業に供することを相当とする場合
四  賃借人である農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合並びに賃借人である農業生産法人の構成員となつている賃貸人がその法人の構成員でなくなり、その賃貸人又はその世帯員等がその許可を受けた後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地のすべてを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うことができると認められ、かつ、その事業に必要な農作業に常時従事すると認められる場合
五  その他正当の事由がある場合
3  都道府県知事が、第一項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聞かなければならない。
4  第一項の許可は、条件をつけてすることができる。
5  第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。
6  農地又は採草放牧地の賃貸借につき解約の申入れ、合意による解約又は賃貸借の更新をしない旨の通知が第一項ただし書の規定により同項の許可を要しないで行なわれた場合には、これらの行為をした者は、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会にその旨を通知しなければならない。
7  前条又は民法第六百十七条 (期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)若しくは第六百十八条 (期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)の規定と異なる賃貸借の条件でこれらの規定による場合に比して賃借人に不利なものは、定めないものとみなす。
8  農地又は採草放牧地の賃貸借につけた解除条件(第三条第三項第一号及び農業経営基盤強化促進法第十八条第二項第六号 に規定する条件を除く。)又は不確定期限は、つけないものとみなす。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の存続期間)
第十九条  農地又は採草放牧地の賃貸借についての民法第六百四条 (賃貸借の存続期間)の規定の適用については、同条 中「二十年」とあるのは、「五十年」とする。

(借賃等の増額又は減額の請求権)
第二十条  借賃等(耕作の目的で農地につき賃借権又は地上権が設定されている場合の借賃又は地代(その賃借権又は地上権の設定に付随して、農地以外の土地についての賃借権若しくは地上権又は建物その他の工作物についての賃借権が設定され、その借賃又は地代と農地の借賃又は地代とを分けることができない場合には、その農地以外の土地又は工作物の借賃又は地代を含む。)及び農地につき永小作権が設定されている場合の小作料をいう。以下同じ。)の額が農産物の価格若しくは生産費の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により又は近傍類似の農地の借賃等の額に比較して不相当となつたときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かつて借賃等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間借賃等の額を増加しない旨の特約があるときは、その定めに従う。
2  借賃等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃等を支払うことをもつて足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払つた額に不足があるときは、その不足額に年十パーセントの割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3  借賃等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた借賃等の額を超えるときは、その超過額に年十パーセントの割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

(契約の文書化)
第二十一条  農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。

(強制競売及び競売の特例)
第二十二条  強制競売又は担保権の実行としての競売(その例による競売を含む。以下単に「競売」という。)の開始決定のあつた農地又は採草放牧地について、入札又は競り売りを実施すべき日において許すべき買受けの申出がないときは、強制競売又は競売を申し立てた者は、農林水産省令で定める手続に従い、農林水産大臣に対し、国がその土地を買い取るべき旨を申し出ることができる。
2  農林水産大臣は、前項の申出があつたときは、次に掲げる場合を除いて、次の入札又は競り売りを実施すべき日までに、裁判所に対し、その土地を第十条第一項の政令で定めるところにより算出した額で買い取る旨を申し入れなければならない。
一  民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第六十条第三項 に規定する買受可能価額が第十条第一項 の政令で定めるところにより算出した額を超える場合
二  国が買受人となれば、その土地の上にある留置権、先取特権、質権又は抵当権で担保される債権を弁済する必要がある場合
三  売却条件が国に不利になるように変更されている場合
四  国が買受人となつた後もその土地につき所有権に関する仮登記上の権利又は仮処分の執行に係る権利が存続する場合
3  前項の申入れがあつたときは、国は、強制競売又は競売による最高価買受申出人となつたものとみなす。この場合の買受けの申出の額は、第十条第一項の政令で定めるところにより算出した額とする。

(公売の特例)
第二十三条  国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)による滞納処分(その例による滞納処分を含む。)により公売に付された農地又は採草放牧地について買受人がない場合に、当該滞納処分を行う行政庁が、農林水産省令で定める手続に従い、農林水産大臣に対し、国がその土地を第十条第一項の政令で定めるところにより算出した額で買い取るべき旨の申出をしたときは、農林水産大臣は、前条第二項第二号から第四号までに掲げる場合を除いて、その行政庁に対し、その土地を買い取る旨を申し入れなければならない。
2  前項の申入があつたときは、国は、公売により買受人となつたものとみなす。

(農業委員会への通知)
第二十四条  農林水産大臣は、前二条の規定により国が農地又は採草放牧地を取得したときは、農業委員会に対し、その旨を通知しなければならない。

(農業委員会による和解の仲介)
第二十五条  農業委員会は、農地又は採草放牧地の利用関係の紛争について、農林水産省令で定める手続に従い、当事者の双方又は一方から和解の仲介の申立てがあつたときは、和解の仲介を行なう。ただし、農業委員会が、その紛争について和解の仲介を行なうことが困難又は不適当であると認めるときは、申立てをした者の同意を得て、都道府県知事に和解の仲介を行なうべき旨の申出をすることができる。
2  農業委員会による和解の仲介は、農業委員会の委員のうちから農業委員会の会長が事件ごとに指名する三人の仲介委員によつて行なう。

(小作主事の意見聴取)
第二十六条  仲介委員は、第三条第一項の規定により都道府県知事の許可を要する事項又は第十八条第一項本文に規定する事項について和解の仲介を行う場合には、都道府県の小作主事の意見を聴かなければならない。
2  仲介委員は、和解の仲介に関して必要があると認める場合には、都道府県の小作主事の意見を求めることができる。

(仲介委員の任務)
第二十七条  仲介委員は、紛争の実情を詳細に調査し、事件が公正に解決されるように努めなければならない。

(都道府県知事による和解の仲介)
第二十八条  都道府県知事は、第二十五条第一項ただし書の規定による申出があつたときは、和解の仲介を行う。
2  都道府県知事は、必要があると認めるときは、小作主事その他の職員を指定して、その者に和解の仲介を行なわせることができる。
3  前条の規定は、前二項の規定による和解の仲介について準用する。

(政令への委任)
第二十九条  第二十五条から前条までに定めるもののほか、和解の仲介に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 遊休農地に関する措置

(利用状況調査及び指導)
第三十条  農業委員会は、毎年一回、その区域内にある農地の利用の状況についての調査(以下「利用状況調査」という。)を行わなければならない。
2  農業委員会は、必要があると認めるときは、いつでも利用状況調査を行うことができる。
3  農業委員会は、前二項の規定による利用状況調査の結果、次の各号のいずれかに該当する農地があるときは、その農地の所有者(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その者及びその農地の所有者。第三十二条において同じ。)に対し、当該農地の農業上の利用の増進を図るため必要な指導をするものとする。
一  現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地
二  その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し著しく劣つていると認められる農地(前号に掲げる農地を除く。)
4  前項の規定は、第四条第一項又は第五条第一項の許可に係る農地その他農林水産省令で定める農地については、適用しない。

(農業委員会に対する申出)
第三十一条  次に掲げる者は、前条第三項各号のいずれかに該当する農地があると認めるときは、その旨を農業委員会に申し出て適切な措置を講ずべきことを求めることができる。
一  その農地の存する市町村の区域の全部又は一部をその地区の全部又は一部とする農業協同組合、土地改良区その他の農林水産省令で定める農業者の組織する団体
二  その農地の周辺の地域において農業を営む者(その農地によつてその者の営農条件に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるものに限る。)
2  農業委員会は、前項の規定による申出があつたときは、当該農地についての利用状況調査その他適切な措置を講じなければならない。

(遊休農地である旨の通知等)
第三十二条  農業委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合は、農林水産省令で定めるところにより、当該農地の所有者に対し、当該農地が遊休農地である旨及び当該農地が第三十条第三項各号のいずれに該当するかの別を通知するものとする。ただし、過失がなくて通知を受けるべき遊休農地の所有者を確知することができないときは、その旨を公告するものとする。
一  第三十条第三項の規定による指導をした場合においてもなお相当期間当該指導に係る農地の農業上の利用の増進が図られない場合
二  第三十条第三項の規定による指導に係る農地につき所有権に関する仮登記上の権利が設定されていることを理由にその農地の所有者が当該指導に従う意思がない旨を表明したときその他その農地の農業上の利用の増進が図られないことが明らかであると認められる場合
三  その農地について第三十条第三項の規定による指導をすることができない場合

(遊休農地の農業上の利用に関する計画の届出)
第三十三条  前条の規定による通知を受けた遊休農地の所有者(当該遊休農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その者。以下「所有者等」という。)は、農林水産省令で定める事由に該当する場合を除き、当該通知があつた日から起算して六週間以内に、農林水産省令で定めるところにより、当該通知に係る遊休農地の農業上の利用に関する計画を農業委員会に届け出なければならない。
2  前項の規定による届出があつた場合において、当該届出に係る計画に当該遊休農地の農業経営基盤強化促進法第四条第四項第一号 に規定する利用権の設定等についてあつせんを受けたい旨の記載があるときは、同法第十三条第一項 の農用地の所有者からの申出があつたものとみなして、同条 及び同法第十三条の二 の規定を適用する。

(勧告)
第三十四条  農業委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合は、当該遊休農地の所有者等に対し、相当の期限を定めて、当該遊休農地の農業上の利用の増進を図るために必要な措置を講ずべきことを勧告するものとする。
一  前条第一項の規定による届出に係る計画の内容が当該遊休農地の農業上の利用の増進を図る上で適切でないと認める場合
二  前条第一項の規定による届出がない場合
三  前条第一項の規定による届出に係る計画に従つて当該遊休農地の農業上の利用が行われていないと認める場合
2  農業委員会は、前項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に基づいて講じた措置について報告を求めることができる。

(所有権の移転等の協議)
第三十五条  農業委員会は、第三十条第三項第一号に該当する農地について前条第一項の規定による勧告をした場合において、当該勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該勧告に係る遊休農地の所有権の移転又は賃借権の設定若しくは移転(以下「所有権の移転等」という。)を希望する農地保有合理化法人、農地利用集積円滑化団体又は特定農業法人(農業経営基盤強化促進法第二十三条第四項 に規定する特定農業法人をいう。)で農林水産省令で定める要件に該当するもの(以下「農地保有合理化法人等」という。)のうちから所有権の移転等に関する協議を行う者を指定して、その者が所有権の移転等に関する協議を行う旨を当該勧告を受けた遊休農地の所有者等に通知するものとする。
2  前項の規定により協議を行う者として指定された農地保有合理化法人等は、同項の規定による通知があつた日から起算して六週間を経過する日までの間、当該通知を受けた者と当該通知に係る遊休農地の所有権の移転等に関する協議を行うことができる。この場合において、当該通知を受けた者は、正当な理由がなければ、当該遊休農地の所有権の移転等に関する協議を行うことを拒んではならない。
3  前項の規定による協議に係る遊休農地の所有権の移転等を受けた農地保有合理化法人等は、当該遊休農地を含む周辺の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に資するよう当該遊休農地の農業上の利用の増進に努めるものとする。

(調停)
第三十六条  前条第二項の規定による協議が調わず、又は協議を行うことができないときは、同条第一項の規定による指定を受けた農地保有合理化法人等は、同項の規定による通知があつた日から起算して二月以内に、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、その協議に係る所有権の移転等につき必要な調停をなすべき旨を申請することができる。
2  都道府県知事は、前項の規定による申請があつたときは、速やかに調停を行うものとする。
3  都道府県知事は、第一項の調停を行う場合には、当事者の意見を聴くとともに、前条第一項の規定による指定をした農業委員会に対し、助言、資料の提供その他必要な協力を求めて、調停案を作成しなければならない。
4  都道府県知事は、前項の規定により調停案を作成したときは、これを当事者に示してその受諾を勧告するものとする。

(裁定の申請)
第三十七条  都道府県知事が前条第四項の規定による勧告をした場合において、当該勧告を受けた者が当該勧告があつた日から起算して二月以内に当該勧告に係る調停案の受諾をしないときは、第三十五条第一項の規定による指定を受けた農地保有合理化法人等は、当該勧告があつた日から起算して六月以内に、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該勧告に係る遊休農地について、特定利用権(農地についての耕作を目的とする賃借権をいう。以下同じ。)の設定に関し裁定を申請することができる。

(意見書の提出)
第三十八条  都道府県知事は、前条の規定による申請があつたときは、農林水産省令で定める事項を公告するとともに、当該申請に係る遊休農地の所有者等にこれを通知し、二週間を下らない期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならない。
2  前項の意見書を提出する者は、その意見書において、その者の有する権利の種類及び内容、その者が前条の規定による申請に係る遊休農地を現に耕作の目的に供していない理由その他の農林水産省令で定める事項を明らかにしなければならない。
3  都道府県知事は、第一項の期間を経過した後でなければ、裁定をしてはならない。

(裁定)
第三十九条  都道府県知事は、第三十七条の規定による申請に係る遊休農地が現に耕作の目的に供されておらず、かつ、前条第一項の意見書の内容その他当該遊休農地の利用に関する諸事情を考慮して引き続き耕作の目的に供されないことが確実であると見込まれる場合において、当該申請をした者が当該遊休農地をその者の利用計画に従つて利用に供することが当該遊休農地の農業上の利用の増進を図るため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、特定利用権を設定すべき旨の裁定をするものとする。
2  前項の裁定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  特定利用権を設定すべき遊休農地の所在、地番、地目及び面積
二  特定利用権の内容
三  特定利用権の始期及び存続期間
四  借賃
五  借賃の支払の方法
3  第一項の裁定は、前項第一号から第三号までに掲げる事項については申請の範囲を超えてはならず、同項第二号に掲げる事項についてはその遊休農地の性質によつて定まる用方に従い利用することとなるものでなければならず、同項第三号に規定する存続期間については五年を限度としなければならない。
4  都道府県知事は、第一項の裁定をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。

(裁定の効果等)
第四十条  都道府県知事は、前条第一項の裁定をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該裁定の申請をした者及び当該申請に係る遊休農地の所有者等に通知するとともに、これを公告しなければならない。当該裁定についての審査請求に対する裁決によつて当該裁定の内容が変更されたときも、同様とする。
2  前条第一項の裁定について前項の規定による公告があつたときは、当該裁定の定めるところにより、当該裁定の申請をした者と当該申請に係る遊休農地の所有者等との間に特定利用権の設定に関する契約が締結されたものとみなす。
3  民法第二百七十二条 ただし書(永小作権の譲渡又は賃貸の禁止)及び第六百十二条 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)の規定は、前項の場合には、適用しない。

(特定利用権に係る賃貸借の解除)
第四十一条  前条第二項の規定により設定された特定利用権を有する者が正当な理由がなく引き続き一年以上その特定利用権に係る遊休農地の全部又は一部をその目的に供しなかつたときは、その特定利用権を設定した者は、その目的に供されていない遊休農地につき、都道府県知事の承認を受けて、その特定利用権に係る賃貸借の解除をすることができる。

(特定利用権の譲渡等の禁止)
第四十二条  第四十条第二項の規定により設定された特定利用権を有する者は、その特定利用権を譲り渡し、又はその特定利用権に係る遊休農地を貸し付けることができない。ただし、特定利用権を有する農地保有合理化法人又は農地利用集積円滑化団体が、農地売買等事業により特定利用権に係る遊休農地を貸し付ける場合は、この限りでない。
2  民法第六百十二条 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)の規定は、前項ただし書の場合には、適用しない。

(所有者等を確知することができない場合における遊休農地の利用)
第四十三条  第三十二条ただし書の規定による公告に係る遊休農地(第三十条第三項第一号に該当する農地であつて、当該遊休農地の所有者等に対し第三十二条の規定による通知がされなかつたものに限る。)を利用する権利の設定を希望する農地保有合理化法人等は、当該公告があつた日から起算して六月以内に、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該遊休農地を利用する権利の設定に関し裁定を申請することができる。
2  第三十九条の規定は、前項の裁定について準用する。この場合において、同条第一項中「前条第一項の意見書の内容その他当該遊休農地」とあるのは「当該遊休農地」と、同項及び同条第二項第一号から第三号までの規定中「特定利用権」とあるのは「当該遊休農地を利用する権利」と、同項第四号中「借賃」とあるのは「借賃に相当する補償金の額」と、同項第五号中「借賃」とあるのは「補償金」と読み替えるものとする。
3  都道府県知事は、第一項の裁定をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該裁定の申請をした者に通知するとともに、これを公告しなければならない。当該裁定についての審査請求に対する裁決によつて当該裁定の内容が変更されたときも、同様とする。
4  第一項の裁定について前項の規定による公告があつたときは、当該裁定の定めるところにより、当該裁定の申請をした者は、当該遊休農地を利用する権利を取得する。
5  第一項の裁定の申請をした者は、当該裁定において定められた当該遊休農地を利用する権利の始期までに、当該裁定において定められた補償金を当該遊休農地の所有者等のために供託しなければならない。
6  前項の規定による補償金の供託は、当該遊休農地の所在地の供託所にするものとする。
7  第十六条及び前条第一項の規定は、第一項に規定する遊休農地を利用する権利について準用する。この場合において、第十六条第一項中「その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があつた」とあるのは、「その設定を受けた者が当該遊休農地の占有を始めた」と読み替えるものとする。

(措置命令)
第四十四条  市町村長は、第三十二条の規定による通知又は公告に係る遊休農地における病害虫の発生、土石その他これに類するものの堆積その他政令で定める事由により、当該遊休農地の周辺の地域における営農条件に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認める場合には、必要な限度において、当該遊休農地の所有者等に対し、期限を定めて、その支障の除去又は発生の防止のために必要な措置(以下この条において「支障の除去等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。
2  前項の規定による命令をするときは、農林水産省令で定める事項を記載した命令書を交付しなければならない。
3  市町村長は、第一項に規定する場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、自らその支障の除去等の措置の全部又は一部を講ずることができる。この場合において、第二号に該当すると認めるときは、相当の期限を定めて、当該支障の除去等の措置を講ずべき旨及びその期限までに当該支障の除去等の措置を講じないときは、自ら当該支障の除去等の措置を講じ、当該措置に要した費用を徴収する旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
一  第一項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ぜられた遊休農地の所有者等が、当該命令に係る期限までに当該命令に係る措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。
二  第一項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命じようとする場合において、過失がなくて当該支障の除去等の措置を命ずべき遊休農地の所有者等を確知することができないとき。
三  緊急に支障の除去等の措置を講ずる必要がある場合において、第一項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずるいとまがないとき。
4  市町村長は、前項の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じたときは、当該支障の除去等の措置に要した費用について、農林水産省令で定めるところにより、当該遊休農地の所有者等に負担させることができる。
5  前項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法 (昭和二十三年法律第四十三号)第五条 及び第六条 の規定を準用する。
農地法
(昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)

最終改正:平成二一年六月二四日法律第五七号


 第一章 総則(第一条—第二条の二)
 第二章 権利移動及び転用の制限等(第三条—第十五条)
 第三章 利用関係の調整等(第十六条—第二十九条)
 第四章 遊休農地に関する措置(第三十条—第四十四条)
 第五章 雑則(第四十五条—第六十三条の二)
 第六章 罰則(第六十四条—第六十九条)
 附則

   第五章 雑則

(買収した土地、立木等の管理)
第四十五条  国が第七条第一項若しくは第十二条第一項の規定により買収し、又は第二十二条第一項若しくは第二十三条第一項の規定に基づく申出により買い取つた土地、立木、工作物及び権利は、政令で定めるところにより、農林水産大臣が管理する。
2  前項の規定により農林水産大臣が管理する国有財産につき国有財産法 (昭和二十三年法律第七十三号)第三十二条第一項 の規定により備えなければならない台帳の取扱いについては、政令で特例を定めることができる。

(売払い)
第四十六条  農林水産大臣は、前条第一項の規定により管理する農地及び採草放牧地について、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地又は採草放牧地のすべてを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められる者、農地保有合理化法人、農地利用集積円滑化団体その他の農林水産省令で定める者に売り払うものとする。ただし、次条の規定により売り払う場合は、この限りでない。
2  前項の規定により売り払う農地又は採草放牧地について、その農業上の利用のため第十二条第一項の規定により併せて買収した附帯施設があるときは、これをその農地又は採草放牧地の売払いを受ける者に併せて売り払うものとする。

第四十七条  農林水産大臣は、第四十五条第一項の規定により管理する土地、立木、工作物又は権利について、政令で定めるところにより、土地の農業上の利用の増進の目的に供しないことを相当と認めたときは、農林水産省令で定めるところにより、これを売り払い、又はその所管換若しくは所属替をすることができる。

(公簿の閲覧等)
第四十八条  国又は都道府県の職員は、登記所又は市町村の事務所について、この法律による買収、買取り又は裁定に関し、無償で、必要な簿書を閲覧し、又はその謄本若しくは登記事項証明書の交付を受けることができる。

(立入調査)
第四十九条  農林水産大臣又は都道府県知事は、この法律による買収その他の処分をするため必要があるときは、その職員に他人の土地又は工作物に立ち入つて調査させ、測量させ、又は調査若しくは測量の障害となる竹木その他の物を除去させ、若しくは移転させることができる。
2  前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、その土地又は工作物の所有者、占有者その他の利害関係人にこれを提示しなければならない。
3  第一項の場合には、農林水産大臣又は都道府県知事は、農林水産省令で定める手続に従い、あらかじめ、その土地又は工作物の占有者にこれを通知しなければならない。但し、通知をすることができない場合その他特別の事情がある場合には、公示をもつて通知に代えることができる。
4  第一項の規定による立入は、工作物、宅地及びかき、さく等で囲まれた土地に対しては、日出から日没までの間でなければしてはならない。
5  国又は都道府県は、第一項の土地又は工作物の所有者又は占有者が同項の規定による調査、測量又は物件の除去若しくは移転によつて損失を受けた場合には、政令で定めるところにより、その者に対し、通常生ずべき損失を補償する。
6  第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(報告の徴取)
第五十条  農林水産大臣又は都道府県知事は、この法律を施行するため必要があるときは、土地の状況等に関し、都道府県農業会議又は農業委員会から必要な報告を徴することができる。

(違反転用に対する処分)
第五十一条  農林水産大臣又は都道府県知事は、政令で定めるところにより、次の各号のいずれかに該当する者(以下この条において「違反転用者等」という。)に対して、土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、第四条若しくは第五条の規定によつてした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(以下この条において「原状回復等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。
一  第四条第一項若しくは第五条第一項の規定に違反した者又はその一般承継人
二  第四条第一項又は第五条第一項の許可に付した条件に違反している者
三  前二号に掲げる者から当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負つた者又はその工事その他の行為の下請人
四  偽りその他不正の手段により、第四条第一項又は第五条第一項の許可を受けた者
2  前項の規定による命令をするときは、農林水産省令で定める事項を記載した命令書を交付しなければならない。
3  農林水産大臣又は都道府県知事は、第一項に規定する場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、自らその原状回復等の措置の全部又は一部を講ずることができる。この場合において、第二号に該当すると認めるときは、相当の期限を定めて、当該原状回復等の措置を講ずべき旨及びその期限までに当該原状回復等の措置を講じないときは、自ら当該原状回復等の措置を講じ、当該措置に要した費用を徴収する旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
一  第一項の規定により原状回復等の措置を講ずべきことを命ぜられた違反転用者等が、当該命令に係る期限までに当該命令に係る措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。
二  第一項の規定により原状回復等の措置を講ずべきことを命じようとする場合において、過失がなくて当該原状回復等の措置を命ずべき違反転用者等を確知することができないとき。
三  緊急に原状回復等の措置を講ずる必要がある場合において、第一項の規定により原状回復等の措置を講ずべきことを命ずるいとまがないとき。
4  農林水産大臣又は都道府県知事は、前項の規定により同項の原状回復等の措置の全部又は一部を講じたときは、当該原状回復等の措置に要した費用について、農林水産省令で定めるところにより、当該違反転用者等に負担させることができる。
5  前項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法第五条 及び第六条 の規定を準用する。

(情報の提供等)
第五十二条  農業委員会は、農地の農業上の利用の増進及び農地の利用関係の調整に資するため、農地の保有及び利用の状況、借賃等の動向その他の農地に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。

(不服申立て)
第五十三条  第九条第一項(第十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定による買収令書の交付についての異議申立て又は第三十九条第一項若しくは第四十三条第一項の裁定についての審査請求においては、その対価、借賃又は補償金の額についての不服をその処分についての不服の理由とすることができない。ただし、同項の裁定を受けた者がその裁定に係る遊休農地の所有者等を確知することができないことにより第五十五条第一項の訴えを提起することができない場合は、この限りでない。
2  第四条第一項又は第五条第一項の規定による許可に関する処分に不服がある者は、その不服の理由が鉱業、採石業又は砂利採取業との調整に関するものであるときは、公害等調整委員会に対して裁定の申請をすることができる。
3  第七条第二項又は第六項の規定による公示については、行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。前項の規定により裁定の申請をすることができる処分についても、同様とする。
4  行政不服審査法第十八条 の規定は、前項後段の処分につき、処分庁が誤つて審査請求又は異議申立てをすることができる旨を教示した場合に準用する。

(不服申立てと訴訟との関係)
第五十四条  この法律に基づく処分(不服申立てをすることができない処分を除く。)の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求又は異議申立てに対する裁決又は決定を経た後でなければ、提起することができない。
2  第五十一条第一項の規定による処分については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第二十七条第二項 の規定は、適用しない。

(対価等の額の増減の訴え)
第五十五条  次に掲げる対価、借賃又は補償金の額に不服がある者は、訴えをもつて、その増減を請求することができる。ただし、これらの対価、借賃又は補償金に係る処分のあつた日から六月を経過したときは、この限りでない。
一  第九条第一項第三号(第十二条第二項において準用する場合を含む。)に規定する対価
二  第三十九条第二項第四号に規定する借賃
三  第四十三条第二項において読み替えて準用する第三十九条第二項第四号に規定する補償金
2  前項第一号に掲げる対価の額についての同項の訴えにおいては国を、同項第二号に掲げる借賃の額についての同項の訴えにおいては第三十七条の規定による申請をした者又はその申請に係る遊休農地の所有者等を、同項第三号に規定する補償金の額についての同項の訴えにおいては第四十三条第一項の規定による申請をした者又はその申請に係る遊休農地の所有者等を、それぞれ被告とする。
3  第一項第一号に掲げる対価につきこれを増額する判決が確定した場合において、増額前の対価が第十条第二項(第十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により供託されているときは、国は、その増額に係る対価を供託しなければならず、また、この場合においては、第十条第三項の規定を準用する。
4  第十一条第二項の規定は、前項の規定により供託された対価について準用する。

(土地の面積)
第五十六条  この法律の適用については、土地の面積は、登記簿の地積による。ただし、登記簿の地積が著しく事実と相違する場合及び登記簿の地積がない場合には、実測に基づき、農業委員会が認定したところによる。

(換地予定地に相当する従前の土地の指定)
第五十七条  第七条第一項の規定による買収をする場合において、その買収の対象となるべき農地を明らかにするため特に必要があるときは、農林水産大臣は、旧耕地整理法(明治四十二年法律第三十号)に基づく耕地整理、土地区画整理法施行法 (昭和二十九年法律第百二十号)第三条第一項 若しくは第四条第一項 に規定する土地区画整理若しくは土地改良法 に基づく土地改良事業に係る規約又は同法第五十三条の五第一項 (同法第九十六条 及び第九十六条の四 において準用する場合を含む。)若しくは第八十九条の二第六項 若しくは土地区画整理法 (昭和二十九年法律第百十九号)第九十八条第一項 の規定によつて、換地処分の発効前に従前の土地に代えて使用又は収益をすることができるものとして指定された土地又はその土地の部分に相当する従前の土地又は土地の部分を地目、地積、土性等を考慮して指定することができる。
2  農林水産大臣は、前項の規定による指定をしたときは、その指定の内容を遅滞なく農業委員会に通知しなければならない。

(指示及び代行)
第五十八条  農林水産大臣は、この法律の目的を達成するため特に必要があると認めるときは、この法律に規定する農業委員会の事務(第六十三条第一項第四号及び第八号並びに第二項各号に掲げるものを除く。)の処理に関し、農業委員会に対し、必要な指示をすることができる。
2  農林水産大臣は、この法律の目的を達成するため特に必要があると認めるときは、この法律に規定する都道府県知事の事務(第六十三条第一項第二号、第三号、第六号及び第七号に掲げるものを除く。次項において同じ。)の処理に関し、都道府県知事に対し、必要な指示をすることができる。
3  農林水産大臣は、都道府県知事が前項の指示に従わないときは、この法律に規定する都道府県知事の事務を処理することができる。
4  農林水産大臣は、前項の規定により自ら処理するときは、その旨を告示しなければならない。

(是正の要求の方式)
第五十九条  農林水産大臣は、次に掲げる都道府県知事の事務の処理が農地又は採草放牧地の確保に支障を生じさせていることが明らかであるとして地方自治法第二百四十五条の五第一項 の規定による求めを行うときは、当該都道府県知事が講ずべき措置の内容を示して行うものとする。
一  第四条第一項の規定により都道府県知事が処理することとされている事務(同一の事業の目的に供するため二ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする行為に係るものを除く。)
二  第五条第一項の規定により都道府県知事が処理することとされている事務(同一の事業の目的に供するため二ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得する行為に係るものを除く。)
2  農林水産大臣は、前項各号に掲げる都道府県知事の事務を地方自治法第二百五十二条の十七の二第一項 の条例の定めるところにより市町村が処理することとされた場合において、当該市町村の当該事務の処理が農地又は採草放牧地の確保に支障を生じさせていることが明らかであるとして同法第二百四十五条の五第二項 の指示を行うときは、当該市町村が講ずべき措置の内容を示して行うものとする。

(農業委員会に関する特例)
第六十条  農業委員会等に関する法律第三条第一項 ただし書又は第五項 の規定により、農業委員会が置かれていない市町村についてのこの法律(第二十五条を除く。以下この項において同じ。)の適用については、この法律中「農業委員会」とあるのは、「市町村長」と読み替えるものとする。
2  農業委員会等に関する法律第三条第二項 の規定により二以上の農業委員会が置かれている市町村についてのこの法律の適用については、この法律中「市町村の区域」とあるのは、「農業委員会の区域」と読み替えるものとする。

(特別区等の特例)
第六十一条  この法律中市町村又は市町村長に関する規定(指定都市にあつては、第三条第四項を除く。)は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区の区長に、指定都市(農業委員会等に関する法律第三十五条第二項 の規定により区ごとに農業委員会を置かないこととされたものを除く。)にあつては区又は区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合管理者に適用する。

(権限の委任)
第六十二条  この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方農政局長に委任することができる。

(事務の区分)
第六十三条  この法律の規定により都道府県又は市町村が処理することとされている事務のうち、次の各号及び次項各号に掲げるもの以外のものは、地方自治法第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務とする。
一  第三条第四項の規定により市町村が処理することとされている事務(同項の規定により農業委員会が処理することとされている事務を除く。)
二  第四条第一項、第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)及び第五項の規定により都道府県が処理することとされている事務(同一の事業の目的に供するため二ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする行為に係るものを除く。)
三  第五条第一項及び第四項の規定並びに同条第三項及び第五項において準用する第四条第三項の規定により都道府県が処理することとされている事務(同一の事業の目的に供するため二ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得する行為に係るものを除く。)
四  第三十条第一項から第三項まで、第三十一条、第三十二条、第三十三条第一項、第三十四条及び第三十五条第一項の規定により市町村が処理することとされている事務
五  第四十四条の規定により市町村が処理することとされている事務
六  第四十九条第一項、第三項及び第五項並びに第五十条の規定により都道府県が処理することとされている事務(第二号、第三号及び次号に掲げる事務に係るものに限る。)
七  第五十一条の規定により都道府県が処理することとされている事務(第二号及び第三号に掲げる事務に係るものに限る。)
八  第五十二条の規定により市町村が処理することとされている事務
2  この法律の規定により市町村が処理することとされている事務のうち、次に掲げるものは、地方自治法第二条第九項第二号 に規定する第二号 法定受託事務とする。
一  第四条第一項第七号の規定により市町村が処理することとされている事務(同一の事業の目的に供するため二ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする行為に係るものを除く。)
二  第五条第一項第六号の規定により市町村が処理することとされている事務(同一の事業の目的に供するため二ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得する行為に係るものを除く。)

(運用上の配慮)
第六十三条の二  この法律の運用に当たつては、我が国の農業が家族農業経営、法人による農業経営等の経営形態が異なる農業者や様々な経営規模の農業者など多様な農業者により、及びその連携の下に担われていること等を踏まえ、農業の経営形態、経営規模等についての農業者の主体的な判断に基づく様々な農業に関する取組を尊重するとともに、地域における貴重な資源である農地が地域との調和を図りつつ農業上有効に利用されるよう配慮しなければならない。

   第六章 罰則

第六十四条  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一  第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の規定に違反した者
二  偽りその他不正の手段により、第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の許可を受けた者
三  第五十一条第一項の規定による農林水産大臣又は都道府県知事の命令に違反した者

第六十五条  第四十九条第一項の規定による職員の調査、測量、除去又は移転を拒み、妨げ、又は忌避した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第六十六条  第四十四条第一項の規定による市町村長の命令に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。

第六十七条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第六十四条第一号若しくは第二号(これらの規定中第四条第一項又は第五条第一項に係る部分に限る。)又は第三号 一億円以下の罰金刑
二  第六十四条(前号に係る部分を除く。)又は前二条 各本条の罰金刑

第六十八条  次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の過料に処する。
一  第六条第一項の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二  第三十三条第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三  第三十四条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第六十九条  第三条の三第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。
  第一編 総則

第一条 この法律は、刑事事件につき、
公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、
事案の真相を明らかにし、
刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。

   第一章 裁判所の管轄

第二条 裁判所の土地管轄は、
犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。

○2 国外に在る日本船舶内で犯した罪については、
前項に規定する地の外、その船舶の船籍の所在地又は犯罪後その船舶の寄泊した地による。

○3 国外に在る日本航空機内で犯した罪については、
第一項に規定する地の外、犯罪後その航空機の着陸(着水を含む。)した地による。

第三条 事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、
上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

○2 高等裁判所の特別権限に属する事件と他の事件とが関連するときは、
高等裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

第四条 事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、
併せて審判することを必要としないものがあるときは、
上級の裁判所は、決定で管轄権を有する下級の裁判所にこれを移送することができる。

第五条 数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、
事物管轄にかかわらず、
上級の裁判所は、決定で下級の裁判所の管轄に属する事件を併せて審判することができる。

○2 高等裁判所の特別権限に属する事件が高等裁判所に係属し、
これと関連する事件が下級の裁判所に係属するときは、
高等裁判所は、決定で下級の裁判所の管轄に属する事件を併せて審判することができる。

第六条 土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、
一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、
併せて他の事件を管轄することができる。
但し、他の法律の規定により特定の裁判所の管轄に属する事件は、
これを管轄することができない。

第七条 土地管轄を異にする数個の関連事件が同一裁判所に係属する場合において、
併せて審判することを必要としないものがあるときは、
その裁判所は、決定で管轄権を有する他の裁判所にこれを移送することができる。

第八条 数個の関連事件が各別に事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、
各裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定でこれを一の裁判所に併合することができる。

○2 前項の場合において各裁判所の決定が一致しないときは、
各裁判所に共通する直近上級の裁判所は、
検察官又は被告人の請求により、
決定で事件を一の裁判所に併合することができる。

第九条 数個の事件は、左の場合に関連するものとする。
一 一人が数罪を犯したとき。
二 数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき。
三 数人が通謀して各別に罪を犯したとき。

○2 犯人蔵匿の罪、証憑湮滅の罪、偽証の罪、虚偽の鑑定通訳の罪及び贓物に関する罪とその本犯の罪とは、共に犯したものとみなす。

第十条 同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、
上級の裁判所が、これを審判する。

○2 上級の裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で管轄権を有する下級の裁判所にその事件を審判させることができる。

第十一条 同一事件が事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、最初に公訴を受けた裁判所が、これを審判する。
○2 各裁判所に共通する直近上級の裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で後に公訴を受けた裁判所にその事件を審判させることができる。

第十二条 裁判所は、事実発見のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。
○2 前項の規定は、受命裁判官にこれを準用する。

第十三条 訴訟手続は、管轄違の理由によつては、その効力を失わない。

第十四条 裁判所は、管轄権を有しないときでも、急速を要する場合には、事実発見のため必要な処分をすることができる。
○2 前項の規定は、受命裁判官にこれを準用する。

第十五条 検察官は、左の場合には、関係のある第一審裁判所に共通する直近上級の裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。
一 裁判所の管轄区域が明らかでないため管轄裁判所が定まらないとき。
二 管轄違を言い渡した裁判が確定した事件について他に管轄裁判所がないとき。

第十六条 法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。

第十七条 検察官は、左の場合には、直近上級の裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。
一 管轄裁判所が法律上の理由又は特別の事情により裁判権を行うことができないとき。
二 地方の民心、訴訟の状況その他の事情により裁判の公平を維持することができない虞があるとき。
○2 前項各号の場合には、被告人も管轄移転の請求をすることができる。

第十八条 犯罪の性質、地方の民心その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最高裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。

第十九条 裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同じくする他の管轄裁判所に移送することができる。
○2 移送の決定は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない。
○3 移送の決定又は移送の請求を却下する決定に対しては、その決定により著しく利益を害される場合に限り、その事由を疎明して、即時抗告をすることができる。
   第二章 裁判所職員の除斥及び忌避

第二十条 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
一 裁判官が被害者であるとき。
二 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。
三 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
四 裁判官が事件について証人又は鑑定人となつたとき。
五 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となつたとき。
六 裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行つたとき。
七 裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

第二十一条 裁判官が職務の執行から除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をする虞があるときは、検察官又は被告人は、これを忌避することができる。
○2 弁護人は、被告人のため忌避の申立をすることができる。但し、被告人の明示した意思に反することはできない。

第二十二条 事件について請求又は陳述をした後には、不公平な裁判をする虞があることを理由として裁判官を忌避することはできない。但し、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

第二十三条 合議体の構成員である裁判官が忌避されたときは、その裁判官所属の裁判所が、決定をしなければならない。この場合においてその裁判所が地方裁判所又は家庭裁判所であるときは、合議体で決定をしなければならない。
○2 地方裁判所又は家庭裁判所の一人の裁判官が忌避されたときはその裁判官所属の裁判所が、簡易裁判所の裁判官が忌避されたときは管轄地方裁判所が、合議体で決定をしなければならない。ただし、忌避された裁判官が忌避の申立てを理由があるものとするときは、その決定があつたものとみなす。
○3 忌避された裁判官は、前二項の決定に関与することができない。
○4 裁判所が忌避された裁判官の退去により決定をすることができないときは、直近上級の裁判所が、決定をしなければならない。

第二十四条 訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな忌避の申立は、決定でこれを却下しなければならない。この場合には、前条第三項の規定を適用しない。第二十二条の規定に違反し、又は裁判所の規則で定める手続に違反してされた忌避の申立を却下する場合も、同様である。
○2 前項の場合には、忌避された受命裁判官、地方裁判所若しくは家庭裁判所の一人の裁判官又は簡易裁判所の裁判官は、忌避の申立てを却下する裁判をすることができる。

第二十五条 忌避の申立を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第二十六条 この章の規定は、第二十条第七号の規定を除いて、裁判所書記にこれを準用する。
○2 決定は、裁判所書記所属の裁判所がこれをしなければならない。但し、第二十四条第一項の場合には、裁判所書記の附属する受命裁判官が、忌避の申立を却下する裁判をすることができる。
   第三章 訴訟能力

第二十七条 被告人又は被疑者が法人であるときは、その代表者が、訴訟行為についてこれを代表する。
○2 数人が共同して法人を代表する場合にも、訴訟行為については、各自が、これを代表する。

第二十八条 刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十九条又は第四十一条の規定を適用しない罪に当たる事件について、被告人又は被疑者が意思能力を有しないときは、その法定代理人(親権者が二人あるときは、各自。以下同じ。)が、訴訟行為についてこれを代理する。

第二十九条 前二条の規定により被告人を代表し、又は代理する者がないときは、検察官の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければならない。 
○2 前二条の規定により被疑者を代表し、又は代理する者がない場合において、検察官、司法警察員又は利害関係人の請求があつたときも、前項と同様である。
○3 特別代理人は、被告人又は被疑者を代表し又は代理して訴訟行為をする者ができるまで、その任務を行う。
   第四章 弁護及び補佐

第三十条 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
○2 被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。

第三十一条 弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。
○2 簡易裁判所、家庭裁判所又は地方裁判所においては、裁判所の許可を得たときは、弁護士でない者を弁護人に選任することができる。但し、地方裁判所においては、他に弁護士の中から選任された弁護人がある場合に限る。

第三十一条の二 弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。
○2 弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。
○3 弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。

第三十二条 公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。
○2 公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。

第三十三条 被告人に数人の弁護人があるときは、裁判所の規則で、主任弁護人を定めなければならない。

第三十四条 前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。

第三十五条 裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。

第三十六条 被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

第三十六条の二 この法律により弁護人を要する場合を除いて、被告人が前条の請求をするには、資力申告書(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額(以下「資力」という。)及びその内訳を申告する書面をいう。以下同じ。)を提出しなければならない。

第三十六条の三 この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
○2 前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十七条 左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
一 被告人が未成年者であるとき。
二 被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
三 被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
四 被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
五 その他必要と認めるとき。

第三十七条の二 死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
○2 前項の請求は、同項に規定する事件について勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。

第三十七条の三 前条第一項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。
○2 その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
○3 前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十七条の四 裁判官は、第三十七条の二第一項に規定する事件について被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

第三十七条の五 裁判官は、死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件について第三十七条の二第一項又は前条の規定により弁護人を付する場合又は付した場合において、特に必要があると認めるときは、職権で更に弁護人一人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

第三十八条 この法律の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。
○2 前項の規定により選任された弁護人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。

第三十八条の二 裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。

第三十八条の三 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一 第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
二 被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
三 心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。
四 弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五 弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
○2 弁護人を解任するには、あらかじめ、その意見を聴かなければならない。
○3 弁護人を解任するに当たつては、被告人の権利を不当に制限することがないようにしなければならない。
○4 公訴の提起前は、裁判官が付した弁護人の解任は、裁判官がこれを行う。この場合においては、前三項の規定を準用する。

第三十八条の四 裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。

第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
○2 前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
○3 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

第四十条 弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。但し、証拠物を謄写するについては、裁判長の許可を受けなければならない。
○2 前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。

第四十一条 弁護人は、この法律に特別の定のある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができる。

第四十二条 被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、何時でも補佐人となることができる。
○2 補佐人となるには、審級ごとにその旨を届け出なければならない。
○3 補佐人は、被告人の明示した意思に反しない限り、被告人がすることのできる訴訟行為をすることができる。但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。
   第五章 裁判

第四十三条 判決は、この法律に特別の定のある場合を除いては、口頭弁論に基いてこれをしなければならない。
○2 決定又は命令は、口頭弁論に基いてこれをすることを要しない。
○3 決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調をすることができる。
○4 前項の取調は、合議体の構成員にこれをさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。

第四十四条 裁判には、理由を附しなければならない。
○2 上訴を許さない決定又は命令には、理由を附することを要しない。但し、第四百二十八条第二項の規定により異議の申立をすることができる決定については、この限りでない。

第四十五条 判決以外の裁判は、判事補が一人でこれをすることができる。

第四十六条 被告人その他訴訟関係人は、自己の費用で、裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求することができる。
   第六章 書類及び送達

第四十七条 訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。

第四十八条 公判期日における訴訟手続については、公判調書を作成しなければならない。
○2 公判調書には、裁判所の規則の定めるところにより、公判期日における審判に関する重要な事項を記載しなければならない。
○3 公判調書は、各公判期日後速かに、遅くとも判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。但し、判決を宣告する公判期日の調書は、この限りでない。

第四十九条 被告人に弁護人がないときは、公判調書は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人も、これを閲覧することができる。被告人は、読むことができないとき、又は目の見えないときは、公判調書の朗読を求めることができる。

第五十条 公判調書が次回の公判期日までに整理されなかつたときは、裁判所書記は、検察官、被告人又は弁護人の請求により、次回の公判期日において又はその期日までに、前回の公判期日における証人の供述の要旨を告げなければならない。この場合において、請求をした検察官、被告人又は弁護人が証人の供述の要旨の正確性につき異議を申し立てたときは、その旨を調書に記載しなければならない。
○2 被告人及び弁護人の出頭なくして開廷した公判期日の公判調書が、次回の公判期日までに整理されなかつたときは、裁判所書記は、次回の公判期日において又はその期日までに、出頭した被告人又は弁護人に前回の公判期日における審理に関する重要な事項を告げなければならない。

第五十一条 検察官、被告人又は弁護人は、公判調書の記載の正確性につき異議を申し立てることができる。異議の申立があつたときは、その旨を調書に記載しなければならない。
○2 前項の異議の申立は、遅くとも当該審級における最終の公判期日後十四日以内にこれをしなければならない。但し、判決を宣告する公判期日の調書については、整理ができた日から十四日以内にこれをすることができる。

第五十二条 公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができる。

第五十三条 何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。
○2 弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は、前項の規定にかかわらず、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があつて特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを閲覧することができない。
○3 日本国憲法第八十二条第二項但書に掲げる事件については、閲覧を禁止することはできない。
○4 訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。

第五十三条の二 訴訟に関する書類及び押収物については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)及び独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)の規定は、適用しない。
○2 訴訟に関する書類及び押収物に記録されている個人情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第四章及び独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)第四章の規定は、適用しない。

第五十四条 書類の送達については、裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(公示送達に関する規定を除く。)を準用する。
   第七章 期間

第五十五条 期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。
○2 月及び年は、暦に従つてこれを計算する。
○3 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、これを期間に算入しない。ただし、時効期間については、この限りでない。

第五十六条 法定の期間は、裁判所の規則の定めるところにより、訴訟行為をすべき者の住居又は事務所の所在地と裁判所又は検察庁の所在地との距離及び交通通信の便否に従い、これを延長することができる。
○2 前項の規定は、宣告した裁判に対する上訴の提起期間には、これを適用しない。
   第八章 被告人の召喚、勾引及び勾留

第五十七条 裁判所は、裁判所の規則で定める相当の猶予期間を置いて、被告人を召喚することができる。

第五十八条 裁判所は、次の場合には、被告人を勾引することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるとき。

第五十九条 勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。但し、その時間内に勾留状が発せられたときは、この限りでない。

第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
○2 勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
○3 三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。

第六十一条 被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。

第六十二条 被告人の召喚、勾引又は勾留は、召喚状、勾引状又は勾留状を発してこれをしなければならない。

第六十三条 召喚状には、被告人の氏名及び住居、罪名、出頭すべき年月日時及び場所並びに正当な理由がなく出頭しないときは勾引状を発することがある旨その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

第六十四条 勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
○2 被告人の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被告人を特定するに足りる事項で被告人を指示することができる。
○3 被告人の住居が明らかでないときは、これを記載することを要しない。

第六十五条 召喚状は、これを送達する。
○2 被告人から期日に出頭する旨を記載した書面を差し出し、又は出頭した被告人に対し口頭で次回の出頭を命じたときは、召喚状を送達した場合と同一の効力を有する。口頭で出頭を命じた場合には、その旨を調書に記載しなければならない。
○3 裁判所に近接する刑事施設にいる被告人に対しては、刑事施設職員(刑事施設の長又はその指名する刑事施設の職員をいう。以下同じ。)に通知してこれを召喚することができる。この場合には、被告人が刑事施設職員から通知を受けた時に召喚状の送達があつたものとみなす。

第六十六条 裁判所は、被告人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に被告人の勾引を嘱託することができる。
○2 受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。
○3 受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。
○4 嘱託又は移送を受けた裁判官は、勾引状を発しなければならない。
○5 第六十四条の規定は、前項の勾引状についてこれを準用する。この場合においては、勾引状に嘱託によつてこれを発する旨を記載しなければならない。

第六十七条 前条の場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人を引致した時から二十四時間以内にその人違でないかどうかを取り調べなければならない。
○2 被告人が人違でないときは、速やかに且つ直接これを指定された裁判所に送致しなければならない。この場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人が指定された裁判所に到着すべき期間を定めなければならない。
○3 前項の場合には、第五十九条の期間は、被告人が指定された裁判所に到着した時からこれを起算する。

第六十八条 裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭又は同行を命ずることができる。被告人が正当な理由がなくこれに応じないときは、その場所に勾引することができる。この場合には、第五十九条の期間は、被告人をその場所に引致した時からこれを起算する。

第六十九条 裁判長は、急速を要する場合には、第五十七条乃至第六十二条、第六十五条、第六十六条及び前条に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。

第七十条 勾引状又は勾留状は、検察官の指揮によつて、検察事務官又は司法警察職員がこれを執行する。但し、急速を要する場合には、裁判長、受命裁判官又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官は、その執行を指揮することができる。
○2 刑事施設にいる被告人に対して発せられた勾留状は、検察官の指揮によつて、刑事施設職員がこれを執行する。

第七十一条 検察事務官又は司法警察職員は、必要があるときは、管轄区域外で、勾引状若しくは勾留状を執行し、又はその地の検察事務官若しくは司法警察職員にその執行を求めることができる。

第七十二条 被告人の現在地が判らないときは、裁判長は、検事長にその捜査及び勾引状又は勾留状の執行を嘱託することができる。
○2 嘱託を受けた検事長は、その管内の検察官に捜査及び勾引状又は勾留状の執行の手続をさせなければならない。

第七十三条 勾引状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに且つ直接、指定された裁判所その他の場所に引致しなければならない。第六十六条第四項の勾引状については、これを発した裁判官に引致しなければならない。
○2 勾留状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに、かつ、直接、指定された刑事施設に引致しなければならない。
○3 勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。

第七十四条 勾引状又は勾留状の執行を受けた被告人を護送する場合において必要があるときは、仮に最寄りの刑事施設にこれを留置することができる。

第七十五条 勾引状の執行を受けた被告人を引致した場合において必要があるときは、これを刑事施設に留置することができる。

第七十六条 被告人を勾引したときは、直ちに被告人に対し、公訴事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨並びに貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。
○2 前項の告知は、合議体の構成員又は裁判所書記にこれをさせることができる。
○3 第六十六条第四項の規定により勾引状を発した場合には、第一項の告知は、その勾引状を発した裁判官がこれをしなければならない。但し、裁判所書記にその告知をさせることができる。

第七十七条 逮捕又は勾引に引き続き勾留する場合を除いて被告人を勾留するには、被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
○2 第六十一条但書の場合には、被告人を勾留した後直ちに、前項に規定する事項の外、公訴事実の要旨を告げなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。
○3 前条第二項の規定は、前二項の告知についてこれを準用する。

第七十八条 勾引又は勾留された被告人は、裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者に弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる。ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
○2 前項の申出を受けた裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者は、直ちに被告人の指定した弁護士、弁護士法人又は弁護士会にその旨を通知しなければならない。被告人が二人以上の弁護士又は二以上の弁護士法人若しくは弁護士会を指定して前項の申出をしたときは、そのうちの一人の弁護士又は一の弁護士法人若しくは弁護士会にこれを通知すれば足りる。

第七十九条 被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人にその旨を通知しなければならない。

第八十条 勾留されている被告人は、第三十九条第一項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。勾引状により刑事施設に留置されている被告人も、同様である。

第八十一条 裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

第八十二条 勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
○2 勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
○3 前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。

第八十三条 勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。
○2 法廷は、裁判官及び裁判所書記が列席してこれを開く。
○3 被告人及びその弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない。但し、被告人の出頭については、被告人が病気その他やむを得ない事由によつて出頭することができず且つ被告人に異議がないとき、弁護人の出頭については、被告人に異議がないときは、この限りでない。

第八十四条 法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
○2 検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。

第八十五条 勾留の理由の開示は、合議体の構成員にこれをさせることができる。

第八十六条 同一の勾留について第八十二条の請求が二以上ある場合には、勾留の理由の開示は、最初の請求についてこれを行う。その他の請求は、勾留の理由の開示が終つた後、決定でこれを却下しなければならない。

第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
○2 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第八十八条 勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
○2 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第九十条 裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
○2 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第九十二条 裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
○2 検察官の請求による場合を除いて、勾留を取り消す決定をするときも、前項と同様である。但し、急速を要する場合は、この限りでない。

第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
○2 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
○3 保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。

第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。
○2 裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。
○3 裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。

第九十五条 裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。

第九十六条 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
○2 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。
○3 保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。

第九十七条 上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないものについて、勾留の期間を更新し、勾留を取り消し、又は保釈若しくは勾留の執行停止をし、若しくはこれを取り消すべき場合には、原裁判所が、その決定をしなければならない。
○2 上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて前項の決定をすべき裁判所は、裁判所の規則の定めるところによる。
○3 前二項の規定は、勾留の理由の開示をすべき場合にこれを準用する。

第九十八条 保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。
○2 前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官の指揮により、被告人に対し保釈若しくは勾留の執行停止が取り消された旨又は勾留の執行停止の期間が満了した旨を告げて、これを刑事施設に収容することができる。ただし、その書面は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
○3 第七十一条の規定は、前二項の規定による収容についてこれを準用する。
   第九章 押収及び捜索
   第九章 押収及び捜索

第九十九条 裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。
○2 裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。

第百条 裁判所は、被告人から発し、又は被告人に対して発した郵便物、信書便物又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものを差し押え、又は提出させることができる。
○2 前項の規定に該当しない郵便物、信書便物又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものは、被告事件に関係があると認めるに足りる状況のあるものに限り、これを差し押え、又は提出させることができる。
○3 前二項の規定による処分をしたときは、その旨を発信人又は受信人に通知しなければならない。但し、通知によつて審理が妨げられる虞がある場合は、この限りでない。

第百一条 被告人その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

第百二条 裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物又は住居その他の場所に就き、捜索をすることができる。
○2 被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

第百三条 公務員又は公務員であつた者が保管し、又は所持する物について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ、押収をすることはできない。但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

第百四条 左に掲げる者が前条の申立をしたときは、第一号に掲げる者についてはその院、第二号に掲げる者については内閣の承諾がなければ、押収をすることはできない。
一 衆議院若しくは参議院の議員又はその職に在つた者
二 内閣総理大臣その他の国務大臣又はその職に在つた者
○2 前項の場合において、衆議院、参議院又は内閣は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

第百五条 医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため、保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

第百六条 公判廷外における差押又は捜索は、差押状又は捜索状を発してこれをしなければならない。

第百七条 差押状又は捜索状には、被告人の氏名、罪名、差し押えるべき物又は捜索すべき場所、身体若しくは物、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長が、これに記名押印しなければならない。
○2 第六十四条第二項の規定は、前項の差押状又は捜索状についてこれを準用する。

第百八条 差押状又は捜索状は、検察官の指揮によつて、検察事務官又は司法警察職員がこれを執行する。但し、裁判所が被告人の保護のため必要があると認めるときは、裁判長は、裁判所書記又は司法警察職員にその執行を命ずることができる。
○2 裁判所は、差押状又は捜索状の執行に関し、その執行をする者に対し書面で適当と認める指示をすることができる。
○3 前項の指示は、合議体の構成員にこれをさせることができる。
○4 第七十一条の規定は、差押状又は捜索状の執行についてこれを準用する。

第百九条 検察事務官又は裁判所書記は、差押状又は捜索状の執行について必要があるときは、司法警察職員に補助を求めることができる。

第百十条 差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。

第百十一条 差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。公判廷で差押又は捜索をする場合も、同様である。
○2 前項の処分は、押収物についても、これをすることができる。

第百十二条 差押状又は捜索状の執行中は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入することを禁止することができる。
○2 前項の禁止に従わない者は、これを退去させ、又は執行が終るまでこれに看守者を附することができる。

第百十三条 検察官、被告人又は弁護人は、差押状又は捜索状の執行に立ち会うことができる。但し、身体の拘束を受けている被告人は、この限りでない。
○2 差押状又は捜索状の執行をする者は、あらかじめ、執行の日時及び場所を前項の規定により立ち会うことができる者に通知しなければならない。但し、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示した場合及び急速を要する場合は、この限りでない。
○3 裁判所は、差押状又は捜索状の執行について必要があるときは、被告人をこれに立ち会わせることができる。

第百十四条 公務所内で差押状又は捜索状の執行をするときは、その長又はこれに代るべき者に通知してその処分に立ち会わせなければならない。
○2 前項の規定による場合を除いて、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状又は捜索状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代るべき者をこれに立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。

第百十五条 女子の身体について捜索状の執行をする場合には、成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。但し、急速を要する場合は、この限りでない。

第百十六条 日出前、日没後には、令状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、差押状又は捜索状の執行のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることはできない。
○2 日没前に差押状又は捜索状の執行に着手したときは、日没後でも、その処分を継続することができる。

第百十七条 左の場所で差押状又は捜索状の執行をするについては、前条第一項に規定する制限によることを要しない。
一 賭博、富くじ又は風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所
二 旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入することができる場所。但し、公開した時間内に限る。

第百十八条 差押状又は捜索状の執行を中止する場合において必要があるときは、執行が終るまでその場所を閉鎖し、又は看守者を置くことができる。

第百十九条 捜索をした場合において証拠物又は没収すべきものがないときは、捜索を受けた者の請求により、その旨の証明書を交付しなければならない。

第百二十条 押収をした場合には、その目録を作り、所有者、所持者若しくは保管者又はこれらの者に代るべき者に、これを交付しなければならない。

第百二十一条 運搬又は保管に不便な押収物については、看守者を置き、又は所有者その他の者に、その承諾を得て、これを保管させることができる。
○2 危険を生ずる虞がある押収物は、これを廃棄することができる。
○3 前二項の処分は、裁判所が特別の指示をした場合を除いては、差押状の執行をした者も、これをすることができる。

第百二十二条 没収することができる押収物で滅失若しくは破損の虞があるもの又は保管に不便なものについては、これを売却してその代価を保管することができる。

第百二十三条 押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。
○2 押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる。
○3 前二項の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

第百二十四条 押収した贓物で留置の必要がないものは、被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り、被告事件の終結を待たないで、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定でこれを被害者に還付しなければならない。
○2 前項の規定は、民事訴訟の手続に従い、利害関係人がその権利を主張することを妨げない。

第百二十五条 押収又は捜索は、合議体の構成員にこれをさせ、又はこれをすべき地の地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。
○2 受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。
○3 受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。
○4 受命裁判官又は受託裁判官がする押収又は捜索については、裁判所がする押収又は捜索に関する規定を準用する。但し、第百条第三項の通知は、裁判所がこれをしなければならない。

第百二十六条 検察事務官又は司法警察職員は、勾引状又は勾留状を執行する場合において必要があるときは、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、被告人の捜索をすることができる。この場合には、捜索状は、これを必要としない。

第百二十七条 第百十一条、第百十二条、第百十四条及び第百十八条の規定は、前条の規定により検察事務官又は司法警察職員がする捜索についてこれを準用する。但し、急速を要する場合は、第百十四条第二項の規定によることを要しない。
   第十章 検証

第百二十八条 裁判所は、事実発見のため必要があるときは、検証することができる。

第百二十九条 検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。

第百三十条 日出前、日没後には、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代るべき者の承諾がなければ、検証のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることはできない。但し、日出後では検証の目的を達することができない虞がある場合は、この限りでない。
○2 日没前検証に着手したときは、日没後でもその処分を継続することができる。
○3 第百十七条に規定する場所については、第一項に規定する制限によることを要しない。

第百三十一条 身体の検査については、これを受ける者の性別、健康状態その他の事情を考慮した上、特にその方法に注意し、その者の名誉を害しないように注意しなければならない。
○2 女子の身体を検査する場合には、医師又は成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。

第百三十二条 裁判所は、身体の検査のため、被告人以外の者を裁判所又は指定の場所に召喚することができる。

第百三十三条 前条の規定により召喚を受けた者が正当な理由がなく出頭しないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。
○2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百三十四条 第百三十二条の規定により召喚を受け正当な理由がなく出頭しない者は、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
○2 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。

第百三十五条 第百三十二条の規定による召喚に応じない者は、更にこれを召喚し、又はこれを勾引することができる。

第百三十六条 第六十二条、第六十三条及び第六十五条の規定は、第百三十二条及び前条の規定による召喚について、第六十二条、第六十四条、第六十六条、第六十七条、第七十条、第七十一条及び第七十三条第一項の規定は、前条の規定による勾引についてこれを準用する。

第百三十七条 被告人又は被告人以外の者が正当な理由がなく身体の検査を拒んだときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。
○2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百三十八条 正当な理由がなく身体の検査を拒んだ者は、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
○2 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。

第百三十九条 裁判所は、身体の検査を拒む者を過料に処し、又はこれに刑を科しても、その効果がないと認めるときは、そのまま、身体の検査を行うことができる。

第百四十条 裁判所は、第百三十七条の規定により過料を科し、又は前条の規定により身体の検査をするにあたつては、あらかじめ、検察官の意見を聴き、且つ、身体の検査を受ける者の異議の理由を知るため適当な努力をしなければならない。

第百四十一条 検証をするについて必要があるときは、司法警察職員に補助をさせることができる。

第百四十二条 第百十二条乃至第百十四条、第百十八条及び第百二十五条の規定は、検証についてこれを準用する。
   第十一章 証人尋問

第百四十三条 裁判所は、この法律に特別の定のある場合を除いては、何人でも証人としてこれを尋問することができる。

第百四十四条 公務員又は公務員であつた者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ証人としてこれを尋問することはできない。但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

第百四十五条 左に掲げる者が前条の申立をしたときは、第一号に掲げる者についてはその院、第二号に掲げる者については内閣の承諾がなければ、証人としてこれを尋問することはできない。
一 衆議院若しくは参議院の議員又はその職に在つた者
二 内閣総理大臣その他の国務大臣又はその職に在つた者
○2 前項の場合において、衆議院、参議院又は内閣は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

第百四十六条 何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。

第百四十七条 何人も、左に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。
一 自己の配偶者、三親等内の血族若しくは二親等内の姻族又は自己とこれらの親族関係があつた者
二 自己の後見人、後見監督人又は保佐人
三 自己を後見人、後見監督人又は保佐人とする者

第百四十八条 共犯又は共同被告人の一人又は数人に対し前条の関係がある者でも、他の共犯又は共同被告人のみに関する事項については、証言を拒むことはできない。

第百四十九条 医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、証言を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、証言の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

第百五十条 召喚を受けた証人が正当な理由がなく出頭しないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。
○2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百五十一条 証人として召喚を受け正当な理由がなく出頭しない者は、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
○2 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。

第百五十二条 召喚に応じない証人に対しては、更にこれを召喚し、又はこれを勾引することができる。

第百五十三条 第六十二条、第六十三条及び第六十五条の規定は、証人の召喚について、第六十二条、第六十四条、第六十六条、第六十七条、第七十条、第七十一条及び第七十三条第一項の規定は、証人の勾引についてこれを準用する。

第百五十三条の二 勾引状の執行を受けた証人を護送する場合又は引致した場合において必要があるときは、一時最寄の警察署その他の適当な場所にこれを留置することができる。

第百五十四条 証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない。

第百五十五条 宣誓の趣旨を理解することができない者は、宣誓をさせないで、これを尋問しなければならない。
○2 前項に掲げる者が宣誓をしたときでも、その供述は、証言としての効力を妨げられない。

第百五十六条 証人には、その実験した事実により推測した事項を供述させることができる。
○2 前項の供述は、鑑定に属するものでも、証言としての効力を妨げられない。

第百五十七条 検察官、被告人又は弁護人は、証人の尋問に立ち会うことができる。
○2 証人尋問の日時及び場所は、あらかじめ、前項の規定により尋問に立ち会うことができる者にこれを通知しなければならない。但し、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示したときは、この限りでない。
○3 第一項に規定する者は、証人の尋問に立ち会つたときは、裁判長に告げて、その証人を尋問することができる。

第百五十七条の二 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができる。
○2 前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の供述中、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。

第百五十七条の三 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前(次条第一項に規定する方法による場合を含む。)において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。ただし、被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置については、弁護人が出頭している場合に限り、採ることができる。
○2 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

第百五十七条の四 裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所(これらの者が在席する場所と同一の構内に限る。)にその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。
一 刑法第百七十六条から第百七十八条の二まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条前段の罪又はこれらの罪の未遂罪の被害者
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第四条から第八条までの罪の被害者
三 前二号に掲げる者のほか、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者
○2 前項に規定する方法により証人尋問を行う場合において、裁判所は、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがあると思料する場合であつて、証人の同意があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その証人の尋問及び供述並びにその状況を記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができる。
○3 前項の規定により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。

第百五十八条 裁判所は、証人の重要性、年齢、職業、健康状態その他の事情と事案の軽重とを考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、必要と認めるときは、裁判所外にこれを召喚し、又はその現在場所でこれを尋問することができる。
○2 前項の場合には、裁判所は、あらかじめ、検察官、被告人及び弁護人に、尋問事項を知る機会を与えなければならない。
○3 検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問事項に附加して、必要な事項の尋問を請求することができる。

第百五十九条 裁判所は、検察官、被告人又は弁護人が前条の証人尋問に立ち会わなかつたときは、立ち会わなかつた者に、証人の供述の内容を知る機会を与えなければならない。
○2 前項の証人の供述が被告人に予期しなかつた著しい不利益なものである場合には、被告人又は弁護人は、更に必要な事項の尋問を請求することができる。
○3 裁判所は、前項の請求を理由がないものと認めるときは、これを却下することができる。

第百六十条 証人が正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。
○2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百六十一条 正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだ者は、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
○2 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。

第百六十二条 裁判所は、必要があるときは、決定で指定の場所に証人の同行を命ずることができる。証人が正当な理由がなく同行に応じないときは、これを勾引することができる。

第百六十三条 裁判所外で証人を尋問すべきときは、合議体の構成員にこれをさせ、又は証人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。
○2 受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。
○3 受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。
○4 受命裁判官又は受託裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長に属する処分をすることができる。但し、第百五十条及び第百六十条の決定は、裁判所もこれをすることができる。
○5 第百五十八条第二項及び第三項並びに第百五十九条に規定する手続は、前項の規定にかかわらず、裁判所がこれをしなければならない。

第百六十四条 証人は、旅費、日当及び宿泊料を請求することができる。但し、正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだ者は、この限りでない。
○2 証人は、あらかじめ旅費、日当又は宿泊料の支給を受けた場合において、正当な理由がなく、出頭せず又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、その支給を受けた費用を返納しなければならない。
   第十二章 鑑定

第百六十五条 裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。

第百六十六条 鑑定人には、宣誓をさせなければならない。

第百六十七条 被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。
○2 前項の留置は、鑑定留置状を発してこれをしなければならない。
○3 第一項の留置につき必要があるときは、裁判所は、被告人を収容すべき病院その他の場所の管理者の申出により、又は職権で、司法警察職員に被告人の看守を命ずることができる。
○4 裁判所は、必要があるときは、留置の期間を延長し又は短縮することができる。
○5 勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第一項の留置についてこれを準用する。但し、保釈に関する規定は、この限りでない。
○6 第一項の留置は、未決勾留日数の算入については、これを勾留とみなす。

第百六十七条の二 勾留中の被告人に対し鑑定留置状が執行されたときは、被告人が留置されている間、勾留は、その執行を停止されたものとする。
○2 前項の場合において、前条第一項の処分が取り消され又は留置の期間が満了したときは、第九十八条の規定を準用する。

第百六十八条 鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を発掘し、又は物を破壊することができる。
○2 裁判所は、前項の許可をするには、被告人の氏名、罪名及び立ち入るべき場所、検査すべき身体、解剖すべき死体、発掘すべき墳墓又は破壊すべき物並びに鑑定人の氏名その他裁判所の規則で定める事項を記載した許可状を発して、これをしなければならない。
○3 裁判所は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。
○4 鑑定人は、第一項の処分を受ける者に許可状を示さなければならない。
○5 前三項の規定は、鑑定人が公判廷でする第一項の処分については、これを適用しない。
○6 第百三十一条、第百三十七条、第百三十八条及び第百四十条の規定は、鑑定人の第一項の規定によつてする身体の検査についてこれを準用する。

第百六十九条 裁判所は、合議体の構成員に鑑定について必要な処分をさせることができる。但し、第百六十七条第一項に規定する処分については、この限りでない。

第百七十条 検察官及び弁護人は、鑑定に立ち会うことができる。この場合には、第百五十七条第二項の規定を準用する。

第百七十一条 前章の規定は、勾引に関する規定を除いて、鑑定についてこれを準用する。

第百七十二条 身体の検査を受ける者が、鑑定人の第百六十八条第一項の規定によつてする身体の検査を拒んだ場合には、鑑定人は、裁判官にその者の身体の検査を請求することができる。
○2 前項の請求を受けた裁判官は、第十章の規定に準じ身体の検査をすることができる。

第百七十三条 鑑定人は、旅費、日当及び宿泊料の外、鑑定料を請求し、及び鑑定に必要な費用の支払又は償還を受けることができる。
○2 鑑定人は、あらかじめ鑑定に必要な費用の支払を受けた場合において、正当な理由がなく、出頭せず又は宣誓若しくは鑑定を拒んだときは、その支払を受けた費用を返納しなければならない。

第百七十四条 特別の知識によつて知り得た過去の事実に関する尋問については、この章の規定によらないで、前章の規定を適用する。
   第十三章 通訳及び翻訳

第百七十五条 国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。

第百七十六条 耳の聞えない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる。

第百七十七条 国語でない文字又は符号は、これを翻訳させることができる。

第百七十八条 前章の規定は、通訳及び翻訳についてこれを準用する。
   第十四章 証拠保全

第百七十九条 被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。
○2 前項の請求を受けた裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第百八十条 検察官及び弁護人は、裁判所において、前条第一項の処分に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。但し、弁護人が証拠物の謄写をするについては、裁判官の許可を受けなければならない。
○2 前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。
○3 被告人又は被疑者は、裁判官の許可を受け、裁判所において、第一項の書類及び証拠物を閲覧することができる。ただし、被告人又は被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
   第十五章 訴訟費用

第百八十一条 刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。
○2 被告人の責に帰すべき事由によつて生じた費用は、刑の言渡をしない場合にも、被告人にこれを負担させることができる。
○3 検察官のみが上訴を申し立てた場合において、上訴が棄却されたとき、又は上訴の取下げがあつたときは、上訴に関する訴訟費用は、これを被告人に負担させることができない。ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない。
○4 公訴が提起されなかつた場合において、被疑者の責めに帰すべき事由により生じた費用があるときは、被疑者にこれを負担させることができる。

第百八十二条 共犯の訴訟費用は、共犯人に、連帯して、これを負担させることができる。

第百八十三条 告訴、告発又は請求により公訴の提起があつた事件について被告人が無罪又は免訴の裁判を受けた場合において、告訴人、告発人又は請求人に故意又は重大な過失があつたときは、その者に訴訟費用を負担させることができる。
○2 告訴、告発又は請求があつた事件について公訴が提起されなかつた場合において、告訴人、告発人又は請求人に故意又は重大な過失があつたときも、前項と同様とする。

第百八十四条 検察官以外の者が上訴又は再審若しくは正式裁判の請求を取り下げた場合には、その者に上訴、再審又は正式裁判に関する費用を負担させることができる。

第百八十五条 裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人に訴訟費用を負担させるときは、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、本案の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。

第百八十六条 裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人以外の者に訴訟費用を負担させるときは、職権で別にその決定をしなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百八十七条 裁判によらないで訴訟手続が終了する場合において、訴訟費用を負担させるときは、最終に事件の係属した裁判所が、職権でその決定をしなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百八十七条の二 公訴が提起されなかつた場合において、訴訟費用を負担させるときは、検察官の請求により、裁判所が決定をもつてこれを行う。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百八十八条 訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。
   第十六章 費用の補償

第百八十八条の二 無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。
○2 被告人であつた者が、捜査又は審判を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作ることにより、公訴の提起を受けるに至つたものと認められるときは、前項の補償の全部又は一部をしないことができる。
○3 第百八十八条の五第一項の規定による補償の請求がされている場合には、第百八十八条の四の規定により補償される費用については、第一項の補償をしない。

第百八十八条の三 前条第一項の補償は、被告人であつた者の請求により、無罪の判決をした裁判所が、決定をもつてこれを行う。
○2 前項の請求は、無罪の判決が確定した後六箇月以内にこれをしなければならない。
○3 補償に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百八十八条の四 検察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却され又は取り下げられて当該上訴に係る原裁判が確定したときは、これによつて無罪の判決が確定した場合を除き、国は、当該事件の被告人又は被告人であつた者に対し、上訴によりその審級において生じた費用の補償をする。ただし、被告人又は被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。

第百八十八条の五 前条の補償は、被告人又は被告人であつた者の請求により、当該上訴裁判所であつた最高裁判所又は高等裁判所が、決定をもつてこれを行う。
○2 前項の請求は、当該上訴に係る原裁判が確定した後二箇月以内にこれをしなければならない。
○3 補償に関する決定で高等裁判所がしたものに対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立てをすることができる。この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。

第百八十八条の六 第百八十八条の二第一項又は第百八十八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人若しくは被告人であつた者又はそれらの者の弁護人であつた者が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であつた者に対する報酬に限るものとし、その額に関しては、刑事訴訟費用に関する法律の規定中、被告人又は被告人であつた者については証人、弁護人であつた者については弁護人に関する規定を準用する。
○2 裁判所は、公判準備又は公判期日に出頭した弁護人が二人以上あつたときは、事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して、前項の弁護人であつた者の旅費、日当及び宿泊料を主任弁護人その他一部の弁護人に係るものに限ることができる。

第百八十八条の七 補償の請求その他補償に関する手続、補償と他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡又は差押え及び被告人又は被告人であつた者の相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)第一条に規定する補償の例による。
  第二編 第一審
  第二編 第一審
   第一章 捜査

第百八十九条 警察官は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。
○2 司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。

第百九十条 森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。

第百九十一条 検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。
○2 検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない。

第百九十二条 検察官と都道府県公安委員会及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。

第百九十三条 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
○2 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。
○3 検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。
○4 前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。

第百九十四条 検事総長、検事長又は検事正は、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示又は指揮に従わない場合において必要と認めるときは、警察官たる司法警察職員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会に、警察官たる者以外の司法警察職員については、その者を懲戒し又は罷免する権限を有する者に、それぞれ懲戒又は罷免の訴追をすることができる。
○2 国家公安委員会、都道府県公安委員会又は警察官たる者以外の司法警察職員を懲戒し若しくは罷免する権限を有する者は、前項の訴追が理由のあるものと認めるときは、別に法律の定めるところにより、訴追を受けた者を懲戒し又は罷免しなければならない。

第百九十五条 検察官及び検察事務官は、捜査のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。

第百九十六条 検察官、検察事務官及び司法警察職員並びに弁護人その他職務上捜査に関係のある者は、被疑者その他の者の名誉を害しないように注意し、且つ、捜査の妨げとならないように注意しなければならない。

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
○2 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
○2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
○3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
○4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
○5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
○2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
○3 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

第二百条 逮捕状には、被疑者の氏名及び住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署その他の場所、有効期間及びその期間経過後は逮捕をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
○2 第六十四条第二項及び第三項の規定は、逮捕状についてこれを準用する。

第二百一条 逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。
○2 第七十三条第三項の規定は、逮捕状により被疑者を逮捕する場合にこれを準用する。

第二百二条 検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
○2 前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
○3 司法警察員は、第三十七条の二第一項に規定する事件について第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
○4 第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

第二百四条 検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○2 検察官は、第三十七条の二第一項に規定する事件について前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
3 第一項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
4 前条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
○3 前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○4 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○5 前条第二項の規定は、検察官が、第三十七条の二第一項に規定する事件以外の事件について逮捕され、第二百三条の規定により同項に規定する事件について送致された被疑者に対し、第一項の規定により弁解の機会を与える場合についてこれを準用する。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。

第二百六条 検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。
○2 前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない。

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
○2 前項の裁判官は、第三十七条の二第一項に規定する事件について勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
○3 前項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
4 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第二百八条の二 裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。

第二百九条 第七十四条、第七十五条及び第七十八条の規定は、逮捕状による逮捕についてこれを準用する。

第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。

第二百十一条 前条の規定により被疑者が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。

第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

第二百十四条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

第二百十五条 司法巡査は、現行犯人を受け取つたときは、速やかにこれを司法警察員に引致しなければならない。
○2 司法巡査は、犯人を受け取つた場合には、逮捕者の氏名、住居及び逮捕の事由を聴き取らなければならない。必要があるときは、逮捕者に対しともに官公署に行くことを求めることができる。

第二百十六条 現行犯人が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。

第二百十七条 三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。

第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押、捜索又は検証をすることができる。この場合において身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
○2 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、前項の令状によることを要しない。
○3 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
○4 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
○5 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

第二百十九条 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押えるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
○2 第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。

第二百二十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
一 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。
○2 前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない。
○3 第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
○4 第一項第二号及び前項の規定は、検察事務官又は司法警察職員が勾引状又は勾留状を執行する場合にこれを準用する。被疑者に対して発せられた勾引状又は勾留状を執行する場合には、第一項第一号の規定をも準用する。

第二百二十一条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

第二百二十二条 第九十九条、第百条、第百二条乃至第百五条、第百十条乃至第百十二条、第百十四条、第百十五条及び第百十八条乃至第百二十四条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条乃至第百四十条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。但し、司法巡査は、第百二十二条乃至第百二十四条に規定する処分をすることができない。
○2 第二百二十条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、第百十四条第二項の規定によることを要しない。
○3 第百十六条及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする押収又は捜索について、これを準用する。
○4 日出前、日没後には、令状に夜間でも検証をすることができる旨の記載がなければ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定によつてする検証のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることができない。但し、第百十七条に規定する場所については、この限りでない。
○5 日没前検証に着手したときは、日没後でもその処分を継続することができる。
○6 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押、捜索又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。
○7 第一項の規定により、身体の検査を拒んだ者を過料に処し、又はこれに賠償を命ずべきときは、裁判所にその処分を請求しなければならない。

第二百二十二条の二 通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う強制の処分については、別に法律で定めるところによる。

第二百二十三条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。
○2 第百九十八条第一項但書及び第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第二百二十四条 前条第一項の規定により鑑定を嘱託する場合において第百六十七条第一項に規定する処分を必要とするときは、検察官、検察事務官又は司法警察員は、裁判官にその処分を請求しなければならない。
○2 裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、第百六十七条の場合に準じてその処分をしなければならない。この場合には、第百六十七条の二の規定を準用する。

第二百二十五条 第二百二十三条第一項の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第百六十八条第一項に規定する処分をすることができる。
○2 前項の許可の請求は、検察官、検察事務官又は司法警察員からこれをしなければならない。
○3 裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、許可状を発しなければならない。
○4 第百六十八条第二項乃至第四項及び第六項の規定は、前項の許可状についてこれを準用する。

第二百二十六条 犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二百二十三条第一項の規定による取調に対して、出頭又は供述を拒んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。

第二百二十七条 第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。
○2 前項の請求をするには、検察官は、証人尋問を必要とする理由及びそれが犯罪の証明に欠くことができないものであることを疎明しなければならない。

第二百二十八条 前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
○2 裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。

第二百二十九条 変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。
○2 検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。

第二百三十条 犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。

第二百三十一条 被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。
○2 被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。

第二百三十二条 被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができる。

第二百三十三条 死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族又は子孫は、告訴をすることができる。
○2 名誉を毀損した罪について被害者が告訴をしないで死亡したときも、前項と同様である。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。

第二百三十四条 親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができる。

第二百三十五条 親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
一 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴
二 刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴
○2 刑法第二百二十九条但書の場合における告訴は、婚姻の無効又は取消の裁判が確定した日から六箇月以内にこれをしなければ、その効力がない。

第二百三十六条 告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は、他の者に対しその効力を及ぼさない。

第二百三十七条 告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
○2 告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。
○3 前二項の規定は、請求を待つて受理すべき事件についての請求についてこれを準用する。

第二百三十八条 親告罪について共犯の一人又は数人に対してした告訴又はその取消は、他の共犯に対しても、その効力を生ずる。
○2 前項の規定は、告発又は請求を待つて受理すべき事件についての告発若しくは請求又はその取消についてこれを準用する。

第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
○2 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

第二百四十条 告訴は、代理人によりこれをすることができる。告訴の取消についても、同様である。

第二百四十一条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
○2 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

第二百四十二条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

第二百四十三条 前二条の規定は、告訴又は告発の取消についてこれを準用する。

第二百四十四条 刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴又はその取消は、第二百四十一条及び前条の規定にかかわらず、外務大臣にこれをすることができる。日本国に派遣された外国の使節に対する刑法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴又はその取消も、同様である。

第二百四十五条 第二百四十一条及び第二百四十二条の規定は、自首についてこれを準用する。

第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
   第二章 公訴

第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。

第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

第二百四十九条 公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない。

第二百五十条 時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

第二百五十一条 二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。

第二百五十二条 刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第二百五十条の規定を適用する。

第二百五十三条 時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
○2 共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

第二百五十四条 時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
○2 共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。

第二百五十五条 犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
○2 犯人が国外にいること又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。

第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
○2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
○3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
○4 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
○5 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
○6 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

第二百五十七条 公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
一事不再理の効力がなく再起訴が可能であり、無罪ではないため「灰色」という印象を残す

第二百五十八条 検察官は、事件がその所属検察庁の対応する裁判所の管轄に属しないものと思料するときは、書類及び証拠物とともにその事件を管轄裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

第二百五十九条 検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。

第二百六十条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。

第二百六十一条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。

第二百六十二条 刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第四十二条若しくは第四十三条の罪について告訴又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。
○2 前項の請求は、第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、請求書を公訴を提起しない処分をした検察官に差し出してこれをしなければならない。

第二百六十三条 前条第一項の請求は、第二百六十六条の決定があるまでこれを取り下げることができる。
○2 前項の取下をした者は、その事件について更に前条第一項の請求をすることができない。

第二百六十四条 検察官は、第二百六十二条第一項の請求を理由があるものと認めるときは、公訴を提起しなければならない。

第二百六十五条 第二百六十二条第一項の請求についての審理及び裁判は、合議体でこれをしなければならない。
○2 裁判所は、必要があるときは、合議体の構成員に事実の取調をさせ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。この場合には、受命裁判官及び受託裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第二百六十六条 裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。
一 請求が法令上の方式に違反し、若しくは請求権の消滅後にされたものであるとき、又は請求が理由のないときは、請求を棄却する。
二 請求が理由のあるときは、事件を管轄地方裁判所の審判に付する。

第二百六十七条 前条第二号の決定があつたときは、その事件について公訴の提起があつたものとみなす。

第二百六十八条 裁判所は、第二百六十六条第二号の規定により事件がその裁判所の審判に付されたときは、その事件について公訴の維持にあたる者を弁護士の中から指定しなければならない。
○2 前項の指定を受けた弁護士は、事件について公訴を維持するため、裁判の確定に至るまで検察官の職務を行う。但し、検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない。
○3 前項の規定により検察官の職務を行う弁護士は、これを法令により公務に従事する職員とみなす。
○4 裁判所は、第一項の指定を受けた弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、何時でもその指定を取り消すことができる。
○5 第一項の指定を受けた弁護士には、政令で定める額の手当を給する。

第二百六十九条 裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を棄却する場合又はその請求の取下があつた場合には、決定で、請求者に、その請求に関する手続によつて生じた費用の全部又は一部の賠償を命ずることができる。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第二百七十条 検察官は、公訴の提起後は、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。
○2 前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。
   第三章 公判
   第三章 公判
    第一節 公判準備及び公判手続

第二百七十一条 裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。
○2 公訴の提起があつた日から二箇月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。

第二百七十二条 裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を知らせなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
○2 裁判所は、この法律により弁護人を要する場合を除いて、前項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を知らせるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十六条の三第一項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

第二百七十三条 裁判長は、公判期日を定めなければならない。
○2 公判期日には、被告人を召喚しなければならない。
○3 公判期日は、これを検察官、弁護人及び補佐人に通知しなければならない。

第二百七十四条 裁判所の構内にいる被告人に対し公判期日を通知したときは、召喚状の送達があつた場合と同一の効力を有する。

第二百七十五条 第一回の公判期日と被告人に対する召喚状の送達との間には、裁判所の規則で定める猶予期間を置かなければならない。

第二百七十六条 裁判所は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判期日を変更することができる。
○2 公判期日を変更するには、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。但し、急速を要する場合は、この限りでない。
○3 前項但書の場合には、変更後の公判期日において、まず、検察官及び被告人又は弁護人に対し、異議を申し立てる機会を与えなければならない。

第二百七十七条 裁判所がその権限を濫用して公判期日を変更したときは、訴訟関係人は、最高裁判所の規則又は訓令の定めるところにより、司法行政監督上の措置を求めることができる。

第二百七十八条 公判期日に召喚を受けた者が病気その他の事由によつて出頭することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、医師の診断書その他の資料を提出しなければならない。

第二百七十八条の二 裁判所は、必要と認めるときは、検察官又は弁護人に対し、公判準備又は公判期日に出頭し、かつ、これらの手続が行われている間在席し又は在廷することを命ずることができる。
○2 裁判長は、急速を要する場合には、前項に規定する命令をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
○3 前二項の規定による命令を受けた検察官又は弁護人が正当な理由がなくこれに従わないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その命令に従わないために生じた費用の賠償を命ずることができる。
○4 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
○5 裁判所は、第三項の決定をしたときは、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求しなければならない。
○6 前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を裁判所に通知しなければならない。

第二百七十九条 裁判所は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

第二百八十条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
○2 第百九十九条若しくは第二百十条の規定により逮捕され、又は現行犯人として逮捕された被疑者でまだ勾留されていないものについて第二百四条又は第二百五条の時間の制限内に公訴の提起があつた場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない。
○3 前二項の裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第二百八十一条 証人については、裁判所は、第百五十八条に掲げる事項を考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き必要と認めるときに限り、公判期日外においてこれを尋問することができる。

第二百八十一条の二 裁判所は、公判期日外における証人尋問に被告人が立ち会つた場合において、証人が被告人の面前(第百五十七条の三第一項に規定する措置を採る場合及び第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が立ち会つている場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退席させることができる。この場合には、供述終了後被告人に証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならない。

第二百八十一条の三 弁護人は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等(複製その他証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。以下同じ。)を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない。

第二百八十一条の四 被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一 当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
二 当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続
ロ 第三百四十九条第一項の請求があつた場合の手続
ハ 第三百五十条の請求があつた場合の手続
ニ 上訴権回復の請求の手続
ホ 再審の請求の手続
ヘ 非常上告の手続
ト 第五百条第一項の申立ての手続
チ 第五百二条の申立ての手続
リ 刑事補償法の規定による補償の請求の手続
○2 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。

第二百八十一条の五 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第一項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
○2 弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。以下この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。

第二百八十一条の六 裁判所は、審理に二日以上を要する事件については、できる限り、連日開廷し、継続して審理を行わなければならない。
○2 訴訟関係人は、期日を厳守し、審理に支障を来さないようにしなければならない。

第二百八十二条 公判期日における取調は、公判廷でこれを行う。
○2 公判廷は、裁判官及び裁判所書記が列席し、且つ検察官が出席してこれを開く。

第二百八十三条 被告人が法人である場合には、代理人を出頭させることができる。

第二百八十四条 五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以下の罰金又は科料に当たる事件については、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、被告人は、代理人を出頭させることができる。

第二百八十五条 拘留にあたる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告人の出頭がその権利の保護のため重要でないと認めるときは、被告人に対し公判期日に出頭しないことを許すことができる。
○2 長期三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)を超える罰金に当たる事件の被告人は、第二百九十一条の手続をする場合及び判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、前項後段の例による。

第二百八十六条 前三条に規定する場合の外、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない。

第二百八十六条の二 被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。

第二百八十七条 公判廷においては、被告人の身体を拘束してはならない。但し、被告人が暴力を振い又は逃亡を企てた場合は、この限りでない。
○2 被告人の身体を拘束しない場合にも、これに看守者を附することができる。

第二百八十八条 被告人は、裁判長の許可がなければ、退廷することができない。
○2 裁判長は、被告人を在廷させるため、又は法廷の秩序を維持するため相当な処分をすることができる。

第二百八十九条 死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
○2 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
○3 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

第二百九十条 第三十七条各号の場合に弁護人が出頭しないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。

第二百九十条の二 裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
一 刑法第百七十六条から第百七十八条の二まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
二 児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪に係る事件
三 前二号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件
○2 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
○3 裁判所は、第一項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
○4 裁判所は、第一項又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたとき、第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項第一号若しくは第二号に掲げる事件に該当しなくなつたとき又は同項第三号に掲げる事件若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至つたときは、決定で、第一項又は前項の決定を取り消さなければならない。

第二百九十一条 検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。
○2 前条第一項又は第三項の決定があつたときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。
○3 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。

第二百九十一条の二 被告人が、前条第三項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人及び弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、簡易公判手続によつて審判をする旨の決定をすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。

第二百九十一条の三 裁判所は、前条の決定があつた事件が簡易公判手続によることができないものであり、又はこれによることが相当でないものであると認めるときは、その決定を取り消さなければならない。

第二百九十二条 証拠調べは、第二百九十一条の手続が終つた後、これを行う。ただし、次節第一款に定める公判前整理手続において争点及び証拠の整理のために行う手続については、この限りでない。

第二百九十二条の二 裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
○2 前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
○3 裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。
○4 訴訟関係人は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、これらの者に質問することができる。
○5 裁判長は、被害者等若しくは当該被害者の法定代理人の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
○6 第百五十七条の二、第百五十七条の三及び第百五十七条の四第一項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。
○7 裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
○8 前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
○9 第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。

第二百九十三条 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
○2 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

第二百九十四条 公判期日における訴訟の指揮は、裁判長がこれを行う。

第二百九十五条 裁判長は、訴訟関係人のする尋問又は陳述が既にした尋問若しくは陳述と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても同様である。
○2 裁判長は、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問する場合において、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあり、これらの者の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定される事項が明らかにされたならば証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人が十分な供述をすることができないと認めるときは、当該事項についての尋問を制限することができる。ただし、検察官のする尋問を制限することにより犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがあるとき、又は被告人若しくは弁護人のする尋問を制限することにより被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
○3 裁判長は、第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつた場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。
○4 裁判所は、前三項の規定による命令を受けた検察官又は弁護士である弁護人がこれに従わなかつた場合には、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。
○5 前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を裁判所に通知しなければならない。

第二百九十六条 証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。

第二百九十七条 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、証拠調の範囲、順序及び方法を定めることができる。
○2 前項の手続は、合議体の構成員にこれをさせることができる。
○3 裁判所は、適当と認めるときは、何時でも、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第一項の規定により定めた証拠調の範囲、順序又は方法を変更することができる。

第二百九十八条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
○2 裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。

第二百九十九条 検察官、被告人又は弁護人が証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問を請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名及び住居を知る機会を与えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。
○2 裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

第二百九十九条の二 検察官又は弁護人は、前条第一項の規定により証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人若しくは証拠書類若しくは証拠物にその氏名が記載されている者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、相手方に対し、その旨を告げ、これらの者の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定される事項が、犯罪の証明若しくは犯罪の捜査又は被告人の防御に関し必要がある場合を除き、関係者(被告人を含む。)に知られないようにすることその他これらの者の安全が脅かされることがないように配慮することを求めることができる。

第二百九十九条の三 検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。

第三百条 第三百二十一条第一項第二号後段の規定により証拠とすることができる書面については、検察官は、必ずその取調を請求しなければならない。

第三百一条 第三百二十二条及び第三百二十四条第一項の規定により証拠とすることができる被告人の供述が自白である場合には、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ、その取調を請求することはできない。

第三百二条 第三百二十一条乃至第三百二十三条又は第三百二十六条の規定により証拠とすることができる書面が捜査記録の一部であるときは、検察官は、できる限り他の部分と分離してその取調を請求しなければならない。

第三百三条 公判準備においてした証人その他の者の尋問、検証、押収及び捜索の結果を記載した書面並びに押収した物については、裁判所は、公判期日において証拠書類又は証拠物としてこれを取り調べなければならない。

第三百四条 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人は、裁判長又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する。
○2 検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問が終つた後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。この場合において、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調が、検察官、被告人又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。
○3 裁判所は、適当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、前二項の尋問の順序を変更することができる。

第三百四条の二 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前(第百五十七条の三第一項に規定する措置を採る場合及び第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。この場合には、供述終了後被告人を入廷させ、これに証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならない。

第三百五条 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調をするについては、裁判長は、その取調を請求した者にこれを朗読させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを朗読させることができる。
○2 裁判所が職権で証拠書類の取調をするについては、裁判長は、自らその書類を朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを朗読させなければならない。
○3 第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前二項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。
○4 第百五十七条の四第三項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、第一項又は第二項の規定による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。ただし、裁判長は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
○5 裁判所は、前項の規定により第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第百五十七条の三に規定する措置を採ることができる。

第三百六条 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。
○2 裁判所が職権で証拠物の取調をするについては、裁判長は、自らこれを訴訟関係人に示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させなければならない。

第三百七条 証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについては、前条の規定による外、第三百五条の規定による。

第三百七条の二 第二百九十一条の二の決定があつた事件については、第二百九十六条、第二百九十七条、第三百条乃至第三百二条及び第三百四条乃至前条の規定は、これを適用せず、証拠調は、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。

第三百八条 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人に対し、証拠の証明力を争うために必要とする適当な機会を与えなければならない。

第三百九条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。
○2 検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。
○3 裁判所は、前二項の申立について決定をしなければならない。

第三百十条 証拠調を終つた証拠書類又は証拠物は、遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならない。但し、裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができる。

第三百十一条 被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
○2 被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。
○3 陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。

第三百十二条 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
○2 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
○3 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
○4 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

第三百十三条 裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。
○2 裁判所は、被告人の権利を保護するため必要があるときは、裁判所の規則の定めるところにより、決定を以て弁論を分離しなければならない。

第三百十三条の二 この法律の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人の選任は、弁論が併合された事件についてもその効力を有する。ただし、裁判所がこれと異なる決定をしたときは、この限りでない。
○2 前項ただし書の決定をするには、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

第三百十四条 被告人が心神喪失の状態に在るときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し、無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができる。
○2 被告人が病気のため出頭することができないときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。但し、第二百八十四条及び第二百八十五条の規定により代理人を出頭させた場合は、この限りでない。
○3 犯罪事実の存否の証明に欠くことのできない証人が病気のため公判期日に出頭することができないときは、公判期日外においてその取調をするのを適当と認める場合の外、決定で、出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。
○4 前三項の規定により公判手続を停止するには、医師の意見を聴かなければならない。

第三百十五条 開廷後裁判官がかわつたときは、公判手続を更新しなければならない。但し、判決の宣告をする場合は、この限りでない。

第三百十五条の二 第二百九十一条の二の決定が取り消されたときは、公判手続を更新しなければならない。但し、検察官及び被告人又は弁護人に異議がないときは、この限りでない。

第三百十六条 地方裁判所又は家庭裁判所において一人の裁判官のした訴訟手続は、被告事件が合議体で審判すべきものであつた場合にも、その効力を失わない。
    第一節の二 争点及び証拠の整理手続
    第一節の二 争点及び証拠の整理手続
     第一款 公判前整理手続
      第一目 通則

第三百十六条の二 裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。
○2 公判前整理手続は、この款に定めるところにより、訴訟関係人を出頭させて陳述させ、又は訴訟関係人に書面を提出させる方法により、行うものとする。

第三百十六条の三 裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において、十分な準備が行われるようにするとともに、できる限り早期にこれを終結させるように努めなければならない。
○2 訴訟関係人は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において、相互に協力するとともに、その実施に関し、裁判所に進んで協力しなければならない。

第三百十六条の四 公判前整理手続においては、被告人に弁護人がなければその手続を行うことができない。
○2 公判前整理手続において被告人に弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。

第三百十六条の五 公判前整理手続においては、次に掲げる事項を行うことができる。
一 訴因又は罰条を明確にさせること。
二 訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許すこと。
三 公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること。
四 証拠調べの請求をさせること。
五 前号の請求に係る証拠について、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにさせること。
六 証拠調べの請求に関する意見(証拠書類について第三百二十六条の同意をするかどうかの意見を含む。)を確かめること。
七 証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をすること。
八 証拠調べをする決定をした証拠について、その取調べの順序及び方法を定めること。
九 証拠調べに関する異議の申立てに対して決定をすること。
十 第三目の定めるところにより証拠開示に関する裁定をすること。
十一 公判期日を定め、又は変更することその他公判手続の進行上必要な事項を定めること。

第三百十六条の六 裁判長は、訴訟関係人を出頭させて公判前整理手続をするときは、公判前整理手続期日を定めなければならない。
○2 公判前整理手続期日は、これを検察官、被告人及び弁護人に通知しなければならない。
○3 裁判長は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続期日を変更することができる。この場合においては、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

第三百十六条の七 公判前整理手続期日に検察官又は弁護人が出頭しないときは、その期日の手続を行うことができない。

第三百十六条の八 弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないとき、又は在席しなくなつたときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
○2 弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

第三百十六条の九 被告人は、公判前整理手続期日に出頭することができる。
○2 裁判所は、必要と認めるときは、被告人に対し、公判前整理手続期日に出頭することを求めることができる。
○3 裁判長は、被告人を出頭させて公判前整理手続をする場合には、被告人が出頭する最初の公判前整理手続期日において、まず、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨を告知しなければならない。

第三百十六条の十 裁判所は、弁護人の陳述又は弁護人が提出する書面について被告人の意思を確かめる必要があると認めるときは、公判前整理手続期日において被告人に対し質問を発し、及び弁護人に対し被告人と連署した書面の提出を求めることができる。

第三百十六条の十一 裁判所は、合議体の構成員に命じ、公判前整理手続(第三百十六条の五第二号、第七号、第九号及び第十号の決定を除く。)をさせることができる。この場合において、受命裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第三百十六条の十二 公判前整理手続期日には、裁判所書記官を立ち会わせなければならない。
○2 公判前整理手続期日における手続については、裁判所の規則の定めるところにより、公判前整理手続調書を作成しなければならない。
      第二目 争点及び証拠の整理

第三百十六条の十三 検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない。
○2 検察官は、前項の証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。
○3 前項の規定により証拠の取調べを請求するについては、第二百九十九条第一項の規定は適用しない。
○4 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出及び送付並びに第二項の請求の期限を定めるものとする。

第三百十六条の十四 検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
一 証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
二 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等(供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であつて供述を記録したものをいう。以下同じ。)のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。

第三百十六条の十五 検察官は、前条の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同条第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
一 証拠物
二 第三百二十一条第二項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面
三 第三百二十一条第三項に規定する書面又はこれに準ずる書面
四 第三百二十一条第四項に規定する書面又はこれに準ずる書面
五 次に掲げる者の供述録取書等
イ 検察官が証人として尋問を請求した者
ロ 検察官が取調べを請求した供述録取書等の供述者であつて、当該供述録取書等が第三百二十六条の同意がされない場合には、検察官が証人として尋問を請求することを予定しているもの
六 前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの
七 被告人の供述録取書等
八 取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人に係るものに限る。)
○2 被告人又は弁護人は、前項の開示の請求をするときは、次に掲げる事項を明らかにしなければならない。
一 前項各号に掲げる証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項
二 事案の内容、特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実、開示の請求に係る証拠と当該検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該開示の請求に係る証拠が当該検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であることその他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

第三百十六条の十六 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四及び前条第一項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、検察官請求証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない。
○2 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、前項の意見を明らかにすべき期限を定めることができる。

第三百十六条の十七 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四及び第三百十六条の十五第一項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
○2 被告人又は弁護人は、前項の証明予定事実があるときは、これを証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
○3 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限及び前項の請求の期限を定めることができる。

第三百十六条の十八 被告人又は弁護人は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠については、速やかに、検察官に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
一 証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。
二 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。

第三百十六条の十九 検察官は、前条の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、第三百十六条の十七第二項の規定により被告人又は弁護人が取調べを請求した証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない。
○2 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、前項の意見を明らかにすべき期限を定めることができる。

第三百十六条の二十 検察官は、第三百十六条の十四及び第三百十六条の十五第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、第三百十六条の十七第一項の主張に関連すると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その関連性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、第三百十六条の十四第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
○2 被告人又は弁護人は、前項の開示の請求をするときは、次に掲げる事項を明らかにしなければならない。
一 開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項
二 第三百十六条の十七第一項の主張と開示の請求に係る証拠との関連性その他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

第三百十六条の二十一 検察官は、第三百十六条の十三から前条までに規定する手続が終わつた後、その証明予定事実を追加し又は変更する必要があると認めるときは、速やかに、その追加し又は変更すべき証明予定事実を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
○2 検察官は、その証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べの請求を追加する必要があると認めるときは、速やかに、その追加すべき証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
○3 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出及び送付並びに前項の請求の期限を定めることができる。
○4 第三百十六条の十四から第三百十六条の十六までの規定は、第二項の規定により検察官が取調べを請求した証拠についてこれを準用する。

第三百十六条の二十二 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三から第三百十六条の二十までに規定する手続が終わつた後、第三百十六条の十七第一項の主張を追加し又は変更する必要があると認めるときは、速やかに、裁判所及び検察官に対し、その追加し又は変更すべき主張を明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
○2 被告人又は弁護人は、その証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べの請求を追加する必要があると認めるときは、速やかに、その追加すべき証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
○3 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限及び前項の請求の期限を定めることができる。
○4 第三百十六条の十八及び第三百十六条の十九の規定は、第二項の規定により被告人又は弁護人が取調べを請求した証拠についてこれを準用する。
○5 第三百十六条の二十の規定は、第一項の追加し又は変更すべき主張に関連すると認められる証拠についてこれを準用する。

第三百十六条の二十三 第二百九十九条の二及び第二百九十九条の三の規定は、検察官又は弁護人がこの目の規定による証拠の開示をする場合についてこれを準用する。

第三百十六条の二十四 裁判所は、公判前整理手続を終了するに当たり、検察官及び被告人又は弁護人との間で、事件の争点及び証拠の整理の結果を確認しなければならない。
      第三目 証拠開示に関する裁定

第三百十六条の二十五 裁判所は、証拠の開示の必要性の程度並びに証拠の開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、第三百十六条の十四(第三百十六条の二十一第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については検察官の請求により、第三百十六条の十八(第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については被告人又は弁護人の請求により、決定で、当該証拠の開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
○2 裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。
○3 第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百十六条の二十六 裁判所は、検察官が第三百十六条の十四若しくは第三百十六条の十五第一項(第三百十六条の二十一第四項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)若しくは第三百十六条の二十第一項(第三百十六条の二十二第五項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるとき、又は被告人若しくは弁護人が第三百十六条の十八(第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により、決定で、当該証拠の開示を命じなければならない。この場合において、裁判所は、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
○2 裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。
○3 第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百十六条の二十七 裁判所は、第三百十六条の二十五第一項又は前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官、被告人又は弁護人に対し、当該請求に係る証拠の提示を命ずることができる。この場合においては、裁判所は、何人にも、当該証拠の閲覧又は謄写をさせることができない。
○2 裁判所は、被告人又は弁護人がする前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官に対し、その保管する証拠であつて、裁判所の指定する範囲に属するものの標目を記載した一覧表の提示を命ずることができる。この場合においては、裁判所は、何人にも、当該一覧表の閲覧又は謄写をさせることができない。
○3 第一項の規定は第三百十六条の二十五第三項又は前条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、前項の規定は同条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、それぞれ準用する。
     第二款 期日間整理手続

第三百十六条の二十八 裁判所は、審理の経過にかんがみ必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて、第一回公判期日後に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を期日間整理手続に付することができる。
○2 期日間整理手続については、前款(第三百十六条の二第一項及び第三百十六条の九第三項を除く。)の規定を準用する。この場合において、検察官、被告人又は弁護人が前項の決定前に取調べを請求している証拠については、期日間整理手続において取調べを請求した証拠とみなし、第三百十六条の六から第三百十六条の十まで及び第三百十六条の十二中「公判前整理手続期日」とあるのは「期日間整理手続期日」と、同条第二項中「公判前整理手続調書」とあるのは「期日間整理手続調書」と読み替えるものとする。
     第三款 公判手続の特例

第三百十六条の二十九 公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件を審理する場合には、第二百八十九条第一項に規定する事件に該当しないときであつても、弁護人がなければ開廷することはできない。

第三百十六条の三十 公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、第二百九十六条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない。この場合においては、同条ただし書の規定を準用する。

第三百十六条の三十一 公判前整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、前条の手続が終わつた後、公判期日において、当該公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない。
○2 期日間整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、その手続が終わつた後、公判期日において、当該期日間整理手続の結果を明らかにしなければならない。

第三百十六条の三十二 公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官及び被告人又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない。
○2 前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。
    第二節 証拠

第三百十七条 事実の認定は、証拠による。

第三百十八条 証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。

第三百十九条 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
○2 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
○3 前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。

第三百二十条 第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
○2 第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。

第三百二十一条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異つた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
○2 被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
○3 検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
○4 鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。

第三百二十一条の二 被告事件の公判準備若しくは公判期日における手続以外の刑事手続又は他の事件の刑事手続において第百五十七条の四第一項に規定する方法によりされた証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体がその一部とされた調書は、前条第一項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。この場合において、裁判所は、その調書を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。
○2 前項の規定により調書を取り調べる場合においては、第三百五条第四項ただし書の規定は、適用しない。
○3 第一項の規定により取り調べられた調書に記録された証人の供述は、第二百九十五条第一項前段並びに前条第一項第一号及び第二号の適用については、被告事件の公判期日においてされたものとみなす。

第三百二十二条 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
○2 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。

第三百二十三条 前三条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。
一 戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面
二 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面
三 前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面

第三百二十四条 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用する。
○2 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号の規定を準用する。

第三百二十五条 裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載された供述又は公判準備若しくは公判期日における供述の内容となつた他の者の供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければ、これを証拠とすることができない。

第三百二十六条 検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
○2 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。但し、代理人又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。

第三百二十七条 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人が合意の上、文書の内容又は公判期日に出頭すれば供述することが予想されるその供述の内容を書面に記載して提出したときは、その文書又は供述すべき者を取り調べないでも、その書面を証拠とすることができる。この場合においても、その書面の証明力を争うことを妨げない。

第三百二十八条 第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。
    第三節 公判の裁判

第三百二十九条 被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、管轄違の言渡をすることはできない。

第三百三十条 高等裁判所は、その特別権限に属する事件として公訴の提起があつた場合において、その事件が下級の裁判所の管轄に属するものと認めるときは、前条の規定にかかわらず、決定で管轄裁判所にこれを移送しなければならない。

第三百三十一条 裁判所は、被告人の申立がなければ、土地管轄について、管轄違の言渡をすることができない。
○2 管轄違の申立は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない。

第三百三十二条 簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。

第三百三十三条 被告事件について犯罪の証明があつたときは、第三百三十四条の場合を除いては、判決で刑の言渡をしなければならない。
○2 刑の執行猶予は、刑の言渡しと同時に、判決でその言渡しをしなければならない。刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付する場合も、同様である。

第三百三十四条 被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。

第三百三十五条 有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。
○2 法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならない。

第三百三十六条 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

第三百三十七条 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。
一 確定判決を経たとき。
二 犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。
三 大赦があつたとき。
四 時効が完成したとき。

第三百三十八条 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
一 被告人に対して裁判権を有しないとき。
二 第三百四十条の規定に違反して公訴が提起されたとき。
三 公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。
四 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。

第三百三十九条 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。
一 第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。
二 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。
三 公訴が取り消されたとき。
四 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。
五 第十条又は第十一条の規定により審判してはならないとき。
○2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百四十条 公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。

第三百四十一条 被告人が陳述をせず、許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときは、その陳述を聴かないで判決をすることができる。

第三百四十二条 判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。

第三百四十三条 禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつたときは、保釈又は勾留の執行停止は、その効力を失う。この場合には、あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八条の規定を準用する。

第三百四十四条 禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項但書及び第八十九条の規定は、これを適用しない。

第三百四十五条 無罪、免訴、刑の免除、刑の執行猶予、公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。)、罰金又は科料の裁判の告知があつたときは、勾留状は、その効力を失う。

第三百四十六条 押収した物について、没収の言渡がないときは、押収を解く言渡があつたものとする。

第三百四十七条 押収した贓物で被害者に還付すべき理由が明らかなものは、これを被害者に還付する言渡をしなければならない。
○2 贓物の対価として得た物について、被害者から交付の請求があつたときは、前項の例による。
○3 仮に還付した物について、別段の言渡がないときは、還付の言渡があつたものとする。
○4 前三項の規定は、民事訴訟の手続に従い、利害関係人がその権利を主張することを妨げない。

第三百四十八条 裁判所は、罰金、科料又は追徴を言い渡す場合において、判決の確定を待つてはその執行をすることができず、又はその執行をするのに著しい困難を生ずる虞があると認めるときは、検察官の請求により又は職権で、被告人に対し、仮に罰金、科料又は追徴に相当する金額を納付すべきことを命ずることができる。
○2 仮納付の裁判は、刑の言渡と同時に、判決でその言渡をしなければならない。
○3 仮納付の裁判は、直ちにこれを執行することができる。

第三百四十九条 刑の執行猶予の言渡を取り消すべき場合には、検察官は、刑の言渡を受けた者の現在地又は最後の住所地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所に対しその請求をしなければならない。
○2 刑法第二十六条の二第二号の規定により刑の執行猶予の言渡しを取り消すべき場合には、前項の請求は、保護観察所の長の申出に基づいてこれをしなければならない。

第三百四十九条の二 前条の請求があつたときは、裁判所は、猶予の言渡を受けた者又はその代理人の意見を聴いて決定をしなければならない。
○2 前項の場合において、その請求が刑法第二十六条の二第二号の規定による猶予の言渡しの取消しを求めるものであつて、猶予の言渡しを受けた者の請求があるときは、口頭弁論を経なければならない。
○3 第一項の決定をするについて口頭弁論を経る場合には、猶予の言渡を受けた者は、弁護人を選任することができる。
○4 第一項の決定をするについて口頭弁論を経る場合には、検察官は、裁判所の許可を得て、保護観察官に意見を述べさせることができる。
○5 第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百五十条 刑法第五十二条の規定により刑を定むべき場合には、検察官は、その犯罪事実について最終の判決をした裁判所にその請求をしなければならない。この場合には、前条第一項及び第五項の規定を準用する。
   第四章 即決裁判手続
   第四章 即決裁判手続
    第一節 即決裁判手続の申立て

第三百五十条の二 検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。
○2 前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
○3 検察官は、被疑者に対し、前項の同意をするかどうかの確認を求めるときは、これを書面でしなければならない。この場合において、検察官は、被疑者に対し、即決裁判手続を理解させるために必要な事項(被疑者に弁護人がないときは、次条の規定により弁護人を選任することができる旨を含む。)を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない。
○4 被疑者に弁護人がある場合には、第一項の申立ては、被疑者が第二項の同意をするほか、弁護人が即決裁判手続によることについて同意をし又はその意見を留保しているときに限り、これをすることができる。
○5 被疑者が第二項の同意をし、及び弁護人が前項の同意をし又はその意見を留保するときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
○6 第一項の書面には、前項の書面を添付しなければならない。

第三百五十条の三 前条第三項の確認を求められた被疑者が即決裁判手続によることについて同意をするかどうかを明らかにしようとする場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。
○2 第三十七条の三の規定は、前項の請求をする場合についてこれを準用する。
    第二節 公判準備及び公判手続の特例

第三百五十条の四 即決裁判手続の申立てがあつた場合において、被告人に弁護人がないときは、裁判長は、できる限り速やかに、職権で弁護人を付さなければならない。

第三百五十条の五 検察官は、即決裁判手続の申立てをした事件について、被告人又は弁護人に対し、第二百九十九条第一項の規定により証拠書類を閲覧する機会その他の同項に規定する機会を与えるべき場合には、できる限り速やかに、その機会を与えなければならない。

第三百五十条の六 裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、弁護人が即決裁判手続によることについてその意見を留保しているとき、又は即決裁判手続の申立てがあつた後に弁護人が選任されたときは、弁護人に対し、できる限り速やかに、即決裁判手続によることについて同意をするかどうかの確認を求めなければならない。
○2 弁護人は、前項の同意をするときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

第三百五十条の七 裁判長は、即決裁判手続の申立てがあつたときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、その申立て後(前条第一項に規定する場合においては、同項の同意があつた後)、できる限り早い時期の公判期日を定めなければならない。

第三百五十条の八 裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、第二百九十一条第三項の手続に際し、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述をしたときは、次に掲げる場合を除き、即決裁判手続によつて審判をする旨の決定をしなければならない。
一 第三百五十条の二第二項又は第四項の同意が撤回されたとき。
二 第三百五十条の六第一項に規定する場合において、同項の同意がされなかつたとき、又はその同意が撤回されたとき。
三 前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。
四 当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。

第三百五十条の九 前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができない。

第三百五十条の十 第三百五十条の八の決定のための審理及び即決裁判手続による審判については、第二百八十四条、第二百八十五条、第二百九十六条、第二百九十七条、第三百条から第三百二条まで及び第三百四条から第三百七条までの規定は、これを適用しない。
○2 即決裁判手続による証拠調べは、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。

第三百五十条の十一 裁判所は、第三百五十条の八の決定があつた事件について、次の各号のいずれかに該当することとなつた場合には、当該決定を取り消さなければならない。
一 判決の言渡し前に、被告人又は弁護人が即決裁判手続によることについての同意を撤回したとき。
二 判決の言渡し前に、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述を撤回したとき。
三 前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。
四 当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。
○2 前項の規定により第三百五十条の八の決定が取り消されたときは、公判手続を更新しなければならない。ただし、検察官及び被告人又は弁護人に異議がないときは、この限りでない。
    第三節 証拠の特例

第三百五十条の十二 第三百五十条の八の決定があつた事件の証拠については、第三百二十条第一項の規定は、これを適用しない。ただし、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。
    第四節 公判の裁判の特例

第三百五十条の十三 裁判所は、第三百五十条の八の決定があつた事件については、できる限り、即日判決の言渡しをしなければならない。

第三百五十条の十四 即決裁判手続において懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の執行猶予の言渡しをしなければならない。
  第三編 上訴
   第一章 通則

第三百五十一条 検察官又は被告人は、上訴をすることができる。
○2 第二百六十六条第二号の規定により裁判所の審判に付された事件と他の事件とが併合して審判され、一個の裁判があつた場合には、第二百六十八条第二項の規定により検察官の職務を行う弁護士及び当該他の事件の検察官は、その裁判に対し各々独立して上訴をすることができる。

第三百五十二条 検察官又は被告人以外の者で決定を受けたものは、抗告をすることができる。

第三百五十三条 被告人の法定代理人又は保佐人は、被告人のため上訴をすることができる。

第三百五十四条 勾留に対しては、勾留の理由の開示があつたときは、その開示の請求をした者も、被告人のため上訴をすることができる。その上訴を棄却する決定に対しても、同様である。

第三百五十五条 原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。

第三百五十六条 前三条の上訴は、被告人の明示した意思に反してこれをすることができない。

第三百五十七条 上訴は、裁判の一部に対してこれをすることができる。部分を限らないで上訴をしたときは、裁判の全部に対してしたものとみなす。

第三百五十八条 上訴の提起期間は、裁判が告知された日から進行する。

第三百五十九条 検察官、被告人又は第三百五十二条に規定する者は、上訴の放棄又は取下をすることができる。

第三百六十条 第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。

第三百六十条の二 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する判決に対する上訴は、前二条の規定にかかわらず、これを放棄することができない。

第三百六十条の三 上訴放棄の申立は、書面でこれをしなければならない。

第三百六十一条 上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様である。

第三百六十二条 第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつたときは、原裁判所に上訴権回復の請求をすることができる。

第三百六十三条 上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。
○2 上訴権回復の請求をする者は、その請求と同時に上訴の申立をしなければならない。

第三百六十四条 上訴権回復の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百六十五条 上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。この場合には、被告人に対し勾留状を発することができる。

第三百六十六条 刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上訴をしたものとみなす。
○2 被告人が自ら申立書を作ることができないときは、刑事施設の長又はその代理者は、これを代書し、又は所属の職員にこれをさせなければならない。

第三百六十七条 前条の規定は、刑事施設にいる被告人が上訴の放棄若しくは取下げ又は上訴権回復の請求をする場合にこれを準用する。

第三百六十八条 削除

第三百六十九条 削除

第三百七十条 削除

第三百七十一条 削除
   第二章 控訴

第三百七十二条 控訴は、地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対してこれをすることができる。

第三百七十三条 控訴の提起期間は、十四日とする。

第三百七十四条 控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。

第三百七十五条 控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百七十六条 控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない。
○2 控訴趣意書には、この法律又は裁判所の規則の定めるところにより、必要な疎明資料又は検察官若しくは弁護人の保証書を添附しなければならない。

第三百七十七条 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨の検察官又は弁護人の保証書を添附しなければならない。
一 法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。
二 法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三 審判の公開に関する規定に違反したこと。

第三百七十八条 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
一 不法に管轄又は管轄違を認めたこと。
二 不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。
三 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。
四 判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

第三百八十条 法令の適用に誤があつてその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その誤及びその誤が明らかに判決に影響を及ぼすべきことを示さなければならない。

第三百八十一条 刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

第三百八十二条 事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

第三百八十二条の二 やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものは、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実以外の事実であつても、控訴趣意書にこれを援用することができる。
○2 第一審の弁論終結後判決前に生じた事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものについても、前項と同様である。
○3 前二項の場合には、控訴趣意書に、その事実を疎明する資料を添附しなければならない。第一項の場合には、やむを得ない事由によつてその証拠の取調を請求することができなかつた旨を疎明する資料をも添附しなければならない。

第三百八十三条 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければならない。
一 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
二 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

第三百八十四条 控訴の申立は、第三百七十七条乃至第三百八十二条及び前条に規定する事由があることを理由とするときに限り、これをすることができる。

第三百八十五条 控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであることが明らかなときは、控訴裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。
○2 前項の決定に対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立をすることができる。この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。

第三百八十六条 左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。
一 第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。
二 控訴趣意書がこの法律若しくは裁判所の規則で定める方式に違反しているとき、又は控訴趣意書にこの法律若しくは裁判所の規則の定めるところに従い必要な疎明資料若しくは保証書を添附しないとき。
三 控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に該当しないとき。
○2 前条第二項の規定は、前項の決定についてこれを準用する。

第三百八十七条 控訴審では、弁護士以外の者を弁護人に選任することはできない。

第三百八十八条 控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。

第三百八十九条 公判期日には、検察官及び弁護人は、控訴趣意書に基いて弁論をしなければならない。

第三百九十条 控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以下の罰金又は科料に当たる事件以外の事件について、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、被告人の出頭を命ずることができる。

第三百九十一条 弁護人が出頭しないとき、又は弁護人の選任がないときは、この法律により弁護人を要する場合又は決定で弁護人を附した場合を除いては、検察官の陳述を聴いて判決をすることができる。

第三百九十二条 控訴裁判所は、控訴趣意書に包含された事項は、これを調査しなければならない。
○2 控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されない事項であつても、第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に関しては、職権で調査をすることができる。

第三百九十三条 控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をすることができる。但し、第三百八十二条の二の疎明があつたものについては、刑の量定の不当又は判決に影響を及ぼすべき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限り、これを取り調べなければならない。
○2 控訴裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状につき取調をすることができる。
○3 前二項の取調は、合議体の構成員にこれをさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。この場合には、受命裁判官及び受託裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
○4 第一項又は第二項の規定による取調をしたときは、検察官及び弁護人は、その結果に基いて弁論をすることができる。

第三百九十四条 第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても、これを証拠とすることができる。

第三百九十五条 控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであるときは、判決で控訴を棄却しなければならない。

第三百九十六条 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由がないときは、判決で控訴を棄却しなければならない。

第三百九十七条 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。
○2 第三百九十三条第二項の規定による取調の結果、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

第三百九十八条 不法に、管轄違を言い渡し、又は公訴を棄却したことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を原裁判所に差し戻さなければならない。

第三百九十九条 不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄第一審裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、その事件について第一審の管轄権を有するときは、第一審として審判をしなければならない。

第四百条 前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

第四百一条 被告人の利益のため原判決を破棄する場合において、破棄の理由が控訴をした共同被告人に共通であるときは、その共同被告人のためにも原判決を破棄しなければならない。

第四百二条 被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

第四百三条 原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。
○2 第三百八十五条第二項の規定は、前項の決定についてこれを準用する。

第四百三条の二 即決裁判手続においてされた判決に対する控訴の申立ては、第三百八十四条の規定にかかわらず、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について第三百八十二条に規定する事由があることを理由としては、これをすることができない。
○2 原裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第三百九十七条第一項の規定にかかわらず、控訴裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について第三百八十二条に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない。

第四百四条 第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。
   第三章 上告

第四百五条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

第四百六条 最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。

第四百七条 上告趣意書には、裁判所の規則の定めるところにより、上告の申立の理由を明示しなければならない。

第四百八条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。

第四百九条 上告審においては、公判期日に被告人を召喚することを要しない。

第四百十条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。
○2 第四百五条第二号又は第三号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項の規定は、これを適用しない。

第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

第四百十二条 不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄控訴裁判所又は管轄第一審裁判所に移送しなければならない。

第四百十三条 前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこれらと同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、上告裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び第一審裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

第四百十三条の二 第一審裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第四百十一条の規定にかかわらず、上告裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について同条第三号に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない。

第四百十四条 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。

第四百十五条 上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正することができる。
○2 前項の申立は、判決の宣告があつた日から十日以内にこれをしなければならない。
○3 上告裁判所は、適当と認めるときは、第一項に規定する者の申立により、前項の期間を延長することができる。

第四百十六条 訂正の判決は、弁論を経ないでもこれをすることができる。

第四百十七条 上告裁判所は、訂正の判決をしないときは、速やかに決定で申立を棄却しなければならない。
○2 訂正の判決に対しては、第四百十五条第一項の申立をすることはできない。

第四百十八条 上告裁判所の判決は、宣告があつた日から第四百十五条の期間を経過したとき、又はその期間内に同条第一項の申立があつた場合には訂正の判決若しくは申立を棄却する決定があつたときに、確定する。
   第四章 抗告

第四百十九条 抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。

第四百二十条 裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない。
○2 前項の規定は、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない。
○3 勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない。

第四百二十一条 抗告は、即時抗告を除いては、何時でもこれをすることができる。但し、原決定を取り消しても実益がないようになつたときは、この限りでない。

第四百二十二条 即時抗告の提起期間は、三日とする。

第四百二十三条 抗告をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。
○2 原裁判所は、抗告を理由があるものと認めるときは、決定を更正しなければならない。抗告の全部又は一部を理由がないと認めるときは、申立書を受け取つた日から三日以内に意見書を添えて、これを抗告裁判所に送付しなければならない。

第四百二十四条 抗告は、即時抗告を除いては、裁判の執行を停止する効力を有しない。但し、原裁判所は、決定で、抗告の裁判があるまで執行を停止することができる。
○2 抗告裁判所は、決定で裁判の執行を停止することができる。

第四百二十五条 即時抗告の提起期間内及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される。

第四百二十六条 抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。
○2 抗告が理由のあるときは、決定で原決定を取り消し、必要がある場合には、更に裁判をしなければならない。

第四百二十七条 抗告裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。

第四百二十八条 高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。
○2 即時抗告をすることができる旨の規定がある決定並びに第四百十九条及び第四百二十条の規定により抗告をすることができる決定で高等裁判所がしたものに対しては、その高等裁判所に異議の申立をすることができる。
○3 前項の異議の申立に関しては、抗告に関する規定を準用する。即時抗告をすることができる旨の規定がある決定に対する異議の申立に関しては、即時抗告に関する規定をも準用する。

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一 忌避の申立を却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
○2 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
○3 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
○4 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
○5 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

第四百三十条 検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
○2 司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
○3 前二項の請求については、行政事件訴訟に関する法令の規定は、これを適用しない。

第四百三十一条 前二条の請求をするには、請求書を管轄裁判所に差し出さなければならない。

第四百三十二条 第四百二十四条、第四百二十六条及び第四百二十七条の規定は、第四百二十九条及び第四百三十条の請求があつた場合にこれを準用する。

第四百三十三条 この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
○2 前項の抗告の提起期間は、五日とする。

第四百三十四条 第四百二十三条、第四百二十四条及び第四百二十六条の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、前条第一項の抗告についてこれを準用する。
  第四編 再審

第四百三十五条 再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。
一 原判決の証拠となつた証拠書類又は証拠物が確定判決により偽造又は変造であつたことが証明されたとき。
二 原判決の証拠となつた証言、鑑定、通訳又は翻訳が確定判決により虚偽であつたことが証明されたとき。
三 有罪の言渡を受けた者を誣告した罪が確定判決により証明されたとき。但し、誣告により有罪の言渡を受けたときに限る。
四 原判決の証拠となつた裁判が確定裁判により変更されたとき。
五 特許権、実用新案権、意匠権又は商標権を害した罪により有罪の言渡をした事件について、その権利の無効の審決が確定したとき、又は無効の判決があつたとき。
六 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。
七 原判決に関与した裁判官、原判決の証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官又は原判決の証拠となつた書面を作成し若しくは供述をした検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決により証明されたとき。但し、原判決をする前に裁判官、検察官、検察事務官又は司法警察職員に対して公訴の提起があつた場合には、原判決をした裁判所がその事実を知らなかつたときに限る。

第四百三十六条 再審の請求は、左の場合において、控訴又は上告を棄却した確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。
一 前条第一号又は第二号に規定する事由があるとき。
二 原判決又はその証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官について前条第七号に規定する事由があるとき。
○2 第一審の確定判決に対して再審の請求をした事件について再審の判決があつた後は、控訴棄却の判決に対しては、再審の請求をすることはできない。
○3 第一審又は第二審の確定判決に対して再審の請求をした事件について再審の判決があつた後は、上告棄却の判決に対しては、再審の請求をすることはできない。

第四百三十七条 前二条の規定に従い、確定判決により犯罪が証明されたことを再審の請求の理由とすべき場合において、その確定判決を得ることができないときは、その事実を証明して再審の請求をすることができる。但し、証拠がないという理由によつて確定判決を得ることができないときは、この限りでない。

第四百三十八条 再審の請求は、原判決をした裁判所がこれを管轄する。

第四百三十九条 再審の請求は、左の者がこれをすることができる。
一 検察官
二 有罪の言渡を受けた者
三 有罪の言渡を受けた者の法定代理人及び保佐人
四 有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹
○2 第四百三十五条第七号又は第四百三十六条第一項第二号に規定する事由による再審の請求は、有罪の言渡を受けた者がその罪を犯させた場合には、検察官でなければこれをすることができない。

第四百四十条 検察官以外の者は、再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる。
○2 前項の規定による弁護人の選任は、再審の判決があるまでその効力を有する。

第四百四十一条 再審の請求は、刑の執行が終り、又はその執行を受けることがないようになつたときでも、これをすることができる。

第四百四十二条 再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。但し、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。

第四百四十三条 再審の請求は、これを取り下げることができる。
○2 再審の請求を取り下げた者は、同一の理由によつては、更に再審の請求をすることができない。

第四百四十四条 第三百六十六条の規定は、再審の請求及びその取下についてこれを準用する。

第四百四十五条 再審の請求を受けた裁判所は、必要があるときは、合議体の構成員に再審の請求の理由について、事実の取調をさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。この場合には、受命裁判官及び受託裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第四百四十六条 再審の請求が法令上の方式に違反し、又は請求権の消滅後にされたものであるときは、決定でこれを棄却しなければならない。

第四百四十七条 再審の請求が理由のないときは、決定でこれを棄却しなければならない。
○2 前項の決定があつたときは、何人も、同一の理由によつては、更に再審の請求をすることはできない。

第四百四十八条 再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。
○2 再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。

第四百四十九条 控訴を棄却した確定判決とその判決によつて確定した第一審の判決とに対して再審の請求があつた場合において、第一審裁判所が再審の判決をしたときは、控訴裁判所は、決定で再審の請求を棄却しなければならない。
○2 第一審又は第二審の判決に対する上告を棄却した判決とその判決によつて確定した第一審又は第二審の判決とに対して再審の請求があつた場合において、第一審裁判所又は控訴裁判所が再審の判決をしたときは、上告裁判所は、決定で再審の請求を棄却しなければならない。

第四百五十条 第四百四十六条、第四百四十七条第一項、第四百四十八条第一項又は前条第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第四百五十一条 裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、第四百四十九条の場合を除いては、その審級に従い、更に審判をしなければならない。
○2 左の場合には、第三百十四条第一項本文及び第三百三十九条第一項第四号の規定は、前項の審判にこれを適用しない。
一 死亡者又は回復の見込がない心神喪失者のために再審の請求がされたとき。
二 有罪の言渡を受けた者が、再審の判決がある前に、死亡し、又は心神喪失の状態に陥りその回復の見込がないとき。
○3 前項の場合には、被告人の出頭がなくても、審判をすることができる。但し、弁護人が出頭しなければ開廷することはできない。
○4 第二項の場合において、再審の請求をした者が弁護人を選任しないときは、裁判長は、職権で弁護人を附しなければならない。

第四百五十二条 再審においては、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

第四百五十三条 再審において無罪の言渡をしたときは、官報及び新聞紙に掲載して、その判決を公示しなければならない。
  第五編 非常上告

第四百五十四条 検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。

第四百五十五条 非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。

第四百五十六条 公判期日には、検察官は、申立書に基いて陳述をしなければならない。

第四百五十七条 非常上告が理由のないときは、判決でこれを棄却しなければならない。

第四百五十八条 非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。
一 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。
二 訴訟手続が法令に違反したときは、その違反した手続を破棄する。

第四百五十九条 非常上告の判決は、前条第一号但書の規定によりされたものを除いては、その効力を被告人に及ぼさない。

第四百六十条 裁判所は、申立書に包含された事項に限り、調査をしなければならない。
○2 裁判所は、裁判所の管轄、公訴の受理及び訴訟手続に関しては、事実の取調をすることができる。この場合には、第三百九十三条第三項の規定を準用する。