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アイドル作成工場

誰かの役にたてればオレにもいいことあるハズ。

ボクがテレビを見ているとそれ面白いかと言いながら、チャンネルを変えた。

ちょっと見てんだから変えないでよと母親から声が飛ぶ。

あらかたチャンネルをかき回した結果、兄貴は元のチャンネルに戻す。

食事をテーブルに並べて母親はいつもの定位置のソファに戻った。

ボクは居心地の悪さを感じて、麦茶を一気に飲み干し、部屋を出るタイミングを体で感じようとした。

その気配を察知したのか兄貴がふとこちらに目を走らせる。

なぁ昨日変なこと無かったか?

突然の問い掛けにボクの鼓動は確実に一拍は止まっただろう。

なにが?

ベットボトルの麦茶に手を伸ばしながら返事をする。
いらない一杯をコップに注ぐ間、昨日の出来事を噛み締めた。

いや、ヘンなメールがきたからなんとなくさ。

明らかに確信をもった問いかけへの否定は息が苦しくなる。

そうか、じゃあいいや。
兄貴は食べ終わった食器を台所に運び始めた。

おまえのも持ってこいよ。

置いといてくれれば後で洗うわよ。

と母からの声がかかるが、兄貴は聞こえないとばかりに水道の水を勢いよくだした。

迷惑かけたな。

食器をシンクに置くボクの耳元でつぶやいた。



何とも言えない感情だけが胸に重く残っている。
ボクはいつも通り、なるべく何も感じないように部屋を出てリビングに降りた。

いつもと変わらない食卓があって、母親にご飯食べると聞かれ、頷くと暖かい味噌汁がテーブルに置かれた。

魚あるわよと言われ、先週末行った観光地で買ってきた干物を出された。
そこからは柔らかさを感じず、堅い身の中に少しの柔らかさを求めた。

テレビのワイドショーでは、どうでもいいニュースが流れ、それを何人もの解説者がしたり顔で、説明し互いの意見に笑顔で頷いていた。

部屋に戻る気もせず、食卓で麦茶片手にそんな無気力なテレビを見ていた。

しばらくすると、玄関で音がする。

兄貴が機嫌よく帰ってきた。
母親に無駄口を叩きながら、いつもの言い訳を繰り返す。

何事も経験をして喜びや痛みを知る事が大事だという、ありがたい両親の訓等を受けて育った兄は、要領よく母親を笑顔に変えていた。

オレも腹減ったと言ってボクの隣に座り、この命を救って下さいと言わんばかりの勢いで母親に朝食を懇願する。

ちょっと待ってよと言いながら、母親も台所に向かう。


あのティッシュありますか?
兄貴よりは年下。
ボクよりは年上だろうか。

初めて間近でみる女性の裸をこんな状況で見れる事は幸運なのだろうか。ボクはただ柔らかさを感じた。

あの?

ボクの思考を彼女が遮る。
彼女はボクにのしかかりながら、耳元で囁いていたのだ。

ちょっと待って下さい。
と言って動こうとした時、ボクは自分がまだ彼女の中にいる事実を気づかされた。

あの、そこに…

ボクはテーブルのある方を指差し、彼女はそちらを振り向くと情けない音をたてながらボクを自由にした。

ごそごそと彼女が何かをしている音だけが聞こえる。

ボクは何をされていたのか何となく想像出来るだけの知識は持っている。
でも、なんとなくでしかなかった。

ふと、彼女は優しくボクに触れた。今度は自覚した体の変化を受け入れた。
もう一度彼女はボクを飲み込んだ。

数分後、ボクは意識して彼女の体に全てを解き放った。

数分後、彼女は洋服を着るとありがととだけ言って部屋を出て行った

ボクはそのまま眠った。
目を覚ますと枕には夢じゃなかった証としてナイフが突き刺さっていた。あと数枚のティッシュが床に散乱していた。



ボクは彼女を知っている。知っているという言葉は正しくないかもしれない。
正しくは存在を知っているというべきだろう。

彼女は兄貴の彼女。
きっとその中の1人だ。
生来自由を謳歌するタイプらしい兄貴は、縛ることは好むが、縛られる事は苦手なタイプだ。

家では入れ代わり複数の彼女を見かける事は珍しくないし、そんな兄貴の両親、つまり、ボクの親でもあるわけだが、そんな事実に頓着しないタイプだ

ここで頭を整理しよう。
確かに彼女はこの家に存在する事を許されてはいる。但し、仮定条件として兄貴の彼女としてな訳である。

兄貴が側にいない状況では彼女は存在していないはずだ。

ベッドサイドの目覚まし時計を見ると時間は午前3時少し前。
日付変更する前にはボクは1人平和にベッドの中にいたはずた。
風呂上がりだったとは言え、裸で眠る性格ではない。

確かTシャツとトランクスでベッドに入った。暑いこの季節、薄手の布団も暑すぎて、跳ねのける位の事はしたかも知れない。
ただ間違えても寝ながら全裸になるほど、寝苦しくは無いはずだ。

それにもまして、彼女が裸の理由も分からない。ボクはおよそ2秒ほどそんな事を考えていた。
彼女がボクに言う。
動いた瞬間に何か身体に異変が起こるのが分かっていた。

ボクは蜘蛛に捕食された虫だった。
僕の体の一部はもうすでに、彼女の体に取り込まれていた……。

これが、そういう事だと知るまでには、まだ若すぎる14歳のボクだった。
彼女は目を覚ましたボクを見下ろし、緊張した顔を隠す為に、無理に笑おうとしていた。ぎこちなく笑おうとした瞬間、右目からまるで宝石のように綺麗な涙を一筋落とした。

ボクはそれを見て、14年間ボクと生きてきた、何億もの見えない命を彼女に与えていた。

微かな痛みと共に何とも言えないむずがゆさが体を突き抜け、ボクの体を震わせた。

彼女は、倒れ込みながら優しくボクの体を包み込んだ。

ナイフは、寝相の悪いボクの頭から離れていた枕の命を奪うかのように、枕に突き刺さっていた。