今回は、『対人恐怖症(社交不安障害)の診断と治療』のまとめとして、私が行っている外来精神療法についてお話します。
対人恐怖(社交不安障害)治療の専門家ではない私が行っている外来精神療法は、学問的に体系だったものではありません。これまで、うつ病、不安障害、統合失調症など、精神障害全般にわたる治療の経験と、対人恐怖に関する専門書などから得た知識を総動員して、自分なりに工夫して作り上げてきた、極めて自己流のものだと思います。認知行動療法的、精神分析的(生育史的環境要因重視)、森田療法的(素質的・個体要因重視)、生活技能訓練的・・・“何でもありのイイとこ取り”の精神療法といえるかもしれません。自分でも、どんな知識や経験をもとに患者さんを治療しているのか、はっきりと自覚できていないのですが、思いつくまま、いくつかに整理してみました。
(1)対人恐怖に関して現在分かっている生物学的基盤を薬物療法と関連づけて説明する。
症状をすべて育ちや性格のせいにしてしまうというような、偏った見方を修正し、自分の症状をより客観視できるようになる。それによって、薬物療法の効果(単なる暗示ではない)をさらに上げることができる。『生物学的理解がお得です』ほか。
(2)対人恐怖がどんな病気か、どのような状況で何が起こっているのか、その状況の中での心理特性(元来の性格も含む)はどんなものかを知ってもらう。
自分が悩んでいる状況や、そこにおける症状の正体を理解(自覚)することは、不安や恐怖を和らげてくれるし、恐怖突入する勇気も与えてくれる。さらにオマケとして、自分の性格の改善(自己の確立)にも役立ってくれる。『歩きスマホに腹が立つ』。
(3)対人恐怖の治癒イメージを持ってもらう。
薬物療法によって何が改善し、恐怖突入によって何が改善し、自分の行動がどのように変わり、自分気持ちや人生観がどのように変わっていくのかをイメージできるようになるようにお手伝いする『対人恐怖(社交不安障害)の診断と治療(4)』。
(4)対人場面で、具体的にどのような行動をとるのがよいかを指示する。
患者さん自身が苦手とする場面において、具体的に何をどうすればよいかを説明する。はじめはそのやり方になじめなくとも、次第にそれが自分のスタイルになって、自然体にまで発展することを応援する。・・・『社交不安障害(3)-アドバイス-』ほか。
(5)手動瞑想認知療法(マインドフルネス認知療法)
無意識下で自動的に行われる、注意転換、注意分割機能を向上させるような訓練をする。その成果として、苦手な対人場面で、自分の心理状況や周りの人の状況を客観視できるようになる。客観視できれば、落ち着いて適切に行動でき、その場への適応力が上がり、苦痛も軽減する。『社交不安障害に対する手動瞑想の効果』。
思いつくまま書いてみましたが、これがすべてかどうかわかりません。まだ抜けているものがあるかもしれませんが、気がついたら、後から加筆したいと思います。
対人恐怖の治療に限らず、臨床では個々のケースに合った治療(相手によって対応を変える)を考えなければならない。それには、一つの治療技法にとらわれず、様々な治療技法を折衷的に取り入れていくのが現実的だと思う。小さなクリニックにおいて、一対一でやる外来精神療法としては、それが限界であると思う。しかしながら、「・・・認知行動療法では、個人療法と集団精神療法の両方が行われているが、近年の研究では、個人療法の方が集団療法よりも有効性が高い」という指摘もあるので、<“おじいちゃん先生”のやり方もまんざら悪くはないな>と自画自賛しています。