平成29年10月〇日、M子さんが、10年ぶりに来院。平成18年12月~平成19年4月にかけて、当クリニックを5回受診している。

 平成18年12月初診時の主訴は、「何かしているときは忘れているけど、常にドキドキして嫌な感じがある。朝と夕方に特におかしくなる。夫が他の病院でもらった、デパス細粒が良く効くので、それを出してもらいたい」といったもの。この時すでに、デパスの効果の切れ目を感じているようなので、メイラックスやSSRIなどによる治療を行った。抑うつ気分や反芻思考は改善していたけれど、「夕方になると、デパスを飲まないとおさまらない。もっとスカッとする薬を出してほしい」といって、本人は納得がいかず。診察中も、悩みを語るでもなく、“効く薬”の要求を繰り返した。結局、5回の受診で治療は中断した。

 今回の主訴は、「10日前に娘と大喧嘩をしてから折り合いが悪く、眠れなかったり、調子が悪い。マイスリー(10)0.5錠だと全く効かない。1錠だと次の日がスッキリしないし、便秘になるから飲みたくない」というもの。まず、過去10年間の生活状況の変化やストレス状況について聴取しようとしたが、多くは語らない。デパスやマイスリーという薬について、説明をしている途中で、

 

M子さん:「出してもらいたいクスリがあります。それを出してもらえれば・・・」

 

私:<やっぱり、デパスですか。10年前も同じやり取りをしていますね>

 

M子さん:「私にはデパス細粒が一番合っています。他の薬は合いません」

 

私:<私は、デパスは出しません。それに代わるクスリは他にもあります>

 

M子さん:「先生はどうしてそんなに頑なに、デパスを出そうとしないのですか」

 

私:<これまで私は、デパス依存の患者さんを何人も治療してきているので、最初にデパスで治療を始める医者の責任は大きいと感じています・・・>

 

M子さん:「私は、デパスに依存しているわけではありません。デパス細粒を出して欲しいだけです」

 

私:<今のところは、デパス依存ではないにしても、将来、その可能性があると判断していながら、それを処方する最初の医者になりたくありません。患者さんの言葉をそのまま信用するわけにもいかないし・・・>

 

M子さん:「・・・・・・」

 

 結局、「デパス細粒以外の薬は必要ない」という意思は固く、M子さんは手ぶらで帰っていった。話を聴いてもらいたいとか、精神療法的な治療を求めているのではなく、デパス細粒の処方のみを求めているのだった。

 

過去ログ:デパスとソラナックスの大きな違いデパス依存という厄介な代物、参照。