「・・・・話、て・・・何だよ、かしこまって(笑)」
・・・・ああ。
ごめんね・・・・・
もう、君の輝くような笑顔を。
笑った唇からこぼれる白い歯を。
頼もしい背中を。
大きくて、あたたかい手を。
もう、
見ることも、触れることもできないんだ。
「・・・・綾?」
私の気持ちを察したかのように、輝が私に近づいて顔をのぞきこむ。
・・・・言わなきゃ。
・・・・決心したんだ。
亜衣にも寿々にも、言ったんだ。
言われたんだ。
言えって、言われたんだ。
・・・・・・・ちゃんと、言うんだ――――
「―――――・・・・・・輝、私ね」
「うん」
「・・・・・・・・・おばあちゃんのいる、新潟に引っ越すの」
まるで、時が止まったかのようだった。
輝の表情が強張る。
「・・・・・・言ってなくて、ごめんなさい・・・」
「・・・・・」
視界が滲む。
輝の姿と背景がぼやける。
ごめんなさい。
ごめんなさい・・・・
輝、
嫌いにならないで・・・
「・・・・・・・い・・・・いつ、だよ・・・」
「・・・・・・・・・・明日の夜・・・・」
輝の目に映っていた何かが消えた気がした。
「・・・・・・・うそ・・・・だろ?」
辛いよ。
もう、言いたくないよ・・・・・。
一粒の涙が零れ落ちる。
儚げに作った頬笑みも、無残に崩れた。
「・・・・・・・嘘じゃ・・・・ないんだ・・・よ・・・」
そう言ったところで、輝が膝をついて座り込んだ。
「・・・こ、輝・・・!」
「なんとか・・・・・・ならないのかよ・・・・」
ぽたっ、と音を立てて、輝の目から涙が零れ、畳に落ちた。
すると輝が立ちあがって、私の方に歩いてきた。
・・・・・・・・・え?
輝が勢いよく手を広げたかと思うと、輝はこれまでにないくらい力強く、私を抱きしめた。
「・・・・・こっ・・・輝・・・?!」
「行くな・・・・・・」
ぐっ、と抱きしめられた腕に力がこもる。
「・・・・・・・行かないでくれ」
「・・・・・・っ・・・・」
「なぁ・・・・!!!!行かないでくれよ・・・・・!!!!!」
「―――――っ――――・・・・・!」
ぼろぼろと、とめどなく涙があふれた。
中学2年生のふたりに、何ができるわけもなく。
出来ることと言えば、抱きしめ合ってひたすら泣くことくらいで。
それほどに、運命は私たちを無残に引き裂いたのだ。
もう一生癒えることはない・・・・、
深い、 深い、 傷を残して。
「綾・・・・・!!!」
「・・・・・・っ・・・、は・・・いっ・・・」
「・・・・・・抱きしめて、くれ・・・」
「・・・・・・・っ・・・・」
輝が、私をもっと強く、きつく抱きしめた。
私は力が緩んでいた腕に、また力をこめる。
「・・・・・輝・・・・」
離れたくない・・・・。
どうして、こうなってしまうの?
どうして、こうなったの?
・・・・・・言うまでもない。
全て、私の、
・・・・私が、
新潟に行くと言ったことからだ・・・。
自業自得、
・・・・って、やつだ・・・・
「綾・・・・・?」
「・・・・・はい・・・・」
「・・・・・・夢、か・・・・?」
「・・・・・・・・・・夢じゃ、ないです・・・・」
「・・・・・・・・・・現実じゃねぇよ、こんなの・・・・」
「・・・・・・・・輝・・・・」
「・・・・・・・まだ・・・・半年経ってないんだぜ・・・・?」
「・・・・・・・・っ、こ・・・・」
「・・・・・・なぁ、夢で終わらせてくれよ・・・・・!!!」
そう言った輝の口を、私は唇でぐっと押して塞いだ。
「・・・・!?」
輝の涙に濡れた目が、驚きで白黒する。
涙でひりひりする頬がくっ付きあって、余計に胸が痛んだ。
「・・・・・・夢じゃ、ないから・・・・」
・・・・・・夢なんて、言ってほしくなかった。
受け止めてほしかった。
無理な事だと、分かっていたけど。
期待してしまった。
・・・・・期待してしまったんだ・・・・。
「・・・・・・夢じゃないんだって・・・・
私だって、認めたくないよ・・・・
だけど、認めないとっ・・・・・・・・・・・・・・・・・
さよならが、言えな―――――」
―――――――――えっ・・・?
「・・・・・・・・・・それ以上言うな・・・・・」
私の骨が折れそうなほどに、輝がきつく私を抱きしめた。
「うう・・・・っ、苦しい・・・・」
「・・・・・・・嫌だ・・・・・・・」
私の首筋に、大粒の涙がぽろぽろと降ってくる。
「・・・・・・・・・・・・・・・綾・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・行かないでくれ・・・・・・・・・」
窓から見えた流れ星が、
私たちの涙のように光って消えた。
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お久しぶりの更新です*
只今、再び「デスティニー」の構成を練り直しております。
ただのつまらないラブコメにならないように・・・
頑張りますので、どうかよろしくお願い致します。
愛咲